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魔法少女ラブハート  作者: 鈴木まざくら
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第四十三話

 炎のボードで空を駆けるパッションの攻撃は、地上の戦闘スタイルと変わり、速さや機動力にこだわる必要がなくなった分、威力が格段に増している。


「炎獣の流星弾!」


 パッションは炎の波に乗り、加速し続ける。赤く輝く流星となり、空に光の跡を残して人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)に衝突する。腹部を消し去り、上半身と下半身が空中で分かれた。

 人魚型の周囲には、極限まで圧縮された艶 針 袁 腕(えんしんえんわん)が浮遊している。突撃するパッションの肉を抉り、燃やされ、生を終わる。人魚型は死を否定するかのように、傷が修復される。別れた胴体は繋がり、元の姿へと戻る。


「スパイラル ファイア エッジ!!」


 '炎獣の流星弾'状態で回転。触れたものを、その周囲すら巻き込み破壊する。再び、人魚型の方向へ切り返されて突撃していく。回転するパッションは、炎の竜巻を引き起こした。

 人魚型は避けない。肉体が竜巻に巻き込まれ、肉片と化す。地上には、沸騰した人魚型の血が降り注いだ。同じく巻き込まれた艶 針 袁 腕(えんしんえんわん)は、人魚の歌声(ティアーズ ドリーム)を使用され、目には見えない振動を繰り返している。振動で衝撃を切り裂き、竜巻の中でも形を長らく保つ。中心にいるパッションに吸い込まれ、自動的に突き刺さっては燃えていく。


「鰐の炎顎…」


 肉片から小さな手が生え、尾ひれが生え、頭部が生まれ、小さな人魚が誕生する。次の瞬間に、鼓動と共に巨大化していき、元の姿へ戻る。寄生されし者(ネオ・パラサイト)の再生ではない。体力を消耗している様子がない。

 炎のボードは真ん中で二つに割れ、パッションの両脚に、それぞれ装着される。人魚型を脚で挟み固定する。腹部にめり込み逃げ出すことはできない。


「旋回する情熱よ!風を纏って開化しろ!」


 巨大な炎の竜巻の先には、脚に挟まれた人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)の姿が確認できる。地上に向かって落ちていく。


「パッション ボルケーノ ハリケーン!!!」


 着弾。最後まで人魚型に抵抗はない。隕石が如き威力をもって、地割れを引き起こし、裂け目から溢れ出た炎が柱を作り出す。


「爆ぜろーーーっっ!!!!!」


 炎結翔(えんけっしょう)は超常的な威力の炎に反応する。人魚型を中心に、一帯を焦土と化す爆発が引き起こされた。


 炭化した肉片は粉々になり空を漂う。元が生物であることは想像し得ないほど、塵になった人魚型。それは、寄生されし者(ネオ・パラサイト)が死亡し、消え去る際の光景に似ている。黒い塵は風に流され、一箇所に集合していく。空に炭を垂らしたように見える集合体は、人魚の形に形成されていき、鼓動を始める。骨が生み出され、肉付けが行われる。人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)は元の姿へ戻る。


「何度やったら飽きる?どこまで肉を削れば死に絶える?」


 炎結翔は分解され、パッションに装着される。しかし、変身時に装着されていた場所ではない。


「貴様は意識すら保てぬ状態だと、人魚の歌声(ティアーズ ドリーム)で判明しておる。」


 抉れ、流血が抑えられなくなった傷口を塞ぐように、装着された。傷口を焼き応急処置を施す方法は使えない。多用した結果、火傷が痛みを感じないほどに重症化していた。次に、自身の身体を焼くことになった場合、血液は正常に流れなくなる。パッションは炎ではなく、自身の血で赤い外見と化していた。


「これで…はぁ、ぐっ…かはっ……」


 大量の吐血。


「…八十四回…か?…テメーを殺したぞ…はっはっは。」


「そこの穢らわしい存在も殺せぬ。勝ち目の無い勝負に挑み続ける。貴様はどこまで無能を露呈すれば満足する?」


 パッションは変身を保つ。倒れない。


「無論、倒すまで…だっ!」


 変身を超えた変身…ゲートオーバーは覚悟の証。


「テメーに私の情熱は消せない!はーっはっはっは!!」


 痛みや不安は笑って吹き飛ばす。燃え盛る大地では、笑い声は響かず、自身の耳にのみしがみつく。


「恐れず朽ちろ、無限の生が足を掴むーー反 生 頼 儡(はんしょうらいらい)


 燃え尽きた魚類寄生されし物(パラサイト)の幾千の残骸が、再び生を与えられる。足りない部位を補い合い、複数の命が一つの命に。一つの命が複数の命へ。生と死を繰り返しながら泳ぐ魚類寄生されし物(パラサイト)が、死を届けにやってくる。


 拳を合わせ全身の炎を集める。円球に形成されていく炎は大きさに変化がない。エネルギーの密度が上がり続けるのみ。

 パッションは両腕を広げる。腰を落とし、炎弾を中心に口を開ける。雄叫びを上げ力を解放する。

 


  これは、獣王たる矜持の咆哮ーーーー



       「獣王 極閃」




 放たれた熱光線が魚類寄生されし物(パラサイト)を焼き切る。塵の一つも残さず消えた。存在もろとも、怒る獣王の前では許されない。生者も死者も(へりくだ)る。パッションの頭には、炎で模された王者の冠がつけられた。


 前方に広がるのは空。地平戦。人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)の姿はない。


「これなら…届く…っ!待ってろ、キュリオ。今行くぞ…。」


 振り返り、黒泥へと向かう。いつのまにか、真っ黒な腕達は姿を消していた。巨大な泥だまりにしか見えないが、肌にひりつく嫌な空気は健在である。


「くそっ、目が霞む…近づけてるのか…ははっ…」


 踏み出す一歩が、進んでいることを証明する。血は流れない。顔は青く、循環する血液が不足している状態である。


「パッション!」


 声が聞こえる。聞きたかった声。


「…奈々子ぉ……」


 黒泥から浮き上がり、こちらに向かい歩く者がいた。


「………誰だ…」


 身体を揺らしながら進む少女は、見知った姿であるものの、邪悪な空気を出していた。


「お前は誰だ!!!」



「私ぃ、キュリオ'クロ'……ひゃははっ。」


 黒い魔法少女はキュリオハートの姿。パッションは目の前の魔法少女を、キュリオでないと断言できない。身体が覚えている。キュリオハートの一つ、キュリオハート'クロ'である。


「嫌だ…嫌だ!……いやだよぉ…奈々子…」


 'クロ'が黒泥から出てきたことは、キュリオの生還を意味するものではない。


「死ぬな…死ぬな…奈々子ぉ……」


 榛名奈々子が完全に飲み込まれた結果だけが、パッションに理解できること。

 涙は溢れ、炎が小さくなっていく。


「死んだか。ならば貴様も死ね。そこの穢らわしい存在の中で巡り会えるやも知れぬ。」


 上空を泳ぐのは人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)。無から生命が生まれ、再び存在を現した。


「ひゃははっ。ひゃははっ。ひゃ×:$%÷igつ<5」




 情熱が薄れていく。




 感情が死んでいく。






 ………






 キュリオ'クロ'の足音が止まった。





「お待たせ。私はここにいるよ、朱。」



 眩い緑色の輝きが、絶望に閉じた瞼を優しく照らす。



「キュリオハート'クロ'だっけ?すごいな…れいなさんはこれを受け入れたのか。」


'クロ'の顔面に指が食い込む。アイアンクローだ。'クロ'が暴れようと、その手は離れず。


「全く…敵わないや。…私は'クロ'を乗り越えて先に進むよ。」


 キュリオハート'クロ'が消滅していく。


「なっ、な゛な゛こぉ〜〜……よがっだぁ…」


 情熱は一人の友達によって、再び燃え盛る。


「なによ、そんなっ、泣かない…グスっ…でよ゛ぉ〜」


 抱き合う少女達。敵前でありながら、互いの生還を感じ合う。不安が涙で滲み、やがて消えた。



 逃亡者を冥界の亡者は許さない。静まりかえっていた冥界の穴から、黒き腕が生者の世界へと伸びる。寄生されし者(ネオ・パラサイト)となった核たる亡者が、中心から顔を出す。浮き上がり、その巨躯が露わになる。上半身だけで、この国のあらゆる建物よりも大きい。人間の形を保っているが、その黒さから細部を認識することはできない。


「ぁあ゛…がぁああ゛あ゛…あ゛…」


 超巨大寄生されし物(パラサイト)のモアイを超えたサイズ感に、現実味が薄れて行く。しかし、激しく動揺していたのは上空を泳ぐ人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)だった。


「あぁ、そこにいてはいけぬ!いけぬのだ!」


 感情的な声は脳にまで響いてくる。


「きっ、きみっ、き、み…え゛ぇぇ」


「ずっと探しておりました…紀美江はここにおります。」


 人魚型は亡者へ向かっていく。両手を広げ、迎えに行くように感じられる。


「あ゛あ゛…きみ゛ぇ゛…」


「すぐに助け致しまする。待っててくだされ…」


 人魚型は亡者の手を取る。何度も取り合った手…自然に、そして、愛を持って体温を伝え合う。


「きみ゛え゛ぇ……」


「い、痛い…うあ゛あ゛ぁ…あ、きひと…さん…」


 身体は崩壊と再生を繰り返す。永遠の生を冥界で否定され、一枚ずつ、亡者が引き剥がしていく。矛盾が発生する空間は、一つの生物となることで無理やりに解決された。



「あぁ…これからは、ずっと一緒におられます…」



 冥界の穴は閉じる。



 空を泳ぐは生と死の共存体。



「キュリオ、私達なら勝てるよな。」


「当たり前でしょ、私達だから勝てるのよ。」



 崩壊と再生を絶え間なく繰り返す。それは新しい寄生されし者(ネオ・パラサイト)、新しい生物。人間であったころの姿はなく、顔面まで醜化け物に変わってしまった。首周りに鳥の羽根らしきものが生え揃い、腕は所々肉と骨が露出している。目から血の涙を流し、尾ひれを囲むように黒い刃が生まれ、身体から生えた亡者の腕が、近くの肉を握り離さない。口は開き、鋭い歯の隙間から長い舌が力なく垂れている。全身を覆う鱗のみが、見るものを感動させるほどに綺麗で幻惑的だった。



パッションハート 大勇モード

キュリオハート 憧憬モード

  vs

冥界人魚型寄生されし者(ネオ・パラサイト)

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