退治
「休みのところすまないが仕事が入った」
ジョンが言う。皆は少しくたびれていた。ジャンヌの件から42時間後のことだからだ。
「で仕事は?」
トムが言う。
「では情報班と分析班からの2人から」
まずしゃべったのは少佐からだ。
「問題が起きたのは先日、陸上交易路においてゴブリンの襲撃があった。この問題は前々からあったそうなんだが、ギルドは黙認をしてきた。それに冒険者たちが退治しに行ったと聞いたが誰一人として帰ってはない。ゴブリン退治もあるが救出作戦もあるのを忘れないでくれ。
「なぜ黙認をしてきた?」
ウィリアムが言う。
「ゴブリンは、雑草の様な根性持ちだからだ。雑草は刈っても刈っても生えてくるだろ?それと同じで、ゴブリンの被害は減らない。で今回の荷物は、日本に輸出する年貢を襲われた。これによって、外務省は怒り新党だ」
「依頼が来たわけと」
佐々木が言う。
「で、次に作戦を説明する。結城」
「作戦だまずこれを見てくれ」
ボードに映されたゴブリンの巣。巨大蟻の巣というぐらいの大きさであった。
「出入り口は四つの穴と通気口が二つある。救出班が出たあと、3つの穴を爆破して塞ぎ、正面の穴から火炎放射器攻撃を開始する。通気口からは催涙手榴弾を投げる。まぁ沖縄戦でアメリカ軍がやった馬乗り攻撃をそのまま流用した。そのあと空爆によるバンカーバスターによって巣ごと消滅させる」
「ゴブリンだったら日本人も容赦しないってか?」
トムが言う。
「若い冒険者や経験のあるハンターまでやられている。相手がゴブリンだろうと手加減はしない」
ジョンが言う。
「作戦説明は終わりだ。3時間後に出発する装備を整え車両に乗り込め」
『『イエッサー』』
『『了解』』
目標の場所までは遠くはなかった。まぁ一国越えるだけなんだが、遠いか近いかの判断は前と比べて鈍くなっていると思う。
車に揺られて2日と半、ギルドに立ち寄り、誰がゴブリンの巣を討伐にしたかの書類を確認しにきた。
特務隊の業績などは、各ギルドに知れて渡っているが、特務隊といえばハンターや冒険者界よりも、傭兵のスペシャリストして名を上げていた。
だから、ゴブリン退治を引き受けたのはギルド側にとっては意外であった。それはギルドは事情を知らないからだったからだ。
ギルドから渡された名簿。
1人のハンターと4人グループが1組。3人グループが3組。
合計14人があのゴブリンの巣に飲み込まれた。
確認し、ギルドから出ようとした時、裏から1人の受付嬢が走ってきた。息も切れていて、やけに慌てていた。
「もう1グループいます」
受付嬢は言う。5時間前我々より先に一つの新米4人の冒険者達がゴブリン退治を引き受けた。
このゴブリン退治は彼らにとって昇格試験でもあった。
昇格試験にしてはやや難易度は高めで受付嬢も、引き止めたと言うが、行ってしまった。
巣まで車で数十分。巣は道から離れていて山の中腹にある。ドローンで周囲を警戒するが、生き物はいなかった。絶好のタイミングであり、速やかに配置につかせた。
「ブラボー配置よし」
「チャーリー配置よし
「デルタ配置よし」
「フォックストロット配置よし」
「エコーワン。エコーツ共に周囲警戒配置よし」
「アルファ了解。今から内部へ侵攻する」
中に入る隊員はもう決めていた。まぁいつも通りの黒瀬筆頭にテンジン、結城、ライアン、ジャックの5人だった。
本来であればハンナや更科星野が選ばれるはずだったが、これは黒瀬が断ったのだった。
女性はゴブリンに嬲られやすいと言われている。男性もあるが、だいたい細切れにされて食われるかのどちらかだ。黒瀬はそのことを知っていてあえて女性を選ばなかった。
松明を持たず、ライトと暗視装置で侵入する。
中は当然のように暗い目を慣らすのは時間がかかる。キューブであたりをスキャンしてゴブリンがどこにいるのか要救出者がどこにいるかも把握済みだったが、生死は不明だ。
「黒瀬ってゴブリン詳しいか?」
結城がいう。
「いや、初めて狩る」
「てか、刀持ってきたんですね」
ライアンが言う。
黒瀬が帯刀は太刀で長い。洞窟では振り回せなかった。
「この刀がないと不死身を発動することはない。だからこの銃と短刀を使う」
黒瀬は言う。
皆はpdwを持ち、黒瀬は拳銃だけだ。背中に背負ってる刀が邪魔そうに見える。
そろそろ巣中央に入る。ゴブリンとの距離が20メートルとなった時ライトを消して暗視に変える。ゴブリン二匹を見事静かに抹殺した。
50を超えるゴブリンの数一匹一匹倒すわけにはいかない。あくまで救出優先だが、
1人目のソロのハンターの死体を確認した。体は見事に切断され息はしていない、肉も腐りかけていた。キューブによる判断を確認して、神代からもらった、お札を貼り、死体を外に瞬間移動させる。
「あと17人」
「こちらアルファ、収容した」
「見事にやられてるな」
ジョンが言う
「ゴブリンってのは、なんで酷いことをするですかね」
星野が言う。
「人間じゃないからだ人間がやることではないな」
ジョンが言う。
ゴブリンは中央に五匹が群がっていた。そしてそこに結構な数のいた要救助者を確認できる。
中央に入るとすぐさま、左右に分かれ壁を伝い、ゴブリン共を一掃する。この部屋はゴブリンの住処でなんとなくの生活感があったあたりに、骨があるのが少し君が悪い。
焚き火をしていた跡があった。まだ熱い。そろそろ陽が沈む。寝るのかそれとも行動に移すのかどちらかだった。
「この部屋は生活感あるけど慰安所ですか?」
ライアンが言う。
「それにしてもひどいですね」
テンジンが言う。テンジンは持ってきたブランケットを渡す。
計七名の女性が全裸で発見された。防具なんてものはかけらも一つもなかった。
目には希望も涙もなかった。持てる力を振り絞って立つことも出来ずに我々の裾のズボンの強く握りしめて、『助けて』と小さく囁いた。声はもう出せないのに...
彼女達にお札を握りしめさせ外へと送る。
だが結局男の姿なかった。奥にまだ可能性は低いが、反応はあった。これだけしかもう反応はなく、これに縋るしなかった。
札は各人一枚持った。何かあればすぐさま外に出るためであった。
「ゴブリンの反応が近づいてる」
ジャックが言う。
「ようやく訪問者にお茶を出しに来たな」
黒瀬が言う。
皆銃を向けるが結城は外すように命じて、スタンググレネードを投げた。暗闇の洞窟に突然の閃光と、爆音が、ゴブリンの鼓膜と目を襲う。
怯んだ隙に我々はうちのめした。
そして男性がいるであろう場所に向かう。
そこは処刑場かそれともゴミ溜めなのか骨が特に多かった。糞尿が混ざったような臭いが立ち込めていた。腐ったものも入ってるのだろうか。
そして探すとゆういつの男性の生存者を見つけた。我々よりも先に退治に向かった新米冒険者のリーダーであろう。だが血が出ていて止まらない。毒を盛られた可能性が高く一刻も早い離脱が求められた。新米冒険者を引き上げ、札を貼り外へ出した。
その間にも人間らしい物体を収容した。
そして自分の体に札を貼り、外に出る。
「各班爆破しろ」
ジョンが言う。ジョンの命令で穴は塞がれ
轟音に怯え、ゴブリン達の慌てる姿がキューブのモニターに映されているそして、通気口からこれでもかと言うくらいの毒ガスを放り込む。巣穴から有毒ガスが上がる。ゴブリンはゆういつ残した出入り口の穴に向かう。
そして出た際には火炎放射が待ち構えていた。
新鮮な酸素を求めているゴブリン達にはナパームを味わってもらう。ナパームは酸素を奪い、絶望を与えたのであった。
五分間の掃射が終わり、穴を爆破して撤収となった。安全な場所まで離れる。そうバンカーバスターが落下するからだ。
「佐々木落としていいぞ」
「アイサー」
2発のバンカーバスターが推進力のロケットブースターを点火して直滑降で落ちていくそれままさに彗星のようだった。轟音とともに砂煙と暴風が吹いた。顔を抑え目に入らないようにする。気づけば、深さ30メートルの以上の穴が空いていた。
そしてギルド達に生存者たちを引き渡した。
男性の新米冒険者は瀧の力でも回復せず死亡した。
その後3つの物体を検死したところ6人の遺体だとわかった。
男性2人の安否は不明に終わった。キューブの判断は正しいと思っている。どこかに紛れ込んでいたのかはわからない。だが生きている確率は低かった。白骨化してしまえば、キューブでの捜索は困難であり、
食われてしまって糞となっていたらどうすることもできない。
そして7人の女性冒険者達は、各人の村に送り帰された。村人に戻るじょせいもいるが一生口を閉ざし部屋に籠るものもいる。
ゴブリンに心や身体に傷を負った者達は冒険者としてなるものはいなかった。
7人の中の1人が中の暮らしを証言してくれた。捕まったら、男女別れ、女性は嬲られ男性はどこに連れ出されたのかはわからないが、ある晩夕食として、人間の手らしき肉が出されたという。
それを食べなければ無理矢理でもだべさせられ嘔吐しても、嘔吐物を無理矢理入れされられるという地獄だった。
後の6人は何も語らず、故郷へと戻っていった。
そして我々特務隊も新しい任務を果たすべく移動を開始した。




