表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ラブハート  作者: 鈴木まざくら
34/71

第二十九話

 商店街は八百屋や魚屋、肉屋といったものは見かけられない。携帯ショップや駐輪場、カフェ、コンビニ、ファーストフード店が立ち並ぶ。無風の中、ドミノ倒しになっている自転車は珍しい。そういえば、群馬のからっ風の中では、漕いでいる自転車より徒歩の人間の方が早いらしい。


「おい、いくらαの隊長と同じチームだからって油断しすぎだろ。」


 初めて見る地方銀行のATMがある。半分が曇りガラスになっている扉は綺麗に磨かれている。こいつは俺の知らないところで誰かを助け、その見返りを受けているわけだ。お役御免になりたくないなら、寄生だけはされるなよ。


「俺じゃなくてコレに言ってくれないか。さっきから惚けた顔のおチビにさ。」


 商店街でキョロキョロと、ウィンドウショッピングか、迷子か。ソワソワとワクワクが混じった表情で、楽しそうではある。親御に連れられて買い物に来た子供図鑑があるなら表紙を飾らせてやってもいい。


「なっ、お前らー、入ったことあるかぁ?」


 恐山が指を差したのは、どこにでもある有名ハンバーガーチェーン店であった。


「は?…そりゃ、あるだろ。」


「ガキの頃に行ったきりだ。」


 へぇー。と、から返事の恐山。あれだけ急かした人間の足取りが重い。


「まさか、行ったことないのか?」


「子供の頃はお母さんが体に悪いって、買ってくれなかったんだぁ。」


「え?」「は?」


「ふひっ、急ぐぞ!おめぇ〜らー!」


 誤魔化しているのか、小走りで戦地へと向かう。衝撃の音が間違いなく近づいている。銃声、打ち合いの音、潰れ、何かが爆発した音。焦げ臭い匂いは、破壊の証拠だ。


「あれも人の子だったのか…」


 商店街を抜けると、出発点と十字路で繋がっている大通りに出た。

 正面には二体の武器持ち寄生されし物(パラサイト)。五体の通常寄生されし物(パラサイト)は既に倒された。そして…七人の隊員が死亡した形跡がある。


「やっべー…」


「ふひっひっひ、やっばー」


「ふざっけんな!」


 武器持ち寄生されし物(パラサイト)の背後には、巨大なモンブラン。一般的な一軒家ほどの大きさのモンブランが、電柱のようなサイズ感のナイフとフォークを持っている。武器持ち寄生されし物(パラサイト)ではあるのだろう。今回の訓練においてのボス枠。頭部となる寄生元はどうでもよく、巨大で武器持ってれば良いと思っているのか。それにしても、モンブランは無いだろう。研究員の中に甘い物好きでもいたんか!


「やっときたか!拙者が武器持ちを倒す!その間、後ろの甘味を惹きつけておいてくれ!」


 無茶を言う。死ねと言っているのか。


「「了解」」


 モンブランに銃弾と拘束弾を撃ち続け注意を引く。クリームがはねるだけで、ダメージを負っている様子は無く、拘束弾も意味を持たない。


「めぐちゃんも頼むぞ!」


「あーいよっ!ボスはめぐちゃんに任せろい。」


 俺とジェイスンを追いかけるモンブランを追いかける恐山の図。物理攻撃が通った様子が無いモンブラン部分ではなく、手足を狙って撃ち抜く。

 弾かれる弾丸と、モンブランの脚にぶつかり空を飛ぶ車の中を走る。武器持ち寄生されし物(パラサイト) と戦うα隊の隊長、副隊長ペアと、かなり距離が取れた。


「このままだと死ぬ、脇道入れ!詰まったところを拘束する!」


 ジェイスンの指示を半分聞き届けたところで、ビルとビルの隙間にヘッドスライディングで入っていく。背中のブラッド何とかのせいで身体を強く打った。

 続いてジェイスンが俺(もとい背負ってるブラッド)を踏みつけ、室外機に身体をぶつけ勢いを殺して着地。うつ伏せ状態の俺の腕を引っ張り、奥まで運んでくれる。足下で巨大なナイフがコンクリートの地面に深く刺さった。


「恐山ぁーー!!!!」


 俺は叫ぶ。そこにいると知っていた。


「ひゃーはっはっはっは!」


 ビルの隙間に手を伸ばすモンブランを、そのままの体勢でビルに括るつけるため放つ拘束弾。強固な手足が粘着性のある網に絡まり、ビルと一つになる。

 固定されていることを確認。反対側からも拘束弾を用いて、拘束をより強固とする。


「ふひっ、こっちに渡せぇー!」


「わかってるっつの!」


 壁をつなぐように拘束弾、網を張る。マーカー弾を破裂させ、粘着性を落とし、簡易のパチンコを作り出す。クレイジー ブラッド レディをセットし、ジェイスンと二人全力で引っ張り、離す。

 空気を切り裂く音がする。モンブランの頭部に穴を開けて恐山の元へ届く。穴からクリームが増量キャンペーン。塞がり元通り。


「くったばれぇ…クレイジー スイ゛マ゛ァー!」


 鎌を展開し回転しながらモンブランに入っていく。クリームが辺り一帯に飛び散る。少しずつだが、着実にモンブランの身体が削れていく。クリームからスポンジ生地へと変わり、栗に到達する。核の場所が判明する。栗に衝突した瞬間、鎌が弾かれた。


「みっけえ゛え゛え゛え゛え゛ー!」


 ノコギリの刃を栗に当てる。そのまま上へ下へ、削る、削る。栗の渋皮が削り落ちるのみで、本体に傷が付かない。


「おい!拘束したんだ、αの隊長と合流してからにしろ!!」


「…そうとも言えねぇ。ビルの外壁が崩れ始めてるだろ、あまり時間が残ってねぇぞ。」


 モンブランの機動力を落とすため、二丁拳銃で脚を撃つ。威力が一番発揮される適性距離で撃ってるはず…が、削れる様子もない。


 やっぱり拘束前提の敵だよな…これ倒せたら魔法少女いらねぇよ。…逆だ。これ倒せる魔法少女ってマジで人間じゃないんだな。α隊コンビは武器持ち寄生されし物(パラサイト)を倒せただろうか。あれもどうやって拘束するか、時間を稼ぐかって敵だしな。


「ナイフだ!」


 ジェイスンの声で視線が誘導される。モンブランはナイフを拘束されたまま、指を器用に使って動かしている。


 ぱっ、ひゅ〜


「…弾、切れ…恐山ぁー!」


 拘束弾を多用しすぎた弊害。モンブランをここまで誘導する際に、銃弾のみで工夫しておけば良かったと頭によぎる。声はモンブランの内部に入り込んでいる恐山には届かない。

 モンブランはナイフを自身の腹に突き刺した。クリームを抜け、スポンジ生地を抜け、栗を横切り、恐山の元へ。視覚は全範囲モンブランである。近づくナイフには気づけない。気づいたとしても、モンブランに脚を取られ逃げることはできない。内部に入った時点で詰んでいた。


「ひひっ、やっちった〜」












 武器持ち寄生されし物(パラサイト)が持つ得物が標識である理由は、寄生されし物(パラサイト)が扱い易いサイズでありながら入手が容易いためである。

 寄生されし物(パラサイト)と人間はリーチ差が存在し、銃での対抗を余儀なくされる。銃すら圧倒する投擲、薙ぎ払い、武器を持たれることは一方的な攻撃を受けることを意味する。


「心地隊長。これは魔法少女の担当っす。」


「それは違うぞ前田副隊長殿。拙者達の担当だ。」


 二体の武器持ち寄生されし物(パラサイト)は、それぞれ違う武器を持っている。一体は標識。'止まれ'などの規制標識ではない。三つの方面を指している巨大な案内標識をねじ切ったものだ。もう一体はマグロ包丁。ホープハートが魚戦で勝手に借用したマグロ包丁である。打撃と斬撃。隙のないコンビネーションがα隊隊長、副隊長を襲う。


「限界っす。魔装解放しましょーよ。」


 B6の拘束弾が案内標識に絡め取られる。本体に命中しないことには、拘束はできない。倒すなんてもってのほか。


「駄目だ。決めたであろう。」


「うっす。」


 もしも、たらればの話である。魔装兵器を使用せずに倒せたならば、拙者達はさらに強い敵をも倒せることを証明できる。いつかの平和は一太刀で一歩近づく。


 特殊魔装部隊には特色がある。日本を守る意思が強いα隊。寄生されし物(パラサイト)を抹殺する意思が強いβ隊。その他、個人意思が強いγ隊。特に隊長、副隊長格が意思に則っている。隊員の中にはジェイスンのような数合わせで入っているものもいるが、共通して軍隊や傭兵上がりが多い。


 拙者はその一歩になりたい。


「マグロ包丁で、あるか。花嫁修行なら拙者、負けないのである!」


 地面に突き刺さる七本の槍。それは倒れた隊員の数と合致する。二本の槍を腰に。二本の槍を両手に。一本投擲。マグロ包丁の二歩手前、斜めに突き刺さる。飛び上がり、斜めの槍に。


 赤髪の女が槍を投擲。飛び跳ね、一本の槍を構えている。マグロ包丁を腹部に狙いを定め払う。槍が刺さろうと、大したダメージにはならない。


 立たない。斜めの槍に腰をつける。滑り落ちるようにマグロ包丁の膝前に。軽く人間を半分にするであろう包丁が、空気を振動させている。


 槍は首を狙っている。ハンガーの頭部を飛ばしにかかっている。振り払われた包丁で対応するには間に合わない。敵は足元でしゃがむ形。膝を曲げ、突き上げる。首を刈り取る膝の急接近。人間が対応できる速度を超える。


 一手早い。槍は頭部に突き刺さり貫通。


 人間が寄生されし物(パラサイト)の頭部を貫通するほどの腕力を持つ。それは予想外の攻撃であるが、運は寄生されし物(パラサイト)の味方をする。曲げた膝で前のめりに身体。そしてハンガーの頭部。ハンガーの中は空洞。貫通したのは、ハンガーの空洞、つまり寄生されし物(パラサイト)の身体のみ。


 隊長格はブラフじゃない。突き刺した槍と一体化した心地。ポールダンスのように、突き刺さった槍に垂直になる。


 膝は槍の柄に衝突。


 運は努力をもって踏み潰す。人間の力で足りなければ化け物の力すら利用する。繰り出された膝の衝撃、心地の体重、槍の勢い。全てが乗っかり槍は寄生されし物(パラサイト)の背後まで弧を描く。槍の先端にはハンガーの頭部。捻り斬った。


 マグロ包丁はガシャんと音を立てて地に落ちた。


「前田殿、生きてるであろうな!」


 武器持ち寄生されし物(パラサイト)は初見の存在では無いが、魔法少女を追い詰めた相手を単体で倒した。恐ろしい功績だ。


「早くっ、もう無理っす!」


 案内標識が拘束弾で一回り大きくなっている。片手の槍で吹き飛ばされながら防御、もう片手のB6で体勢を崩すため、肩や足首、頭頂部を撃ち抜く。案内標識が大きすぎる。攻撃のたびに風が吹き、着地もままならない。


「ふんっ!」


 槍を投擲。鍛え抜かれた下半身から繰り出される槍は、案内標識の肩に先端が埋まる。よろけた瞬間を見逃さず、前田は距離をとった。心地はマグロ包丁を持ったハンガーを倒した槍を回収し、二度目の投擲。腹部に命中。

 マグロ包丁と案内標識。どちらが厄介か。刃がついている包丁の方が危険である。と、考えるが一般的。寄生されし物(パラサイト) 対 人間では案内標識である。寄生されし物(パラサイト)が武器を振るえば、人間など一撃で肉塊と化す。ならば、攻撃範囲が広い案内標識の方が厄介なのである。


ガガッ


 案内標識を持つ寄生されし物(パラサイト)の寄生元はトイレットペーパー。頭部がクルクルと回転。刺さった槍に紙が伸び、包み、引き抜かれる。


「努力…覚悟…」


 二本の槍が前田に向かって放たれる。


「根性ぉー!!!」


 B6を構えて、身体を最小限に屈める。槍はB6を突き刺さる。吹き飛び、コンビニへガラスを割りながら突入。


「ぐぉ、がっ、…あぁ…」


 B6を貫通。先端が両腕に突き刺さり血が流れる。槍を持つこともできなければ、B6は壊れてしまった。生き残っていることが奇跡。


「…一対一の決闘……受けて立つ!」


 マグロ包丁を拾う。下段に構え、滲み寄る。


ガガガッ


 案内標識を投擲する。一挙一動がスローモーションに見える。踏み込まれた脚、体重が膝へ移動、上半身の捻り、力が背中へ移動、肩へ、腕へ。


 拙者はこれから死ぬ!全て見える、全て感じるからだ。拙者の身体にさく能力が全て感覚器官に使われている!それしかできないから、そうしているのだ!!


 投擲されたものが心地に届くことはなかった。


ガガー





「よくやった…前田球児副隊長殿!!」


 案内標識は前田が撃った拘束弾により手から離れなかった。おおきく振りかぶって地面を削るのみ。

 マグロ包丁を持って、案内標識トイレットペーパーヘッド寄生されし物(パラサイト)に向けて走り出す。


「その命、貰い受ける!」


 拘束弾で地面と手と案内標識が張り付いた寄生されし物(パラサイト)はその場から動けない。


「ーーー鮪斬り」


 心地呼夢の流派は自己流。寄生されし物(パラサイト)を殺すために磨かれた流派。それも、特殊魔装部隊に入隊し、寄生されし物(パラサイト)のことを理解した後に生み出された流派である。まだ赤子のような流派が、特殊魔装部隊でスコア一位の女、心地呼夢の強さの秘密。その流派は固定の型を持たない。変化と進化を繰り返す寄生されし物(パラサイト)を殺すための流派だからだ。


ガガ ガー


 寄生されし物(パラサイト)の頭部が宙に舞う。トイレットペーパーが頭部無き寄生されし物(パラサイト)の上でカラカラ回る。


「そこまで()()しておるか。」


 頭部はトイレットペーパーではなかった。そもそも、魔法少女でもない心地呼夢が首を一撃で刎ねられるはずがない。真の頭部はトイレットペーパーではなく、トイレットペーパーの芯だったのだ。

 トイレットペーパーは紙を伸ばす。芯に戻ろうと手を伸ばすように。頭部を二回、それも紙が戻る前に飛ばさなくて倒せない。


「もうひと仕事ぉー!」


「…前田殿?」


 前田球児は走る。トイレットペーパーを巻き込みながら走る。前田にトイレットペーパーが巻きつく。既に息はできない。


「前田殿ぉー!」


 マグロ包丁を振りかざす。トイレットペーパーの芯半ばで止まる。寄生されし物(パラサイト)は硬い。


「鮪包丁ーー秘技」


 斬れないならば、斬れるまで。

 勝てないならば、勝てるまで。

 殺せないならば、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もーーーーーー斬る


「紙吹雪」


 トイレットペーパーの芯は細かく刻まれていった。ほんの一欠片。小さな一歩は繰り返され、人間が人間を超え、化け物を討ち取った。


「はぁ…前田殿、終わったぞ…………くっ…」


 前田はトイレットペーパーに巻かれ事切れていた。窒息死だ。





「っあ、隊長ー!心地隊長ぉー!!」


 心地の元へ通信が入る。残り寄生されし物(パラサイト)は一体。鈴木翔大を追いかけるモンブランが最後の一体であることは明確である。他の寄生されし物(パラサイト)は全てβ隊の隊長、副隊長辺りが倒したのであろう。


 敵に背を向け確認する。


「拙者は今、虫の居所が悪い。己の不甲斐なさが恥ずかしくてな。」


 目の前には七本の槍。


「近うよれ。この心地呼夢が貴様を叩っ斬る!」


モンモンモンモン


「すみません、時間稼げませんでした!」


 恐山はナイフによって敗退、ジェイスンは翔大を逃すために犠牲となる。ビルの外壁を破壊し、拘束から逃れたモンブランは、フォークとナイフを持ったまま逃げた翔大を追いかけた。


「よくやった翔大殿、十分な働きだ。これは持っていてくれ。」


 心地は両腕のB6を翔大に渡す。僅かながらの軽量化。

 モンブランのナイフが心地に振り下ろされる。地面にヒビを入れる一撃は、クロスした二本の槍によって受け止められる。人間の腕力で止められないなら地面に突き刺し、大地で受ける。

 二撃目フォーク。身体に複数の穴を開ける串刺し攻撃。心地は慣れた動きで最速の伏せをする。フォークが穴を開けたのは…案内標識。トイレットペーパーの寄生されし物(パラサイト)が地面に埋めた、拘束弾がべったり着いた案内標識である。


モンモンモン


 フォークは抜けない。寄生されし物(パラサイト)の力で振り下ろされ、地面に埋まった案内標識である。フォークが抜けるはずがない。

          

               ばしゅんっ

モンッ


 ならばナイフだと、持ち上げようとするも持ち上がらない。


「っだー!見てるかハゲコラぁ!」


 確信していた。心地のB6には拘束弾が必ず残っていると。


「やはり何か持っとるな!生き残り組は!」


 引き抜き槍を投擲する。どこに投擲するかは背後の逃げ切った男が指を差している。


 特殊魔装部隊の装備といえど、寄生されし物(パラサイト)を殺すための用途は考えられていない。代わりに、殺傷できる隊員には望んだ魔装兵器が支給されている。

 通常支給の武器、B6、伸縮捕爆槍、マーカー銃は寄生されし物(パラサイト)を拘束し、時間を稼ぎ、追跡を可能とする機能がある。

 

 槍は簡単にモンブランのクリームとスポンジ生地を貫通し、核となる栗にぶつかる。


「「爆ぜろ!」」


 伸縮捕爆槍:柄の一部を捻ると、時間経過で穂先部分が発射される。先端に衝撃が加えられると、内部に詰められた捕縛剤と共に弾ける。弾けた破片同士は、拘束弾と同じく粘着性をもっている捕縛剤で繋がっているが、外気に当たると固まり、固定される。寄生されし物(パラサイト)の内部で機能させることで、その場に磔にすることを可能とする。


 モンブランの栗を絡めて、捕縛剤で繋がった破片が、辺りの壁や地面に刺さる。通常寄生されし物(パラサイト)ならば、硬い身体内部で発動できれば決着がつく。しかし、相手は巨大寄生されし物(パラサイト)で、手足のみ硬いモンブランである。一本の槍では拘束することなどできない。


「二本目!三本目!四本目!!」


 槍は投げられる。その間、鈴木翔大は拘束弾を用い、モンブランの手とナイフを接着する。チャンスは逃せない。


「五本目!六本目!」


 モンブランを中心に捕縛剤が伸びる。その姿は、蜘蛛に囚われた虫…いや、カビたモンブラン…ショートケーキに囲まれたモンブラン?


「な、な、ほん、目ぇ!」


 モンブランの動きが完全に止まる。一歩どころか、脚を持ち上げることもできない。拘束完了である。本来なら、時間が空いた魔法少女が頭部を飛ばす。…頭部が占める割合が大きすぎるモンブランは、核を破壊する方針となるだろう。


「拘束は好きではない。けれど、今日も拙者は強くなった。」


ーー終了。α隊、γ隊の合同訓練は終了しました。









「おい、翔大。テメーを助けた功労者に散々な言いようだな。」


 合同訓練を経て、軽い怪我の治療を終わった隊員は、夕飯まで各自休憩となる。


「ミテルカー、ハゲタコナスビコラー!」


「そこまで言ってねぇだろ。人類初モンブランの中で死んだ女。」


「キー!……結局ユメちゃんは核を壊せんかった…つ、つまりぃ、核を壊せればアタシが一位ぃ…ふひひひ」


 核を壊せたら人間卒業やろがい。


「はぁ…γ隊は嫌いだ。生き残ったのは翔大、お前と心地隊長と、うちの隊長、副隊長のみだ。つまり、隊長クラスが生き残れば良いプログラムだったんだ今回は。それなのに、お前は…」


 生き残ったって言っても、ジェイスンの犠牲ありき且つ、心地隊長のおかげだ。っつか、心地隊長強すぎだろ。


「次の襲撃で生き残ったやつが強い。今回は訓練だからとれた行動もあった。…結局スコアは平均ちょい上……なんでだ!!」


 訓練でも死亡判定の隊員は必ず出る。それも少なくない。でも、今回はたったの四人!特別強い回だったはずだ。それなのに、生き残った俺の加点少なすぎるだろ。


「順位なんてスコアを利用した子供騙しの策略、ゲーム感覚。研究者達の空論だ。だから、そう落ち込むな翔大殿。」


「心地隊長…!」


 あれだけの戦いを経てほぼ無傷。なんてことだ。


「本番は隊が違うから合わないだろう。しかし、拙者らは仲間である。努努(ゆめゆめ)忘れるな。…ユメちゃんだけに。」


 笑いながらα隊の集まりに戻って行った。宿舎に自身のプロフィール帳を貼るイカれ女だが、恐山よりお茶目で可愛げがある。何よりとても頼りになる。


「なぁ、今回α隊とγ隊の合同訓練だよなぁ?なんで、βどもがいたんだ?録音だろうけど、アナウンスもαとγって言ってたぞ?意味わ〜からんっ」


「は!」


 たしかにそうだ。あまりにも自然にジェイスンが話しかけてきたから、頭からすっぽ抜けてた。


「あ〜?聞いてないのかお前ら。総隊長が今朝いきなり言い出したんだよ。わざわざβ隊のとこまできてよ。総隊長ってγの隊長なのに知らなかったのか?」


「ひゃー!アタシに内緒って、た、隊長〜…」


「じゃ、俺もβ隊に戻る。次は合同訓練じゃなくて襲撃日だろうが、元気にやれよ。」


 …あー、そうか。襲撃日に向けて最終調整ってことか。だから全隊参加の合同練習にしたわけだ。機嫌が良かったのはサプライズで、より俺らを痛みつけられるからってわけだ。くっそ。


「それじゃ。」


 あまり隊員同士で関わりって無かったが、ジェイスンがいてくれてよかった。


「やっぱ、ちょっと!」


「ん、なんだ?」


「なぁジェイスン。一つだけ教えられることがある。…俺たちは'助け'を呼ばない。そんな暇あったら、少しでも情報残してから死にやがれ。…こんなところでいいか?」


 襲撃日に備えてやってること…って質問に答えれてないな。


「…いや、それで十分だ。」


 ジェイスンは手を振りながらβ隊に帰っていく。


「お〜い、カッコつけちゃって…悪いもの食べた?」


「ばーか、夕飯前だろ。」


 この後の合同訓練は、うちの総隊長殿と一緒に見よう。文句も言いたい。



 …俺たちも頑張ってんだ。どうか、勝ってくれよ魔法少女。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ