巨人兵あらわる
深夜2時
西部都市国境から約230キロ地点。13000フィート上空。f型哨戒機。
「今日も異常なし。あと1時間で交代か」
「夜勤疲れますね」
「確かにな、何もないのが幸いだよ」
「なんですあの光?」
「9時の方向に謎の閃光。おい写真撮っとけ」
「どんどん強くなってきます!」
深夜2時30分。
「大佐起きてください。またソファーで寝てるんですか?」
副官に起こされる新城大佐。髪もボサボサで、目も開いていない。
「どうした何か揉め事か?」
「いいえ、哨戒機が撃墜されました。詳細は不明で今、調べています」
「それでなぜ起こした?」
「今から、できるだけ即時集合できる将校を集めて、緊急会議を開くそうです。大佐はいつもここで寝てると思ったので」
「勘が鋭いな。わかった水をいっぱいついでくれすぐに支度する」
眠気覚ましに顔を洗い、身なりを整え、出発した。 作戦室は地下だ。結構深く掘られている何メートルだがわからないが、地下には弾薬、食料までも備蓄されている。最終戦争に備えてだ。
皆、慌しくなっていた。大佐が入ると一瞬だけ静かになる。
「今の状況は?ここの指揮は?」
「大隊長の増田です。2時に哨戒機が謎の閃光によって、撃墜された模様。現在空軍と共同で救出活動及び偵察隊を送り出しました」
「閃光か..何かの実験に巻き込まれたかもしれない。周囲の情報はどうだ?あとは、テロリズムの声明とかは?」
「いいえ、何も」
「たった今偵察隊からの映像が届きました」
「スクリーンに出してくれ」
スクリーンに映し出されたのは、巨大な閃光というより太陽だ。
「眩しいな、ずっとこうなのか」
「収まってくるようです」
「ですが、これを見てください」
スクリーンに映し出されたのは、巨人だった。こちらに向かって来ている。
「なんだこれ?映画か何か?」
「違います。今届いている映像です」
「大隊長。ただちに総大将と関係参謀を招集してくれ。これからは大変になるぞ」
太陽が登り始めた6時。特務隊は本部に戻ってきていた。
「半分置いていったんですけどいいんですか?」
「相手は巨人だからな。人数が多いといっても通常兵器は使えない。それに軍属以外は参加させるわけにはいかない」
「ようやくきたなお前ら。久しぶりだそれよりなんだこの匂い風呂入ってるのか?」
新城は言う。
「砂漠で色々とやってたんだよ文句あるのか?」
「それにしても少ないな。あとはどうした?」
「残りは基地の残留当てと、整備。あとは報告書だったり長時間労働をしたもの達は休暇」
「で残ったのがこれだけ精鋭7人」
「荒野の7人か?まぁいいよ。黒瀬とジョン大佐は私についてきてくれ。合わせたい人たちが言う」
「わかった。後の者は別命があるまで待機」
6人乗りのジープの後部座席に乗り込んだ。新城大佐からは、国外についての状況を滅多刺しに質問攻めをくらう。
まぁ報告書を出してないのがあれなのだが、永井から間接的に聞いてはいないのか。
「なぜ俺たちを連れ出す?何かあるのか?」
ジョンが言う。
「まぁあ君たちの知っての通り、この都市に巨人が着々と向かってきている。あと180...いや、179時間と58分15秒と言ったところだ。つまり1週間もない。そこで、刻限が迫っているなかで、特務隊とほかの部隊との新編してあの巨人をぶっ倒してもらいたい。そのために連れ出した」
「首都に到達はするのか?」
「可能性はある。このままの速度だと1ヶ月以内にはつくだろうな。全くこんな大災害は魔女以来だ。魔女戦争で英雄になった黒瀬なら解決できるだろ?」
「任せてすぎじゃあ何のか?だいたいあれは、爆破だけで済んだが、今回は、巨人の蹂躙ときた。魔女のせんはないのか?」
「調べたが何も声明は出ていない。太陽のような閃光で現れたのがあの巨人だ。名前はあるのか?特撮怪獣でも名前決めるでしょ?」
「今のところ言いやすいジャイアンとかティタンとかだ。名前募集中ってわけ」
「好きにやってくれ」
司令部に到着するが、いつもの執務室ではなく、地下の狭い臨時の会議室に通された。
「軍のシェルターって狭いのか?」
「何言ってるこの基地は地下要塞もある。敵国の侵略に備えてな。まぁいらないところは狭くしたり無くしたりする。わざわざ佐官の部屋を広くする理由なんてないだろ?」
新城大佐は頑丈なドアを開ける。そこには知り合いが2人いた。
「黒瀬少尉ではないですか、お久しぶりです」
1人目は空挺の綾瀬大尉だ。
「大尉ではなく。これ、見てください。」
綾瀬大尉は、少佐に昇進していた。
「どうしたんですか?お二人でまさか新編される部隊の件ですか?それとも巨人のことですか?」
「両方です少佐」
「少佐なんてやめてください黒瀬少尉。下の名前か呼び捨てでいいですよ」
「じゃあ、その...綾瀬。あついハグするのはやてほしいけっこう苦しい」
「これは失礼。つい久しぶりの愛撫をしたくなってしまって」
黒瀬は締まっていた首を触る。
「それはまた2人でいる時な綾瀬」
「はい是非」
こちらを見てくすくすと笑っているのがあの池田だ。南部戦役の時にあって以来だ。
池田も一階級上がって大尉となっていた。現在は中隊長として勤めている。
「でそのお二方はだれ?」
黒瀬が言う。
「あぁこの2人か、2人とも英雄に自己紹介してくれ」
新城が言う
2人は立ち上がり、英雄黒瀬に握手をしようと思い近づく。
「近衛師団第3区画第22歩兵戦闘団大隊長の鮫島です」
「22歩兵戦闘団ってあの有名な戦闘団か?」
「まぁ割と色んな意味で有名だ。近衛師団を担当するまではな」
2人は握手を交わす。
「そしてこの人が」
「親衛隊から来ました。田所です。階級は...課長。でお願いします」
「親衛隊って軍隊じゃないのか?」
「その部門もありますけど、私はアメリカで言うCIAのような立場ですので悪しからず」
「じゃあ巨人のことも何か知ってるのか?」
「もちろん。資料をお持ちしたので、拝見してください」
田所課長は、おおよそ30ページに及ぶ資料を渡す。
巨人についてスラスラと書いてあるが、肝心なのはところどころ抜けている。
「わからないだな」
「えぇ。今のところは」
「俺らはあの巨人を分析するのが仕事なのか?」
「ちょっと違うな黒瀬。あの巨人を我々が倒す」
「高さ80メートルの巨人を倒せると思ってるのか?」
「大佐それは無理だぞ。これだけの戦力じゃ秒殺だぞ」
「まぁまぁ落ち着け、机上の空論と根性論だけで考えてはいない。秘策はあることだけ伝えておく」
「なんでいわねぇんだよ」
「そろそろ始まるからだ」
「そろそろ?」
「あぁ巨人討伐の主任作戦参謀長を担当してるんだから、時間に厳しくてな」
「勿体ぶらず早く言え」
「巨人があと数分で、国境を跨ぐ。そのあと最初の都市で4軍がおりなす総合射撃を開始する。しかも総大将が指揮を取る。どうする見るか?」
「当たり前だろ敵を知らなくてどうする」
「皆んなも賛成なようだな」
新城は皆を案内する。地下壕の作戦室へと招く。
各人用意された椅子に座り特撮映画を鑑賞するような雰囲気が漂っている。あくまでも英映像は現実だ。着ぐるみなどではない。
「作戦開始まであと1分を切りました」
「各員、持ち場につけ、西軍の意地に賭けて断固として死守せよ」
「女性なのに、あの大将気合い入ってますね
「そりゃあいつは第一魔女戦争の頃からいるぞ、新城だってさしずできないくらいな」
「所定の位置につきました。目標は作戦通りa地点に到着。只今からガレス作戦開始します」
「各軍に通達。攻撃開始せよ」
トリニア海
「予備役の戦艦5隻を招集するとは思わなかった」
「あの大将がやることだ。使える戦力はなんでも使う」
「過去の遺物ですよ」
「長官。本部から攻撃命令が来ました」
「わかった戦艦5隻を軸とした砲撃支援を開始。全艦に通達攻撃はじめ」
「1番、2番、3番砲塔回転。炸薬榴弾弾込め」
「衛星からの弾着地諸元きました。以前として移動中」
「目標固定 攻撃準備よし」
「全門一斉射撃てぇー!」
戦艦が発射した榴弾は空気を切り裂き轟く。
「弾着まで30秒」
「次弾装填まで後15秒」
「間髪入れず艦対地ミサイル発射」
「砲撃弾着きます。5.4.弾着いま」
巨人を囲んでいたビル群は砲撃の雨により溶けるかのように崩れていった。
「やっぱ戦艦の砲撃って命中率悪いよな」
「衛星から伝達全弾不命中。再度の弾着修正よし発射準備完了」
「効力射続けて撃て」
2射目は見事に巨人に命中するが、傷は入らない。
「海軍の力は恐るべしだ。榴弾砲、自走砲とロケット砲の発射準備はまだか?」
「いつでもいけます」
「砲撃開始だ。どんどん打ちまくれ」
「目標依然として変化なし」
「戦車部隊及び装輪戦車の射程に到達しました。
「徹甲弾装填よし。レーザー測定距離よし。全車集中撃て」
「戦車部隊の攻撃始まりました。目標は以前として変化なし」
「通常兵器はダメか..。第二フェーズに移行。戦車部隊は第二次防衛ラインまで後退せよ」
「全車陣地返還。繰り返す陣地返還」
「列車砲射撃準備完了の報告が来ました」
「わかった。海軍にもレールガンの準備の催促をして」
「レールガンですか?あの大将どこまで知ってるんだ。海軍だけの極秘兵器だぞ」
「レールガンの充電はどこまで進んでいる?」
「99%まで完了しています」
「後1%まで何分かかる?」
「1分と20秒です」
「やむを得ない。レールガンの発射準備を急げ」
「しかし司令。100%でなければ本来の力は...」
「今は命中させる事に専念しろ。当たらなければ意味がない」
「了解しました。発射準備。レールガン発射準備」
「エネルギー充電99そのまま中断。aiによる方位角及び仰角の修正。衛星からの目標補足。照準よし。発射準備よし」
「レールガン発射てぇー!」
音速を超える1発の弾丸は、流星の如く軌道を描き、巨人の右肩を貫いた。その反動で倒れる巨人。
「巨人に命中。右肩を貫きました。巨人は転倒して沈黙」
「レーザー砲の準備は?」
「まだかかります」
「クソッ。ならば空軍による空爆を開始せよ。好機を逃すな」
「超高度からのバンカーバスター投下」
数十発が巨人に向けて落下をする。自由落下ではなく、ブースターを発動させ高速落下開始した。
砂煙により、命中したかは肉眼では確認できなかった。
「巨人は?」
「依然として沈黙。いえ、再び動き出します」
「欠損した右肩から新たなエネルギーを検知、もしかしてこれは」
「再生するのか?」
巨人の右肩から芽が出るかのように元通りになっていた。
「人間がただ大きくなっただけではなさそうだな。神かあるいは何か」
「レーザー砲の準備はまだか?!」
「完了の報告が来ました」
「発射しろ!」
だが、レーザーは傘地に落ちる雨水のように、巨人はレーザーを防いだ。
「何が起きている」
「巨人が何らかのバリアーを発動している模様レーザーは侵食せず、受け流されています」
「撃ち方やめやめ二次災害になるだけだ」
「了解。撃ち方やめ」
「巨人からの熱源反応を確認。これは、ビームです!」
「総員、ただちに退避」
「ダメです間に合いません!!」
口腔から発射されたビームは、火の海と化し灰となった。参加していた陸軍及び親衛隊は壊滅的打撃を受け、反撃不可となった。
海軍も例外ではない。5隻の戦艦を軸とした臨時連合艦隊は、2隻の護衛艦を残し、海に消えた。かろうじて残った空軍は何もできずに帰投した。
作戦は失敗に終わったのであった。
「司令、まだ二次攻撃隊と空軍はまだ戦えます」
「いや、これ以上の攻撃はさらなる犠牲を払う事になる。引き継ぎ、空軍には監視続行を伝えてくれ。残ったもので、負傷者の救助を頼む」
「了解しました」
「クソッダメか!」
机に拳を叩きつける司令。
「初めてだ。こんなにも無惨にやられるなんて、魔女や魔物も倒してきたというのに」
「大佐我々ができるのはここまでだ。何か策はあるか?」
「あります。ですが、上の許可が必要になります」
「何でもいい。あの巨人を退治できるならなんだって許可しよう。巨人に一歩たりとも首都に足を踏み入れさせるな」
「了解しました」




