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第二十九話

 今度開催される文化祭で、うちのクラスはコスプレ喫茶をやることになった。

 正直、私はあまり乗り気ではなかったのだけど、唯可や沙苗などクラスの中心人物たちが賛成したため、あっけなく通ってしまった。


 そして私は給仕担当だ。

 役割は主に調理と給仕があり、私は調理を望んだんだけど、希望者が多くてジャンケンに負けてしまった。

 そもそも給仕の係じゃなければコスプレをする必要もないから期待したんだけどなあ。


 唯可たちに「コスプレするのって恥ずかしくない?」と聞くと、「え? なんで? 楽しそーじゃん」と返ってきた。きょとんとした顔だったので、きっと本心なのだろう。曰く、「一度しかない高校生活なんだから楽しまないと損!」だそうだ。そういうものなのかな。うーん。


 そして学校から衣装代の補助はないため、各自で持参ということになっている。調達先は購入したり、演劇部などから借りたり、人によって様々だ。私はどうしようかなと悩んでいたけれど、いつものグループで相談したところ、意外なほどあっさりと解決した。


「貸してあげようか?」

「え?」


 そう言われて訪れたのは少し前にも来た志保の家。

 部屋のクローゼットの中にはなぜかずらりと並んだメイド服。


「なんでこんなに……?」

「趣味だよ」


 趣味かぁ。

 というわけで、私はクラシカルな感じのを一つ借りることにした。

 如何にもメイド喫茶然としたミニは恥ずかしいし、そもそも私はロングタイプの方が可愛いと思う。

 しかしこれ、生地もしっかりしてるし結構高いんじゃ……。汚さないようにしないと。




 そんなこんなで迎えた当日。

 文化祭は二日間の日程があり、私は初日の午前に店先に立つことになっている。

 だからスタートから仕事をしているのだけど……。


 ――いそがしい!


 お店の外には途絶える気配の見えない長蛇の列。

 本当に最初こそスロースタートだったのだが、徐々に徐々に増えていき、今では時間制限をかけているほどだ。


 原因はだいたいわかっている。

 このクラス……佑太くんや唯可を筆頭として、美男美女率が異様に高いのだ。

 しかもこの時間帯には特に面子が集中しているため、口コミが口コミを呼び、もはや収拾がついていない。


 最初は和気あいあいと仕事をしていた私たちも、徐々に殺伐としてきており、もはや文化祭を楽しむ事態ではなくなっている。

 私だって本当は執事みたいな服でばっちり決めてきた佑太くんの姿をもっと目に焼き付けたいのだけど、とてもそんな余裕はない。


 目の回るような忙しさに、減らない人の群れ。

 あれ、これって佑太くんたちが休憩に入ったら少しはマシになるんじゃないかな? とか思ったけれど、とてもそんなことを言えるような空気でもない。


 もういいやと無心になって作業をこなしていると、調理担当をしていた子の一人が駆け込んできた。


「あ、綾瀬さん! いた。ちょっとこっちきて!」

「――え? 私?」

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