マリアと合流から採取し
冒険者ギルドへ到着したマリアは、息を切らせながらナナとティアを見つけ、ティアに嬉しそうに抱き合い、ナナにはぺこりと頭を下げてから握手をする。ティアも嬉しそうにマリアと抱き合い笑いあう。
ギルドの待ち受け室で騒がしかったらしく、ナナ達は会議室へ移動し話し合いを始める。
マリアが落ち着いてから護衛依頼について話し合う。
「久しぶりです、ナナさんもティアさんも元気そうで安心しました。
今回はロースポーツまでの護衛依頼を引き受けていただきありがとうございます。
本来であれば直ぐにでもロースポーツへ向かえればいいのですが・・・。」
「盗賊団の大討伐への強制参加ですね。」
「はい、最後の聖女候補生のお勤めとして・・・ね。」
「後方支援と聞きましたが?」
「後方で怪我人の治療という事でした。
流石に盗賊相手に戦う術は・・・ありませんし、戦う事を期待されてもね。」
「それならマリアさんに危険は無いと考えればいいのかな?」
「前方で戦う騎士団や冒険者の皆様よりは比較的安全だと思いますが、完全に安全とは言えないとしか言えません。」
悲しそうにナナ達に話している、マリアは話しながらティアの手を握りながら話している。
ロースポーツの大討伐は魔物相手であり、今回の様な盗賊相手・・・人間相手では勝手が違うのか辛そうな顔をしている。
ティアはマリアの手を握りしめながら、ナナを見つめてからコクリと頷く。
「後方支援が安全なら安心して同行してもいいかもな。」
ナナはマリアを安心させるように話しかける。
ティアも同じくマリアを見つめながら
「ギルドから大討伐に参加するかを聞かれたけど、マリアの話を聞いて参加しようと思う。」
「今回は馬車もあるから一緒に乗るか?」
マリアは嬉しそうにナナとティアに驚き、次第ににこりと笑顔になってから
「え、馬車を買ったのですか?」
「あ、違う違う。馬車は借り物。試験運用中の荷馬車。」
「馬も無いから手間知らず。魔力を消費して疾走するよ。」
「馬無し?魔力消費??試験運用荷馬車???」
「場所置き場にあるから明日乗ってみるか?」
「乗り心地は最高よ。」
「はい、明日の楽しみにしてます。」
「そだ、マリアさんにお願いがあるんだがいいか?」
「はい?」
「指名依頼してみない?
大討伐時中に専属の護衛依頼はどうですか?」
「いいんですか?
必ずしも安全では無いですし、いいえ違います。ナナさんとティアさんがそばにいれば安心出来ますが・・・いいんですか?」
ナナとティアは揃ってこくりと頷いてから、「「大丈夫。」」と声を揃える。
「大討伐開始まで準備する物はあるの?」
「元聖女候補生は多少の食糧と着替えの準備だけです。」
「それなら大討伐開始まで首都周辺の薬草採取をしよう。
出来るだけ薬草を集めたいから明日から採取を始めよう。」
「大討伐の移動中にでもポーションを調合出来れば大丈夫かな。」
「魔法での回復は限界があるから、数多くのポーション確保は必須かな。」
「大討伐開始までマリアさんはどうする?」
「今日は聖王教会へ泊りますが、ギルドへの専属の護衛依頼が受理したら・・・一緒に行動してもいいですか?」
マリアが少し照れながら話してくるから、ティアが嬉しそうに抱き着き、ナナは「いいよ。」と嬉しそうに返事をする。
マリアはナナ達との話の途中にギルドの受付嬢に、盗賊団大討伐時の専属護衛依頼をお願いし、その場でナナ達が専属護衛依頼を受理した。
専属護衛依頼の内容もナナとティア限定の依頼なので、ギルドカードを見せながら
「それでは専属護衛依頼お願いします。
内容の確認ですが、盗賊団大討伐時のマリアさんの護衛依頼。
護衛期間は大討伐開始から大討伐終了までの護衛ですね。
目的地の廃坑までは街道移動なので馬車や荷馬車での移動ですが、ナナさん達には馬車があるので問題無いですね。」
「はい、ギルドの馬車置き場に停車中です。」
馬車置き場からは未だに叫び声が聞こえるが、ギルド職員が聞こえているはずなのに無視しているよ。
「それでは大討伐時の移動はマリアさんは同じ馬車移動という事でお願いします。」
「はい、わかりました。
明日、荷物を荷台に積み込みたいと思います。」
「了解、明日荷物を積み込めば大丈夫だろう。」
「明日になれば馬車置き場も静かになるかなー。」
護衛依頼を受理し、マリアは嬉しそうに聖王教会へ嬉しそうに歩いていく。
最後までナナとティアに手を振りながら見送った。
騒がしい馬車置き場へ行くのは面倒そうなので、冒険者ギルドからお勧めの宿屋を教えてもらい、ギルド系列の冒険者御用達の宿屋で身体を休める。
次の日は、冒険者御用達の宿屋らしく、朝食から大量の大味の料理が並べられ、ナナとティアは久しぶりに大味の料理を大量に食し、ギルドへと向かう。
朝食後のギルド内は冒険者の姿がまばらで、どうやらナナ達はギルドの忙しく騒がしい、美味しい依頼の取り合いを見ずに済んだのだが。
ギルドに残された依頼票は、常時依頼の採取依頼しか残っておらず、薬草の数と種類の確認をする。
「知ってる薬草の採取だから問題無いな。」
「大まかな採取場所しか知らないから採取場所を見つけられるか・・・。」
「まぁ、大丈夫でしょ。」
今日は冒険者として活動するので、革の作務衣に厚手のマントに背負い籠に弓と矢筒を用意され、昨日の姿と全然違う雰囲気でギルド職員も少しだけ驚いている。
採取作業の未予定なので、軽装備・遠距離仕様。
マリアが到着するまで待合室でお茶を飲んでいると、大きいリュックを背負ったマリアがギルドへ到着する。予想よりも大きい荷物に驚き、ナナとティアは馬車置き場へ行き、『ケイトラ』の荷台にマリアのリュックを載せ、ナナは少し考えてから『ケイトラ』を『魔法工房』へ帰還させる。
目の前で消えた荷馬車に驚きマリアが凄い勢いで瞬きをしている。
「あれ、消えた?荷馬車が無くなった?あれ、荷物も一緒に消えちゃった?」
マリアは消えた馬車の停車していた場所をうろうろしていたので
「荷馬車は帰りました、大討伐時までに再召喚しますから大丈夫ですよ。」
「ここにあると叫び声が聞こえてうるさかったからねー。」
「あの荷馬車は・・・普通の荷馬車じゃないの?」
「『魔法工房』錬金術師アリス作の魔道ゴーレム『ケイトラ』です。
『ケイトラ』は帰還召喚の魔法陣が刻まれた一品です。」
「ロースポーツから5日間で聖王都の首都へ移動可能。」
「『結界魔法』が標準装備の一品です。」
「荷台が狭いのが問題かなー。」
マリアは情報過多に陥り、目を瞑り現状を確認してから
「荷馬車が凄いのがわかりました。
護衛依頼時は宜しくお願いします。」
とりあえず考えるのを止め、マリアは嬉しそうに手を握り
「それで今日はどうするんですか?」
「盗賊団の大討伐出発までに可能な限り薬草を採取。」
「大量のポーションが必要らしいからね。」
「今の時期は薬草は・・・あるのでしょうか?」
「ギルドに常時依頼としてあったから大丈夫じゃないかなー。」
「大討伐までギルドで滞在してるのは嫌だし、採取でもして動き回った方がいい。」
「何も採取できなくてもいいし、気にしないよー。」
『魔法工房』にも薬草の在庫はあるのだが、時間があれば採取ばかりしていたので、聖王都の首都周辺でも薬草採取をしたいだけなのだが・・・。
ティアも同様に採取作業を楽しそうにしていたので、ナナはティアも採取が好きだと思っている。
ティア的には採取しながらナナとぶらぶらするのが好きなのだが・・・。
首都の周辺の草原を散歩がてら採取へ向かい、見つけては丁寧に採取をする。
ギルドに納品するのと同じように、10本1束とし背負い籠に入れていく。
冬期間という事とマリアが初めての採取作業という事で、夏場の3割程度しか採取出来なかったが、ティアとマリアが楽しそうに採取しているのをナナは嬉しそうに見つめていた。
盗賊団の大討伐出発まで薬草採取をし、ナナは1人でポーション調合をしていた。
マリアも同じ宿屋へ宿泊するという事で、ティアとマリアが同室になり、ナナは1人寝る前のわずかな時間に調合。
寝落ちするまで調合をするのは、久しぶりでナナは寝落ちギリギリまで調合し、次の日テーブルで寝落ちしているのをティアに発見され、正座で「寝落ちするまで無理しちゃダメ!」とお願いされる。
ナナはこくりと頷き「了解です。」と小さい声で答えた。
それを見たマリアは「あらあらまぁまぁ。」と面白そうな声を出し、「ティアさん凄い。」とティアを褒めている。
ナナはマリアの言うティアの何が凄いのか首をひねり、当のティアは嬉しそうにこくりと頷く。
盗賊団の大討伐開始当日。
『ケイトラ』を『魔法工房』から取り出し、御者席にナナ・ティア・マリアが座り、国境付近の廃坑へ向け移動が開始する。
聖王騎士団・冒険者達が各荷馬車に乗り込み、食糧や後方資材を積み込んだ荷馬車、元聖女候補生が乗り込んだ荷馬車に続き、『ケイトラ』は最後尾にトコトコと追いかける。
総勢500名の移動という事で、20台の荷馬車に騎乗した騎士達に冒険者達、周囲の警戒は大丈夫なのだが、ナナとティアは街道を見つめる反応を感じていたが、距離がありいきなり襲う事が無いと思い放置していた。
後方支援の集団を襲うつもりなのかわからない反応は数にして10・・・15と増えていく。
騎乗した冒険者達も反応に気が付き、荷馬車の速度を上げさせる。
荷馬車に乗り込んでいる冒険者達から森へ向け弓を射る。
それに気が付いたのか、森からの反応が離れていく。
「弓矢は全部外れかー。」
「それでも反応が離れたから十分でしょー。」
「いやいや、撃ったら当てなきゃ。」
「まぁー、逃げても向かって来れば数が減ってないから面倒かな。」
「盗賊っぽくないね。」
「盗賊か冒険者かは・・・どっちでいいんじゃない?」
「向かってきたら盗賊確定で殲滅で全滅すれば問題無いかー。」
「そそ、廃坑には入りたくないなー。
「廃坑を崩して破壊ではダメなのかなー。」
ナナとティアが物騒な話をマリアは静かに聞いていたが、廃坑破壊と言うところで声を出す。
「廃坑には盗まれた物資があるらしいです。
それと誘拐された騎士や冒険者も・・・。
ただ騎士団も冒険者ギルドも噂程度の認識ですがね。」
「本当にいるとしたら問題か。」
「廃坑なら抜け道がありすぎて逃げられたら・・・失敗になるのかな。」
「最初の大討伐が失敗してる段階で失敗ですよ。
盗まれた物資、惨殺された人達、行方不明な方々。
その全てが詳細不明です。誰も何も知らない状況です。」
「・・・予想以上に面倒な状況。」
「・・・盗賊を叩いて潰せば終わりじゃないのかー。」
ナナとティアは盗賊を全滅すれば終わると思っていたので、状況が面倒な事に今気が付いた。
「全て盗賊にやられましたという事にして、燃やし尽くさない?」
ナナの呟きはティアとマリアの「「それはダメ。」」とあっさり却下された。




