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第十一話

「でも何もないのは本当だよ? だって雑談と本の感想くらいしかやり取りしてないのは本当だもん」

「あれ? そうなの?」

「うん、別に学校でもほとんど話したりしてないし。本を貸すときくらい」

「……文栞、もしかしてだけど、学校であまり話しかけないように長瀬くんに言ったりしてない?」

「え、なんでわかったの?」


 私の言葉に、咲良が呆れ顔で溜息をついた。額に手をあてて、眉を寄せている。


「あー、もうなんかわかってきた。文栞、それ余計だから。気の遣い方、間違ってるから」

「え、なんで? だって長瀬くんって女子と積極的に関わるようなタイプじゃないの聞いたことくらいあるでしょ?」

「でもそんな中で文栞とは関わりを持とうとしたんでしょ? 文栞から近づくのは想像できないし、長瀬くんから近づいてきたんだよね?」

「う……」

「やっぱり。だったらそれ、やっぱり完全に余計な心配だから。多分長瀬くんも文栞が何を考えてるかなんとなく想像ついたから、その話飲んだんだろうけど……」


 間違っていたのだろうか。でも私としては、やっぱりこれで正しいと思う。

 だって彼が私に恋愛的な意味で興味を持つはずがない。人として興味を持ってくれて『もっと知りたい』と言ってくれたのはとてもとても嬉しいけど、それなら今の状況で充分叶う。下手に私と近づいて変な噂が立つリスクを取る意味がないのだ。 

 私がいまいち納得できずにいると、咲良は「仕方ないなぁ」とでも言いたげな顔をした。


「じゃあさ、逆に想像してごらんよ。文栞が『この人のこと知りたいな、関わりたいな』って思って勇気を出して近づいた人から、『学校では話しかけないで』って言われたらどう思う?」

「……仕方ないなって思う反面、ちょっと――いや、かなり嫌な気分になった……」

「でしょ? それと同じで長瀬くんだって色んなこと考えるよ。『もしかして嫌だったかな』とか『俺と話してるところ見られたくないのかな』とか。もしかしたら誤解なく伝わってるのかもしれないけど、そんなこと期待しちゃダメ。どんなに言葉を尽くして話したところで、一〇〇パーセント信じることなんて出来ないよ。だってまだお互いのこと良く知らないんだから」

「そう……だね……」

「だったら、これからどうすればいいか、わかるよね?」

「……うん、まずは長瀬くんに謝って、それから長瀬くんがどうしたいか聞いてみる。その上で、このままの状態を続けたいならそうするし、違うならそれもきちんと聞く。長瀬くんのこと知ろうともしないで、意見を押し付けるのはダメだよね」

「わかればよろしい。じゃ、早速今夜あたりでも電話しちゃいな」

「で、電話? メッセージじゃ駄目なの……?」

「古今東西、こういうのは声聞いて話す方がいいって決まってるの。本当は直接会って話すのがいいんだけど……さすがに呼び出すのは悪いしね」

「うぅ……。わかった……。緊張するけど、頑張る……」

「うん、それでいいよ。頑張れ、文栞」

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