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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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魔道ゴーレム新種

魔道ゴーレム『ケイトラ』ロースポーツ周辺の試験運用を終え街道以外の草原を疾走している。

それは『魔法工房』での『ケイトラ』は何処まで行けるという話し合いで、街道や市街地など整備されている道があれば走行可能であったが、それ以外の場所での走行や移動はどうなのか・・・。

『ケイトラ』の設計上は馬車と同じ道があれば走行可能という認識であったが、道なき草原や森の中ではどうかと言う話になり、試しにナナは微速ながら草原を走っている。


「車輪に魔物の革を巻いてるから衝撃は緩和されているけど振動が凄い。」


「あはははははー、跳ねるねー!」


「きゃーーーー!」


御者席で操縦しているナナは草原での操縦に苦労し、ティアは『ケイトラ』の跳ねるさまが面白く笑いが止まらず、リタは振動に驚き悲鳴を上げている。


「振動を和らげる処置が必要か。」


「跳ねて面白かったけど?」


「あれは跳ねて怖かったです。」


「振動により『ケイトラ』が壊れる可能性も考慮する必要があるな。」


「揺れるのを防ぐの?」


「もしくは、悪路を走らないとかは?」


ナナは少し考えてから、いろいろとメモ書きを書いていく。

揺れるのは『ケイトラ』が傾くから、なら傾いても大丈夫にするには車体を動かさない、それなら動かないようにするには・・・どうする?


ナナが御者席でメモ書きを書いては消しを繰り返し、「これならどうかな?」と呟く、ナナのメモ書きには車輪が6つあり、御者席と荷台が車輪部分から離脱している姿だった。


「悪路に対応するために車輪は6つにして、揺れるのを防ぐために御者席を含む荷台を別にする。」


「んー?それは御者席とかはどうなってるの浮いてるの?」


ティアはメモ書きの車輪部分と御者席・荷台が離れているのを指摘する。


「そうそう、解れて離れていたら傾きも振動も関係ないでしょ?」


「どうやって浮くの?」


「生活魔法の『浮遊』(ふゆう)をと考えてますか?

確かに『浮遊』は物を浮かせる魔法ですが、自身の持てる重さ以上の物を浮かせる効果は無いと思いましたが?」


「そこは『軽量』と『浮遊』を並列で起動すれば大丈夫。」


「『軽量』は物の重さを軽減する魔法だっけ?」


「重い物を持てるようになる魔法だったと記憶してますが・・・。『浮遊』との並列起動・・・同時展開ですか・・・確かにそれなら大丈夫な可能性が・・・。」


「『ケイトラ』に追加で2つの魔法陣を刻むの?」


「御者席や荷台部分を新たに作りなおす必要がありますよ?」


「それなら悪路用に魔道ゴーレム『ケイトラ』弐号機を作れば大丈夫!」


「それなら魔道ゴーレムらしく車輪に拘らなくていいんじゃ?」


「馬車や荷馬車・荷車の形に拘らないと?」


「それならいろいろな形に作り替えるかー。御者席や荷台は住居スペースとして必要だが、移動手段として車輪以外で考えるとしたら・・・獣の様な四肢がベストか。」


「黒狼の様なしなやかな四肢でも良いし、蜘蛛のように8本の脚でもいいんじゃない?」


「馬車の姿を捨て・・・新たな魔道ゴーレムとなす。」


「それなら本格的にゴーレムを移動手段に組み込む方が面白そう。

『ケイトラ』は魔法陣の複合体で自身の身体を保持するためにゴーレムとして形を整えている。

形式的には木製ゴーレム『ウッドゴーレム』なんだが、御者席や荷台を独立した物として移動走行機構は錬金術のゴーレムとすればいけるか・・・?」


「まずはアリスさんと相談しようー。」


「え、蜘蛛の8本足ですか?狼の四肢でなく?」


「そこは3人で色々考えてみよう。狼の四肢に蜘蛛の8本足色々考えてみよう。」


「そういえばリタはどんな感じがいいの?」


「え、んー、どんなですかー。あまり移動速度が速くなのがいいので亀とかはどうですか?」


「それじゃ、狼・蜘蛛・亀の3種類を各々で設計作成してみるか?」


「「えっ!」」


ティア達2人は『ケイトラ』に関しても助言はしたが、自分たちで『ケイトラ』には極力携わってはいなかった。

思い付きで蜘蛛やら亀と言ってしまい2人は明らかに「どうしよう」と言う表情をしている。


「『ケイトラ』は魔法陣の組み合わせだったけど、次の『ケイトラ』は駆動部分の大半はゴーレムだから、アリスさんから一から学ぼう。」


「「うん。」」


ナナは『魔法工房』にいるアリスさんに「そういうことなんで戻ったら色々教えて下さい。」と心の中で話しかけていた。アリスさんからの返事は「了解、任せて!」といい返事をもらう。



それから暫くの間は、日中は薬草採取に励み、『魔法工房』に帰還後は就寝までゴーレム作成に力を注ぐ。

結論から言えば、狼や亀の四肢を移動手段とした場合も蜘蛛の8本足での移動も、ゴーレムの身体の状態維持が難しく姿勢のを保つのが一番苦労した。


「御者席や荷台は替えの木箱を乗せて起動実験は成功か。」


「3種類あるけど大きさがバラバラ・・・。」


「亀ゴーレムが一番低いです。」


「次に狼で一番大きいのが蜘蛛か・・・。」


「移動速度が速いのは狼・蜘蛛・亀の順ですね。」


「悪路に強いのは、蜘蛛・狼・亀の順ですか。」


「これは新しいゴーレムの誕生かな。」


「『ケイトラ』シリーズじゃないの?」


「それ以上にゴーレムの形が一般的じゃない気がするんですが?」


リタの言いたい事は解らないのでナナとティアが「何が?」と考えていると、黙ってナナ達の話を聞いていたアリスさんからゴーレムの基礎を教えてもらう。


「リタさんが言いたいのは、ゴーレムの形の事だと思うわよ。

ゴーレムは人を模した物、人の形をした人が作り出した物、普通はウッドゴーレム・・・木製のゴーレムね、次に石や岩のロックゴーレムとかがあるけど・・・。

今目の前にあるのは人型からかけ離れたゴーレムよね、素材は重さに耐えられるように岩を加工しているけど、狼を模しているのに頭部が無いよね、蜘蛛や亀も同様だけど・・・。」


「人が乗るなら頭部は邪魔でしょ?」


「確かに。」


ナナとティアは移動手段でゴーレムの脚だけが必要であり、それ以外の頭部や身体・尻尾は排除した。


「それとね、一般的にゴーレムは補助的な存在なのよ?

ゴーレムで重い荷物を運んだり、城壁を積み上げ作るのもゴーレムだしね。

確かに一部では移動用にゴーレムを使う者達もいるけど・・・今目の前にあるようなゴーレムじゃないってことは言えるわよ。」


「狼型は草原を疾走すると気持ちいいのに・・・。」


「蜘蛛型は場所を選ばない移動が可能なのに・・・。」


「亀型は重心の安定で一番バランスが取れてるのに・・・。」


「魔道ゴーレム『ケイトラ』以上のインパクトはあると思うわよ。

亀型が一番『ケイトラ』っぽいかな?車輪を亀っぽい四肢になっただけだし。

狼型はロックゴーレムの背中部分に御者席や荷台部分を乗せただけになってしまったな。

蜘蛛型は複雑すぎたな、普通の蜘蛛と同じ仕様にしたから御者席を頭部とし、8本4対の蜘蛛に模した脚を作り上げたけど、前進後進や移動に関しては私に全部お任せだったよ。

見た事ない人が見たら新種の魔物と勘違いしそうだよ?」


アリスさんが疲れた感じにぼそりと呟く。


「「「え、本当ですか?」」」


せっかく作り上げたゴーレム達が見た目のインパクトで討伐対象になりうる可能性にナナ達は少なからずショックを受け


「それならギルドで大丈夫という事を保証してもらうしかないか・・・。」


「『魔法工房』の看板を付けましょ、看板があれば大丈夫だと思われますよ!」


「それがいいです『魔法工房』の看板を目立つように配置しましょ!」


「それしかないかー。」


各3種の魔道ゴーレムの御者席の前方には『魔法工房』の紋章を刻み、荷台には両側面に看板を設置する。『ケイトラ』に設置してある看板よりも大きな作りにし遠目でも確認できるようになる。


「問題は搭乗時は足を伝い乗る以外ない事かな?」


「停止状態からなら普通に乗り込めるよ?」


「少しだけのコツは必要ですが、私でも乗り込むことが可能なので大丈夫ですよー。」


蜘蛛型の停止状態での搭乗は、一般的な二階建て住宅の屋根の高さがある、ナナやティアが大丈夫であったが、リタも今では普通に足を伝い普通に乗り込むことが可能になっていた。


「多分ですがナナさんとティアさんの普通は違います。

リタさんも搭乗できるのは凄い事ですが、一般的に普通では無いし大丈夫では無い案件ですよ。」


ナナ達の会話にアリスさんの冷静な意見に、ナナとティアは「そうかなー。」と首を傾げ、リタは「え、普通じゃないの?」と1人驚きに固まっている。

そんな3人をアリスさんは、ゴーレムの知識を教え完成までに至った事を嬉しく思い。

少しだけゴーレムに内緒で魔法陣を刻む、『魔力消費減少』と『魔力効率向上』を。

『魔力消費減少』はゴーレム起動時に消費する魔力を抑える効果があり、『魔力効率向上』はゴーレムを運用する時に効率よく動ける効果があった。

『ケイトラ』よりも魔力を消耗するので、運用には何重にも安全を考慮した。



「冒険者ギルドでのお披露目は、亀型ゴーレムが最初の方がいいのかなー。」


「大きさ的に『ケイトラ』と同じだから?」


「もしくは、最初から蜘蛛型ゴーレムで攻めるというのは?」


「ギルド職員の目の前で蜘蛛型ゴーレムを取り出せば大丈夫かなー。」


「ロースポーツ周辺の街道を蜘蛛型ゴーレムが疾走してたら討伐される可能性があるかも知れんし・・・その方がいいかもなぁ。」


「まぁ、最初はギルド職員に相談してからで・・・。」


「「了解!」」

魔道ゴーレム狼型は草原や街道を『ケイトラ』以上の速度で疾走し、魔道ゴーレム亀型は街道は『ケイトラ』並の速度で疾走できるが、川原や悪路でも疾走可能であった。

魔道ゴーレム蜘蛛型に関しては、8本の脚がぬるぬる動き、初見で見ると驚く程高速でわしゃわしゃ動きまくる。足の構造はアリスさんしか知らず、森の中では木々の間を自在に動いていた。


「今、木を登ったよね?」


蜘蛛型が木をスルスルと登り、次の瞬間御者席の下から蜘蛛の糸が飛び出し、隣の木に飛び移る。


「今、糸出たよね?」

「それよりも何で木々を飛び移れるの?」


ティアとリタの驚きようは凄いのだが、御者席で操縦しているナナはアリスさんから『森の中では自在に移動できるよ。』と教えられ、試しに森の中を適当に走らせていただけ


「なんだろ、森の中を走ろうと思っただけなのに・・・木に登ったり木の間を飛んだよ・・・。

操縦の大半は蜘蛛型が制御してるっぽいかなー。」

「それじゃ、木を登ったのもナナが意識して動かしたんじゃないの?」

「てか、どうやって糸出したの?出たの?」

「意識的にかな?移動する方向を思いながら御者席に座っていただけだし、糸が出たのも向こうへ行きたいと思っただけだよ?

全然こういう動きをすると思ってなかった。

結構焦ったー。」

「木を登る事を考えるなら荷台は荷物を置くのは無しだね。」

「荷物が荷台でごろごろ転がるから禁止!荷台で調合も休憩も無しで!!」

「「了解。」」


その後、『魔法工房』の敷地内で蜘蛛型がどんな動きが出来るのか、どんな動作をするのかを検証し、最終的には木々を登り木々の間を蜘蛛の糸で移動可能な事、また建物に壁をも歩く事を知る。


「壁の様な垂直な所も歩けるのか・・・蜘蛛の脚が何で出来るかは理解不能だが・・・移動可能な事だけは理解した。」

「これなら崖とかも気にせず登れるね。」

「長い脚がわしゃわしゃと何故動くのかは理解不明ですが・・・凄いですね。」


最終的に、蜘蛛型は万能方であり一番見た目がヤバイ。

狼型は見た目は巨大な狼型のゴーレムで大丈夫そうだった。

亀型は『ケイトラ』よりなので、ギルドに一番説明しやすいと思っている。

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