表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
77/87

トロトロ走るよケイトラ号

聖王国の首都からのロースポーツまで、ナナ達は21日間かけ到着する。


ロースポーツに近づくにつれ降り積もる雪も増し、草原も街道も真っ白な世界に変わっていた。


もともとトコトコ走っていた『ケイトラ』は、圧雪した街道に車輪を取られないように、四輪を回転し低速で泥濘ぬかるみにだけ気を付け、トロトロ走っている。


トロトロ走っている為に、草原に灰色狼の気配があれば、ナナは『ケイトラ』を停車し


「ちょっと灰色狼いるから倒してくるねー。」


荷台で調合していたティアとマリアが「「はーい。」」と返事を返す。

ナナの代わりにティアが御者席に座るのを確認し、ナナは弓を構えながら雪原へ駆けて行く。


ナナは『周辺感知』により『ケイトラ』に近づく気配を目視で確認し、発見後に弓を構え矢を射る。

向かって来る灰色狼の群れは、一回り大きい個体を一番に倒し、群れの隊列が崩れている間に、ナナは静かに素早く丁寧に残らず灰色狼の群れを殲滅する。


「今回の群れは6匹か、雪原の反応は・・・無いな。

この場で解体は無理だし『魔法工房』に送るか。」


一撃で沈めた灰色狼は損傷の少ない『灰色の毛皮』『新鮮な肉』を6匹分手に入手。


「『灰色の毛皮』はギルドでも冬季限定で依頼が出ていたはず・・・。

『魔法工房』での解体後はアリスさんと相談しよう。」


暫くすると『魔法工房』のアリスさんから『解体終わったよ。』と話しかけられ


「灰色狼の肉は調理お願いしてもらっていいですか?」


『何かリクエストはありますか?』


「それならアリスさんの料理をマリアさんに食べさせたいのですが・・・。」


『それなら串焼きにしましょう。

手軽に何種か味を変えて『串盛り』なら、手軽に食べる子が出来ますから。』


「お手数ですがお願いします。

それとマリアさんを『魔法工房』へ招待してもいいと聞いたんですが?」


『『魔法工房』に住まう者達から許可が出ています。

何よりルナさんからマリアさんに早く会いたいと何度も何度も・・・。』


「一応マリアさんがロースポーツで冒険者生活が始まったら『魔法工房』に戻るよ。」


『ナナさん達は知らないと思いますが、ロースポーツでは元聖女候補生マリアさんを歓迎する準備をしています。していますが予定していた期間に到着していないので、冒険者ギルドが捜索するかとか、聖王教会の方でもマリアさんの遭難探索を本気で考えてますから急いでください。』


「何か大事になってますね、ロースポーツまでの街道を移動中に『ケイトラ』に乗っているマリアさんを確認しているはずなんですが・・・?」


『目撃していても平均15日間で到着する馬車の旅が、20日以上経過すれば心配するでしょう?

それと『ケイトラ』に乗っているのは、成人したての冒険者3人ではね。

距離的に1~2日でロースポーツに到着するはずですが、何日後に到着予定ですか?』


「今日の様に『周辺感知』で反応があれば、停車して討伐するつもりです。

森から離れている雪原だから『灰色狼』の群れしか見つける事は出来ないかもしれませんがね。」


『『灰色狼』の群れはランクC以上の討伐依頼なんですがね。

ナナさん達には対処外の依頼なので、間違ってもギルドへの納品には気を付けてくださいね。』


「『魔法工房』の食糧が増えるので問題無し、毛皮も加工すれば装備を一新してもいいし。」


『『黒狼』よりも柔らかめの毛皮なので、敷物にしても良いかもしれませんよ。』


「それなら『ケイトラ』の荷台に敷けば寒くないかな。」


『やっぱり荷台は寒いの?』


「はい、防寒装備に火鉢でも寒いです。調合するのにギリギリの環境です。」


『『ケイトラ』全体を『結界魔法』を展開し、追加で『保温』の魔法陣を刻んだ方がいいかな。問題は『保温』を展開するのにどれ程の魔力消費があるか・・・検証が必要かな。

次に『魔法工房』に戻った時に追加の魔法陣を刻みましょう。』


「長旅で『ケイトラ』の負担や負荷がどれ程の物か調べないといけないし、何よりティアと2人乗りなら問題無いけど、3人乗りでは荷台が狭いです。」


『ナナさんは御者席に寝ていたわね。』


「・・・はい。」


『荷台の拡張も『魔法工房』で色々考えましょ。』


「はい。」


『『ケイトラ』の方でナナさんを心配そうに見ているから戻った方がいいかも。

それじゃ、『灰色狼』の方はきっちり調理しておくからね。』


「はい、調理完了したら教えて下さい。

時間とか関係なく停車してマリアさんと食事会をしますから。」


『それじゃ、美味しい料理を作りましょー。』


「お願いします。」


ナナは心の中でペコリで頭を下げる。


『ケイトラ』の乗り込んだナナ達はトロトロと街道を走る。


暫くすると『魔法工房』のアリスさんから料理が完成したとの報告を聞き、『ケイトラ』を静かに停車し、ナナの「休憩しますー。」と荷台に声をかける。ティアとマリアが「「はーい。」」との返事を聞き、ナナは『魔法工房』からアリスさんの料理『串盛り』をお取り出す。


「とりあえず串焼きの盛り合わせねー。」


「おぉー、これアリスさんの料理?ひょっとして『灰色狼』の??」

「え、さっき討伐した狼ですか?どうやって解体して調理したんですか?」


マリアの当たり前の質問に、ナナとティアは『『魔法工房』でお願いしました。』と答えた。


「その『魔法工房』って言うのは、この荷馬車の看板のですか?」


「そそ、『魔法工房』で解体し調理までお願いしました。帰ったら感謝とお礼をしなきゃ。」


「お礼のお酒も樽で買おう。大樽で!」


「聞けば聞くほど『魔法工房』が何なのか解らなくなります。

私も『魔法工房』に行って感謝とお礼は・・・。」


「それは大丈夫、マリアさんに『魔法工房』に招待状を頂いております。

ロースポーツで冒険者生活が始まったら向かう事になりますが・・。」


「それなら早くロースポーツに到着して冒険者始めましょ!」


「ティアさん落ち着いてください。一応、ロースポーツの聖王教会に到着の報告後に、教会から卒業後に冒険者として新しい生活となります。領主様にもロースポーツに到着と報告が必要だったかな?」


「聖王教会と領主に報告が必要なの?」


「どうやら元聖女候補生が何処で活動するかを知るためと言われています。

流石に元聖女候補生が行方不明ではダメと言う感じですかね。」


「違うと思うよ、他国への誘拐を心配しているんだと思いますよ?」


「あー、それはあるかも。」


「聖女としての教育に多数の魔法の習得は、聖王家のみならず貴族達からも、目を付けられている可能性がありますね。大討伐も経験しているから聖王騎士団も目を付けていたかもな。」


「聖女候補生はそんな万能な能力は無いんですが?」


「若き乙女の聖女候補生と言う音の響きも影響してるんじゃない?」


「可能性は大いにあり得るかもー。」


「そういえば聖王国の王族からは聖女候補生に何らかの声掛けは無かったの?」


「そちらの方へは、次代の聖女様が聖王教会と聖王国との繋がりがあるから接触は無いと思います。

聖王教会としては教会勤めに勧められましたが、私には合わないと思い大討伐に参加したロースポーツで活動できればと考えていました。」


「他の元聖女候補生も同じ感じ?」


「そうですね、各地で様々な大討伐に私たちは参加しました。無事に生き残った者は聖王教会に戻りましたが、重傷者は怪我が完治しても再び聖女候補生に復帰する事はありませんでした。それ以外にも大討伐に参加した冒険者達と組む者、故郷へ戻り教会勤めをする者など様々です。」


「やっぱり大討伐に参加して負傷した聖女候補生もいたのか・・・。」


「魔法やポーションで完治していても、恐れや痛みは完治するのは・・・無理でしょうね。」


「生きてるだけで十分です、生き残っていれば次に繋げられます。ダメなところを直し鍛え直し対応すればいいんです。それでもダメなら逃げればいいんです。」


「そうだね、逃げても避けても生き残れば問題無し、無駄死にだけはダメ。」


「嫌な事は否と言える冒険者ですよ。

なんしろナナさんは指名依頼を平気で拒否しますからね!」


「面倒な事は即拒否です。美味しい話は裏があります。」


「何だっけ前にナナさんが言っていた。『石橋を叩いて粉砕だっけ?』」


「『石橋を叩いて進むね。』慎重に慎重を重ねるという話ね。

叩いて粉砕したら通れないし、粉砕したら偉い人から叱られるよ・・・。」


「慎重に慎重を重ねるですか・・・。面倒な話は拒否ですね理解しました。」


「それでも無理な時は実力行使で逃げればいいんです。」


「そだね、逃げる時は付き合うよー。」


「冒険者なんだから活動は何処でもいいんだからさー。」


ナナは串焼きを頬張り、ティアとマリアはこくりと頷く。

2人とも串焼きを頬張りながらナナの言葉の意味を考えている。

『何処で活動してもいい』

その言葉は、何処でも冒険者としてやっていけるという話だった。


「ナナはロースポーツ以外でも冒険者やるの?」


「んー、ロースポーツは好きだけど色々な街へ行って美味しい物を食べたいし、海とかも行ってみたいしなー。海の幸は内陸部では食べれないし気になります!」


「ナナさんの冒険者としての活動は美味しい物を探す事です?」


「美味しいのは気になるし、海の幸って言うのも興味がある。」



「ティアもだけどマリアさんも薬草採取とポーション調合で何処でも活動できるよ?

ティアの弓矢の腕があれば討伐依頼も可能でしょ?

マリアさんは『回復魔法』があるから、それだけで生活できるし難しく考えすぎ。」


ティアとマリアは自分たちの実力で何が出来るのかを考え始める。

もっとも串焼きを頬張るのを止めず、食べながら何やら考え始めている。

『串盛り』が無くなれば追加の『串盛り』の大皿を取り出す。

大皿が3枚食べ尽したころ、ティアとマリアが満足したのか『美味しかったー。』と呟き倒れてしまう。

満腹になり横になり・・・2人揃って静かに寝息が聞こえてくる。

2人を荷台に寝かしつけ、ナナは今日進むのは止めておくか・・・と考え、ナナも御者席で眠り始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ