収穫祭からの襲撃祭
夏の日差しが強くったロースポーツでは、数年ぶりの収穫祭が行われていた。
『赤目』大討伐後に上級冒険者が亡くなり、冒険者の実力低下が囁かれていたが、最近やっと魔の森で活動できる冒険者が育ってきた。それとギルドの調合師のおかげで回復資材も十分確保できた。
最近の魔の森は大型獣は『黒熊』に『大猪』しか発見できず、中型獣は『黒狼』の群れや『大鰐』が元の生育地へ戻ってきていた。
小型獣の気配はあるものの、逃げるように隠れてしまい討伐は諦めていた。
それでも多数の『黒熊』や『大猪』を数体討伐し、『黒狼』も3つの群れを壊滅し、『大鰐』も数体倒した。
解体された肉や毛皮などは荷車13台にもなり、冒険者らは自分らの倒した結果に満足し笑顔で帰還する。
その数日後に収穫祭は行われた。
数多くの露店では数多くの肉料理が販売され、酒を片手に飲んでは食っている。
ナナ達も同じく露店を巡りをしては串焼きを頬張っている。
「やっぱり収穫祭限定の串焼き美味し。」
「私は初収穫祭ですー。」
「私もー。」
美味しそうに頬張りニコニコしているティアとリタ
「ティアは去年冒険者に成って・・・『赤目』騒動で収穫祭中止だっけ?」
「去年は忙しくてそれどころじゃ。」
「そうですね、去年は騒がしかったですね。」
去年の『赤目』騒動を思い出し、「あの時は忙しかった。」と3人とも思い出す。
「あの時は半分失敗だったからなー。」
「そうなの?」
「私は結果的に成功だと思いますけど。」
「『赤目』討伐には、参加もしてなかったし、最後に少しだけ手を出しただけでしょ。」
「そういえば気が付いたら始まっていて、気が付いたら巻き込まれてたね。」
「私的には『赤目』を討伐したので成功と言いたいです。」
「そっかーなら成功でいいかー。」
「そだねー。」
「はい、そうですよー。」
ロースポーツの露店街は、収穫祭限定の商品が並び、しかも、お祭り価格なのがお手軽価格で誰も彼も楽しそうにしている。
この日ばかりは冒険者達も装備を外し、朝から酒を煽り魔の森での成果を肴に楽しそうに騒いでいる。
その中でナナ達に一定間隔でついてくる者達がいた。
ナナとティアは『周辺感知』で気が付いていたが、リタだけは何か視線を感じたのか落ち着かない。
『周辺感知』では誰からの反応なのかまでは解らず、人込みは面倒だと思い。
「なんか視線を感じるから歩くよー。」
「了解。」
「何か気持ち悪いです。」
露店街を外れ少しさびれた住宅街まで足を延ばすと、ナナ達を囲む様に数人の男達が現れた。
どの男達も皮鎧や帯剣をしている状態でニタニタ気持ちの悪い顔をしている。
ナナは「気持ちわる。」と思い、ティアは「きもっ」と顔をしかめ、リタは「汚い顔」と男達に冷たい視線を送っている。
一様に冷たい視線を感じたのか男達が騒ぎ出す。
「おめぇがナナだな、おめぇに用があるって着いてこい!」
「もっともお前はおまけだがな!」
「それとも謝ったら殴らないがな!」
ナナ達は定番のセリフを聞きながら、「「「はぁー。」」」とため息をつく。
「・・・で、何の用?」
「ナナ何かしたの?」
「知り合いは選んだ方がいいですよ?」
「あんな知り合いはいないし、これでも選んでるよ?」
「けどあの汚いのはダメ。」
「そうです、気持ち悪いのダメです。」
ティアとリタの『汚い』『気持ち悪い』と言われ、男達は青筋を立て騒ぎ出す。
「うるせぇぞ!!」
「この女も黙らせて連れてくか。」
「傷がついても死ななきゃ大丈夫だろう。」
男達は帯剣を抜き、ニタニタと笑いながら片手剣を構える。
構える姿は見た目以上に雑魚っぽかったが、ナナ達は相手にするのは面倒になり、『結界魔法』を展開する。
「それで要件は?」
ナナの冷たい視線に男の1人は、ニヤリと笑い
「お前の持っている魔道ゴーレムを貴族様が所望してなー。さっさと渡しな!」
「その2人の嬢ちゃんたちも一緒にな!!」
一斉に駆け剣を振るう、結界に接触し弾かれ、男達は転がる。
誰1人結界を砕く者も、結界の襲撃に耐えれる者もいなかった。
転がり完全に意識が無い男達をナナは「どうする?」とティアとリタに視線を送ると
「埋める?」「吊るす?」
2人とも声を揃え違う事を言ってきた、ナナは「はぁー。」とため息をつき。
地面に手をつき『土魔法』で男達の身体を首を残して土に埋める。
少なからずナナ達が襲撃していたのを住民達が目撃しており、今も後ろから心配そうな視線を感じる。
ナナは遠くからの視線に手を振り、「大丈夫ですよー」と声をかける。
「とりあえず冒険者ギルドで襲われた事を報告かな。」
「内緒にしないの?」
「今回は目撃者もいます、黙っていてはダメです。」
「リタのその言い方だと目撃者がいなかった場合はどうするの?」
リタは少し考えてから「全部埋めます」と笑顔で答えられた。
ナナとティアは笑顔で怖い事を言うリタに曖昧な笑顔で返し冒険者ギルドへ向かう。
首を残して埋められた男達は気を失っており、『土魔法』以外では救出不可能だろう。
「それじゃ、ギルドへ襲われた事を報告しに行こう。」
「貴族様がどうとか言ってたねー。」
「貴族繋がりでも盗賊まがいな事をしてはダメです。」
ナナはギルドへ向け歩き出す、ティアは埋められた男達に近づき『土魔法』と唱える。
ナナは「はぁー。」と心の中でため息を漏らし、リタは「なにを?」と首を傾げる。
「やりすぎじゃない?」
「そう?」
「あのなにをしたんです?」
「男達の周りの土を固めた。」
「周りを岩に。」
「・・・逃走防止ですか。」
「「正解!」」
冒険者ギルドまでの道程、露店で買い食いをし住宅街で襲われた事を、露店の店主らに話しながら向かう。ギルドへ到着する頃にはナナ達が襲撃された事は露店街に広まる。
ナナはギルドへ到着すると、受付嬢に露店街からつけられ住宅街で襲われた事を告げる。
「それでナナさん達に怪我は・・・ないですね。無事で何よりです。」
「襲撃者は住宅街に埋めてきたので処理をお願いします。」
「『土魔法』で首だけ出た状態で放置してきました。」
「貴族様からの魔道ゴーレムが所望だとかんとか・・・?」
「最終的にティアとリタさんも連れ去る気だったので埋めました。」
「『土魔法』で固めたので脱出不可能ですー。」
「地面に晒され首状態なので早めに保護した方がいいですよ。」
「え、保護?どうしてですか?」
「露店街で襲われた事を買い食いのついでに話しちゃった。」
「面白そうに聞かれたので正直に話しちゃった。」
「何人かの冒険者は聞いたそばから走っていったし・・・晒されいるかと。」
「晒され首状態って事ですね。『土魔法』で埋めて固めたという事でしたね。」
「はい。」
「それでは『土魔法』で救出可能ですね。」
「多分?」
「もしもの時は協力をお願いします。」
「んー、襲撃者達は汚くて気持ち悪かったからイヤだなー。」
「ん、汚かったー。」
「ニタニタ気持ち悪かったー。」
襲撃者の顔を思い出しナナ達は顔をしかめる。
「とりあえず『土魔法』が得意なギルド職員で行っています。」
「はい、頑張ってー。」
「がんば!」
「頑張って下さい。」
冒険者ギルド内で仕事中のギルド職員で、土魔法使いの者が何人か埋められた襲撃者の元へ向かう。
襲撃され収穫祭どころじゃなくなったので、ナナ達はギルドの待合室で買い込んだ串焼きや焼き鳥を取り出し食べ始める。
ギルドの窓のからも楽しそうな祭りを楽しむ住民達の笑顔が見える。
暫くすると土埃に薄汚れた男達がギルド職員に確保され、ギルド内でナナ達に再び騒ぎ出す。
ナナは面倒だったので男達を端から蹴り意識を刈り取る。
「次襲われたら埋めます。キッチリ全身埋めます。起きたら伝えて下さい。」
「キッチリ叩き潰して埋めます。」
「憂いなく土葬ですね。」
ギルド職員はナナ達が冷たい視線を襲撃者に向けていたので「本気で埋める。」と感じ
「次は無いと伝えておこう。」
ナナ達は「後は宜しくー。」とギルド職員に手を振って収穫祭へ戻っていく。
その後、同じ様な襲撃を受け、キッチリ埋めて誰にも知られる事なく事件は終わる。




