特務隊西へ
「ほら、さっさと歩くクソガキ」
やけにハンナの口調が荒ぶっていた。
「まさか好青年だと思ったらマセガキだったとはな」
トムが言う。
ハンナに好意を寄せている好青年。だがハンナには鬱陶しい人にしか見えない。
「マセガキなんて言葉知ってんの?笑える」
黒瀬が言う。
「そのガキ殺した方がいいんじゃねぇのか?」
「ここまできたらダメだ。最後まで責任を持つ」
ジョンが言う。
前方に廃墟が確認できた。
「中調べますか?」
「そうだな。6人ぐらいで行こう。ネイサンとライアンはここで機関銃の支援。トムとハンナ黒瀬、私で中に入る。大尉何かあったらすぐに砲撃を」
「わかりました。アレク準備」
リチャードが言う。
廃墟は神殿に近い建物だ。一階建てで人が住んでいる気配はない。塀だけはヒビが入ってるだけでまだ崩れてはいない。塀を登り左右に分かれるネイサンとライアン。穏便に迅速に建物に近づく4人。
中央のドアを開ける。ジョン。誰もいなかった。だが、人の形跡はある。衣服や食べ残しそして空薬莢。ここで何かあったようだ。
奥へと進んでいく。ドアが風できしみ音を出している。
ドアを開ける。広い荒野に、無数の墓が建てられていた。その墓は地面に銃が刺さった名もなき戦士の墓だった。
そして木標に「第二次捜索隊ここにて死す」と。
「おいおいおいどうなってるんだ」
トムが言う。
「ここで死んだのは間違いない」
ジョンが言う。
突然不自然にドアが動く。全員後ろを向き銃を構える。
「誰だ!手を上げて出てこい」
ジョンが言う。すると両手を上げた男が出てきた。
「そうだゆっくりだ。トムと黒瀬で検査だ」
「おい待て待て俺を覚えていないのか?」
髭面の男は言う。
「誰だ?村であったか?」
黒瀬が言う。
「違う。違う。秘密基地だよ。ほら、あの時の僧侶だよ」
男は言うが、頭の中には記憶はなかった。
「敵か?」
ハンナが言う。
「敵なわけないでしょ。全部埋めたの俺だもの」
僧侶は言う。
「そうなのか、じゃあなぜここにいる?」
「そりゃぁあんた達に知らせに来たんだよ敵が来る事をよぉ」
「敵?ゲリラか?数は?」
「あぁゲリラだ。ものすごい数だ。夜になって暗闇に乗じて襲う気だ」
僧侶が言う。
「ありがとう僧侶。これからどうする気だ?」
「もちろん私は風邪のようにあちこち行くのでまた」
僧侶は軽くお辞儀をして馬に乗る。そしてそのまま何処かへ行ってしまった。
「どうします?戦います?」
トムが言う。
「もちろんコテンパンにしてやる。みんなを呼び出して早速準備だ」
準備は夕方までかけた。日の入りにかけてから歩哨を配置した。あとは来るだけだ。
舞台は夜になる。次は出ていないとてつもなく、見えづらい。歩哨に出ている結城に近づくジョン。
「敵は来ているか?」
「えぇかすかに足音が、、。あっきました」
「つかみでいくらだ?」
「えっと2個中隊ちょっと」
「わかった配置につけ」
駆け足で戻る2人。それをみて全員配置につく。左右中央の一点集中攻撃だ。機関銃、迫撃砲、小銃の3点からおりなす制圧射撃だ。
だがどこからかカタコトの日本語が聞こえる
「ニホンヘイノミナサン。アナタタチハカコマレテイマス。サンジュウビョウマツカラコウフクシナサキ」
そしてカウントダウンが始まる。
「どうします?白旗でも揚げますか?」
ガブリエルが言う。
「バッカ野郎。戦うに決まってるだろ」
少佐が言う。
「あたぼうよ」
黒瀬が言う。
ゼロになった途端敵の砲撃が始まる。適当なところに無作為に弾が落ちていく。
「何ミリだあれ?」
フェイクが言う。
「105もないでしょう」
リチャードが言う。
「あいつらはまだブローチを持っていない。あぶり出させる気だ」
ライアンが言う。
「クソッ無作為に撃ちやがって今に見てろ」
アレクが言う。
砲撃が収まると同時に、蟻の群勢かのようにゾロゾロと建物に近づいてきた。
「まだ撃つなよ。罠に引っかかってからだ」
ネイサンが言う。
そして敵の1人が罠に引っかかる。手榴弾を使ったお手製の地雷であった。破壊力はないが、射撃の合図としては、十分だ。
大量の手榴弾、グレネードに、豪雨のように降り注いだ弾丸。敵は隠れる所なんてなかった。それに、分散したところで、清水やジャック、エラに狙撃から逃れられない。
横射、縦射逃すつもりはない。それに迫撃砲により、遺体すらも残さない。
「機関銃は第二射撃陣地まで交代」
ジョンが言う。
「それに続いて擲弾筒部隊も」
特務隊は建物から離れていった。敵は追うこともできない全滅となった。




