百年戦争
陽は落ち、周りは暗闇に包まれる。火も消され、空一面星の明かりがきらめていた。
黒瀬は一人でその夜空を見ようと外郭塔のてっぺんに向かった。頭をぽりぽりと掻いた。
石段を登る。見張りは誰もいなかった。
タバコに火をつけて石垣に寄りかかって外を見る。
呑気に戦争なんて起きないだろうと思ってるのだろうか、戦争なんて急に起こることはまずない。
着々と準備を進める。明日は国王に会うとかいってたがその余裕はあるのだろうか。
気づけば日を跨ごうとしている。やれやれと自分のベットに戻ろうとした時、あのジャンヌダルクも来ていた。
黒瀬は何やら気まずい感じになってしまった。旧友と会うのは久しくそして懐かしかったからだ。600年も生きてれば忘れることも多いが、しばしば思い出して懐かしく思う。それが今現れたのだった。
「久しぶりですね。黒瀬さん」
「あぁあっ。うん。ひ、久しぶり」
震えて喋ってしまう。愛想笑いをかましてまった。
結局偉人でも死んでしまってこの世界に来てしまえば我々と同じ異世界人として扱われるのだろうか身体も、歳を取らず呪縛のように。
「眠れないのですか?」
「時差なのかどうなのかわからないけど今日は特に」
「ここは長くいると冷えますから私の部屋に来ませんか?」
断る理由はなかったが何かしらの邪念と下心が頭をよぎる。600年も生きててまだあるとは、まだまだ少年の汚い心はまだあったようだ。
女性従軍者の部屋といっても、贅沢はしていない。部屋の真ん中に机と右端にベット。何冊かの書物が平積みになっていた。
机には手紙が置いてあった。
「あなたのおかげで手紙。書けるようになったんです」
同時はフランス語ができたとしてもこの世界では通じない。日本語もその分類だ。
今となっては魔法や札で解決できたが、あの時は現地の言葉を覚えて駆使しなければならなかった。
開拓学生の時に果てしない言語学習をみっちりと修得したおかげでジャンヌに教えることができたのであった。
今となってはこのお札一枚で解決できてしまうとは...
「黒瀬さん」
「はい?」
「一つお願いがあるのですが」
「なんです?」
「黒瀬さんが使っている日本語を教わりたいのですが」
こんな夜中まで勉強とは、聖女とは別の一面を見てくれた。
今となってはフランス開放やシャルル七世の戴冠は昔話で今は自由気ままに暮らしたいのだろうか。
「わかりましたですけど、日本語は難しいですよ」
「それも充分承知しています。日本語は三つあるのでしょ?」
「三つ?...あっはい。ひらがな、カタカナ、漢字の三つですね。日本語はこれを使って読み書きします」
「漢字が同じでも読み方意味が違うことがあります。例えばこれ」
紙に辛いと書いた。
「これでつらいと読みます。ですが、からいとも読めます」
「これは難しいですね」
「日本語は特に難しいです。同じ字を使っても意味が違う言葉は色々あります」
日本語の勉強は一時間強で終わった。ジャンヌ・ダルクはご機嫌であった。急に眠気が襲ってきたベットにつけないとわかり、特務隊に貸し出された部屋のソファーに寝ることにした。結構なかなかフカフカで高級家具といってもいい。そして道中にあったいい生地をしている布団。それを芋虫みたいに丸まって
そしてそのまま眠りについてしまった。
特務隊が寝ている部屋に勢いよくドアを開け叫んで起こしてきたのではないか、寝ぼけて誰かが最初はわからなかったが鎧を見にまとったジャンヌ・ダルクだとわかった。
「みんな起きて出陣よ、戦争はもう始まってしまったわ」
時計を見る。朝6時半そんな戦いの合図なんてあるのだろうか
「全員5分以内に準備してATVの前集合」
全員寝ぼけから飛び起きて装備を装着し始める。
「私は先に馬で向かっている。それより私の旗を知らない?」
「あのでっかい旗なんてそんななくなるはずない....」
ジョンは黒瀬の方を見た黒瀬はジャンヌ・ダルクの象徴でもある旗を体に巻きつけていびきをかいて寝てるではないか。
「おきろ!!!黒瀬。その旗をよこせ!!」
「いや、ちょっと待ってなんなんだし朝から」
「それは布団じゃない旗だ。どっから持ってきた」
「うーん道中にあったわ」
「いいからよこせ」
ジョンは黒瀬からひっぺがえしたがジャンヌの姿が見えなかった。多分馬に乗ってるのだろうか
急いで旗を持って行って石垣から中庭を覗くと騎乗しているジャンヌが見えた。
「ジャンヌー!!」
ジャンヌ・ダルクはこちらを見て笑みを浮かべる。
そして旗を投げジャンヌ・ダルクは右手でキャッチして門へ向かう。
とりあえず何かあったがわからないが行くぞ。
だが黒瀬は誰よりも先に出ていた。そして偵察用バイクに跨りジャンヌを追っていくのが見えた。
「あいつ...よし全員乗車すぐ出発だ」
予定を変更していざ、戦場へと向かう。




