贈り物からの
『ロースポーツ』収獲祭は『焼き肉祭り』の次の日は
前日の騒ぎがうそのように静かな朝になって・・・はいなかった。
宿屋の食堂では酔いつぶれた冒険者や住民達が酷い状態で床に転がっていたり
酔いつぶれた状態で机に身体を投げ出していたり
何より食堂が機能していない状態だった。
食堂の調理人や女将さん達は調理場で前日の皿洗いやコップを洗っていたり
食堂は掃除するには時間が無かった。
「あの手伝います。テーブルの皿を運んでもいいですか?」
「ごめんなさいね。いつもはもう少し静かに飲んでいるんだけど・・・。」
「おはようさん、昨日は手が回らなくて片付けが終わらなくて・・・。」
「とりあげず、皿を運んでもらえば大丈夫だから・・・。」
忙しそうに洗い物をしている手を止めナナに話しかけてくれた。
「わかりました。食べかけはどうしたらいいですか?」
そういうと調理場から大きめのバケツを2つ持ってきて
「この中に入れてくれるかな。
さすがに残り物を客に出すわけにもいかんし
これは畑の肥料にするとかで獲りに来る手筈になっているから。」
「わかりました。」
ナナは皿を回収しては残り物をバケツに入れていく。
皿の回収の後はカップの回収だが飲みかけであったり
テーブルの下に落ちている物もあり皿の回収以上に大変であった。
こぼした料理やテーブルの汚れは『生活魔法』で綺麗にしていき
食堂は酔いつぶれた冒険者や住民達だけになっていたが
さすがに寝落ちしている者達を外へ投げ出すにもいかず
「これで掃除は終わりでいいですか・・・?」
「そうだね、飲んだくれは・・・掃除する訳にいかないし。」
「それにしてもありがとうな。」
「本当なら手伝ってもらう訳にはいかんのだが・・・。」
「本当に助かった、ありがとうな。」
「いえいえ、いつもこれじゃ大変ですね。」
「まぁ、祭りの後のなんとやらで気にしちゃいないよ。」
「なんだかんだで肉の提供は無料だし
酒代だけ頂いてはいるが結構な稼ぎになるから助かるんだよ。」
「そうだな、大変というよりみんなで騒ぐ事が出来るの嬉しいわな。」
「肉の消費が半端なく多いから祭りをするらしいけど
当初は月2回じゃなく月4回の計画だったらしいがな。」
「まぁ、月4回はやる方もやられる方も無理と声を揃えたらしいが・・・。」
「『ロースポーツ』は肉が豊富という事ですか?」
「さぁーどうなんだろうね。冒険者が優秀なんじゃないかい?」
「それか『ロースポーツ』周辺の森が生物で溢れているとか?」
「そうなんだ・・・。」
「森へは行かないのかい?」
「穴兎と薬草採取でギリギリですよ。
森へは危なくて行こうとは思いません。」
「そうかそうか、無理はするなよ。」
「そうだな、いいやつからいなくなる。」
「それ今日は荷物が届くんだっけ?」
「はい、午前中は食堂でゆっくりしようと思います。」
「それじゃ、遅いが朝ご飯はどうする?」
「スープだけお願いしてもいいですか。
昨日食べ過ぎたみたいで・・・今日は腹休めです。」
「それじゃ、野菜と肉のスープを持ってくるから座ってな。」
「はい!」
暫らくすると野菜と肉がたっぷり入ったスープが運ばれ
腹休めと言ったのだがスープの美味しい匂いに負け
「いただきます。」と手を合わせ食べ始めると
あっという間に食べ終わり「ごちそうさまでした。」と
再び手を合わせ「美味しかったです。」と食器を厨房へ返すのだった。
「さて、荷物が来るまでどうしよう・・・。」
宿屋の入り口付近の席に座りぼんやりしていると
宿屋の扉から酒樽を運ぶ冒険者2人が入ってきた。
「あの届け物です。酒樽2つで届け人は『ナナ』という人なんですが
宿泊しているなら呼んで貰いたいのですが。」
「あーはいはい、聞いていますよ。
どうします本人に渡しますか?それとも私が預かりますか?」
「出来れば本人に確認して貰いたいんですが・・・。」
「はいはい、それじゃ待っていてね。
ナナさーん、荷物来たよ。」
女将さんに声をかけられ急ぎ向かうと
酒樽を運んだ2人は驚きナナは本人確認の為に
昨日の契約書とギルドカードを提示し
「はい、確認終わりました。
それでは確認のサインをお願いします。」
そう言われ運んできた冒険者が見せてきた用紙にサインをし
「はい、大丈夫です。」
ナナのサインを確認し2人はお互い頷き
「では、ありがとうございました。」
そういい宿屋度出ていく。
ナナは嬉しそうに酒樽を受け取る。
「そういえば酒樽を運んだのは冒険者っぽかったんだすが・・・。」
「あー、あれもギルドの仕事というかクエストの一環だね。
さっきサインしたのはクエストでは必須だしね。
過去に確認を疎かにして荷物を紛失した事があってな。
それ以降本人確認と受け渡しの確認を必須項目としたんだよ。」
「それは知らなかったです。」
「あの2人は礼儀がしっかりしてたから配達の仕事に向いているかもなぁ。」
「向いてるですか?」
「あぁ、配達といっても運ぶだけと高をくくり高圧的な態度で運ぶ者もいるのさ。
そういった感じの冒険者から運ばれた物を毛嫌いする人もいてな・・・。」
「難しいんですね。」
「まぁ、なんだ気にするほどの事じゃないんだがな。
それで酒樽なんか買ってどうするんだ・・・飲むのか?」
「お世話になった知人に届けようと思いまして。」
「そかそか、配達ならギルドでも届けてくれるがどうするんだ?」
「これは自分で運ぶので大丈夫です。」
「そかそか、『ロースポーツ』には美味しい物も多くあるし
そのお世話になった人に色々届けてあげなきゃね。」
「はい!」
ナナは小さな酒樽を手にし部屋へ運ぶ
小さな樽・・・持った感じから10kgは無いなと考え
生前に爺さんが飲んでいたお徳用の焼酎と同じ量が入っていると思い
値段的に樽で買った方がお買い得なのか・・・などと考えていた。
部屋に入りすぐさま『魔法工房』へ送り
「これは昨日言っていたお酒です飲んで下さい。」と
手を合わせ神様らに声をかけてから「2つともタイプの違う酒ですがお飲み下さい。」
そう言ってから疲れたので今日は昼寝をしようと思い・・・
次の日の朝までぐっすり眠りにつく・・・。
次の日、冒険者ギルドへ行くと受付嬢から
「ナナさんに薬草採取の依頼が来ていますがどうしますか?」と
再び聞かれたので即答で「お断りします。」と断るのだった。
そして、クエストボードへ向かい常駐クエストを確認し草原を目指す。
その後、冒険者ギルド内でナナへの個人依頼に関して一悶着があったが
当然のことではあるがナナは知らず知らせずに数日が経つ事になる。
ナナは毎日の日課として穴兎の毛皮と薬草をギルドへ納品し
いつも通り冒険者ギルドでクエストボードを確認しに行くと
受付嬢から呼び止められ「ナナさんに臨時のパーティー加入のお願い来てますがどうしますか?」と
ナナは何を聞かれたのか最初わからず首を傾げていたら・・・
再び受付嬢から「ナナさんに臨時のパーティー加入のお願い来てますがどうしますか?」と
聞かれたので「お断りします。」ときっぱり断りギルドを後にする。
草原で穴兎を弓を構え矢を射りながら
「今日の受付嬢のお願いはなんだったんだろ・・・。」と考えてみたが
「多分、一人で活動しているから声をかけたのかな?」と思い
「まぁ、今は他の冒険者と組むには実力不足だししょうがないな。」と呟き
ナナは『周辺感知』で穴兎の動きを感じ取り弓を構え駆けだす。
「今日は行動範囲を広げていこう。」
草原に一人弓を構え身体を低くし風下へ移動しつつ
気配を殺し確実に穴兎を仕留めていく。
『一矢一殺』で無駄矢を無くし次々と射る。
いつもの行動範囲より更に500m広げての穴兎討伐。
『ロースポーツ』の周囲1kmを数時間で周り30匹を倒し
全てを『魔法工房』へ送りながら「今日は毛皮10個納品しよう。」と思い
『魔法工房』から『穴兎の毛皮』を10個取り出す。
「今日は疲れた・・・。」と数時間走りっぱなしで矢を射る事だけをし
体力と集中力が消耗しきった身体は草原の真ん中で倒れるように横になる。
矢筒を見れば矢は残り2本しか無く「矢の補充か・・。」と呟き
それにしても狩り尽くすのは無理だな・・・穴兎。
『周辺感知』でナナの周りを調べてみてわかった事だが
予想以上に穴兎の反応が多い事に気が付き
「湧き過ぎだな。害獣じゃないのが救いだな。」
ナナが横になった事で穴兎が動き出したがナナを襲う訳でも無く
草原の草をもしゃもしゃと食べ始めるのを見ながら
「穴兎の大量発生で草原の草が喰い尽くされる?」などと考えたが
考える前に昼寝を始めてしまう・・・。
午後になりお腹が減り目を覚ます事になるのだが
昼ご飯の弁当を食べてから薬草採取をする気にもなれずに
そさくさとナナは『ロースポーツ』へと帰還しギルドへ「穴兎の毛皮」10個を納品し
宿屋へ戻り早めに晩ご飯を頂き再び眠り始めるのだった。
連続戦闘の負荷は予想以上で長時間の『身体強化』及び『速度強化』に加え
『周辺感知』との複数のスキルを使用し精神的に疲れ果てる。
もっとも寝れば次の日には昨日の疲れなど無かったが如く元気になるのだが
「やりすぎはダメだな、疲れて眠くなるし・・・。
今日は矢の補充は忘れずにするとして・・・昨日出来なかった薬草採取をメインで頑張るか。」
そういいながらナナは寝起きに身体を動かしながら呟く
柔軟運動をしながら自分の体の柔らかさに驚くと言うよりドン引きし
「子供の身体は柔らかいなぁ。」
などとか考えていたが身体が硬いと怪我の元だし準備運動はしっかりせねば。
身体を動かしながら部屋の机の上に真新しい矢筒が置いてあるのを見つけ
『鑑定』スキルで視てみると
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『ナナ専用の矢筒』
神様からの贈り物。
矢筒の矢が一定数減ると増える仕様。
初期の木の矢のみ増える不思議な矢筒。
ナナ専用の矢筒な為に他の人が使用しても増える事は無い。
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真新しい矢筒を受け取りナナは手を合わせ
「神様矢筒ありがとうございます。」とお礼を言い昨日の残りの矢を入れる。
軽く身体を動かし身体がポカポカしてきたところで『生活魔法』で身体を綺麗にし
装備を整え食堂へ向かう。
「おはようございます。」
食堂では数人の冒険者が食後のお茶を飲みながら談笑していた。
ナナに手を上げて挨拶する者や「おはようさん」と声をかける者もいたので
「おはようございます、今日は早いんですね。」と声をかけると
「いやいや、お前さんが寝坊なんだよ。」と言われ
「そうなんですね・・・疲れて朝までぐっすりでした。」と言うと
「無理すんなよ。」とか「逃げるのも必要だぞ。」と言われたので
「はい、今日は近場でのんびりする予定です。」と答えると
「若いからって無茶をする者も多いが時には逃げな!」と
そう言われナナはコクリと頷き朝ご飯を食べ始める。
新しい矢筒は矢が減らないしようか・・・
どんどん矢を射る事が可能になったけどそれと同時に疲れるのは困るな。
やはり修練不足なのか・・それとも他に原因があるのか。
「一度神様に相談した方がいいのかな?」
『ナナ専用の矢筒』
神様からの贈り物。
矢筒の矢が一定数減ると増える仕様。
初期の木の矢のみ増える不思議な矢筒。
ナナ専用の矢筒な為に他の人が使用しても増える事は無い。
神様らへのお酒のお礼?として受け取った不思議アイテム。