閑話ナナのいない屋敷にて
短いです。
『魔法工房』の屋敷の一室、グランさんやアポロさんが居間で対戦ゲームに興じていた。
グランさんは騎士を選択し、背丈ほどの大剣を振りかざし、アポロさんの盗賊に斬りかかる。
瞬間、盗賊が瞬時に後方へ移動し弓を構え矢を射る。
騎士が大剣を横に構えて防御姿勢で矢の攻撃を耐える。
弓矢の攻撃が止まると同時に騎士が踏み込み三連撃を繰り出す、それと同時に盗賊の方もカウンターで毒薬の瓶を大量に投げる。
騎士の攻撃で盗賊が斬り飛ばされ、盗賊の攻撃で騎士が鎧ごと溶かされ・・・どちらもHPゲージが無くなる。
「「引き分けか・・・。」
「もう少し距離があれば毒薬の範囲外じゃったな。」
「いやいや、三連撃の攻撃範囲半端ないし。」
「今の三連撃は普通の騎士でも同じ事が再現可能かのぉ。」
「踏み込んでからの大剣での三回攻撃なら可能じゃないかな。
相手を切断するほどの攻撃力は知らないけど。」
「それよりも鎧をも溶かす毒薬って・・・ヤバ過ぎじゃ。」
「毒薬の方が再現可能は?」
「そちらはアリスの得意分野じゃのぉ。」
「なら大剣はハクトに聞くのが一番かー。」
「しかし、ナナの前世では格闘ゲームの動きは想像によるものとして確立していたか。」
「鎧をも溶かす劇薬も考えてるというのも怖ろしいと思うよ。」
「ナナの動きもそうなのかのぉ。」
「んー、ナナの動きはハクトの指導によるんじゃない?
こっちに来てから戦い方や毎朝の修練を教えたはず、アリスはそれ以外の魔法や調合を教え込んだはずじゃよ。」
「最初から13歳の初心者冒険者としては高スペックで来てたね。何故かギルドで薬草採取しかしてなかったけど・・・。」
「ハクトとアリスから冒険者は最初は薬草採取ですって教えられたみたいじゃ。冬期間はポーション調合で暮らせる様にとキッチリ教育してたわ。」
「それ以外に穴兎とかは『魔法工房』の送って食糧として確保してたし、依頼報酬も食材や調味料ばかりで食べる事に夢中になってたな。」
「わしらの酒にもなっておる。」
「そういえば飲み切れないほどの酒樽も備蓄してたな。」
「ナナさんらの装備品は『魔法工房』で自作しとるしのぉ。
通常の武器っぽくなかったり、装備品も見た目は地味でも性能良いし。」
『魔法工房』の工房の一式には、ナナ達が自作した装備品が保管されている。
戦闘の向き不向きにかかわらず毎日整備だけは欠かさずにいた。
その中には試しに鍛えた片手剣や大剣もあるが、工房の壁に飾られ装飾品となっている。
グランさんとアポロさんはゲームの中休みにお茶を飲み最近のナナ達の話題になる。
「ナナさんも冒険者に成って3年目か・・・。」
「最初は採取だけしかしてなかったのに最近では盗賊討伐に参加してるしなー。」
「盗賊も倒せるようになったし、いや、殺せる様になったというべきか・・。」
「人の善悪を知って許せる事と許せない事を知ったな・・・。
問題とまでは言わないが人を殺めても心を壊さずに済んで良かったよ。」
「人を殺めて心が壊れる者もおるしのぉ・・・。ナナさんの場合は、心が壊れると言うより人より心や感情が希薄なのかも知れん。」
「こっちへ来る原因で少しだけ感情が希薄になっているか・・・。
ティアやリタがいい影響になればいいんだが、最近では普通の冒険者が何なのか解らなくなってるし。」
「ティアも最初の頃は、気の弱い弓が得意な女の子だったのに、最近ではナナ以上に索敵能力が向上してるし、ナナが怪我ばかりで『回復魔法』を習得してから遊撃後方支援っぽいよね。」
「それを言ったらリタは完全に後方支援回復だったのが、弓を覚え攻撃魔法を習得してからは後方万能型になったよね。聖女候補生を辞めて初めて自分で行動したからかもしれないけど、今の方が生き生きと楽しそうにしているからいいんじゃない?」
「ナナと違いティアとリタは盗賊や襲撃者には容赦なかったが、ナナは日との生き死には思う事があったが、盗賊団での結果で存在悪と言うのを知り容赦する事なく止めを刺せるようになったな。」
「ナナさんの前世では盗賊や襲撃者に相見える事無く過ごしてたし、テロや戦争などと対峙してない身としてはな、心が壊れないか心配はしてたんだがな・・・。」
「心が壊れる前に『魔法工房』に強制帰還させるしかないか。」
「ティアとリタが一緒にいれば大丈夫だと思うけど?」
「2人ともナナに依存し始めているのが心配ではある。」
「逆にナナも2人に依存していると思うよ。」
「それはしょうがないよ、3人とも若いしな。」
お茶を飲み干し、グランさんらは再びゲームに興じる。
今度はトンファー使いと三節根使いの戦いが始まる。
丁度その頃、ナナ達はアリスさんと共に魔道ゴーレムを組み上げていく。
魔道ゴーレムは『魔法工房』独自の技術で完成し、新たな錬金術の技術として浸透していく。
巨人型ゴーレムと違いインパクトがあり、錬金術師たちが新たなゴーレムに尽力を注ぐ。




