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魔法少女ラブハート  作者: 鈴木まざくら
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第二十一話

 少しばかり昔の話になる。私が魔法少女になり、皆んなと出会って、訓練に勤しむ生活の一幕。

 その日は特別嫌いな訓練だった。端的にいうと(ベール)の訓練で、全く上手くいかなかった。困ったことに、静香は

「愛衣れいな。以前より数値が伸びているわ。」

と、終わりに決まって話す。資料を盗み見たら、謎の数値が下何十桁も表記されていた。そりゃ、少しは成長するわっ。それが、申し訳なくて気乗りしないのだ。


「全く…当の本人も完璧にできるってわけじないのに、何か期待させることでもしたの?」


 この時はまだ、少し冷たい(気がする)奈々子ちゃんは、良く訓練を見に来てくれていた。


「んー…どうだろう。あんまり、思い当たる節がないかも。」


 奈々子ちゃんは、私の顔をじっっっっと見つめている。かわいい。


「ど、どど、どうしたの?」


 普通は目を逸らすなりするところが、見つめられ続けている。かわいい。人に目を見つめられるなんて経験がほぼ無い。どうしたら良いのか。見つめ返したらニヤけてしまいそうだ。コンプレックスである目を、嫌な顔もせず見てくれている時点で嬉しい。もう嬉しい。午後の訓練もがんば

「ふんっ、変化無し、か…」


「…え?…ご、ごめん。もっと頑張るね。」


 うう、少し泣きそうだ。


「ち、違う!違う違う!訓練は頑張り過ぎなくらいだから!静香さんのメニュー続けたら普通は倒れるからね。ちょっとは手を抜くべきなの。全く…」


 うう、もっと泣きそうだ。


「って、ちがーーう!!…そんな話じゃなくてね。目の色の話。目の色!」


 …ん?眼の検査をしてくれてるの?


「静香さん…クールハートの目の色って薄っすら青色じゃない? 普通は変身しても目の色なんて変わらないじゃん。あの人がカラコンはありえないし…あと、私の目も薄っすら緑色じゃない?」


 あー、なるほど。確かに静香の目の色気になってたんだよね。んっ、奈々子ちゃんが…目の色…可愛い。


「…聞いてんの?」


「あ、聞いてる!聞いてる。確かに緑色に見えるよ。…んー、やっぱり静香に聞いてみるのが」

「呼んだかしら。」

「ひゃっ!」


 ベンチに座る二人の背後に仁王立ち。奈々子ちゃんも声を出す。なんと私は

「お疲れ様、静香。」

 驚きもしないのだ。静香の話題をしていると、すぐ来る気がする。盗聴されてたり。…まさかね。


「ねぇ、静香。目の色ってどうなってるの?」


 二人でちょうど良いベンチに三人はキツキツだ。静香と奈々子ちゃんに挟まれ密着する。ドキドキ。


「魔法少女の力が馴染んでいる証拠ね。瞳に影響が出やすいだけで、頭髪にも現れる影響よ。全てが終わったら染めてしまうのも手ね。」


「っえ…ええ〜〜」


 毛先を二人でいじりながら染まった髪を想像する。…ピンクか〜。似合うかなぁ。


「目の色に関しては、気になるならカラーコンタクトというものがあるわね。あまり目立つとは思えないけど、要望があれば染めてあげるわ。」


「ええ〜〜…って目を!?」


「私は怖いから大丈夫だよ静香。だから、覗き込まないで…顔が近いよ。…え?聞いてる?」














 ラブビームのおかげで、黒いビームをそのまま受けずに済んだ。ダメージは大きいが、気を失わずにいれたのは大きい。まだ…戦える。


 …んー。


 ビームに撃ち抜かれて、落下してる時に思い出すことって…何か意味があるはず……だよね。



「ゲートオープン…きて!」


ーアイ ヲ アナタニ



 間髪入れずに再度変身。

 目の色が変わったとか、頭髪の変色とか。力が馴染んでいるだけっていうのは嘘だ。静香の嘘…。必ず意味があるはずなんだ。伝えたくないこと、危険な行為? 確かなことは…


「ゲートオーバっ…あ゛あ゛っ、ぐぅ…」


 くっ…無理かぁ……元となった寄生生物の細胞が、身体を侵食すればするほど強くなる…! 前回の静香の戦いを見たら私でもわかった。その副作用で、目やら髪の色が変わったんだ。だから変身を解いても治らない…。


「あ゛あー」


 第一号はゆっくりと私の着地点に向かっている。

 どうにか、もう一度'自愛モード'にならなくちゃ。このままじゃ傷もつけられない。


「ラブビーム…スマッシュ…」


 縮んだ身長にドギマギするも、着地点をずらして距離をとる。ステッキを手に持ち替え対峙する。未だ第一号から黒い靄が滲み出ている。身体から離れ、浮遊し、拡がり、停滞する。


「あー、あー。奈々子ちゃん?聞こえる?」


 通信はガーもピーも言わず静かなものだった。というか、黒いビームで壊れなかっただけすごい代物だ。静香製かな?


「とりあえずその靄を消してやる。」


 あと何分戦えるのか、何発撃てるのかわからないけど、私一人じゃ状況把握もままならない。通信復旧は必須。


「ラブビーッ!?」


 遠距離攻撃が続く中での裏切り。突然の近接攻撃。不完全燃焼のビームが振り下ろされる右腕に衝突。一秒にも満たない猶予で身体を逸らし回避。


「あ゛! あ゛!あ゛!あ゛!あ゛!!」


 二撃目。左腕の刃が腹部を狙う。ステッキで防御しようとするも止まらず、半分になる前に引き抜き、ラブボンバーで自分を弾き飛ばす。

 三撃目。転がる私を右脚で狙う。ビームで加速しながらゴロゴロと転がり逃げる。

 四撃目、五撃目、六撃目…転がり続ける私に両脚で狙い続ける。命を狙うミートチョッパーがサクサクと地面に突き刺さる音を奏でながら、距離を縮めていく。


「がっ!、ぐぅ…」


 突起する瓦礫にぶつかり少し浮く。一時的に距離ができる。


「おっ…ラァ!」


 下方から迫る腕刃の側面をステッキで殴る。第一号はバランスを力のゴリ押しで崩され、顔面を地面に激突させる。

 着地後、バックステップで距離をとる。顔を上げると目の前に黒い靄が浮かんでいた。手で握りつぶす、が、するすると抜け出てしまう。次に、ラブボンバーの要領で、ビームで握った靄の破壊を試みる。手を開くと変わらず黒い靄は漂うだけだった。


「がっあ゛ぁあ゛あ゛あ゛!」


 第一号は顔面についた泥を払おうと両腕で擦っていた。腕についた刃のせいで、切り傷が多くできてしまっている。汚れはほとんど取れていない。

 私には目線が一度も向いていないように思える。


「もしかして…見えてないの?」


 通信復旧の目処はつかない。でもこれは、またとないチャンスだ。絶対に見過ごすことはできない…!


「っふぅー…もう一度、限界を…!」




ーコードネーム'ラブハート'

        オノレヲカイホウセヨ



「…ゲートオーっぐ、あ゛、あ゛!」

 衝撃波には程遠いそよ風が流れて、変身体に変化は見られない。

 …全身を内から劈くような痛みがはしる。筋繊維が壊れているのか、内臓に骨でもささっているのか…それとも、想像し得ないことをしてしまっているのか。わからない。わからないけど、ここでやらなくちゃ、ダメでしょーが。


「…ほら、マジカルステッキ。私は大丈夫だから、もう一度!」


ー………


ーコードネーム'ラブハート'

        オノレヲカイホウセヨ



「っく、あ゛あ゛あ゛あ゛!!…ふーっ、はぁー……ゲートオーバー!!!…いくよ」



ージアイ ヨ ツタエ



「全てを受け入れ 目覚めろ感情

      魔法少女ラブハート 自愛モード」


 金色の頭髪には、隠しきれないほどにピンク色が混ざり込んでいる。人によっては汚く見えてしまうだろう。


「よしっ…いくぞ!」


 再び'自愛モード'になれた。ここで決めなくて負ける。もうこの姿も長くは保てない。


「ラブビーム…スマッシュ!」


 左足首に装着したステッキからのビーム。地上に衝突したビームの勢いで空中に移動。さらに、もう一度ビームの噴射。遥か上空から見下ろすと、第一号が小さく見える。

 ステッキを半回転。左脚を突き出し、脇を固める。


「いくぞ……」


 全て…出し切れ!


「ラブビーム……

     メテオ!インパクトー!!!!!!」


 噴射されたビームが身体を覆う中、第一号の姿が鮮明に見えてくる。未だに、顔面の泥を拭おうとしているのか、両腕は顔の前にある。


 ………



「くそ…綺麗好きめ……」


 クロスした両腕は顔の前から、ゆっくりと胸元まで下がっていった。隠れていた顔は、泥で覆われている部分は多いが……確実に私を捉えていた。ずっと見えていたのか。

 左脚は防御した両腕の刃に衝突した。



「があ゛あ゛あ゛あ゛!」


 第一号は両腕で受け止める。地を削りながらも、吹き飛ばされずにいる。


「ぐっ、だぁああ!ラブ!ビーム!!!!!!」


 まだ…


「ラブビーム!!」


          まだ…


「ラブビーム!ラブビーム!ラブビーム!!」



    まだ…


「ラブ…ビーム!!!!」


          まだ諦めない…!


「これ以上 海子さんの身体を…」


     絶対に負けられない


     「使うなーーーーーー!!!!!」



















バキ バキ

            バキバキバキバキバキ



 両腕の刃が砕け散る。そのまま、ひび割れた胸部装甲に左脚が衝突。ひびは拡がり、胸部全体へ。身体に黒い破片が張り付く。装甲を蹴り抜き、胸から左肩にかけて破壊する。


「はぁ、はぁ…」


 '自愛モード'が解かれ、普通の変身体に戻る。右膝を着き、左脚を伸ばした状態で着地。抉り取った胸部から左肩にかけての装甲と肉は、前方に転がり脈打っている。

 ラブハートにかかるように、第一号の影が伸びる。その影では、支えるものが無くなった頭部が、空洞の胸部位置にぶら下がっていた。


「はぁ…はぁ…」


 皮一枚で腹部から脇と共に繋がる左腕は、動かすための筋繊維など無い状態にも関わらず、腰位置から胸元に向けて上がっていく。


「はぁ……」


 第一号の両腕から刃が無くなり、指が五本ずつあり、甲と掌がある、人間と変わりない'手'が露出した。'手'は関節に装甲がついていて、素材が黒い革といった印象を受ける。


「…………」


 頭部に残った泥をぶら下がった手で拭き取っている。断面から(おびただ)しい黒い触手が伸びる。触手は元ある身体を形成し、固まり、修復する。再生である。


「…はぁ、はぁ、はぁ」


 ラブハートは身体を引きずる。第一号から逃げるため。遠くへ、遠くへ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 逃げなくては。殺されてはいけない。何も成し遂げられなくなってしまう。


「はぁ、はぁはぁはぁはぁ」


 誰か…誰か…


        変身は全て解ける。


「はぁはぁ……」


 ラブハートは愛衣れいなに戻る。


        第一号の両腕の刃が再生する。


「はぁ……」


 第一号と五十メートル以上は離れただろうか。


        第一号は手(刃)を合わせる。


「…………」


 振り返る。


         一つになった両腕の刃は


「…ごめん」


 皆の顔が思い浮かぶ。


       愛衣れいなに向けて発射される。



 魔法少女でもない愛衣れいなには避けられない。

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