トコトコ走るよケイトラ号
少し短いです。
ロースポーツから聖王国の首都まで行きは5日間かけていたが、帰りは10日以上かけゆっくりと街道を走る。トコトコと走りながら景色を楽しむ。
交代で運転しながらナナ達は荷台でポーションの調合をし、マリアの調合を繰り返し行い、ロースポーツ到着まで調合の腕を磨いていく。
未だに一定の品質で調合する事は無理だったが、調合を失敗する事が無くなり、調合したポーションは少なからず売り物とギルドへ納品可能となった。
「そういえばマリアさんはロースポーツへ行ったらどうするの?」
「聖女候補生じゃなくなったから教会勤めか・・・冒険者かなー。」
荷台でポーション調合しながら、ティアが何気にマリアに質問している。
「何をするか決めてないの?」
「うん、聖王国にいると聖王教会本部勤めになりそうで嫌だったし、何気に聖王騎士団からも斡旋行為が激しくてねー。」
「それで辺境に?」
「そ、辺境に逃げてきました。」
「そういえば聖女候補生って、何をしてたの?
ロースポーツでの大討伐では後方支援していたと思うけど??」
「聖女候補生の次代の聖女を育成する教育を受けてたかな。
礼儀作法から聖王国の歴史や儀式、聖王教会での冠婚葬祭の作法から何かもかも?
魔法も色々習得してますね、『回復魔法』『神聖魔法』『生活魔法』・・・今は『土魔法』に『調合』も習得しました。」
「後方支援特化っぽいね。」
「多少は接近戦も出来ますよ?聖女という事で刃物は使ってませんでしたが、鈍器や杖術などは習得済みです。」
「鈍器と杖術・・・?」
「棒術じゃなく杖術?」
「系統は同じです、棒は長さに制限は無く、杖は短いので接近戦特化かなー。
鈍器はメイスとか棍棒かな?戦闘スタイルは叩いて潰す『撲殺武器』です。」
「聞くだけなら物騒っぽい武器ね。」
「鈍器は重いので携帯武器としては嫌いです。
杖の方が軽くて使いまわしもいいので好き。」
そう言ってマリアが懐から30㎝の短い杖を取り出す。
見た目小さな木の棒であるが・・・。
ティアが木の棒のような杖を首を傾げながら見つめ
「それが杖?」
「そうですよ、見た目道理に木の棒です。
見た目以上の攻撃力も無いです、戦闘武器と言うより携帯武器と考えてください。
もっとも携帯していても刃物じゃないので殺傷能力は皆無ですよ。」
「使い勝手のいい牽制用武器かな?」
「そう言ってもらえれば嬉しいです。
多少は魔法効果を向上する力はあるらしいんですが・・・私にはわかりません。」
「魔法武器・・・魔法効果向上?
うむ、さっぱりわかんないよー。」
「そうだね、よくわかんないなー。」
マリアは調合しながら「えへへ」とニコニコしながら調合している。
ティアもニコニコしながら話をしている。
ナナは荷台の2人の話を聞きながら、少しだけ声を大きくして荷台の2人へ話しかける。
「それじゃ、ロースポーツで一緒に冒険者やるかー?
薬草採取ばかりだから冒険者としては採取系冒険者らしいけど。」
ナナの大きな声での提案をマリアが食い気味で荷台から飛び出し。「是非!!!」とナナの耳元で大声を上げる。ティアも嬉しそうにマリアを後ろから抱きしめながら「えへへ、一緒ー。」と呟いている。
ナナのマリアの冒険者としての提案は、『魔法工房』にいるグランさんら5人の推薦もあり、何気にマリアはルナさんのお気に入りだったりする。
そして、マリアを『魔法工房』への立ち入りの許可を頂いている。
ナナはどうやってマリアを『魔法工房』へ招待へ誘おうか悩み、最終的にティアの時の様に普通に案内すればいいかーと考える。
ロースポーツまでの街道は、荷馬車や馬車が結構見かけるが、誰も彼も『ケイトラ』を見ては驚き、話しかけられたら冒険者ギルドか、看板を指さし工房へ直接聞いてください・・・と教えて置いた。
聞かれた事を全て話しては面倒だし・・・やっぱり面倒と考えた。
無視するのも考えたが、進む向きが一緒なのか停車するたびに聞かれ、簡潔に適当に質問へ答えた。
トコトコする走る『ケイトラ』をあっさりと追い越し、ナナに質問した者達は馬車で先へ急いだ。
「みんな忙しそうに移動開始したねー。」
「『ケイトラ』がトコトコ進むからじゃない?」
「ゆっくりで好きですよー。」
「荷台で調合して大丈夫な速度だしねー。
そういえば、マリアさんは『ケイトラ』移動時の魔力消費は問題無い?」
「そういえば走行には御者席から魔力を消耗するって聞いたけど大丈夫ですね。
最初は驚きましたが慣れました平気ですよー。」
「それなら良し!
荷台には魔力消費の範囲内だけど御者席よりは微量な消費量。
気分が悪くなったら教えてね、停車してゆっくり身体休めしましょ。」
「魔道ゴーレム『ケイトラ』は搭乗者の魔力が原動力だからなー。
馬無しの代わりに誰でも運転可能な万能の移動車。」
「万能かは分かんないけど運転が面白いから好き。」
「馬車よりも快適なのでいいですよね。」
「今はトコトコとしか走ってないけど、街道を疾走するのは気持ちいい。」
「冬期間の雪道を疾走って・・・聞くだけで寒くなるよ。」
「私も運転出来れば面白そうなんだけど・・・。」
今のところ『ケイトラ』の運転・操縦はナナとティアのみの設定となっており、『魔法工房』へマリアを連れて行けば『ケイトラ』の操縦・運転が可能になるかも知れない。
『魔法工房』へ誘うのもマリアが冒険者ギルドへ登録した後でもいいだろう。
ロースポーツまでの残り数日と言う距離までとなり、停車しての討伐も多少こなしていく。
それは討伐し、夜営時に焼肉をする為であった。
新鮮な肉を新鮮なうちに美味しく頂く、美味しい新鮮な肉は塩のみでも美味しい。
マリアは元聖女候補生であり、聖王教会所属であったが、食肉禁止と言う訳でも無く、ティアと競うように焼肉を頬張っていた。
盗賊団の大討伐時は基本保存食を調理していたので、いくら温かい食事でも焼肉は久しぶりの様だった。
「マリアさんは美味しそうに食べているけど、聖王教会では焼肉とかは?」
「食べない事も無いのですが、冒険者よりも肉を食べる機会は少ないですね。」
「聖王教会での食事は野菜中心なのかなー。」
「ティアは野菜苦手だっけ?」
「アリスさんの料理は野菜が美味しくなってるから好き。
それよりも美味しい肉料理はどれも好きー。」
「あのアリスさんて?」
「『魔法工房』の錬金術師アリス、『ケイトラ』の制作者であり、ティアと一緒に魔法などの師匠だよ。それに料理のベテランなので料理の師匠でもあります。」
「全ての料理が美味しいー、串焼きや焼き鳥に加えて、煮込み料理や炒め物も美味しいし絶品よ。」
「へー、美味しそう。」
焼肉を食べながらティアとマリアが涎を垂らしながら料理談義をしている。
「2人とも涎出てるよー。」
そういうと慌てて口元を拭く。
「「えへへー。」」
照れながら再び焼肉を頬張り、食べ終わってから再びアリスさんの料理について話し合っている。




