百年戦争
我が方の勝利となったが、1番酷いのが戦傷者だ。甲冑なしとなれば、守れない物も守れなくなってしまう。手当に当たるが、数人では足りない。なんなら医療キットもだ。
しかも貧血が出る。血療を使っている瀧ではなく、更科だ。戦闘で大量の血を使ったと言う。更科は自分の血で武器を作るが、自分の手から離れるたびに血液はなくなる。
まぁ人に噛み付いて採血すればいい話なのだが。
「いや、無理無理死体の血なんて汚くて飲めん」
更科は言う。結局、瀧の呼びとして持って来た血液を輸血する。ため息を漏らす黒瀬。
「お前は儂の眷属だから、お前もよこせ血が足りん」
「それっていつの話だよ。佐々木もいるだろ?」
五リットルもあった血がみるみるとなくなる
「トマトジュースじゃないんだからゆっくり飲みなさい」
瀧が言う。いつも優しめの口調なのに今は怒りしんとうだ。
「血うまこれって誰の血じゃ?もしかしてお前か」
黒瀬に言う。
「それって豚の血だよ。私は口から摂取しなくても大丈夫だから」
瀧は言う。更科は青ざめた顔をして自分の首を詰まらせたかのように掴む。
「えっ?死ぬの?」
黒瀬が言う。
「豚なんぞ下男飲むような血なのに、なぜ儂がのまなければならん」
更科が言う。
「美味しいからいいだろ飲み終わったんだら手伝え」
数時間停滞することになった戦線復帰できないものは返された。近くに味方の城があったおかげだ。10パーセントが失い、怪我人は20パーセントになった。あと5パーセントいけば壊滅だ。特務隊に関しては全員無事だ。
損害はドローンが1機やられてしまった。当然目的地につくことはできず、野営となった。
時間は間に合わなかったが車と合流はできたのはよかった。
皆各人1人用のテントを貼る。軍幕というやつだ。
我々はテントを張るか車で寝るかの二択になる。結局はテント張るのはめんどくさいから大体は車で寝ることにした。まぁ各班1人は起きているから完全には寝れない。シーンとした夜だ。ひもたかない。
今日のこともあるが夜襲をかけてくるのではないかと皆ヒヤヒヤしている。あの黒い騎士だったら襲って来てもおかしくはない。
騎士達も夜通し警戒することになった。
夜。黒瀬はジャンヌ・ダルクの幕に向かった。
「俺だ黒瀬だ。入っていいか?」
「どうぞ。黒瀬さん」
中に入る。
蝋燭を灯火管制して、顔がぼやけて薄暗く見えた。寝巻きに着替えず軽装甲冑を身にまとっていた。
「あの、黒瀬さん。私の判断は間違っていたのでしょうか?」
「捕虜になっていたかどうか?」
「そうです。私がいう通りにしていたらここまで被害は出なかったとずっと考えてました」
「もし、捕虜になっていたら、前と同じく、異端尋問にかけられて、火炙りになっていたかもしれませんよ」
「いいえ、私はもういいのです。私はフランスを救いました。ですが用済みとなればフランスに見捨てられました。私はそれで良かったのです。戦争に勝てたならば、ここで潰えてもこの戦争に勝てればそれでいいのです」
ジャンヌは言うが、体は震えていた。
本心とは真逆なのかもしれない。偉人達が死ぬ時どうゆう心境だったのかはわからない。文献や記述だったらいくらでも誤魔化せる。本心は隠せる。
死んでいった兵士も同じだ。死ぬ直前になったら叫ぶ。それも見て来た。
「私は..この世界で何をしたらいいのでしょうか?...もう私は神の声なんていうのは聞こえません。私が..戦場に出ても騎士のような指揮はできません。戦いもできません。何もできない女性なのに、聖女と持ち上げられ、戦列に加わって鎧も着て、夜も寝れずに震えてただじっと待つばかり。私は静かに家族と暮らしたいだけなのです」
ジャンヌは失ったかのように悲しみ嘆いていた。どうしようもない人の死の哀傷と不思議にと少し微笑む。その表情から見て自らを自嘲しているかのように思えた。担ぎられいい気になっていたのだろうか。
「この戦争は必ず終わります。貴女が、奇跡を起こしたり、神の声を聞いたり、したかはわかりません。数少ない文献や記述で読んだことしかありません。実際にその現場にはいなかったのですから。ですが、ジャンヌ・ダルクのおかげで、フランスを建て直して勝利へと導いたのは事実です。そっから何千年経ってもフランスは健全です。もう一度特務隊、いや、この国にお力を貸してくれませんか?」
黒瀬は右手を差し出す。ジャンヌは涙を拭い、握手を交わす。そして2人は少し微笑えんだ。




