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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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調合教室始めるってよ

初夏になりナナとティアはランクDになり、リタはランクEになった。

そこで1つの指名依頼をお願いされる。

それは『冒険者ギルドで調合スキルを師事して欲しい。』と言う依頼でった。


ナナはギルド職員に依頼の内容の詳細を聞く。


「あの調合スキルの支持ですけど・・・。何を教えればいいんですか?」


ギルド職員は指名依頼の何を知りたいのかわからず首をひねる。


「調合のやり方を教えてもらいたいんですが?」


ナナは少し考えてから


「教えるのは大丈夫ですが、基本的な事は調合教室とかで教えていると思うんですが・・・。」


「確かに調合スキル持ちの冒険者達が基本知識は教えてもらいました。

そこから先、調合したポーションの安定化が現在の問題です。」


「春先から調合スキルを習得しているはずなので、秋頃までにはポーションの一定化すると思います。

まぁ、少しだけなら教えても大丈夫ですが、指名依頼中の薬草採取を止めては薬草が足りなくなるのでは?」


「その辺は大丈夫です。調合スキルを習得した者の中には、自分で採取した薬草でポーションを調合したいと、午前中に採取をし午後から調合作業をしています。」


「そういう事ならお手伝いします。指名依頼は3人全員で?」


「はい、宜しければ。」


「了解です。」


ナナの返事にティアとリタもこくりと頷く。


「それで明日からギルドの・・・どこで教えるんですか?」


「ギルドの会議室でお願いします。調合器具などの道具や薬草などは用意します。

ナナさん達はいつも調合している服装でおいでください。」


「それならいつも使っている薬草を試しに持ってきますよ。」


「何か違いがあるので?」


「いつもは乾燥した薬草を使用してます。薬草採取しながら『ケイトラ』で自分用で干してますし。」


「なるほど薬草を乾燥ですか・・・それはギルドで同じことをしても大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないかな、キチンと乾燥したら保存も可能だし。」


「その乾燥作業も明日教えてもらえれば幸いです。」


「了解です。」


ナナ達は明日から冒険者ギルドで調合を教える事となる。




次の日からナナ達は冒険者ギルドの会議室で調合教室で教師役をする。


最初こそナナ達を見て部屋の中にいる冒険者らは首をひねっていたが


「それでは最初に調合をしてみます。」


ナナ達はテーブルに並びポーションを調合を始める。

ナナは今朝採取した薬草を、ティアは昨日採取した薬草を、リタは乾燥した薬草を使い調合を。

黙々と調合をし、完成したポーションを並べてから


「基本的には知っている知識で調合してます。使用している薬草は、今朝採取した物、昨日採取した物、乾燥した物に分けています。どちらを使用しても同じようなポーションを調合可能です。」


ナナが淡々と説明し、ティアも続いて使用した薬草と完成した調合の説明を始める。


「3つのポーションですが、調合歴2年のポーション、調合歴1年目のポーション、調合歴数カ月のポーションとなっています。」


「私の使用した薬草は、薬草を乾燥し粉末にしたものを使用しました。採取したのは去年の夏頃の物を粉末にしています。多少は調合時に使用する量の変化はあります。」


リタが乾燥した薬草の説明をするとリタが使用した粉末に注目する。


「乾燥した薬草ですが天日干し、砕き粉末状にしています。保存が効きますので冬期間中も調合可能となっています。」


ナナがリタの乾燥した薬草の粉末の説明をする。


「あの乾燥した薬草で自分も調合出来ますか?」


調合教室に参加している冒険者から聞こえてきたので


「ここにいる全員分はあります。今使用している薬草との違いを確かめて下さい。

ちなみに乾燥した薬草の方が調合後のポーションの効果が上がります。

それ以外にポーションの効果が上がるとしたら、調合時に魔力を込めているかで決まります。」


「あの魔力を込めるというのは?」


「調合は基本的に薬草は切り刻み煮込みですよね?」


ナナが調合の仕方を聞いていた冒険者達はこくりと頷く


「その煮込み時に魔力を込めます、この中に魔力操作は・・・これを機に『魔力操作』の習得を勧めます。注ぐ魔力によりポーションの品質が向上します。」


ナナは新たにポーションを調合し、「ここで魔力を注ぎます。」煮込み作業時に冒険者達に見える様に魔力を注ぐ、煮込みが終わり冷やしてからギルド職員が鑑定を終え、こくりと頷く。


「さっきのポーションよりも品質的に上です。ギルドへの納品報酬も1.5倍になります。」


「さっきの『魔力操作』の習得方法は教えてもらえるんですか?」


冒険者からの質問にナナは「さてどうしよう。」と考えていると、ギルド職員が声を上げる。


「『魔力操作』の習得方法に関してはギルドの方からお教えします。調合教育後にギルドの訓練場にて実施します。教えるのは習得方法のみです、習得するから各々の修練次第になります。」


「教えてもらえれば覚えられるんじゃ?」

「すぐに覚えるんじゃないのか?」


「『魔力操作』の習得は修練次第なのは当然です。そこから『魔力操作』の熟練次第で調合の結果が決まります。注ぐ魔力、注ぎすぎる魔力、調合作業を繰り返し完成したポーションを比べていくしか方法が無いですよ。」


「どれくらい修練を繰り返せば満足いく調合が出来るようになりますか?」

「やっとポーションが完成したのですが、品質が一定じゃないのですが。」

「失敗するのは何がダメなんですか。」


ナナが一連の説明を終えて静かに聞いていた冒険者らから質問が飛んでくる。

ナナ達は調合し始めて数年や数カ月しか経験が無いので難しい事は解らない。

さてどう答えた方が正解なのか解らないが・・・


「とりあえず、調合作業は丁寧に慎重にする事だけ考えて下さい。

『調合』もスキルの1つです、作業自体が修練になります、繰り返す事が大事です。

私達も冬期間中の数か月毎日調合作業してましたし、今も時間があれば就寝ギリギリまで調合作業してますよ。」


ナナの言葉にティアとリタがこくこくと頷く。


「私達は薬草採取ばかりしているので、自分達が調合する薬草は自前です。それ以外の薬草をギルドへ納品してますが、調合したくても薬草が無いと落ち着きません。ちなみに工房内には吊るされ干されている薬草がいっぱいありますよ。」


「あの薬草の乾燥期間は・・どれくらい干せば?」


「乾燥期間は天日干しの日数によります、基本的に乾燥していたら大丈夫ですよ。

そうですね、触ってぽろぽろになったら乾燥終了です。」


「なるほど、今度から採取した薬草は乾燥させます。」


「乾燥した薬草の粉末ですが、ここにある調合器具での目安は大さじ2枚ですね。」


「わかりました。」


乾燥した薬草に話がシフトしてきたので、ナナは用意された薬草を使い調合作業を進めるように


「それでは用意されている薬草を使い切るつもり調合作業を始めて下さい。

毎日の繰り返し作業が調合の品質向上へつながります。」


「「「はい。」」」


ナナの言葉に会議室にいる冒険者らは調合作業を始める。

ナナ・ティア・リタの3人は、これで指名依頼が終わったと思い調合器具を片付ける。


「これで指名依頼は終了かなー。」

「疲れたー。」

「お疲れ様ー。」


ナナ達が指名依頼を終わって作業道具を片付け始めていたのでギルド職員が慌てて


「あのナナさん達には数日間お願いしたいのですが?」


ナナ達は片づけている手を止め


「え、もう教える事ないですよ?」

「後は何度も繰り返し調合するだけ。」

「疲れ切るまで調合するだけしかないですよね?」


それを聞いたギルド職員は、他のギルド職員と相談を始め最終的にこくりと頷き。


「それではナナさん達の指名依頼は終了です。」


ナナ達は部屋を出るまえに、乾燥した干し作業が完了した薬草を取り出し


「これが乾燥済みの薬草です、目安になると思うので置いていきます。」


「ありがとうございます。」


ナナ達は会議室で静かに丁寧に真剣に調合している冒険者らに一礼し会議室を後にする。



ナナ達が退出した会議室は時間許す限り調合を繰り返す、その後ギルドの訓練場にて『魔力操作』を教える。暗くなるまで『魔力操作』の修練に励む。

その後、数人が『魔力操作』の習得に至る。



秋頃までには10人以上の調合スキル持ちの冒険者達がギルド職員へと雇用され、次の年には調合教室に参加していた全員がギルド職員になり、ポーション調合に特化したギルド職員が誕生する。


ロースポーツのみならず聖王国全域の冒険者ギルドで同じような調合ギルド職員によりポーション不足の解消は解決していく。


指名依頼は半日で終了した。

報酬も薬草採取よりも高額であった、それでも露店で串焼きや焼き鳥を頬張り、午後からはいつも通り薬草採取をするのであった。


「今日は半日しか採取できないから薬草は全部『魔法工房』行きかなー。」

「工房で乾燥ー。」

「工房用に薬草確保ー。」


薬草は10本1束にし12束確保し、それとは別に穴兎などを6羽を『魔法工房』へ送る。


「食糧確保!」

「お肉確保!」

「アリスさんの料理好きです!」



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