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魔法少女ラブハート  作者: 鈴木まざくら
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第一話A

 惰眠を貪る夕刻。破壊の音と共に異形の怪物が出現。人間の叫び声により起床。十四階建てのマンションの八階にある俺の部屋…正直不安だ。見栄でもなんでも良い、最上階に住んでおけばよかった。まさか本当に起こるとは思わなかったんだ。ネット掲示板発祥の都市伝説だぜ?ふざけんな。そもそも騒がれてもなかった、たまたま覗いただけの掲示板だ。保存もしてない。探しても見つからない。具体的な話もあったはず…確か、なんちゃら研究所。


「違う違う違う…こんなもん書いてどうすんだ。」


 再び男は小汚いメモ帳にペンを走らせる。

 信号機とか看板に手足が生えた化け物は、どうやって生まれたのかわからない。でも、共通して何かしらから手足が生えてるから、必要なものなんだろう。特徴として手が大きい、硬そう、力も強い、人を殺す。人以外に興味はなさそうだ。


「うわっっ!!」


 ヤバい!投げつけてきた!見つかった!


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」


 布団に潜り込む。ここまで登ってこられたら殺される。どうしよう。


「あれ…人間だよな…」


 人間がベランダの柵にぶつかってバラバラになった。胃液が上がってきて吐きそうだ。どうにかして逃げないと殺される。まだ人が下にいたから、ここに来るのは時間がかかると思うが…警察も死んでたし、誰かが倒して…


「怖い…誰か…誰か助けてくれ…」


 十分は経った。未だ動けずにいる。外には化け物がいる。感じるんだ。


「…水……」


 三十分が経過。喉が渇いた。俺は化け物に見つかったはずの部屋から動けない。時間のおかげで冷静になってきた。


「やっぱり…逃げないとまずいよな…」


 それともここにいるか…だって三十分はセーフだったんだ。動いた方が危ないかもしれない。寧ろ、三十分以上もいられた俺スゲー。……スマホがすげー。


「…よし。水飲んだら逃げよう。」


 防災リュックは用意してある。PCを隙間に入れ、モバイルバッテリーを詰めれるだけ…少し重いか。


「開けるぞ…開けるぞ…開けろ!」


 ドアノブに手をかけようと伸ばす。掴めないまま手は空を切った。


「…うひゃぁ……」


 情けない声が出た。これが最後の言葉か。それも仕方ない。目の前に俺の家のドアを持った化け物がいるからさ。残ったデケェ左手が向かってくる。想像よりもゆっくりと近づいてくる。赤信号がチカチカしてる。電気はどこから?この岩っぽい皮膚は?視覚は?…この距離ならわかるかもしれない。しがない嘘っぱちな記事を書くようになった俺に、そんな資格はあるかわからんが…書きてぇ。サイコーだろ?こんなもん。


「幽霊になっても暴いてやるぞクソ野郎…」


 背後でベランダに転がってるバラバラ死体…それが、数秒後の俺。痛みは一瞬、目を瞑るな…最後まで見ろ……いやっ、無理!


「目を開けなさい。地下鉄まで走り、避難に合流するのよ。」


 瞼の隙間から見えたのは、青い女。嫌になるほど強く目を瞑ってしまったことはずっと後悔する。視界がはっきりした時には、頭部が消えた化け物があるだけ。外には知らない風が吹いていた。


「……滝城…だ。」


 生を諦めることはやめた。



 避難所には行かなかった。誘導の列を眺めて歩くと、警察が説得しにきた。任意だと頑固として断ると、知らない爺さんに絡まれる。


「にぃちゃん、さっさと走って行っちまいな。縛るもんもありゃしねぇさ。世界は変わったのさ。」


 どうやら有名な人らしく、嫌な顔をして警察は誘導に戻っていった。


「世界は変わったって、どういうことだ?」


「なんじゃー寝てたんか?黒い巨人が出たんとよ。」


「ああ、そういうことか。信号機とか看板の化け物だろ?」


 爺さんは呆けた顔をして、咳払いの後、話を再開する。


「元は同じじゃ。ワシは見てたわけよ。黒い液体が空から落ちてきて、自販機にくっつくとみるみる大きくなってな、黒い巨人になるんじゃ。」


「はぁ…ん?どういうことだ?」


「にぃちゃんもわからん人やなぁ。いいか?ここだけの話じゃからな?」


 神妙な面持ちだ。


「寄生しとるんじゃ、アレは。宇宙から来た寄生生物なんじゃ。」


「宇宙人ってか!?うははっ、そんな……いや、書いてあった気すんな…」


「まほーしょうじょと宇宙人の戦いが始まったんじゃ。ほれ、情報料。」


「あ?情報料って…んまぁ、いいか。ありがとな爺さん。」


 小型の棒状モバイルバッテリーを渡す。


「なんじゃい、食いもんちゃうんか!」


「避難所にいる若い子に渡せば、どんなもんとも交換してもらえるよ。」


 目的地までは遠い。車は小回りが効かないし、インフラが生きてる場所まではバイクが欲しいところだ。


「魔法少女か…」


 SNSでも話題になってた。政府公認の呼び方らしいが、良いところで新しい兵器か、改造人間なのだろう。きっと、あの青い女のことだ。

 寄生生物のことはネットにも考察があった。一番支持されてんのは、どっかの研究施設から逃げ出した生物兵器…ありきたりだな。



 自転車を拾い、電動自転車に乗り換え、今は原付。わらしべ長者になった気分だった。…盗難クズ野郎だ俺ぇ。

 既に一晩と半日が過ぎている。夜は人が消えたパーガーチェーン店で明かした。民家に押し入ることもできたが、良心が痛むのでやめた。…嘘だ。訴えられそうで怖かった。


「ここは大丈夫だったのか。」


 SNSを通じて知っていたことだが、実際見るのでは違う。襲われていない土地には危機感がない。…いや、これが俺が生きていた世界だ。


「このまま電車で移動するか。」


 駐輪場に原付を止め、駅までは歩いて移動する。反射シールが目立つオレンジ色の非常用リュックは、ここでは人目を引く。避難してきたのだと丸わかりだからだ。

 雑踏をかき分け駅まで辿り着く。そして気づく。


「〜〜〜っ!忘れてた……」


 目的地は災害にあった土地の目と鼻の先。俺からしたら奥にある。つまり、動いていない。電車もバスも向かってはくれない。


「タクシーも無駄だぜ。圧力かかってんだ。そっちには向かえない。」


 話しかける男は大柄で、身長も二メートルに近いように思える。ひょろひょろで、腹だけだらしない俺とは正反対…とびきり輝く青年だ。


「誰だ…?俺を知ってるのか?」


「知らねぇ!!」


 こ、怖ぇ〜…なんなの、ほんと…大人が大きな声だすんじゃねぇよ…。


「だが、俺たちは友になれる。唯一無二の命を預けた友に、だ!!」


「ひゃぁ……」


 やべえ。足震えてきた。


「滝城だろう?」


「っ!お前、そっ、それ、どうして!?」


「カッカッカ。スマホの待ち受けだ!よくわからん汚いメモを待ち受けにしてるな!そこに書いてあったのだ!!」


 なっ、なんちゅー動体視力だ…行き方を調べんのに一瞬開いただけじゃねーか。


「あの掲示板を見ていた一人じゃないか?玄関口に繋がる駅なら同志に出会えると待っていたのだ。」


 大男は肩を鷲掴みにして語りかけ続ける。


「今作られてる魔法少女と化け物の考察スレじゃなく、幾年も前に立てられた荒唐無稽な予言スレを見た同士達に!」


 コイツとなら成し遂げられる。そんな気にさせられる。男には信念を感じた。


「俺は土井屋(どいや) (すすむ)。ライターをしている。共に行こう戦闘係…必ず暴いてやろうじゃないか。」


「俺は科学者だ!戦闘はからっきしだ!!」


 えぇー…


「それと何処に行こうとしてるのだ。」


「原付を取りに行こうと。」


 盗品だけど。


「車に他の仲間が待ってる。一人乗りの脆弱な乗り物は捨て置け!」


「…わかったよ。」


 証拠が残りそうで怖いが、素直に男の後をついていく。

 駅前に聳え立つパチンコ店を通り抜け、反対口から地下へと階段を降りる。左手にあるエレベーターに、騒がしいパチンコ台に目もくれず乗り込む。


「このルートが一番早く屋上に着く。」


 一度も止まらずR階へ。風除室の先、だだっ広い駐車場には一台のワゴンが駐車していた。


「監視カメラはエレベーターまでだ。さらには、屋上に駐車するもんはいない。断言できる!何故なら暑過ぎるからだ!!」


 熱々の鉄板と化した駐車場に止めれば、車内は蒸し焼き状態だ。


「つまり、ここが密会に一番適している…というわけだな。」


「違う!入退場時カメラに映るうえ、一台だけというのも不可解だ!!」


「んじゃ、なんでだよ。」


「空いていて、綺麗なトイレに行き放題だからだ。さぁ、早く乗れ。」


 道中、会話を重ねてわかったこと。この声と図体がデカイ男は、割とお茶目だ。冗談と笑いが好きだと伝わってくる。


「んっ…あ゛〜、涼しいな、おい。」


「この人で最後…?」


「おーん、冴えない顔してんね〜。んまっ、ネット繋がりだもんねー。」


 後部座席には二人の女性。トレンチコートに牛乳とあんぱんを持つ女と、酒瓶を膝の上に乗せている女だ。


「…あんたらも見たんだな。」


 どうもクセが強いヤツらが集まったようだ。


「時間が惜しい。自己紹介は進みながらだ。」


 発進した車の中では静寂が続いている。俺からいくべきか…。


「俺はライターをしている、土井屋 進というものだ。全てを白日の下に晒すまで、よろしく頼む。」


 カチカチと音が鳴っている。酒瓶を爪で叩く音だ。


「おみゃーその顔、都市伝説とか村の風習なんかをネットで書いとるヤツじゃね?」


「ああ、そんなこともしていたが…よく知ってるな。職業柄気をつけているはずなんだが。」


「カカッ、ライターゆっても嘘ばかり書きちょるエセ野郎やろが。何度も名前変えよーてなぁ!ペンネームゆうんけか?」


「口悪!?それになんで知ってんだ!」


「隣町のケイコがゆーてたわ!ははっ!」


「誰だよ隣町のケイコ!怖ぇーな、なんなんだよこの女。」


「この人はアルコール中毒とギャンブル中毒の債務女。私は探偵…野良猫探偵と呼ばれてます。」


「パチンコと焼酎を少々。」


「カスじゃねぇか!…それに、野良猫探偵ってなんだ!?猫探しでも飼い猫探偵だろ!飼い猫探偵ってなんだ!?」


「テンションたけ〜。」


 探偵を名乗る女が差し出してきたスマホには、電子書籍を販売サイトが映し出されている。


「初の野良猫写真集、『探偵と猫』だ。発売中につき、買え。」


「ただの猫好きなおばさんじゃねーか!」


「おばさんじゃない!まだ三十歳だぞ!!」


「うおぉ、急にデカイ声出すじゃねぇか…えっと、ライターとアル中のぱちカス女、猫好きの自称探偵、科学者。ろくでもないな。…科学者ってなんの?」


「科学者は科学者だ!」


 低い声が車内に響く。いつのまにか住宅街を走っている。


「いや、色々あるでしょ。詳しくないけどさ。」


「この人、まだ大学生だから。」


「……は!!??」


 おそらく、俺達だけじゃない。大半の人間が興味を持っていて、少なくない数が行動に移している。ある者は災害地へと戻り、ある者は考察に頭を捻り、ある者は今も尚戦っている。しかし、俺達とは違う。真実への距離が違うのだ。信憑性を問うステージには立てていないが…無関係とはいかないはず…おそらく…。


 土井屋 進 年齢:29 職業:ライター

 目的:全てを白日の下に晒す。魔法少女と化け物の調査。

 備考:記事を書くこと以外に特筆した能力無し。真実に辿り着くためには、嘘を語ることも厭わない。生き抜くことを念頭に行動しろ。


 不忍(しのばず) 夢太郎 年齢:22 職業:学生

 目的:滝城研究所の名簿を見つける。科学の発展を目にする。

 備考:今年大学院に進学。滝城研究所の職員に近づき知りたいことがあるのか?やはり、不忍が話す科学に必要なものなのか。


 貴山(きやま) るる() 年齢:26 職業:(自称)ぱちプロ (自称)情報屋

 目的:友達を探す。楽しく過ごす。

 備考:滝城研究所に友達がいるらしい。こんな事態なので会いたいとのこと。情報屋を名乗っている


 (ととのえ) 山子(やまこ) 年齢:30 職業:ブリーダー(猫) (元)探偵

 目的:猫の大規模失踪事件を追う。

 備考:猫を攫う人間がいるらしい。事件の犯人を探し続けているうちに、失踪ではなく殺されている真実に辿り着いた。もしかしたら、暴れている化け物が関係しているのかもしれない…ほんとか?


 目的地と同県に入った。聳え立つ山が遠くに見える。途中、処理されていない死体が散乱していた。弾んでいた会話も途切れ途切れになっていく。


「うわっ、メモが細かくてキモいキモいキモい。」


 アル中女は死体を見た後もあっけらかんとしている。ふざけているのか、修羅場を潜ってきたのか。運転をしてくれている最年少の夢太郎が一番気にしていた。探偵は車酔いか、一点を見続けている。

 山をクルクルと回る二車線の道。人がいない山道を選ぶにはワケがある。


「キモいは一回までにしろ。…職業病だ、人の手帳は除くな。」


 化け物の出現から、一日半が経過。事態は収束に向かっているらしい。SNSでも化け物を見つけた発言は人口密集地に限る。避難区域にいる人間は安全なようだ。…俺達は自ら危険を冒しにいっている。いつ遭遇するかはわからない。


「おおおおおお!!!」


 視線を後部座席の女に向けていた。車体から伝わる振動。首のみが前方へ向けて動く。エアバッグで覆われていく最中、見える、小さな化け物達。


「ちょっ、ぐっ、げっ、、」


 探偵が泡を吹いている。アル中がドスの効いた嗚咽をしている。ひび割れ飛び散ったバックミラーに映る光景…スローモーションの世界。

 隣に座る科学者の顔が見えない。鬼の形相か、狼狽した顔なのか、俺にはわからない。ただ一つ、強く踏みしめられたアクセルが…止まらない振動と擦り切れる金属音が…覚悟を感じさせる。


「あと…三体…」


 レシートと、スタンプ式のポイントカード、軍手の三体…とても小さい化け物…バレーボールよりも小さい…。


「イケる…イケる!轢き殺せ!!」


「うおおおおおお!!」


 レシートがフロントガラス全面にヒビを作る。頭部が離れた…残り二体。


「負けるな…そのまま!」


 ポイントカードがするりと車体に飲まれていった。座席の下から衝撃が尻に響くが、それっきり。後輪に巻き込まれてバラバラになった。見なくても感覚でわかる。先程から何度も連続で味わっている破壊の感覚だった。


「「ラストぉ!!!」」


 科学者と声が重なった。バラバラだった俺達にも、少しだけ繋がりができた…ように思えた次の瞬間、視界が九十度回転した。重力に逆らう力がシートベルトのみになり、真横に生えた一本木が少しづつ滲んでいく。


 パリン。ぱりん。心が締め付けられる音に起こされる。兄とのキャッチボールで、俺の投げたボールがガラス窓を割ってしまった…幼き記憶が呼び覚まされる。


「っうらぁ!こっりゃあ!」


 シートベルトを外そうと伸ばした指を、ガラス片で切ってしまう。覚悟を持ってもう一度指を伸ばしロックを外す。


「まだかぁ!?まだ欲しいんか!?」


「ひゃぁ…」


 役割を終えた窓から身体を乗り出す。…見えた光景は恐ろしいものだった。

 

「お前が割った酒瓶があまっとーと!最後まで味わえなー!」


 横転した車に挟まり動けない頭が軍手の化け物を、ヒビの入った酒瓶で何度も何度も殴りつけ、割れたら次の酒瓶で殴るアル中女。


「くったばれ!くったばれ!」


 ぶつぶつ言いながら、酒瓶を手渡す科学者。


「人類の…科学の勝利だ。」


 ゲロを吐き続ける探偵。


「おろっ、うっ、まだ出おろろろろろろ…」


 冷静になろうと努力する。手帳に現場を書き連ね、理解に励む。俺にとって、これは立派な現実逃避だった。


失ったもの…移動手段、酒×10以上?

怪我…四人ともに出血。歩けるのは奇跡に近い。


 本日の目的地まで約20km弱。…クソ、考えたくねぇ…。夢太郎の判断が間違っていたとは思えない。寧ろ、大学生が咄嗟の判断で正解を導き出した気がする。覚悟が違う…すげーよ。


「すげー…けど、どうしようもない…!」


 ぐしゃり、と音が鳴る。目を向けると酒瓶が化け物の頭部に突き刺さっていた。車と正面からぶつかれる化け物が、人間の腕力で倒せるとは思えない。つまるところ、ずっと虫の息だったのだろう。

 車から這い上がり、三人の元へ合流。酒瓶の破片が散乱しており危ない。


「これからどうする?」


「そうですね、市街地まで引き返すのが良いと私は思いますが。」


「ええ゛〜……んまぁ、戻らんと治療もできんがー。」


 化け物を殴っている時のような気分の高揚は、だいぶ収まっている。それもそのはず、化け物が塵になって消えていったからだ。理解が及ばないと、テンションを保てない。


「ひとつ、良い案がある。」


 爪先程しか無いとはいえ、ガラスはガラスだ。目に見えて腕や脚に刺さっている。誰も触れないのは、ドーパミンではなく胆力だ。


「化け物の出現を連絡しよう。そうしたら救助隊に市街地まで連れて行ってもらえるだろ?」


 白いボールに見えるロケット?で、魔法少女が移動していると発言してるやつを見つけた。嘘かと思っていたが、確かに方向は当たっていたのだ。勘が当たれば数分で救助が来る。


「俺達の敵は化け物だけじゃない。魔法少女も、また敵なのだ!!」


「……は?」


 科学者は腕を組みながら威圧的な声を出す。


「救急車とは違う。土井屋が言う救助隊とは、化け物の出現が確かな必要がある!魔法少女に位置情報が漏れるであろう!」


「ちょいちょい、魔法少女ってなー人間の味方なんよ?」


「違う!害無き人間の味方なのはわかる。しかしだ、俺達は害ある人間だ。」


「企みがバレると言いたいのね。ヤツらは人の思考まで読めるってこと?」


「そこまではわからん。だが、勘繰られる。魔法少女の中には、速さが特徴的な者がいるそうだ。」


「ひぇ〜、化け物には化け物ってかぁ〜?詰んでる詰んじゃってる!」


「あれが……敵……」


 信じられない。あの青い女が敵になるなど、考えたくも無い。俺なんて瞬きも許されずに殺されるだろう。そして、きっとあの女は躊躇しない。

 状況は悪化していく中、沈黙だけが続いていた。大怪我がなかった…ただ、それだけの幸運を何度も噛み締める。


「…なぁ、あのさぁ、また後日作戦立て」

「しっ!静かに!」


 アル中女の口を手で塞ぎ、探偵が耳を澄ましている。後方から聞こえてくるエンジン音。皆が救助隊かと脳裏に過ったが、そのはずもなく、変哲のない乗用車が近づいてくる。


(なんだと!?この付近じゃ一台ともすれ違わなかったぞ!それが後方から来るなどありえんだろう!)


(マジか…なんだこの強運。)


(こっりゃー、万事解決ってやつやつ〜)


(警戒すべきでしょ。タイミングも良すぎます。)


 示し合わさずにも、皆がアイコンタクトをし始める。意味は違うが、目は口ほどに物を言うとは言ったもので、互いに意思疎通を感じていた。


「うおーぃ、すげー事故じゃねぇか!あんちゃん達大丈夫か?レッカーとか呼ぶか?がははっ、その前に警察だわな…ってこんなとこくるわきゃねーが。」


(横転してる車と血を流す男女だ。良心があれば車を止めることはわかる。…それにしても、ただのジジイすぎるな。)


(残りは三席…)


(運転席のジジイ引っ張りだじゃー全員乗れんな。)


(次を待つのは得策だとは思いませんね。)


「いやいや、そんな見つめなさんな。おいちゃん怪しいもんじゃないよ?ただ畑の様子が気になって気になって、夜しか眠れんくてな!」


((((どうする……っ!?))))


「あー…面白くなかったかな?」


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