第三十五話
希望で満たされたホープハート…日の光を吸収し、魔法少女として理想的な状態となったホープハート。全力全開で行動し続けることができる。
「このリバティー様の能力は無敵だ…誰も…人間だろうが、魔法少女だろうが…神であっても追いつくことはできない。縛り付けることなどできない!ーー解放、そして空」
さぁ、どーやって、攻略しよっかな…。見えないものは見えない。瞬間移動だからね。でも、今の私は希望で満たされた!止まって待つのは、ここで終わりっ!
「ホープ ベール ふらっシューズ!」
さぁ〜全力全開全速力のふらっシューズ!たとえ、瞬間移動できたって、動体視力が高いわけじゃないのは実証済み。爆発に巻き込まれるわけがないからねっ。つまり…移動を私が確認できないタイプではなく、移動したい場所に、出現するタイプの瞬間移動。速度を活かした攻撃はできない!
「ん〜っ、ずいずいずっころばっし〜ごまみそずいっ」
どこだ…近くにいるはず。速さだけじゃない…全てを包む、この感覚。広げろ…自分だけじゃなくて、周囲も丸ごと包み込むんだ…れいな姉ぇみたいに…できる、私ならできる!包容力ぅぅううう?
ホープハートは衣を広げ続ける。闇雲に走っていた訳ではない。たとえ地図を見たとしても、初めての土地は初めての土地である。そんな場所で探し物など、いくら走ろうが見つからない。ならば!土地勘マックスの地元へと変えてしまおう。衣とふらっシューズによる、即席マッピングである。これより、この地はホープハートの掌の上ーー
「この一帯は私が支配した…ってね!」
太陽光による反射よりも早く気づいていた。
「見えてるよ…」
街中に張られた糸。人間が触れれば、悪くて転ぶくらいであろう。しかし、ホープハートは最速の魔法少女。触れれば、触れた場所が宙を舞う。全身で突っ込めば、バラバラ死体である。
「クソが!何故死なねぇ…」
衣で感知、曲がることを克服したふらっシューズには、当たらない、全て見えている。思い描いた動きができる。
「そこ…!ーーホワイトフラッシュバーーーン!」
距離にして三百メートル。閃光がリバティーへ走る。リバティーが気づき、能力を行使できるようになるまでに、ホープとの距離は二十メートルまで迫っていた。一秒にも満たない時間であったが、能力を行使できる時間はあったが、動かない。リバティーはビルの屋上の中央で、腰を落として構えていた。
「爆ぜろぉおお!!」
リバティーとホープの間に積まれ、埋められていたのは、大量の爆薬であった。ホープの必殺技により、スイッチなど用いなくても引火、爆発。周囲のビルを巻きこみ、瓦礫の山が築かれた。
「死んだ…完全に殺したぞぉ…」
ホープを逃がさないために、爆発を確認してからの瞬間移動。リバティーは、ホープではなく、爆発するタイミングを見ていた。そのため、逃げられた。
「はは…イキがりやがって。結局、テメェみてーのは死ぬんだよボケガァアア!」
リバティーは、ホープが埋まっているであろう瓦礫の山を踏みつける。何度も何度も踏みつける。
「ボケがぁ…なんで、なんで、」
希望を自ら殺した事実を、体に染み付けるように、瓦礫を…踏みつける…
「なんで生きてる゛ん゛だ、テメェはよお゛お゛!」
背後に現れたのは、ホープハート。埋まっていなければならない、ホープハートである。
「爆風よりも…速く…速く走った…」
ホープハートは無傷で、リバティーの前に立ち塞がる。
「来るな…来るんじゃねぇぇええええ!!」
リバティーは消える。瞬間、ホープに夜がやってくる。正体は、空を覆う瓦礫の山。爆発によって崩れたビル群である。
「話してよ…いったい何があったの?寄生されし物ってなんなの?」
瓦礫を踏み場に、空を駆ける。リバティーの元へ辿り着く。ホープソードは、鞘に収まっている。
「うるせぇえええ!」
瓦礫の隙間に爆薬、そして、幾億の針である。リバティーの合図と共に爆発、全方位、逃げ場無しの、己さえも巻き込む自爆攻撃である。
リバティーは気づいていた。たとえ、瞬間移動であっても、今のホープは見てから動ける。リバティーが瞬間移動してからの移動で、避けられるのである。最強最速の後出し…なら、じゃんけんは出さない。寄生されし者の硬さを信じた自爆で、ホープを仕留めにかかる。
炸裂。爆風により針は発射され、肌に突き刺さり、身体の自由を奪われる。見えている攻撃に対し、動かず、身体を差し出すことなど、常人にできるはずがない。これは覚悟…リバティーの覚悟である。
………
なんだ暗いぞ…攻撃は当たったのか?
痛くねぇ…
それどころか
心地よい?
誰かに抱きしめられた時みたいな
満たされる……心地……
そんなこと…
そんなこと…
「…………なんでだよ…なんで、そんなことができる!!??」
「わた…しは…魔法…少女、ホープハート…皆んなの希望に…なるの…」
「ふざけるな…ふざけるなぁ!」
「ねぇ…話してよ…何があったの?…何が…貴方を追い込んでいるの?」
ホープの背中には無数の針が突き刺さり、血が流れていた。ふらっシューズは解け、希望で満たされたは維持できない。
「私に…何ができる?」
「ふざけ…るな…お前ら聞いてやる側は、いつだってそうだ!相談に乗ってやる。話を聞いてやるって、話さない方に問題があるかのように責め立てる!!」
リバティーに今までの覇気は無い。
「違うだろ!話す側なんだ…選ぶのは話す側なんだ!そうだろ?話す方は自分の弱みをさらけ出すんだぞ!リスクがあるのは、いつだって話す側なんだ!お前らは、弱みを握れて、優越感に浸り、自分にとって面白い解決策を提示し、強制する…それが、お前らだ!弱者をいたぶるのは楽しいか!そんなに…良いことなのか…?」
リバティーに、ホープのあたたかな血が落ちる。
「リバティー…私に…何か…できること…ない?」
……
「何も言わなくたっていい……ただ、私に、できることが…ある…なら、したいの…」
…
「…リバティー…私…がんばるよ……あきらめないんだから………」
ホープの意識は途切れる。ホープハートは星崎花子へ戻る。
「……何も…なにもねぇよ…なにも残ってない…」
リバティーは瓦礫の山から抜け出し、歩き始める。既に能力を発動させる力も残っていない。
行き先はとうに無い、寄生されし者として、破壊を繰り返す必要がある…も、リバティーに気力が残っていない。人間であった頃の意思…記憶が、破壊を否定する。
「なりたくねぇ…私は、私みたいなのを傷つけるヤツらにはなりたくねぇ…」
修復した身体の繋ぎ目が、崩壊し始める。寄生されし者としての役目がある。寄生生物が、身体に信号を送り続けている。リバティーの身体を完全に操るため、寄生の手を伸ばすも、掴めない…
「もう、誰も許してはくれない…けどよ、後少しだけでいい……誰にも縛られずに…」
激しい戦闘と爆発により、地面に巨大な亀裂が引き起こされた。地割れである。
あっ……解放、そして空……無理かぁ…身体に力が入らない…命令に従わない身体なんて、いらないんだろうなぁ…クソ寄生野郎が…
飲み込まれる。再び、光も差さない…密室。
「…私は…自由になれないのかなぁ…」
光は差すーーー
ーキボウ ノ ヒカリ
「光り…輝く…希望を皆んなに、プレゼント…魔法少女、ホープ…ハート」
希望は心にあった。日の光だけじゃない。頑張れる理由は、ホープハートを包み込む。
「……お前…気を…」
リバティーを抱きかかえ、救い出す。瓦礫の山に立つホープハートに、意識はない。
「……ありがとう……さようなら…私の希望…」
寄生されし者第三号リバティーは、崩れ、消える。なにも残らない。
希望だけをホープに託してーー消える。
ーーホープハート!!聞こえるか!ホープハート!
……前野…ちゃん?
ーー死ぬな!ホープ!…星崎花子!!
そうだ…まだ終わってっ
「…ごほっ…けはっ…はぁー…はぁ」
ーーっ!!生きてるな!わかるか!?
「前野ちゃん…リバティー…は、…あぁ…」
星崎花子の足元には、リバティーの崩れ去った姿が。星崎花子の心には、リバティーに託された希望がーー
「あーあ…弱いな…ひっく、うぅ…うぅ〜」
涙はホープの影に隠れ、光り輝くことはない。希望の光を反射してしまう涙はーー
ホープハートにとって必要の無いものだった。
頬を伝う冷たさを一身に受け止め、新たな希望になるため歩き続ける。
ーー……お疲れ様でした。
「ばっか…黙って見てなさいよ……ばか…」
星崎花子の身体は、気絶していた間に当たり続けた日の光で回復していた。しかし、日の光だけでは、証明できないほどに、身体は元気を取り戻していた。
向かう先はわかっていた。
「まだ、私にできることが残っているようねっ!」
・解放、そして空
リバティーによる瞬間移動能力。閉じ込められた密室から、逃げ出したい想いから発現。能力は、自身がいる場所から、逃げ出すこと。連続で使用することは、逃げれていないことを暗示し、体力を大幅に削る。知らない場所や、見えていない場所にも移動することができる。どれほどの距離を移動しても、不安がつきまとう。




