日常に忍び寄る影(ヒロイン)1
ストレスかかると溺愛BL書きたくなる呪い、しっかりと発動中(ノ´∀`*)
何も考えてないエセシリアスで、二人がラブラブしてるところを書きたくて書いてます。
ヒロインちゃんは出て来たとしても、当て馬以下の扱いしかされませんので、あしからず!←言い逃げ
異世界(地球)への転生からの、召喚されての異世界(ファンタジーな前世)へ出戻りを果たした俺は、再会した友人と友人ではなくなった。
別に仲違いした訳ではなく、ただ関係がただの『悪友』から、恋人へと変わっただけだ。
こっちの世界では同性同士の恋愛も異性との恋愛と変わらない扱いだし、俺たちの関係も隠すことでもないが、わざわざ叫んで言い広めるようなことではないだろう。
ヒューバートはしてみたかったみたいだが。
「ちなみに、俺の首というか、頭ってどうなったんだ?」
ヒューバートの部屋で一緒に眠るようになり、前世の俺のお古だったベッドは別の部屋へ移設され、新しく入れられたキングサイズのベッドに並んで転がりながら、俺はふと気になっていた事を口にする。
で、後悔した。
事後で甘々だったヒューバートのお綺麗な顔が、一気に凍りついたからだ。
「ごめん、言いにくいなら……」
「いや…………クオンの首は、学園にうば……回収された。焼却されたと、聞いている」
反射的に謝った俺に、ヒューバートは今にも泣き出しそうな表情で首を振り、俺の体をギュッと掻き抱いてくる。
すん、と鼻を鳴らす音が聞こえてくるので、また泣かせてしまったらしい。
俺は泣いているヒューバートに気付かないフリをして、ヒューバートの髪を慈しむように撫でる。
相変わらず女性の敵のようなサラサラヘアーだ。
「そっか。まぁ、そうだよな」
取って置かれても困るから、何処かに万が一存在しているなら始末しようかと思ったが、必要なかったようだ。
「…………学園の中は隠し部屋や隠し通路も確認したが、無かった」
心底悔しそうなヒューバートの声音に、俺は学園か学園長の英断に感謝する。
でなければ、この部屋には前世の俺の生首が鎮座していた、かなりの高確率で。
それほど、ヒューバートは前世の時からずっと俺を好きだったらしい。
トラウマと罪悪感からの扱いの良さだと思っていた俺は、全身でヒューバートの『本気』を味わう羽目になった。
昼夜関係なく三日程ずっとベッドの上で、あはんうふんというなかなか爛れた三日間を過ごしたと思う。
その後、ディアベルの告げ口によって本音で語り合い、俺はヒューバートと付き合うことになった。
今でも俺にヒューバートは勿体無いとは思うが、この腕の中は思った以上に居心地が良くて、日々甘やかされている。
「くすぐったい、って。今日はもうしないからな?」
油断すると悪戯をしてくる手をやんわりと押し退け、俺はヒューバートの胸元へ額を擦り寄せて居心地の良い寝場所を探す。
「おやすみ、ヒュー」
「……おやすみ、クオン。愛してる」
囁かれた甘やかな声に、俺はかろうじて口を動かして「おれも」とだけ返して、吸い込まれるように眠りに落ちていく。
ずっと尻を揉まれていたのは気のせいだと思っておこう。
●
「クオン、貴様は男と女、どちらが好きなんだ」
次の日、帰宅して一番の挨拶とは思えない一言に、俺は夕食を作る手を止めて、質問をしてきたヒューバートを窺うように見つめて首を傾げて見せる。
「性嗜好って意味だよな? まぁ、普通にどっちも恋愛対象にはなるぞ? あ、男を抱く方は無理だから、抱けって言われても……」
「それはない」
食い気味に言葉を遮られ、俺は苦笑いしてポリポリと頬を掻く。
ヒューバートは脱いだらすごいが、見た目だけは美人さんだから、色々あったのだろうと一人で納得して、味見を待っているディアベルの口に揚げたてのから揚げを放り込む。
(ふーふーはー?)
むぐむぐとから揚げを咀嚼した美幼児からそんな文句が聞こえてくるが、ディアベルは揚げたてのから揚げぐらいで火傷するようなヤワな生き物ではない。
「どうしたんだよ、急に」
「……もう一人の召喚者が、貴様に会いたいそうだ」
もう一個もう一個と口を開けてねだってくるディアベルに、しょうがないので今度はふーふーと少し冷ましたから揚げを放り込みながら、俺は予想外の言葉に瞬きを繰り返す。
見上げると俺の可愛い恋人な美人さんは、何故か不安を隠さない渋面で俺を見つめている。
「どうした? 俺が女の子とシたくなる、とか不安になったのか?」
そう言いながら手を伸ばしてヒューバートの頬へ触れようとした俺は、粉まみれの自身の両手に気付いて伸ばした手を止めると、代わりに笑って見せる。
「貴様は、前世でもよく女を侍らせていただろう」
不安は拭えなかったのか、ヒューバートから返ってきたのは拗ねたような呟きだ。
「あれは友達だよ。俺に女性の恋人はいなかったからな? それに、今はヒューバートが俺の恋人だろ?」
誤魔化しではなく、事実前世では付き合っていた女性はいなかったので、俺は肩を竦めながら答え、洗い場で両手の粉を払ってから流水で洗う。
エプロンで適当に手を拭いてから、未だに拗ねた顔のままのヒューバートの頬へ手を伸ばす。
「だから、好きなのは男とか女とか関係なく、ヒューバートだ。……今日はから揚げだぞ? さっさと手を洗って、着替えてこいよ」
「貴様と同郷だという少女は、次々と周囲の男を惚れさせているんだぞ? 貴様がその毒牙にかからないという保証はあるのか!?」
彼女は異世界召喚満喫してるみたいだな、とある意味安堵に近い感想を抱きつつ、俺はすっかり大きな駄々っ子と化したヒューバートを抱き締めてなだめることにする。
油の火は消してあるので手間取っても問題無い。
から揚げは冷めそうだが。
「言い方は悪いけどさ、彼女に惚れる人達は物珍しさもあるんじゃないか? 自分に媚びなかったり、貴族とかにはない無邪気さとか。見た目だけなら、その辺にゴロゴロ可愛い子はいるし」
俺の言葉に、ゆらゆらと水気を増したヒューバートの瞳が、本当か? と言いたげに俺を見据えている。
「俺としては、ヒューの方が引っかからないか心配……「天地がひっくり返ってもありえぬ!」そっか、良かった」
俺の台詞を遮った怒声に、つまみ食いしていたディアベルがテーブルからコロリと転がり落ちて、床にぶつかる前にふわりと浮かんだ。
一連の流れを視界の端で捉えながら、俺は少し濡れているヒューバートの目尻へと口付ける。
「ほら、もう泣くなって」
「……泣いてなどいない。着替えてくる」
すん、と鼻を啜ったヒューバートは、ちゅ、と軽い音をさせて俺の額へ口付けてから、キッチンから出ていく。
「可愛いなぁ」
(あれを可愛いって言えるの、クオンぐらいだよー。あと、から揚げお代わりー)
「ヒューの可愛いとこは、俺だけが知ってればいい…………って、え? お代わり?」
それこそ万人が可愛らしく思うであろう笑顔で愛らしい幼児が差し出したのは、見事に空になった皿で、俺は空になった皿を前に数秒固まって、明日のお弁当用予定だったとり肉を揚げ始めるのだった。
●
「そういえば、話が途中になってたよな。聖女さんが俺と会いたいって? 何の用かは聞いてるか?」
「…………知らない。私も話を聞いただけだ」
「ふぅん。本当になんの用だろう」
ちゃぷちゃぷとお湯を揺らしながら、俺は後頭部をヒューバートのたくましい胸元へと預ける。
ディアベルから聞いた感じでは、逆ハーレム作って満喫してるみたいだから、俺に用事なんて無さそうだけど。
「向こうでの知り合い、だという可能性は?」
「いや。有名人なら向こうが一方的に、って可能性はあるが、俺は地球ではただの勤労高校生だったから、その可能性も低いだろうな」
前世である『クオンタム』なら少しは有名人だったけどな、と付け足そうとも思ったが、空気を読んで飲み込んだが、ヒューバートは違う場所に食いついたらしい。
「転生しても、貴様はそんな事をしていたのか……」
背後から腹部辺りに回されたヒューバートの腕に力が入り、悲壮感漂う声音がそんな事を力無く囁く。
空気を読んだはずの発言で、そこまで悲壮感を出される理由がわからず、俺はペチペチとヒューバートの腕を叩く。
「どうした? 何か気に障ったのか?」
「……貴様が、自分を安売りするような事をするからだ」
今にも泣き出しそうな濡れたヒューバートの声に、俺はその馬鹿馬鹿しい勘違いを悟って、脱力してしまう。
「あのな、ヒュー。勤労たって、前みたいに体を売ってた訳じゃないぞ。新聞配達したり、コンビニ……飲食店で接客したり……って、あ……」
ふは、と笑いながらヒューバートの腕を軽く抓って説明していた俺は、なかなか今さらながらな重大事実に気付いて固まってしまう。
「あ……? 何かあったのか? やはり体を売っていたのか!?」
「いや、向こうで俺が住んでた国では、それは難しい……じゃなくてさ、あの、引くなよ?」
お湯の中でぐるりと体を回され、向かい合わせになったヒューバートの顔を窺うように見つめる。
「なんだ?」
「逆だよ、逆」
「逆?」
珍しくきょとんとした顔で、不思議そうに俺を見てくるヒューバート。
おかげで一気に羞恥心が込み上げる。
勢いで誤魔化そうと、俺は大きく息を吸い込んだ。
「あの……前世では色々体験済だったけど、生まれ変わってから抱かれたのは、
──ヒューバートが初めてだったんだよ」
一気に言い切ると、お湯のせいか羞恥のせいかはわからないが、体全体が熱くなる。
あと、ヒューバートの反応を見るのが怖いが……。
「ヒュー、バート?」
問題のヒューバートは、俯いてぷるぷるしていて動かない。
ポタポタと水滴が浴槽に落ちる音がし、視線を下へ向けた俺は慌ててタオルを取り出し、俯いているヒューバートの顔面を押さえる。
ちなみにタオルや着替えも魔法で『収納』してあるので、いつ汚れたり破れたりしても大丈夫だ。
「のぼせたのか? 長湯しすぎたか」
お湯に広がっていたのは薄い赤色で、俺は発生源であるヒューバートの鼻をタオルで押さえ、赤みの差した白い頬を空いた左手で撫でる。
「熱いな。悪かった、変なこと言って足止めして」
自分でも女々しいとは思ったが、つい伝えたくなって我慢出来なかったのだ。
まさか、そのせいでヒューバートがのぼせて鼻血を出すとは思わなかった。
「ヒュー、シャワー派だからなぁ」
前世でも、俺と入る時以外はシャワーで済ませていたと聞いた覚えがある。
「ほら立てそうか? 無理なら……って、おい、当たってるんだが?」
肩を貸そうとした相手から、反対に引き寄せられ密着すると、俺はヒューバートのある異変に気付いて、半眼でヒューバートを見やる。
「仕方ないだろう!」
立てるかなんて心配は無用だったようで。突然ヤル気スイッチが入ってしまったヒューバートは、浴槽から俺を軽々抱き上げると、床が濡れるのも構わず素裸のまま寝室へと向かう。
「ディアー、悪いけど濡れたとこ乾かしておいてくれー」
止められないと悟った俺は、ディアベルに濡れた床の掃除を頼んでから、ヒューバートの首へと腕を回す。
「とりあえず、鼻血は止めような?」
聞いてもらえたかは、俺とヒューバートだけの秘密だ。次の日のシーツとタオルの洗濯が大変だったってことで、察して欲しい。
●
「ほら、増血ポーション(改)だ。一応飲んでおけよ?」
そう言って俺は、食卓でトーストをかじっているヒューバートの前にピンク色をした液体の満ちたコップを置く。
「改? とは」
不審物を見る眼差しのヒューバートに、俺はくすくすと笑って置いたコップを持ち上げて一口飲んで見せる。
さらに不思議そうな表情をするヒューバートの顎をクイッと持ち上げた俺は、そのまま唇を重ねて口の中の液体を流し込む。
「……これは、美味しいな」
抵抗無くそれを飲み下したヒューバートは、もっとねだるように顔を寄せてきたので、俺は笑ってコップを渡しておく。
朝じゃなければ、全部口移しで飲ませても構わなかったが、今は出勤前だ。盛られても困る。
「せっかくだし、味を改良してみたんだよ。効果は変わらないし、これなら飲みやすくて、女性の貧血対策にも良いだろ?」
増血ポーションは、名前の通り血液を増やせるポーションだ。もちろん、増やすのはその人の適量なので、飲み過ぎて全身の穴という穴から血液がブシャー……なんて、ホラー展開になる心配はない。
半端に地球の常識が増えたため、頭の隅では『こういうとこファンタジーだよな』と囁く自分もいたりする。
まあそれはどうでもいいので何処かに放り投げといて──改と付いてるからには、俺が作ったのは改良型の増血ポーションだ。
俺が知ってる増血ポーションは、鉄錆びた味というか、ほぼ血液じゃないか? って味と見た目だ。
そんな劇物でも便利は便利なので、前世で仲の良かった娼婦達はあの日な時とか渋面で鼻を摘んで飲んでいた。
ヒューバートのために増血ポーションを作っている時、ふと彼女達の顔を思い出して、つい改良してしまった。
「ああ。……何本か作ってもらえるか」
「気に入ったのか? 材料はまだあるからいいが、あまりがぶ飲みするものじゃないぞ?」
「いや、姉が酷い貧血だが、増血ポーションの味が死ぬほど嫌いなのだ」
たぶんヒューバート自身も増血ポーションの味が嫌いだったのか、真剣な表情で吐き出された、死ぬほど嫌い、という言葉にはやけに重みがある。
「そうなのか。いいぞ、いつまでに作っておけばいい?」
姉思いというヒューバートの微笑ましい新たな一面を知った俺は、ふふ、と笑いながら、壁に貼られたカレンダーを見ながら期日の確認する。
「そうだな。三日後に頼めるか。とりあえず、十本ほど頼みたい」
「ん。じゃあ、用意しておく。ヒューのお姉さんだから、とんでもない美人なんだろうな」
からかうように言うと、ヒューバートは自慢げな顔をして、
「もちろんだ」
と、即答をしてから、何故かハッとした表情をして唐突に俺を抱き締める。
「い、いくら私の姉相手でも浮気は駄目だ!」
「大丈夫だよ。ヒューのお姉さんだから優しくしようとは思うけど、それ以外の感情は湧かないから」
ギューッとしがみついてくるヒューバートの背中をポンポンと叩いていると、その肩越しにふよふよと飛んでいくディアベルが見える。
手には何個か作った試作品の増血ポーション(改)の別バージョンの瓶を持って。
止めるべきか悩んだが、ディアベルだから問題ないかと、俺はヒューバートを宥めて出勤させることへ集中することにした。
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m
二人をラブラブさせることだけ考えて書いてます。