第三十八話
「魔装解放ーーインスタント・ラブ・ボンバー」
インスタント・ラブ・ボンバー。魔装兵器を支給する際に、本人に特徴が無く、要望もなかった土井屋 玄γ隊隊長 兼 総隊長に渡された手榴弾。中身は名の通り、魔法少女ラブハートの技であるラブボンバー。ラブハートが技術班の東北に協力し完成した。誰であろうと、その手榴弾の線を引けば、魔法少女の一撃を繰り出すことができる。非常に取り扱いが危険な魔装兵器であるため、信頼が厚い土井屋に丁度良かった。
インスタント・ラブ・ボンバーを核へ投擲。土井屋は全速力で退避する。その姿を見て、恐山、翔大も退避行動をとる。
爆発。ピンク色の閃光と共に、核を破壊。
「……なんて威力だ。」
茶釜寄生されし物の背後、部屋の半分が、吹き飛んだ。
「ふひーっ、これでおっわり〜。」
核が破壊されれば、その身体を維持することはできない。城型寄生されし物は崩れ消えるはずだった。
「隊長!恐山!まだです!!」
翔大は飛び出した。手には伸縮捕爆槍。茶釜寄生されし物が投擲したクレイジー ブラッド レディを、槍で弾き飛ばそうと振り下ろすも、槍ごと後方に吹きとび、蹴破ったふすまの先、巨大な階段に落下。身体中をぶつけながら、階段を落ちていく。ブラッド レディは、翔大に衝突後、恐山の眼前に突き刺さった。
「どうなってんだ……」
茶釜寄生されし物は、頭部から熱湯を捕縛剤に注ぐ。熱湯で溶けるはずがない捕縛剤を、自身の腕ごと溶かして拘束から解放。即時、腕を再生。その後、捨てた両手に付いていたブラッド レディを投擲したのだ。
チャチャ
茶釜寄生されし物は、帯から新たな鉄扇を出し、両手に装備。
土井屋が目を奪われたのは、茶釜寄生されし物の行動ではなかった。インスタント・ラブ・ボンバーで破壊した部屋が再生、天井が開き、新たな核が設置される光景だった。
「ここで、終わりだって言うのか…」
また、砕け散った核からは、赤い血が噴き出していたことを確認。破壊した核の中に、何が入っていたのかを想像すると吐き気がした。
「ふひっ…ひっ、ひっ、ひっ。……まだやれますよぉ。」
恐山は立ち上がり、ブラッド レディを拾い上げて構えた。
「そうっ、ですよ…はぁ…はぁ…」
翔大は、腹部を抑えて巨大階段を登り、戦地へと帰ってきた。
「お前ら…いつから、そんな根性ついたんだ?」
「隊長が、高級焼肉を腹一杯食べさせてくれるって、言った時からです。」
「そんなこと言ったか?俺。」
「隊長が、生きて帰ったら結婚しようって、プロポーズしてくれた時からで〜す。」
「絶対言ってない…」
……
「「「はっはっはっ!」」」
残り武器。伸縮捕爆槍一本、魔装兵器クレイジー ブラッド レディ、魔装兵器インスタント・ラブ・ボンバーが一つ。
「敵は無傷の茶釜野郎。目標は城の核の破壊だ。インスタント・ラブ・ボンバーは残り一つ。確実に、核を破壊しなくちゃいけない。」
「「了解」」
前衛に恐山。後衛に土井屋、翔大。茶釜寄生されし物に動きはない。核を守っている。
「やべー!!槍が一本しかない!どーしよー!!!」
翔大は部屋中に響かすように叫んだ。
「…イカれちゃったー…」
「お前に言われたらおしまいだな。って違うわ!」
翔大は部屋を見渡す。何も起こらない。
「隊長。武器交換してください。わかった…気がします。」
「わかった。信じるぞ。」
土井屋は槍を、翔大はインスタント・ラブ・ボンバーを握る。
一歩前に出たのは土井屋。恐山と翔大が来るまで、茶釜寄生されし物相手に一人で渡り合ってきた。再び時間を作る。
「こいよ…また遊ぼうぜ…」
土井屋の槍術と茶釜寄生されし物の鉄扇がぶつかり、火花が散る。
土井屋の背後では、恐山がブラッド レディを構えている。動かない。恐山は理解していた。自分の役割とはーー
チャチャ
「テメーで喰らっとけ。」
土井屋に向かって噴射された熱湯を、ブラッド レディの身幅、平な面で防御。茶釜寄生されし物に向けて振り払う。自身の腕を溶かした液体を頭部に弾き返した。
熱湯の粒が茶釜寄生されし物に命中するたび、丸い風穴が空いていく。纏っていた着物は、役割を果たせなくなり、足元にハラリと落ちた。
「隊長、捕縛を!」
「いいんだなっ、託すぞ!」
茶釜寄生されし物は、核を露出している。半分ほどの身体になり、持ち上げようとする腕は既に溶け落ち、膝を着いて残った上半身を伸ばすのみである。
胸部の核に向けて槍を突き刺す。…傷はつけられない。再生を邪魔するように捕爆。捕縛剤が身体に入り込み、床に固定。茶型寄生されし物の無力化に成功した。
「これで終わりだーーっ!!!」
翔大は茶釜寄生されし物に、手のものを投げつける。
「…は?」
城の核を破壊するための切り札を、拘束済みの敵に投げつける翔大を視界にとらえる。恐山は瞬間、呪ってやると心で呟く。
「お前…」
土井屋は、翔大が思い付いた策が、目の前の敵を倒して考える時間を作るものだと理解した。今まで、部下の失態を止められなかったことは、己の責任だと譲らなかった土井屋も、この瞬間だけは、怒りを感じていた。
これでいい。次だ、次の瞬間ーー
パカリッ
来た!!!
床は開く。土井屋、恐山、翔大と、茶釜寄生されし物は落下していく。
ギギギギギギ
落ちた先には高速回転する黒き刃。そして、舞い落ちるモコモコした毛。
疑問に感じていたことがある。床を開き、落とすという技を多発しない理由だ。一度目は、槍を突き刺し落下を防いだ。なら、槍を警戒している?…少し違うと思った。だから検証してやった。持っている槍が一本しかないことを教えてやったのだ。槍一本では復帰は困難。また、三人全員での復帰はありえない。なのに、茶釜寄生されし物が追い詰められている状態でも、床を開かなかった。
「警戒してたのはこれだろ…」
翔大の手にはインスタント・ラブ・ボンバー。茶釜寄生されし物に投げたはずの、残り一発が手の中にはあった。
翔大が投擲したものは、陣 続郎から受け取ったモコモコボールである。羊の群れの手入れをする際に使用するものであった。
インスタント・ラブ・ボンバーを使い果たせば、残りの武器は恐山のクレイジー ブラッド レディのみ。だから床を開いた。何故ならブラッド レディじゃ壊せない場所に核があるから。この瞬間を狙っていた。
「魔装解放!!インスタント・ラブ・ボンバー!!!」
翔大は高速回転する黒き刃に向けて投擲する。刃に守られていたのは…
「「よくやった!!」」
「へへっ…」
インスタント・ラブ・ボンバーは爆発する。黒き刃を破壊した。その先にあるものを巻き込んで。
「んっ……点呼ぉ…」
「翔大います…」
「ハニーはココでぇす…ふひっ…」
三人は畳の部屋に吹き飛ばされていた。床が開いた先の空間を破壊され、どこかの部屋に運良く飛ばされてきた。
「…はぁ…生きて…あぁ?」
土井屋は久しぶりに感じる日の光に目を向ける。そこには、成人男性より遥かに大きい丸い玉。つまりは、城型寄生されし物の核である。畳の部屋は、爆発の影響か、壁に外が見える巨大な穴が空いていて、そこから日の光が差していた。…核は破壊されずに残っていた。
「そうだな…魔法少女の一撃でも容易く壊せないから、頭部を刎ねるわけだもんな…」
土井屋は立ち上がれるも、全身を強打した状態である。
「これをっ、破壊すれば…おわ゛り゛ぃぃい」
恐山はクレイジー ブラッド レディを握るも、腕が上がらない。茶釜寄生されし物の液体が付着し、高温になっていたブラッド レディを持っていたため、重度の火傷を負っていた。
「貸せっ、俺がやってやる!」
翔大は恐山からブラッド レディを受け取るも、持ち上げるだけでふらつき、扱えてるとは言い難い。それも、翔大は爆風を一番近い位置で受けており、先程から呼吸がしにくくなっていた。
「脱出は…無理か。すまない、お前ら。」
城型寄生されし物は、外が見える巨大な穴を修復し始める。穴はみるみると、小さくなっていく。
「謝らないでください…」
死を実感する土井屋と翔大。反して、恐山は笑っていた。
「ふひっ、はーっはっは!」
高さにして、十メートル以上。ビル五階に相当する。三人を照らす、希望の穴には、光が差し続けていた。
「魔法少女って…ふひっ、イカれてるぅ〜!」
「ホワイトフラッシュバーーーーン!!!!!」
細剣は核を一刀両断。次の瞬間、三人は、ホープハートによって地上へと避難されていた。三人が目の前で起こったことを認識したのは、救助された後であった。
「見えたよっ!繋いだ希望の穴がねっ!」
「たっ、助かった…」
「あっ、そうだ、忘れてた。」
ホープハートは、城型寄生されし物に背を向けて決めポーズをした。
合わせるように城型寄生されし物は爆発。
「えっ…?」
「ちょっ、まだ、中に人が!」
「え!?やっば…どーしよー…」
城型寄生されし物は木っ端微塵。少し熱い風が頬に当たる。
「ふひっ、あれあれ。」
恐山が指差した場所は空。パラシュートをつけて、ゆっくりと地上に落下していくγ隊員だった。
ーー背中の部分が開いてパラシュートになるそうです。何処で使う機能なのか疑問でしたが、役に立ちましたね。
「えーっと…東北さん?に、ありがとうって言っといてねっ!」
崩れ消えていく城と、パラシュートで降りてくるγ隊員達。それを見る魔法少女と、γ隊員三名。不思議な光景をもって、γ隊の任務は達成された。
「あ、あれ!陣副隊長じゃないですか?」
「ぷっ、お尻見えちゃってるジャーン!」
「お前らなぁ…ぷぷっ…」
パラシュートの開かれた位置が悪く、陣のズボンがずり下がっていた。意識戻らず、臀部を披露したまま、着地することとなる。
第三回襲撃日魔法少女評価報告書
ホープハート
・任務の完遂
・特殊魔装部隊γ隊のバックアップ
・人間の言葉を用いる寄生されし者の発見
・寄生されし者第三号の討伐
・魔法少女の新たな可能性を見出す
・最高速度の大幅な更新
・ダメージの大幅な回復を確認
・魔法少女の特性の強化を確認
・新形態の確認(発生条件の判明)大幅加点
・個人戦闘能力評価 大幅加点
・連携戦闘能力評価 加点
・同時対応可能敵数 加点
評価 S




