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タバコとライター

作者: シナミカナ

窓から暗い部屋に日差しが差し込む。


灯りと呼べるものはそれだけで部屋に散らかった新聞紙を踏みながら机につく。


丸いちゃぶ台の上でシーフードのカップラーメンにお湯を注ぎ蓋をすると箱から紙巻きタバコを一本取り出す。


真ん中にある灰皿の脇にオイルライターがいつものように転がっていた。


初期モデルのレプリカで20年前から愛用しているものだ。買った当初はメッキ仕上げだったボディは傷とスレで素材の真鍮で剥き出しになっている。


それを手の中で転がして蓋を開ける。貫禄があるともくたびれているとも取れる音が響く。


ヒンジは4回取り替えているがガタが来ている。そろそろ修理に送るか。


2、3回着火を試みてようやく点火した。


胃が重くなりそうなオイルの臭いがする中でタバコに火をつけて煙を吐いた。


タバコの五分を過ぎた頃には時計は7時30分を指す。


本来は丁度この時間でラーメンにお湯を入れて3分なのでもう出来上がっているが私は少し伸びている方が好みなのだ。


タバコを吸い終わりガラス製の灰皿でタバコを揉み消した。


ラーメンの蓋を開けて湯気で老眼鏡を曇らせながら割り箸を手にする。


息で熱いラーメンを冷ましながらも早々と胃に押し込んでいった。


朝一の食事で胃に負担をかけていることを感じるがそれでも早起きに比べれば優しいものだ。


箸で底を掬いなにも掴めなくなると炊事場に足を運び残ったスープを流した。


軽く容器を洗いゴミ箱に捨て入れる。


手洗い場に行き最近は億劫となってきた歯磨きを、えずきながらもやり終える。


口の中はミントの味で広がりリフレッシュされた。


鏡をひと睨みするが頭に生えている白く少ない髪をどうかしようとは思えなかった。


居間に戻り衣装ケースから服装一式を取り出し着替える。


カーテンの向こうには双眼鏡で覗かねば見えないほど遠くにアパートがあるだけだが今の私の姿はさぞ滑稽だろう。


机の足にもたれ掛からせているカバンを手にする。


念のためにかばんの中身を見るがいつもと変わりはなかった。


玄関の横の壁にあるフックからハットを取り出した。最近新調したもので私のお気に入りの物だ。


下駄箱から最近磨いたばかりの革靴を取り出し下駄箱の上に置いているわりかし新しい目のオイルライターを胸ポケットに忍ばせ、隣にある母さんをひと撫でして大海原へとガソリンで動く船を向けた。

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