旅のお供にお弁当とか
ナナ達によるギルドへのポーション納品は8日後には終了し、工房のポーション在庫は一掃した。
初期に調合したポーションは全て冒険者ギルドへ納品し、少しだけ品質に良かったポーションも数百本納品し、多額の報酬を手に入れた。
工房内のポーション置き場は広くなり、ナナ達の工房における調合作業がはかどることになる。
『ケイトラ』の試運転と称し街道を疾走し、少しだけ冒険者ギルドの討伐依頼をしていた。
討伐依頼と言っても、ギルドへの報告も納品もせず、討伐した獲物は『魔法工房』へ送り、消費しきれないほどの食材、加工しきれない毛皮がストックされていく。
ロースポーツの街道を疾走しているの為か、『ケイトラ』の情報を求める商人やら冒険者らがギルドへ訪れ、ナナ達は冒険者ギルドから直接に彼らと話をすると大変面倒事になると言われ、街中や人込みには『ケイトラ』の帰還させた。
暫くして冒険者ギルドから指名依頼の話を聞かされる。
その内容は『聖王都からの護衛依頼』というものだった。
『元聖女候補生マリアのロースポーツへの護衛依頼。』
ナナ達はギルドからの指名依頼の内容を聞き、最初は断るつもりだったが依頼内容と、マリアからの直接の依頼という事で、ナナ達は指名依頼の為に聖王都へ向け移動を開始する。
「聖王都までの街道は盗賊の被害報告が多数発生してます。
冒険者か盗賊かわからない場合は、注意し警戒し襲われたら殲滅して下さい。
盗賊の討伐依頼は常時依頼となっております、死体をギルドへ持ち込めば報酬が出ますが・・・。
手間がかかるという事で盗賊の武器だけを持ち込む冒険者達が多いのが現状です。」
「あの護衛依頼ですが、元聖女候補生というのは?」
「どうやら新たな聖女が決まり、マリアさんは元聖女候補生になりました。
聖女となれば聖王国の聖王教会で過ごす事になるのですが、それ以外の候補生は各地で教会勤めをしたり、冒険者になったりします。」
「マリアは教会勤めですか?」
「冒険者ギルドにはロースポーツで活動するとしか聞いてないです。
もし良ければマリアさんに聞いてみてください。」
「はい、マリアと一緒に冒険が出来れば楽しそうですからね。」
「すぐに聖王都へ向かうの?」
「まずは、『魔法工房』に報告してから向かおう。
最後に指名依頼の内容は理解しました。護衛対象はマリアのみですね?」
「はい、ギルドにもマリアさん1人となっています。
ナナさん達の『ケイトラ』は大人数の護送は無理そうなので・・・。
もし護衛人数が増えた場合はどうしますか?」
「状況にもよりますが、マリアのみ護衛しようと思います。
御者席なら3人は座れますし、荷台には椅子も無いし長距離の移動に向いてません。」
「荷物なら大丈夫だけど人を荷台に乗せて疾走は振動が激しくきついだろうな・・。」
「冒険者ギルドとして指名依頼の受理を完了します。
移動も考え聖王都まで10日前後と考えていますが・・・聖王都への到着予定日数は?」
「街道の状況にもよりますが、5日前後で到着すると思います。
長距離の『ケイトラ』の試運転にもなりますし、連日の野営もいい経験になると思いますよ。」
「移送する荷物も無いしギリギリの速度で疾走可能だから早く到着しそう。」
「それでは5日前後に到着予定と聖王都の冒険者ギルドへ連絡しておきます。
街道ではポーションを移送している馬車が、盗賊を警戒し鈍足で移動していると思われます。
盗賊団の襲撃の報告もあるのでナナさん達も十分に気を付けてください。」
「大丈夫です。雪原を全力で疾走します。出会い頭に盗賊に襲われても停まれないので・・・轢き逃げますから大丈夫です。」
「『ケイトラ』は丈夫な作りをしてるから黒熊に襲われても問題無し!」
「盗賊相手に過剰すぎると思いますが、冒険者は出来れば轢き逃げとかは無しでお願いします。」
「「了解。」」
冒険者ギルドを後にし、聖王都までの長旅と思い、果物や串焼きなどを買い込む。
「片手で食べれる串焼きや焼き鳥を買い込むよ。」
「果物や干し肉も?」
「そそ、可能な限り走り続けた方がいい。」
「アリスさんにお弁当お願いしていいかなー。」
「いつでも温かい食事もいいけど、『弁当』か・・いいなそれ。」
「森での野営では調理する楽しみがあったけど、今回の『ケイトラ』の長旅は移動ありきだし楽しそう。」
「注意するのは盗賊団か・・・。」
「周囲の警戒は必須だけど『ケイトラ』なら遭遇しても逃げきれそう。」
「盗賊なら叩き潰します。」
「それ以外なら?」
「食材として頂戴します。」
「美味しく頂こう。」
露店を巡り、食材よりも食糧を買い込み、聖王都までの食事は今日の買い足したのでの十分な気が・・・と思い始めた。
ナナ達が『魔法工房』へ帰還し、アリスさんと一緒に聖王都までの長旅の弁当作りを始める。
「まずはおにぎりは必須として、から揚げは何種類か欲しいわね。
ナナさんは何は食べたいメニューはあるの?」
調理中のアリスさんが手を止めナナに食べたい料理を聞いてきたので
「おにぎりは『塩おにぎり』でお願いします。」
「わたしはおにぎりの具は『角煮』がいいです!」
「ナナさんの『塩おにぎり』は了解。
ティアさんのおにぎりの具『角煮』は・・・大味になりそうだけどいいの?」
「うん、お米とお肉を同時に食べれるから~。」
「なるほど、それは面白い考えかも・・・。
試しに焼肉や焼き鳥もおにぎりの具として握ってみましょうか。
食べた感想は、聖王都から戻ったら聞きましょう。」
そう言ってアリスは、調理した料理をおにぎりの具にしていく。
楽しそうにおにぎりを作り始めたアリスさんの隣で、ナナとティアは冷めても美味しい料理を考え・・・諦めた。
「冷めても美味しい料理は無理です。おにぎりは冷めても美味しいから大丈夫として・・・。」
「冷めて美味しいというか、サラダを大量に作って小分けしておけば大丈夫。」
「それじゃ、弁当とか関係なく煮込み料理とスープを大量に作っておこう。
小さな鍋に小分けして食べる時に温かい状態で取り出せば問題無いでしょ。」
「食事は『ケイトラ』の御者席で済ませるつもりだから人の目を気にしない事にしよう。」
「長旅の楽しみは食事だけだしねー。」
作り上げた料理は個別に包装し保管する。
長旅用に1日3食で30食以上を包装し、食事に関しての問題は無くなった。
「これで長旅の心配の1つは解消したな。」
「串焼きや焼き鳥もあるから食べ物は最初から大丈夫な気が・・・。」
「果物もある、干し肉もある。」
「美味しいものが沢山あるから大丈夫。」
食糧が沢山あるから大丈夫と言うナナ達をアリスはニコニコしながら見つめ
「長旅になるから今日は早めに寝た方がいいわよ。」
「「はい。」」
ナナとティアはこくりと頷き、ナナが工房へ戻り装備一式の点検を始めた。
ティアは休憩時にお茶が飲めるように準備をしていく。
すぐにお茶が飲めるように水筒にお茶を淹れる。
「これで準備は終了かなー。」
「食べ物と飲み物が準備完了。
おにぎりの具は『塩おにぎり』だけ見た目でわかるけど、それ以外の味は食べてからのお楽しみね。」
「アリスさんの料理はおいしいから好きー。」
「そだ、食器は荷物として持って行ってね。」
「了解です。」
「一応、お腹いっぱいになるように包んだけど食べ過ぎに注意ね。」
ナナとティアは美味しい食事は好きだ。
アリスさんの料理はお代わりするほど好きだ。
問題は食べ過ぎて・・・食後に昼寝をしそうな事だけ。
「んー、毎食昼寝と言うか・・・仮眠は必要かもー。」
「居眠り運転は危険だからねー。」
「了解です。」
ティアはこくりと頷く。
アリスさんは調理場の掃除をしながら
「工房へ戻る前にお風呂に入っちゃいなさいー。」
「はーい。」
通常ナナ達は生活魔法で身体を綺麗に出来るのだが、『魔法工房』に帰還してはお風呂でまったりする。身体を洗うというより身体を温めるのが好きなのだ。
ティアは身体を洗い、湯船に浸かり・・・茹で上がるまでポカポカし工房へ戻る。
工房へ戻りナナへ「お風呂入っちゃってー。」と言うと
「あいよ。」
「私も装備一式手入れしておくね。」
「予備の防寒装備をお願いしていい?」
「わかったー。
予備分は『ケイトラ』の荷台に積み込んでおいた方がいい?」
「聖王都まで荷台に荷物が無いのは不自然だし、手頃な木箱にでも入れておいてもらえる?
「それなら着替えや保存食なども入れておくね。」
「長旅に荷物無しではだれが見てもおかしいしから必要かな。」
「偽装工作~。」
ティアは楽しそうに『ケイトラ』の荷台に木箱を積み込み、いろいろな荷物を入れていく。
最終的に使うかは不明な物ではあるが、長旅中に各都市への進入時に荷台の点検時のみ、木箱を開閉された・・・その時のみ開閉されたというべきか。
ロースポーツの冒険者ギルドから護衛依頼の『通行手形』を渡された。
次の日、朝一番でロースポーツの街道を疾走する『ケイトラ』が目撃されることになる。
護衛依頼『通行手形』
冒険者ギルドが発行している都市部への『通行手形』である。
本来各都市部へは入る場合は、門番に通行料金を支払う場合がある。
この通行料は冒険者カードがあれば無料で通れるのだが、馬車に関しては別途支払いが生じるが、『通行手形』がある場合は無料で通行可能になる。
この時の通行料金は冒険者ギルドが後日支払う。
荷台の荷物の点検はしているので、通常時よりは多少すんなり都市部への侵入が可能になる。
この『通行手形』は聖王都への目的地までナナ達が使う事は無かった。
『ケイトラ』があれば食糧の買い出しも、馬を休ませるために宿屋へ泊る事も必要なく。
聖王都まで真っ直ぐ街道を疾走し、ロースポーツから5日で到着する。
毎日おいしい食事をし、毎日食後に仮眠をし、毎日十分に睡眠をし、疲れれば『ケイトラ』を停車しお茶をし、すれ違う馬車や冒険者達を振り切り、『ケイトラ』は元聖女候補生マリアの元へ辿り着く。
聖王都に入る為に巨大な防壁の入り口に並ぶ『ケイトラ』は無駄に目立つ。
『ケイトラ』の側面の『魔法工房』の看板もやはり目立つ。
ナナとティアは無駄に目立つ『ケイトラ』の御者席で
「やっとついたー。」
「とうちゃくー。」
声を揃えて叫んでしまった。




