第三十三話
「森羅万象を包み込め!私達の冷静な愛!!
魔法少女ラブクール…クールタイムはここで終わりよ!」
クールと繋がったラブハート。香無静香のいない、一人でのラブクールは、本来の力を全て発揮することはできない。しかし、猫爆弾が爆発した瞬間、ラブビームで自身を覆い防御できるほどに、コントロール力が大幅に向上している。
冷静という感情を受け入れ、伝説の魔法少女は再誕した。
「なんだヨ…嫌になるネ。負けそうになったらパワーアップかイ?悪いけどサー、俺っちは全力の十分の一も出してないんだヨ。」
猫爆弾を被曝した箇所は修復が始まっている。寄生されし者の再生力は健在である。
「新しい技を出す度二、パワーアップしてくれるのかナ?」
手首を鳴らす猫型は、ラブのステッキから目を離さない。
「何度だって…限界を超えてみせる!」
「ハァ…そんなもんは元より限界じゃないんだヨ。……ところデ、君は野良猫がこの地域デ、何匹生活していると思ウ?」
四方から無数の目線を感じる。愛くるしい鳴き声が、一つ一つ、全て殺意。
「猫絨毯爆撃」
波のように押し寄せる猫の大群。一定の距離で飛び上がり、落下。地面に衝突して爆発する。出来上がった地の海に、別の猫が飛び込み、爆発。ラブハートを、血の噴水が囲んでいる。
ニャー
「ふフッ…今頃防ぐのに必死でしょうガ、ダメージは微々たるものでしょウ。本命ハ…」
右手に持った猫を振りかぶる。
「この猫を投球しテ…完成するのデフゥッッ!!」
地中から湧き出るビーム。猫型の持つ猫は爆発し、覆い被さる。周囲の爆発音で、近づいてきていたビームに気づかなかった。
「ぐぅア゛ア゛!…フッ、ハッ…ダーーー!!」
纏わりつく燃えるような血液と、肉に沈む骨の散弾。首を軸に全身を震わせて、体から引き離す。その姿は、水に濡れた後の猫と酷似している。
「ハァ…ハァ…あまリ、計算高いタイプには見えなかったっガッ…ハァ…やるじゃないカ…」
「よ、よよ、予測通りよ。」
地面から脱出しようとしたビームなのに…運も味方している!…それに、わかったことがある。同じ寄生されし者でも、第一号と比べると、かなり脆い。ダメージが通ってる!
猫型は身体をペロペロ舐める。治りが早いようにも見えるが、さほど変わらない。
「今の君にハ、こっちの方が良さそうダ。」
猫型は真っ直ぐラブハートへ走る。
「ラブビーム!」
走る速度を落とさずに、ビームを避けきる。ラブは、即座にステッキを左足首に装着。拳を握り、左脚で強く踏み込み、地面を割る。割った隙間に、ラブビーム。
爆発する足場に臆する事なく、迷わず直線で走り切った。右の拳をラブの顔面に叩き込む。
拳をヘッドバッドで相殺。怯まない。左の拳で腹部を狙う。
腹部を歪ませるように避ける。空を切る拳を左手で掴む。ラブに体重を乗せ、飛び上がり、左脚で顔面を横から蹴り飛ばす。
左脚が当たると同時に、左足首のステッキからビームを放出する。自ら攻撃方向へ飛ぶことで、威力を軽減。左手を掴む猫型ごと回転。地面に叩きつける。
「…っ!ちょっ、え!?」
猫型は、ビームで粉砕した地面の穴に吸い込まれていった。
右足首を掴まれる。地面から生えた手は猫型のもので間違いない。そのまま地面に引き摺り込まれる。咄嗟に左足首に装着したステッキで、ビームを出そうとした瞬間、猫がステッキに突進。爆発をもって、ステッキを弾き飛ばした。ラブは地上に頭部を残し、地面に埋まった。
「猫ハ、頭さえ通れバ、どんな隙間でも入ってしまウ。これぐらい難なく入っちゃうサ。」
猫型は地面から、するりと飛び出し、ラブの前でしゃがんだ。
両手の甲からは、鋭利な爪が三本ずつ生えていた。寄生されし者が使用する刃には、第一号の面影がチラつく。切れ味は試さなくても問題ないだろう。
「本当は使いたくなかったんダ。危ないからネ。ラブさんには生きていてもらえないト、語ったことが達成できないだロ?」
手首を回しながら、黒い爪に反射した光を、私の顔に当ててくる。手で隠せない状態なので、眩しくてしょうがない。目つきは悪くなってないだろうか。
「……んン?あまり動揺してないネ。けっこう間抜けな姿になってるんだけド?」
「5…4…」
ステッキが手元から飛んでいったことは、初めてじゃない。
「まだ何か隠しているのカ?自爆でもしてみるかイ?」
もう、体感でわかる。
「3…2…」
「………何か来ル…!」
相棒が飛んでくる時間。
「…1…へろ!」
飛んできたステッキを口でキャッチ。ゼロが上手く言えなかった。
「…クッ!」
猫型は後方に飛び跳ねる。
ーワタシ ノ ヤルキパラメーター テイカチュウ
「らふひーむ!」
ビームで地面を破壊する。コンクリートの破片と、跳ね返ったビームが猫型を襲う。全て避けきるが、ラブハートもまた、生首状態から生還する。
ーーラブハート!!
ーーうぇっ!?い、いっぶー!?
ーー…まだ、余裕があるみたいでよかったです。
「チッ…」
猫型は人差し指をラブへ向ける。
ーーラブクールモードですね!限界まで飛んでください!早く!
「ラブビーム スマッシュ」
左足首にステッキを装着、ビームを放出し、空高く飛び上がる。
「クール チャージボム!」
放出したビームを一部、身体へと引き寄せ速度へ変える。留めることができず、翼を形成することができない。ラブはごり押しで解決する。ビームを引き寄せ、一気に放出。再びビームを一部引き寄せ、一気に放出。繰り返す。急な速度変化を繰り返すため、身体への負担は大きい。しかし、ラブビーム スマッシュの燃費を抑え、速度を大幅に上げた。
地上の猫型は豆粒ほどの大きさになった。ビームの威力を調整し滞空する。
ーー原因は?
ーー毛です。
ーー毛?
ーー猫の毛が通信機に詰まっていたんです。ビームで焼け切れ、聞こえるようになったようです。
ーー…猫の毛を操っているってこと?
ーーはい。途切れる瞬間の音声を解析したところ、何か細いものが詰まっていったと判断しました。おそらく、猫の毛を使っているのではないかと。
ーー猫を爆弾に変えた。
ーーはい。見えてました。
ーーその時に、必ず腹部から裂けて爆発してたんだ。猫はお腹の方が毛の密度が高い。だから、たぶん合ってる。
ーー…なるほど、流石です。対策としては、上空に逃げる。毛を焼き切る。この二つになるかと。
ーーうん、そうだね。今思えば、猫を爆発し続けてたのも、漂う毛を一定に保つためだったのかな。
ーーどうしますか?
ーー大丈夫。一発重いのが入ったら勝てる。当てられるかわからないけど、絶対勝つよ。…アレは私が倒す。冷静でいられるうちにね。
ーー信じています。
(…ホープの戦っている相手のことは話すべきじゃないな。ラブが行って警戒されたら、勝ち目がゼロ…いや、魔法少女全滅もありうる…。)
ーーあ!それと、心の声を読むみたいなんだけど、どうすれば……
ーー心の声?…嘘ですね。
ーー嘘じゃないよ!私が足場を壊そうと思ったら、それを読まれたんだ。
ーーたぶん、見てたんだと思いますよ。貴方が地面を。
ーーうっそー…
ーー…ただ、あれだけの超聴力です。心臓の音とかを聴き取り、嘘か否かくらいはわかるかもしれません。
ーーそれはどうすれば?
ーーそれは、
「あっ、ぐっ…うっうーー…」
ラブは自身の首に手を当てる。動揺し、ビームは不安定に、ついには落下してしまう。
ーーラブハート!ビームです、自身にビームを!
「あ゛あ゛、ぐぅ、らあ゛!」
ビームを自身に放出、ダメージを負う。
「かはっ…はぁ…はぁー、はぁーー」
口から焼き焦げた猫の毛がパラパラと落ちる。
「はぁ…毛で窒息…はぁ…よく、…あ゛ー、考える…」
ーー大丈夫ですか?
ラブは今も落下中である。
ーー大丈夫…。このまま落下して不意打ちしようと思う。それで、何言おうとしたの?
ーーそれは…問題ないってことです。ラブハートの技は、パワーに比重が置かれているので、バレたとしても、対策は避けることしかありません。なので…自信を持ってください。それで、貴方なら勝てます。
ーーありがとう。早く倒して、ホープの所に行くから!
(あ゛あー……狙撃してもらう?いや、飛び道具を脳裏によぎらせるのはまずい。それに、当てられると思えない。背中合わせで戦うのがベストだと思うけど…ホープとラブじゃ相性がわるい…。できるならパッションとラブで攻めたい。……そのパッションは通信不可。キュリオももちろん通信不可。……映像もノーシグナル。最後に映った影はなんなんだ…人間の腕っぽいけど…くそっ、わからないことばかりだ。)
「伊渕。ドローン全滅だ。通信不可とか生優しいもんじゃない。向かわせたものから、物理的に破壊されている。」
「…前野さん。いったい何が起きてるんですか?」
「知るか!人間でも寄生されし物でも無い、そんな何かだろ。」
「そんなもの…どうやって」
「すみません!」
扉を派手な音を立てながら開けた男の研究員は、慌てた様子で話し出す。
「所長が向かってきてます!伝言も預かりました!」
「早く話せ!」
「は、はい!「予測六番」だそうです!「予測六番」です!」
それは…現状は何も変わらない。ただ、我々を絶望させるだけの伝言である。
前野は揚げ物の油が飛び散った資料をめくる。
受ける風で背中が冷たくなっていく。耳も少し痛い。地上が近くなろうと、目線は遠い空から離せなかった。私達の争いに興味も無い、あの雲の上まで飛んでいければ、過去はついてこれないのかな。……雲に引っ掛かった過去が、未来の人に降り注ぐ。きっと、私は過去を恨むことができない。気持ちがわかると…人間は弱くなる。
「このまま死んでくれるかイ?」
猫型の爪は、ラブを包み込むほどに巨大化していた。狸寝入りをしながら落下するラブに、黒き爪が振りかざされる。
ラブはステッキからビームを放出。爪を避け、地上に急接近する。身体を捻り、左脚を地上に向けて推進力を抑える。ぶつかる寸前で、勢いが止まる。そのまま、ビームを再度放ち、落下する猫型に近づく。
「ラブキーック!」
左脚のステッキの角度を変え、空中で回し蹴り。猫型は背後に引っ張られ回避。着地する。
「…空中で回避…」
「もう知ってるだロ?毛だヨ。滞空なんてものはできないガ、軽く押したリ、引っ張ったりくらいはできるのサ。」
地上には猫の毛が漂っている。空中にいる時に、準備が進められていた。
「全てバレてしまっタ…ラブハート、君は俺が思った以上に強かっタ。誤算ダ。今の俺にハ、無力化できるほどの力がないらしイ。もったいないけド、殺すしかなイ。」
両手の爪は、膝の位置に届くほどの長さに変化。
左足首から、ステッキを外し手に握る。間合いは瞬き一つで詰められた。
「ガア゛!」
爪は腹部を狙う。力任せにステッキで弾き、右の前蹴り。
「猫大移動」
軸なった左脚を、大量の猫の毛が掬い取る。後方に転び、無防備な状態で爪が襲いかかる。ラブは、体勢を整えるためビームを放出する。しかし、ビームは空に向かった。
「まずっ、い゛!!」
ステッキには猫の毛がまとわりついていた。ビームの角度を変えられた。咄嗟にステッキを両持ちに切り替え、襲う爪と身体の間に滑り込ます。
「な゛んの素材デ、できてるんダ!その棒はヨ!!」
右手の爪を押し込みつつ、左手の爪で頭部を狙う。
ブルッウウウウウン‼︎
ガード不可の爪を止めたのは、一台のバイクであった。突如、地面の一部が開き、中から飛び出たバイクに猫型は轢かれる形となった。
ーー使ってください。
「これは…カワ◯キのバル◯ン!!」
ピンク色に塗られたバイクは、'MMM-試作号'と雑にマジックで書いてある。後部に特徴的な穴が空いている。
ーーお詳しいようですが、改造元は言わないでください。
ラブは有無も言わさず、バイクにまたがる。
ーー速さを追求するならハヤ◯サとかじゃない?
ーー試作機なんです!どうでもいいでしょ!職員のお下がりなんです!
ブルッウウウウウン‼︎
手慣れた動きでエンジンをかけて走り出す。ひび割れた地面でも、問題無く走り抜けるのは、改造の成果とラブのテクニックである。
ーーバイクにステッキ用の穴があります。ハンドルに力流せば、ビームで走れるはずです。
ーーわかった。やってみるよ。
ステッキはカチッという軽快な音と共に固定された。これで、猫の毛により、ビームの方向を逸らされることはなくなる。
バイクはビームのパワーで加速し続ける。地上を走るバイクで、ラブビーム スマッシュと同等の速さに到達する。
ーーこれ…終わったらもらっていい?
ーー返してください。…機動力で圧倒しましょう。
ーーよし…飛ばすよ…!
バイクは速度を上げながら猫型に向かっていく。魔法少女でなければ、凍えてしまう速度である。
「ラブモーター…」
「道路で轢かれた猫になった気分だヨ。……殺してやル。」
猫型の顔面がひび割れ、キザついた歯が露出する。口腔は黒の一色にも関わらず、光が反射しないので、飲み込まれそうな錯覚をする。
「ガガァアア゛ア゛ア゛!」
口腔に猫の毛が集中し圧縮される。巨大な突起が形成されていく。
「ジェットインパクト!」
「猫槍」
MMM-試作号の薄ピンクのフロントガラスに、猫槍が突き刺さる。衝撃はラブにのみ伝わった。ラブを中心に、土煙がV字に立ち込む。猫型の口から放たれたランスは、眉間の直前で停止した。ラブモーター ジェットインパクトの勢いは完全に削がれ、不発に終わった。
猫槍は猫の毛に戻る。バラバラに解け、ラブの視覚は毛の竜巻に遮られた。
「俺ハ、与える側の人間なんダ……羨望シ、求メ、愛シ、愛されロオオ゛オ゛!!!」
ーー防御!!
毛の竜巻の隙間に見えたのは、大口を開ける猫型。停止したバイクの目の前には、猫槍が形成されていた。
ラブは車体を持ち上げた。防御するには心許ないが、ステッキがバイクに装着済みであり、前進しかできない。
猫槍は車体に突き刺さる。バイクごと後方へ吹き飛ぶ。ミシミシという音と共に、ランスが奥へ、奥へと、入り込んでくる。
ーーそれ以上は爆発します!
爆発!?こんなまたがってるもの爆発したら、縦に半分になるんじゃない?その前に、このまま進んできたら、お腹に穴開くって!流石に死ぬって!!
「あ゛あ゛ー!もうっ!!」
ラブクール状態を解く。ラブハート 自愛モード。前輪が上がったまま、ステッキからラブビームを全力で放出する。コントロールなど気にもせず、全身全霊で力を放出し続ける。自転車…ではないが、バイクが太陽をバックに宙を舞う。バイクは高層ビルの屋上へ着地する。ランスは猫の毛へと戻る。
「…はぁ。バイク終わった……戦況は?」
ーーランスが毛で作られていることから、弾切れは期待できません。長引けば長引くほど、こちらの不利です。
「だろうね……ふんっ!」
ステッキの先端を、バイクの前方から埋まるまで突き刺す。
「これって、中にさえ入ってれば問題ないよね。」
ーー聞いてからやってください。問題ありませんが、バイクは走れる状態じゃありませんよ。
「見たらわかるよ。もう。……大丈夫。特訓の成果を見せてやる…っ!」
ハンドルを握り力を流す。放出されたビームで、ラブとバイクは完全に覆われた。
「すーっ…はぁー…」
ビームの中で深呼吸。ダメージは負い続けている。全力でないにしろ、身が焦げるような痛みが染み込んでくる。
ラブハートは特訓を経て知った。'ラブ'の名を冠する魔法少女が意味するもの…その特性。新たな能力を発揮する条件を、愛衣れいなは既に満たしていた。'慈愛モード'から'自愛モード'へ。自己犠牲の果てに手に入れた愛では'クロ'に染まるだけ…誰にも気付かれず、思いのまま動く真っ黒な影には至れない場所。愛(衣)ある場所には、自分が必要だった。
自身さえも受け入れる……私一人だけじゃ出来なかった。海子さん…静香…ありがとう…私は、愛は、真化する。
ーカクセイ セヨ
「これがラブハートの限界。今の私に許された…十秒間の覚醒だ!!」
ートゥルー ラブ モード
「魔法少女ラブハート 真実の愛モード……真実は心にあった!」
覚醒ラブハートはピンク色の輝きを放っている。ラブビームによるダメージは無い。全てを纏い、バイクと共に一つの輝きとなる。
「シューティングスター…」
ラブビームの出力を全開。猫型に向かって射出される。
「ビックラブ インパクト!!」
ラブハートは愛を孕んだ流星弾へ。
地上で待ち構えるは、五つの猫槍。
「ギエ゛ロ゛オ゛オ゛ォ゛ーー!!」
ランスは衝突する。
ぐしゃり
元に戻る。圧縮された猫の毛は、解け、風に乗って空へ舞う。
地面に衝突したシューティングスター ビックラブ インパクトは、大きなクレーターを残して止まった。
粉々になったMMM-試作号を、服からぽろぽろと落としながら、ステッキを握るラブハートは立ち上がった。周囲を見渡しても誰もいない……
「ア゛ア゛ア゛…そろそろ゛退場してくレェ゛!正義の味方様ヨォオオ!」
頭部と腹部が半分消し飛んだ猫型が、クレーターの隙間から姿を現した。歩くことも困難な状態から、力の入っていない爪をラブへと向ける。
「私達は正義なんかじゃない!大切なものを守りたいから争っているんだ!」
猫型の背後へ回り、愛衣の鉄拳を向けた。
「皆んな…そうでしょ…?」
ラブハートは腹部から血を流した。猫型の隠し持った尾が、貫通していた。…拳は届かない。
「覚悟の無い甘ちゃんガ!……理解できない強さってのハ、恐れられル。皆んなが欲しいのハ、偉大な結果じゃなくテ、偉大な動機と共感する記録なんダ。救った誰かハ、ラブ…あんたを肯定しなイ。」
猫型の背中に、ラブハートは寄りかかった。口から熱い血が流れる。左目からは冷たい涙が流れ落ちる。
「…私は…それでも…守りたいものがあるの…」
ラブの握るステッキが力を帯びる。猫型は逃げられない。貫いた尾が抜けない…。
「俺は死にたくなイ…」
「ラブ…ビーム…」
ビームは猫型の頭部を撃ち抜いた。
走る
走る
逃げなくちゃ
死にたくないんだ
尾を引きちぎる 全てを捨てて逃げる
こんな俺でも
受け入れてくれよ…
あっ
ボールだ!
おっきな 真っ白な ボール!
追いかけなくちゃ
持っていけば受け取ってくれる
誰が?
どかんっ
「ビックラブ……ボンバー………」
ラブハートは乗ってきた白いポットを蹴り飛ばした。全ての力を込めて……蹴り飛ばした。
「この足音ハ…ラブさんですネ。」
「うん。そうだよ。」
「同情はしなくていいですヨ。ほとんどの人ハ、俺が死ぬことを喜ぶでしょウ。」
「…そうかもね。」
「ラブさんと会えてよかったでス。貴方の心ハ…愛で溢れていましタ。」
「貴方、本当に心を…」
「ラブハート。貴方は運命さえ変えてみせるでしょウ。」
「ありがとう。頑張るよ。」
「ハハッ………パラサイトの目的ハ、魔法少女を殺すことじゃなイ。」
「…え?ど、どういう」
「ラブハートッ、グフッ…ガハァ、あ゛ア゛…俺の名前ェ…最後まで思い出せなかった……」
「…おやすみ。」
何も残らない。全てが消える。バラバラになっていく猫型の中で、ラブハートは愛衣れいなへと戻る。
薄れゆく意識の中で、助けを求める声が聞こえた。遠くの遠くまで……誰かが聴いていた声。
・猫爆弾
猫の毛を超高速で擦り合わせ、摩擦熱により爆弾へと変える。毛の密度の関係上、腹部から爆発する。毛の色素を抜いて保護色に変化させたり、毛を操り、猫を引っ張り上げることで、猫自身の重さを一時的に無くすことができる。
・猫絨毯爆撃
猫の爆弾による範囲攻撃。猫の毛を周囲に漂わせられるメリットが大きく、次の起点作りに重宝する。
・猫大移動
猫の毛を集合させ、より重いものを動かせるようになる技。目に見えてしまうデメリットから、不意打ちでの活用が主となる。
・猫槍
口から放たれるランス。その正体は猫の毛が圧縮されたものである。猫の毛がある限り、弾数無限の必殺技。
・猫不安心
猫耳をもって、聴力を大幅に向上させる。また、相手の心の声が聞こえる。騒音の中では使用できない。心を読むためには、物音一つ無い空間でなくてはならない。猫が主人を心配する心。




