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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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新型魔道ゴーレムお披露目

新型の魔道ゴーレムを冒険者ギルドへの報告と同時に、『ケイトラ』の車輪を回す魔法陣の解禁。


錬金術師達は狼型・亀型・蜘蛛型に関しては魔法陣無しでゴーレムだった事もあり、錬金術師がゴーレム作成の先に誰でも作る事が可能であると教える。


冒険者ギルドには魔方陣の解禁に伴い、多額な報酬額をナナ達は手にする。

その代わり解禁した魔法陣で実際に、ギルドの裏で『ケイトラ(仮)』を試作している。

ギルド職員や錬金術師の目の前で既存の荷車に魔方陣を組み込み車輪を取り付ける。


「これで荷車は魔力を消費して車輪が回転します。」


魔方陣に魔力を込めると荷車の車輪がゆっくりと回る。


「荷車の前輪後輪に魔方陣を設置して持ち手に魔力を込めれば動きます。」


持ち手の位置を変えて魔力を込めると回転が逆になり後方へ動く。


「今回は持ち手の位置で前進後進になります。」


ナナが魔法陣を組み込んだ荷車を動かす。


「魔力量によって速度が上げりますが、魔力消費が激しくなるので注意が必要です。」


ナナと交代でギルド職員の1人が荷車に魔力を込め動かし


「確かに魔力を込めれば速度が出ますね。」


最初は歩く速度で、暫くすると速足の速度になり・・・魔力が枯渇したのか動きを止める。

「はぁはぁはぁ・・・」と息を切らし倒れそうになっている。

次に錬金術師の1人が荷車の持ち手に魔力を込める。

ゆっくりと荷車が動き、ゆっくりとではあるが右へ曲がったり左へ曲がったりする。


「荷車が曲がる機構はどうなってるんだ?」


見学している錬金術師の1人が車輪が回転する魔方陣で何故曲がるのか聞いてきたので


「車輪の回転は前後同じく動きますが、荷台が左右に曲がるのは荷車が軽いので曲がる時は力任せで曲がっているだけですよ?

『ケイトラ』に関しては、前輪左右に一工夫してます。曲がる時に片方の車輪の速度を落としてますし、結構複雑な仕組みで今回は省いてます。」


「試作のケイトラは前進と後進のみで魔法陣が正常に動くかの試作品という事ですか?」


「はい、最初は小さな物から造り、段々大型化へ移行します。

馬の負担軽減を考えれば車輪が回る事で馬車での活用も出来ます。」


「馬車大工に魔方陣を刻む事は伝えてます。修理では無く改良と言いましたが、どこまで魔法陣の事を理解しているは解りませんが・・・。」


「既存の馬車への負荷は調べてから見た方がいいですよ。長距離移動中に馬車が壊れては大変ですから、『ケイトラ』も試験運転を繰り返してましたし。」


「当然です。最初は荷物無しで隣町までゆっくり走らせてみます。」


「小型の荷車を動かすくらいなら魔力消費を気にしなくて大丈夫です。大きくすればするほど魔力の消耗が激しいと思いますので、少ない魔力でゆっくり動かす事を重点的に考えて下さい。

『ケイトラ』は乗り手3人の魔力を消費して動かしてるので魔力効率で言えば…ダメな方かも知れません。」


「大きくすれば乗り手を増やすのは必須か・・・。

この試作品を大きくするのが一番効率がいいのかな?」


「大きくするなら車輪と車軸を丈夫にしないと馬車の崩壊につながります。

車輪の数を増やすのも1つの手ですし、丈夫にするのに車輪周りを鉄製にするのも1つの手段です。」


「あれ?『ケイトラ』は車輪関係は鉄製じゃなかった気が・・・?」


「『ケイトラ』は複数の魔法陣の組み合わせで成り立ってます。『ケイトラ』をゴーレム化した事で複数の魔法陣にも耐えられる事が可能にもなりました。」


「冒険者ギルドとしては、錬金術師と共に『ケイトラ』を作り上げるだけか・・・。

この荷車を大きく丈夫にし試験運用を繰り返せば新たな『ケイトラ』の完成。」


「ギルドとして新しく作り出すのだから『ケイトラ』と言う名でなくて良いのでは?」


「魔道ゴーレムでも無いし、馬無し馬車と言うのも変だろう?」


「普通に『ギルド荷車』でいいのでは?」


「とりあえずは『ギルド荷車(仮)』で試験運用しよう。

小さい荷車も冒険者の運搬依頼に活用するのも面白そうだしな。」


「車輪を回す魔法陣は開示してるので、ギルド以外でも改造改良が繰り返されるでしょう。

その内ギルド以外で販売もすると思いますが?」


「それに関しては、開示している技術を用いて製品化しているから、ギルドとしては何も言う事は無いな。それにな各冒険者ギルドでも各々で『ケイトラ』を模した物を作り出してるしな。」


「それなら安心です。『ケイトラ』は未だに目立ちますし、やたらと誰や彼に話しかけられるから面倒で面倒で・・・。早めに新型魔道ゴーレムに乗り換えたい。」


「新型の魔道ゴーレムですか・・・亀型なら問題無いですが、狼型や蜘蛛型はもう少し時間が必要です。見た目のインパクトが大型の魔獣っぽいし、街道で疾走していたら討伐対象になりそうですよ?」


「まずは、亀型の魔道ゴーレムか・・・。ゴーレムは普及しているから目立たないと聞いてたんだけどな。」


「ナナさんが何を聞いたのかは解かりませんが、聖王都などでは防壁の護りとして配置されてますし、災害時には共助活動でもゴーレムを派遣していると思いますよ?」


「災害時とは?」


「崖崩れなど人の手で追えない事態ではゴーレムで対処します。逆に戦闘では周りを巻き込むという事で、戦う事より護りの盾役として戦場へ赴きます。」


「ゴーレムは巨大で重量があると思いますが・・・移動方法は?」


「聖王国の護りのゴーレム以外は、派遣先で新たにゴーレムを作り出します。

ゴーレムを動かすのも作り手の魔力を消費します。魔力量を考えればしょうがない事ですがね。」


「ゴーレムを移動手段としているのは?」


「んー、錬金術師の中にはいますが、錬金術師は人の目につきにくいと言いますか、研究ばかりで今回の『ケイトラ』騒ぎでも無ければ人の前に現れませんよ?」


「目の前にいる錬金術師の中にゴーレムを使う者は?」


「いますが、荷物を運ぶとか屋敷や工房で人型ゴーレムと聞いてます。」


「今回の『ケイトラ』の出現で錬金術師の考えも変わるかな?」


「ナナさん達の新型魔道ゴーレムは逆に悪目立ちしてます。

少なくとも自分らで移動用のゴーレムを作り売り出すものが出れば面白いんですがね。」


「ギルドで彼らのゴーレムを売り出すとかは?」


「使い勝手のいいのは『ケイトラ』型かな。車輪があり、馬無しでも運用可能なのが理想です。

蜘蛛型や狼型は大きすぎて目立ちすぎます・・・悪い意味でですがね。」


「魔道ゴーレムを人型以外に似せた結果ですね。

人型では出来ない事も他の姿形なら可能になる。

人が走るより狼が走った方が早いし、人が移動できない場所でも亀なら悠々と動けるし、人が走行不可能な崖であろうと蜘蛛なら平気で登れる事。

薬草採取ばかりしていて森の中でも移動可能な荷車が欲しかったので新型魔道ゴーレムは理想形といえます。」


「狼型と蜘蛛型は森の中でも疾走可能なんですか?」


「狼型は森の木々を避けながら走れます。蜘蛛型が木々を登る事が可能ですよ?

どちらも私達には設計構造は理解できなかったので複製は無理です。操縦には『ケイトラ』以上の魔力消費になるので魔力が少ない方は注意が必要です。」


「魔力消費が激しい理由は何かあるんですか?」


「アリスさんが言うには普通のゴーレムと違って複雑な動作を複数同時で動かしているらしいです。

体制維持や御者席や荷台部分への衝撃の吸収など見えない所でも結構魔力を使っているみたいです。」


ギルド職員や錬金術師は、言われた事の半分も理解出来ずに、何か複雑な事で魔力消費が激しいと思っていた。


「それで森の中を自在で移動可能な魔道ゴーレムでナナさん達は何をするのですか?」


ナナは少し考えてから魔の森の方へ指差し


「魔の森を少し調べたい。」


ギルド職員や錬金術師らは、『赤目』大討伐時の原因が魔の森にあると思っていたが、現在まで何も成果が上がっておらず、今では魔の森の浅い部分で討伐をするのがやっとの状態であった。


ナナの言う魔の森を調べたいというのは、ギルドで把握している更に奥への侵入。

ランクDの冒険者が普通に行けない危険な場所とも言えた。


「現在魔の森への侵入はランクB以上限定になっていますが?」


ギルド職員の『赤目』大討伐後に冒険者ギルドで新たに決まった事柄をナナに教える。

ナナはこくりと頷き、ニコニコしながら人差し指を口元で立てながら


「もちろん内緒で行くから大丈夫!ギルドでの依頼で無く、個人的に魔の森へ探索に行きたい!」


ナナの後ろのティアも同じくニコニコし、リタだけは少しだけ苦笑いをしている。


ギルド職員は聞かなきゃ良かったと思いながらも疲れた顔をしながら


「もし何らかの『赤目』に対しての情報があれば買い取ります。それに元来、魔の森の深部は薬草は豊富です。むしろ薬草を期待したいです。」


「もちろん薬草は採取するよ。魔の森の薬草は使い切っちゃって早めに集めたいしね。」


その後、ギルドで冒険者向けに車輪を回す魔法陣設置の荷車が発売される。

荷物が大量に持てるし車輪が回転するという事で、討伐系冒険者には必須の道具になる。


馬車にも同様に車輪が回転する魔方陣が刻まれたものが数多く販売され、馬への負担軽減と輸送の移動速度向上の助けになる。


ロースポーツでは、『ケイトラ』の派生は生まれず。車輪の回転を補助する馬車の形に落ち着く。


錬金術師達は動物を模したゴーレムを各々で作り上げ、街道を疾走するゴーレムの目撃情報が数多く上がる事になり、ギルドでは新たな魔物の出現かゴーレムかで悩む日々が続く。

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