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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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閑話 大討伐その後

ナナがいない時の話である。

盗賊団の大討伐作戦は成功した。

それは国境付近の盗賊団の壊滅・殲滅、盗まれた物資の確保、連れ去られた者達の保護。

最終的に盗まれた物資は見つからず、連れ去られたも者達は遺体で発見された。

討伐された盗賊も予想以上の200人越えとなり、討伐隊も少なからず亡くなった者達もいた。

その殆どが廃坑の爆破に伴い、遺体も確認されずに生き埋めになった・・・。



聖王騎士団への報告も冒険者ギルド報告も表向き殲滅成功と伝えられた。


聖王騎士団混合討伐隊『討伐隊長バイタル』は、聖王騎士団団長へ


「討伐作戦は盗賊団殲滅成功しました。

残念ながら物資と誘拐された者達の保護は失敗です。

廃坑内は盗賊団により通路の破壊により進入禁止した方がいいと思われます。

討伐作戦での負傷者は元聖女候補生達の魔法により完治してます。

討伐作戦時の拠点は、引き続き廃坑の監視用として活用し、現在も20名の騎士団が警戒中です。


報告は以上です。」



「亡くなった者達は何名に?」


「は、騎士団16名と冒険者21名です。

冒険者の数が多いのは索敵中に廃坑通路の爆破により生き埋めになりました。

現在崩落の危険性があるという事で遺体を持ち帰る事は不可能でした。

騎士団の方も同じく索敵の護衛として同行していた者達です。」


「では、亡くなった者達には別途報酬を騎士団から手配しよう。」


「は、了解であります。」


「廃坑内に盗賊姿が無かったと報告しているが?」


「それにつきましては、『気配探知』や『周囲感知』の感知スキル持ちにより、廃坑内・廃坑周辺に我々討伐隊以外の気配が無かったのを、騎士団員と冒険者達数名が数日間調べ尽くしました。

それと討伐隊が聖王国の首都までの街道を移動中も不審な気配や盗賊の襲撃はありませんでした。」


「なるほど盗賊団が廃坑から姿を消した原因はわからずじまいか・・・。

盗まれた物資の件はわかったが、誘拐された者達についてはどうだ?」


「は、盗まれた物資と共に商人数名は遺体で発見、その中に商人以外の者がありました。

我々では判断がつかず遺体は森の中に埋葬し、遺体の身元が分かる者は個別にして搬送しました。

現在騎士団本部で遺品の検証をしていると思われます。

ただ1つ問題がありまして・・・。


「何か不審な点でもあったか?」


「は、盗賊団の1部の者達が騎士団の備品、騎士達に配備されている片手剣を使用してました。」


「それは我々騎士団員の中に盗賊がいるという事か?」


「いえ、討伐した盗賊の中に騎士の姿はありませんでした。

多分ですが先の魔物との討伐時に亡くなった者達から盗まれた盗品であったと・・・。

それ以外にも、われら聖王騎士団の片手剣とは違う物も複数確認しております。

作りも同じ片手剣30本以上、その片手剣についても検証していると思われます。」


「騎士団の片手剣と同じような剣か・・・。

隣国の方でも同じような問題がなければいいんだが。」


「負傷者の中に元聖女候補生達はいないのか?」


「は、彼女らは拠点で負傷者の治療を担当してもらったので無事でした。

何度か盗賊の襲撃を受けたらしく、拠点を守っていた者から報告を聞いております。」


「それにしては拠点での負傷者は無しか、優秀な者達が集まったようだな。」


「・・・それが盗賊の襲撃はあったが、気配を感知後に気配が消えたと報告され、後日確認に行くと盗賊の遺体が森で確認されております。

最初は盗賊達の仲間割れと思われたのですが、遺体が全て弓による狙撃で倒されていました。」


「優秀な冒険者でも拠点防衛に参加していたか、後で冒険者ギルドへ感謝だな。」


「・・・・確かに冒険者ギルドから優秀な冒険者は参加してましたが、彼らは拠点から離れておらずやぐらから周辺監視中だったと報告がありました。」


「我々以外の誰から盗賊を倒したと考えているのか?

盗賊団の大討伐の最中に森の木々に隠れている盗賊を殲滅する技量持ちが?

それこそ考えすぎだろう、それほど技量があれば討伐隊として廃坑内で戦闘していただろう?

わざわざ実力を隠す意味も無いし、隠れて行動する者がいるとは思えんな。」


「は、冒険者達からも同じような事を言われました。」


「何らかの理由があるのかもしれんし、今は問題無いだろう。

今回は元聖女候補生の彼女らにも、討伐隊に参加してもらったが大丈夫だったか?」


「は、彼女たちは各地で魔物との大討伐の参加経験もあり問題はありませんでした。

彼女たちであれば騎士団の後方支援として即戦力なんですが・・・。」


「彼女たちの進路について我々は何も言えんさ。」


「そうですね、少しだけ残念な気がしただけであります。

それでは、盗賊団の大討伐の報告終わります。」


「聖王騎士団混合討伐隊は解体後、各々の部隊へ戻ってくれ。

それに伴い廃坑を警戒する特別部隊を編成するから、騎士団員へ通達しておいてくれ。

それでは、お疲れさん。」


討伐隊長バイタルは聖王騎士団団長に敬礼をし、静かに団長室から退出する。


聖王国騎士団団長は、盗賊団の大討伐終了は半分成功であり、半分失敗と考えていた。

今回の大討伐は対応の遅れにより盗賊団の肥大化、聖王国内の街道の盗賊による襲撃被害など、まだまだ対策に対策を重ねなければいけない事が山済みであった。

聖騎士団だけでは対処できず、冒険者ギルドと合同での対応、それ以上に聖王国国王への報告、聖王教会への報告など、1つの問題が終わったと思えば・・・複数の問題が積みあがる。

手元の資料に目を通し、団長は国王へと報告へ向かう。




冒険者ギルドでも同じような報告を聞き、聖王国冒険者ギルドのギルド長も頭を悩ます。


討伐隊中の廃坑内の爆破により生き埋めになった冒険者、廃坑周辺から消えた盗賊の反応。


冒険者ギルドとしては、後方支援に参加した元聖女候補生達の無事が確認だった事、ポーション確保が難しく、聖王教会に無理を通して元聖女候補生達の参加、今回の討伐作戦は彼女らの功績が多かったと考えていた。


「今回は元聖女候補生達の『回復魔法』には助けられたな。」


ギルド長の呟きは、大討伐に参加した冒険者達は首を振りながら


「それ以上にポーションによる回復も影響してます。

流石に『回復魔法』による回復が凄いと言っても限度があります。」

「負傷者が多くなれば助ける事も叶わなくなります。」

「後方支援で持ち込んだポーションが無ければどうなっていたか・・・。」


「ポーションの数も大量と言うほど無かったはずだが?」


「何名かの調合スキル持ちが討伐開始まで調合してました。

拠点の周辺で薬草採取したり、冒険者達が持ち込んだ薬草を使用しポーションの数を増やしたらしいです。」

「後方支援の物資以外でもポーションを持ち込んでいた者もいましたし助かりました。」


「そういう報告は無かったはずだが?」


「どうやら大討伐に関係なくポーションを配っていたみたいです。

魔力切れの元聖女候補生達が率先して配ってましたよ。」

「元聖女候補生の護衛の誰かだと思いますが確認はしてません。

ポーションの効き目も問題無く、負傷者が回復していったので大丈夫だと思いましたが?」


「冬期間は薬草の確保も難しいのに、誰かもわからないのであれば感謝のしようが無いな。」


「感謝は冒険者のみならず騎士達からも言われました。

廃坑内で負傷しても次の日には討伐隊に参加できたと・・・。」

「多分ですが後方資材のポーションは早々に使い切り、それ以外の大量のポーションは無償で消費したと思われます。」

「使い切ったポーションが次の日には同じ数だけ資材置き場に並んでいましたし・・・。」

「誰が置いたのかは知らなかったみたいです。」

「いえ、違いますね。知っていても誰も教えてもらえませんでした。」


「そうなのか?調合スキル持ちで凄腕なら噂になってるはずなんだが?」


「有名になる事に無関心なのかも知れません。」

「私たちは感謝しかありませんし、無理に知ろうとは思いません。」

「感謝したいだけですよ、ありがとう・・・と。」


冒険者達はこくこくと頷き、「報告終わり。」と言う風に冒険者ギルドの会議室を後にする。


会議室にはギルド長と数人のギルド職員がいた。


「それでギルド長、ポーションを調合した者にも別途報酬をと考えていますか?」


「んー、そうさなー。知られたくない者への報酬はやめておくか。

誰だったのか気にはなるが、それは追々でいいだろう。」


「了解です、それと後方資材で消耗した物資を追加でギルドで購入する必要がありますが?

ギルドの備蓄の4割消費ですから、次に何かあれば対応に困ります。」

「引き続きポーションの確保と保存食の確保をしますが宜しいですか?」


「その辺は任せる、それと冒険者達の中に調合スキル持ちに声をかけ貰えるか?

冒険者を引退後にギルド専属でポーション調合をお願いしたいからな。」


「それは専属でギルドで雇うという事ですか?」

「ギルド職員としての雇用ですか?」


「どちらかと言えばギルド職員としてかな、専門的に調合してもらえれば十分さ。」


「了解しました。」

「それと調合に興味がある者も募集してみます。」

「冒険者の中にも討伐に向かない者達もいますから、調合を勧めるのも良いかもしれません。」


「それはいいが調合は誰が教えるんだ?

ギルド内に専門で調合を教えられる者がいるのか?」


「ギルドにポーションを納品している冒険者に声をかけてみます。」

「もしくは、調合スキル持ちに師事してもらうかもしれませんが・・。」


「・・・その辺は任せる。

俺はこれから聖王騎士団へ報告へ向かう。

こっちで聞いた事と、向こうで聞いた事を精査しなきゃな。

国王への報告もあるし、教会へも報告は必要だろうな・・・。

元聖女候補生への別途報酬も考えておいてくれ。


それじゃ、行って来るわ。」


ギルド長は手持ちの資料を掴み会議室を出ていく。




ギルド長の出て行った会議室では、冒険者の中で誰が調合スキルを保持しているか、誰がポーションを納品しているかを話し合っていく。

その中でもポーション納品上位者の名前を上げ、ギルドとして確保へ急ぐのであった。


1番納品数が多かったのはロースポーツのナナとティアだったが・・・。

ロースポーツをトコトコと『ケイトラ』が走る。


久しぶりにゆっくり走行し、盗賊達が一掃した事で街道は荷馬車や馬車が行きかう。



『ケイトラ』には『魔法工房』の看板があることから、何かの露店と勘違いしている者達が


「何か販売しているの?」とか「お店なの?」と聞かれ、ナナ達は悩みながらも「ポーションならありますよ?」と言ってしまい、『ケイトラ』が停車する度にポーションを求める者達が並び始める。



ポーションの価格はギルドへ納品する価格あり、店売りよりもお買い得価格で飛ぶように売れた。

もっともマリアの初期に調合したポーションのみであったが・・・。

普通のナナ達が調合したポーションはギルドでも納品価格が高くて露店で売るのに向いていなかったからであるが。

販売する時も露店売りは調合初心者の商品であり、回復量は価格次第であると伝えてある。


ポーションの売り上げもある事から、『ケイトラ』の野営時はポーション調合に勤しみ、ロースポーツ到着まで多少ながらの金額を稼ぎ出す。

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