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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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リタ『魔法工房』へ

ロースポーツは聖王国の辺境にあり、冬期間の長い時期が終わりそうになっていた。


冬期間の薬草採取は、特定の薬草しか採取できず、木々の周りの雪を除け、雪の下から掘り出す必要があった。


寒さに薬草の効果が増すと言われ、夏場よりも高値で取引される。


実際に『魔法工房』でポーション調合しても、薬草の効果が上がったかは・・・解らなかった。




リタが冒険者になり、『魔法工房』での生活は驚きに連続だったと思う。


ナナとティアは『魔法工房』について便利な生活空間と感じていたが、リタは『魔法工房』自体が魔法空間と認識し、最初は落ち着かなかった。


最初にハクトさんとアリスさんと対面した時は、何故か号泣し2人に祈りをささげていた。

リタは何故そう言った行動をしたのかは解らず混乱していた。

更にグランさんやアポロさん、ルナさんに対面した時も何故か深々と頭を下げ、最終的には土下座をしだし、ナナとティアは慌てて立ち上がらせた。

それ以上にグランさん達が慌てだし、ルナさんだけはリタに会い嬉しくて抱き着いていた。

抱き着かれたリタは、混乱し気絶していたが・・・、それから数日間はグランさん達に会うたびに緊張し、片言の敬語で話すので『魔法工房』では、敬語禁止とグランさん達から言われる。


また、ナナ達と同様に『魔法工房』での朝練を一緒にするようになり、リタは聖女候補生時代に縁の無かった武器や魔法の修練を始める。

修練場では相変わらず、ハクトとナナが無手で組み手をし、ティアとリタが弓を構え矢を射っている。

ティアが弓を射るのを見ながらリタも同じように射る。


「弓を構える時は無心で、息を整えてから矢を射ります。

当たるまで修練をするしかないです、当たるイメージも大事ですが身体に弓の構えを覚えさせた方がいいです。」

「はい、了解です。」


リタは弓を構えた事も無いので、1時間もしない内に全身筋肉中になる。

その度に魔法で回復しようとしていたので、筋肉痛には魔法での回復は禁止とした。


「魔法で筋肉痛で回復すると筋力が付かないので禁止です。

あまりにも気使ったらマッサージしますよ?」

「お、お願いします。身体がバキバキです。」


リタは腕を回しては「いたたた・。」と呻き、歩くたびに「いつつつ・・。」と呻きだす。

ティアは『土魔法』で椅子を作り、リタを座らせてから足の筋肉をほぐしていく。

肩をもみ腕の筋肉をほぐす、リタは最初こそ痛そうにしていたが、最終的には気持ちよさそうに目を瞑っていた。


「毎日の修練時の最初と最後は身体をほぐしたり、過度な運動は控えよう。

無理をしてもいい事ないです、適度に的確に修練をした方がいいよ。

間違ってもナナの様にハクトさんとギリギリの対戦なんかは止めようね。」


ティアとリタの目の前では、無手であるはずなのにお互いの拳を交差している。

聞こえている音も『ドガ!』『ゴガ!』『ドドド!』『ガガ!』と、修練中に聞こえる筈の音が修練場に響く。


「ナナは本気だけど、ハクトさんは的確に『受け流し』と『カウンター』で反撃してる。

ナナも『受け流し』されないように攻撃の手段に変化を持たせ、『カウンター』を警戒しコンパクトに攻撃をしているけど・・・、ハクトさんの方が一枚上手だね。」


次の瞬間、ナナの蹴りをハクトさんが受け流し、腹部へカウンターを決める。

修練場にナナが吹っ飛ばされ転がされる・・・、転がりながら立ち上がると同時にハクトさんに向かっていく。


「凄い勢いで吹っ飛ばされましたが?ごろごろ転がっていますが大丈夫なんですか?」


「大丈夫、カウンターと同時にナナも後方へ飛んでるみたい。

転がりながら衝撃の軽減をしているし、立ち上がると同時に動いているから大丈夫。」

「見た目以上にダメージが無いの?」

「ダメージが無いわけじゃない、ナナは身体が動けば戦い続ける。」

「何でそこまで・・。」

「ナナは戦うのが好きじゃないよ、戦う必要がある時に失敗しないように、何があっても対応できるように戦い術を学んでいるって聞いたよ。」

「何があっても対応できる術ですか・・・、私も覚える事が多そうです。」

「最初は身体作りからね、身体が出来ないまま技術を習得しても、十全使いこなせないからね。」

「了解です。」


ティアのマッサージにより、身体の痛みが和らぎ再び弓を構え矢を射る。

正確な構えを身体に覚える為に、自身に遠距離の攻撃を覚える為に。


リタは鈍器などの近距離攻撃しかなく、多少は魔法による攻撃手段はあるが、魔力消費が激しく攻撃の手段が増える事は、冒険者としては必須であった。


『魔法工房』での1日の始まりは、修練場での朝練をし、日中は冒険者として活動、夕方から『魔法工房』に戻り、工房でポーション調合をする。

身体休めの休憩をするが、新たな武器の修練や魔法の修練は面白く、ナナと同様に寝落ちするまで頑張るのだった。

ティアは寝落ちするナナとリタを魔法で綺麗にし布団へ運ぶ、『魔法工房』で安心しているのか、介護してくれる者がいるからギリギリまで頑張っているのかは解らないが・・・。



春になる頃には、リタのポーション調合も初心者から卒業し、ポーションの品質も向上していく。

弓の腕も穴兎ならば狙い撃つまでに成長し、ナナ達は草原では無類の攻撃力を得る事になる。

魔法の腕前もアリスさんとルナさんの手ほどきにより、『回復魔法』や『神聖魔法』のLvUpを果たし、後方支援の要へとなる。

ナナ達は3人とも弓使いであり、遠距離からの狙撃、近づかれてからのナナとティアの遊撃、遠距離からの魔法支援、パーティーとしての構成としてはアンバランスな気もするが、ロースポーツ周辺では問題無く冒険者として活動できた。


「そういえばナナさんは弓以外の武器も使いこなせるんですよね?」


「使えるけど弓矢の方が安全圏内で討伐を終えるからねー。」


「草原では弓矢一択、森の中では・・・やはり弓矢一択かな?」


「それは弓矢の一矢で倒せるからでしょ?

ちなみにナナさんは何種類の武具を使いこなせるの?」


「確か片手剣に両手剣の剣全般、棍など刃が無い物も使えるね。後はトンファーみたいな変わった武具も好きかな。短刀や鉈剣も携帯しているし、槍も斧も使えるけど採取には邪魔になるから使う事は無いかな。」


「全種類の武具が使いこなせる?」


「修練は積んでいるけど、使い慣れた武具しか使う気にはなれないよ。

使えるが得意と言う訳じゃなく、逆に使えるけど苦手な武具もあるしね。

実際に剣類は苦手かな・・・長剣を振ると体も一緒に振られてる感じがしてなー。」


「ナナは逆に剣の重みを活かして動き回ってたけどね。

腰の回転を活かし剣の重みを乗せての剣舞は見事だったと思う。」


「それでは、ナナさんはどの武具が好きなんですか?」


「弓かなー、ロースポーツで最初に穴兎を倒した時も弓矢だったし、草原や森の中でも弓を構え静かにいるのが好き。

後は、鉈剣の様な短刀かな。トンファーの様な武具も好きだけど対人武具だし。」


「冒険者としては偏った装備、着ている者も革の上下なのに作務衣だし、多少は手甲やブーツはあるけど、普通の軽装備より防御的に低いよね?」


「弓矢を使うから装備一式は手作りですか?」


「そだよ。工房で夜な夜な作成してたね。

森や草原で毛皮は十分すぎるほど手に入れたから、現在の装備品は試行錯誤に最高傑作です。」


「リタの装備一式もナナ作の物になるからねー。」


「戦闘時は『魔法障壁』を常時展開するので、魔法効果向上のマントでもあれば十分です。」


「それなら魔法陣を刻む必要があるな。フード付きマントの裏側にでも刻めば十分かな。」


「魔法陣の魔力消費を抑える必要もあるから、十分な検証が必要。」


「あのナナさんもティアさんも魔道具を作れるんですか?」


「魔道具は作った事は無いよ?魔法陣を刻むだけ。」


「魔法を魔法陣に変換し刻むだけ、魔道具なんて凄い物は作れるはずないでしょ。」


「・・・・あの魔法を魔法陣への変換も、魔法陣を刻むのも普通は無理です。そして、魔法陣が刻まれている物は普通は魔道具と言われていますよ?」


「あれま、知らなかった。」


「そだね、魔法陣を刻むのは普通かと思ってた。」


「自作の魔道具ですか、ナナさんとティアさんの普通は私の思っている物とは別物ですね。」


「ちなみにリタさんもアリスさんから魔法陣について教えてもらっているから、そのうち自分で魔法陣を刻めるようになるよ。」


「ハクトさんに武具の扱いと戦い方を教えてもらい、アリスさんから魔法や調合などを教えてもらっているんだよ?それ以外にもルナさんにも何か教えてもらってるから、将来的にリタさんの方が凄いことになると思うけど?」


「そういえばハクトさんからもアリスさんからも、ルナさんからも色々な知識と技術をご教授してもらっていますね。自分の物に出来るかは・・・諦めずに修練を重ねるしか無いですが。」


「それなら大丈夫、リタさんが思っているより凄い動けている。」


「魔法の精度も向上してるし、無駄無く魔力消費してるから、魔法による攻撃速度は3人の中で1番じゃないかな?」


「え、そうなんですか?確かにナナさんもティアさんも攻撃魔法を多用して無いですが・・・?」


「攻撃魔法よりも弓矢での攻撃の方が好きだし、魔法を撃つ前に身体が動いてまう。」


「それは解る、弓を構えて矢を射る方が自然に出来るからねー。」


「私は魔法で攻撃した方が命中率も高いので、自然に魔法操作が上手になったのかも知れません。

ただナナさんやティアさんの方が魔法の威力は大きいので比べる事は出来ません。」


「『魔法障壁』展開して、攻撃魔法を放つことが出来てるから、誰よりも並列処理が上手に機能してるんだろうねー。」


「それは解る、同時にいくつの事を実行するのは混乱するけど、リタさんは平気に実行してるしー。」


「平気じゃないですよ。結構混乱してますー。」


リタはそういうが、『魔法障壁』を展開し、複数の魔法を唱え、数か所の的へ魔法を当てる事を、ナナ達と話しながら実行していた。それはナナ達にも出来ない能力であり、ナナとティアが物理攻撃の砲撃台とするなら、リタは攻撃魔法砲台と言える存在になっていた。

草原でリタは杖を構え、野犬の群れに魔法を放ち、一人無双をしていた。


問題としたらリタの魔法は野犬を粉々にし、何一つ得る事が出来ない事だけ・・・。


自然にリタの魔法禁止・一人無双禁止となる。


「リタさんは強敵のみ魔法解禁としますー。」


「リタさんは粉々禁止ですー。」


「え、あれ、はい。了解ですー。」


次の日から、アリスさんからの指導の下、攻撃魔法の手加減を習得する。

この手加減した攻撃魔法は、最低限の殺傷能力を持ち、野犬の毛皮や肉を粉々にする事無く、頭部のみ破壊する凶悪な攻撃魔法へと進化する。


他の冒険者からリタの攻撃魔法は『頭部爆裂魔法』と恐れられたとか何とか・・・。

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