表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
70/87

ポーション納品とか

ナナ達が冒険者ギルドへ『魔法工房』と『ケイトラ』の情報解禁から1ヵ月後。

久しぶりに訪れたギルド内は慌ただしく、宛ら先の大討伐時の様な騒々しさがあった。

普通と違う雰囲気に率直に『面倒そう』と思ってしまう。


ナナ達はギルドに入り、まずは張り出された依頼票を確認し


「討伐依頼は溢れるほどあるな・・・。」

「盗賊討伐に依頼が残っているよ?」

「結構前に盗賊討伐は完了してると思ったんだが・・・。」

「それにギルド内に怪我人多くない?」


ギルドの待ち受け室は、包帯姿の冒険者が多く身体を休めていた。

いあ、包帯姿で暖炉の前を占領している。


「何か大型の討伐依頼でもあったのかな?」

「依頼票の残りを見ても大規模な討伐依頼は無い気がするけど。」


ナナは張り出された依頼票を再度確認し、『ポーションの納品』と言うのを見つけ


「『ポーションの納品』?

品質は拘らずポーションの納品をお願いします。

ポーションは鑑定後に報酬が変動します・・・?」

「前もポーション納品の依頼があったけど、品質と数のしてないんだ。」

「ギルドに在庫が無いのかもしれないね。ポーションなら在庫が豊富にあるから納品しよう。」

「品質はどうするの?」

「調合初期の品質的に劣る物を一掃しよう。」

「100以上あるけど?」

「まぁ、数の指定も無いしいいんじゃないかな。」

「在庫がはけるからいいのかなー。」


ナナ達は依頼の確認をする為に受付嬢に


「すいません、ポーションの納品はお願いします。」


ナナは背負い籠から取り出した感じに『魔法工房』から調合したポーションを取り出す。

ティアはナナから受け取ったポーションをテーブルに並べていく。


受付嬢も5本並べて鑑定作業を始めようと思ったのだが・・・

ナナが10本・・・20本と並べ・・・心配になり


「あの何本納品ですか?」


受付嬢の前に並ぶポーションを見ながらナナ達に質問してきた。

ナナは『魔法工房』にあるポーションの在庫を確認し


「とりあえず30本納品予定ですが?」


「大変ありがたいのですが、この場で30本の鑑定作業は受付業務に支障する為に、会議室で納品お願いしますか?鑑定作業も複数で行います。」


「あ、はい。了解です。」

「ん、了解。」


ナナはテーブルのポーションを指さし「これどうします?」と受付嬢に目で語ると


「すいませんが、ポーションを背負い籠に戻してもらっていいですか?」


ナナはこくりと頷き、ティアは1本ずつナナへ手渡し、テーブルの上を片付けてから


「それでは会議室へ案内します。」


受付嬢はギルド職員へ「鑑定作業お願いします。」と声をかけると数人が立ち上がり


「鑑定をしましょ。」

「了解、これでポーション不足が解消されれば御の字。」

「さぁー、鑑定鑑定ー。」


ナナ達は受付嬢とギルド職員達と共に会議室へ行き、30本のポーションを納品する。

品質的には問題無いのだが、回復量が低いので


「調合を始めてやった初心者のポーションかな?」

「それでもポーションの数が揃えらるのが嬉しいですね。」

「このポーションは君達が調合したの?」


調合作業しながらギルド職員の1人が話しかけてきたので


「はい、昨年から冬期間はポーション調合してます。」

「私は今年からですー。」


「へぇー凄いね。一定の品質を確保しているから調合師としても生活できるよ。」

「数年でこれ程の技量ですか、将来有望株です。」

「あの君達は『魔法工房』の関係者だよね?」

「1ヵ月前の馬無し馬車の『魔法工房』?凄腕錬金術師の?」


1ヵ月いなかった内に『魔法工房』の噂はナナ達の知らないところで広がっていた。

しかも、凄腕錬金術師ってなんだろ?と、ナナ達が首を傾げていると


「確かに『魔法工房』の関係者です。

ポーションの調合も師匠のアリスさんから教えてもらってます。」


ギルド職員達は『あの魔法工房』という事で、ナナ達の持ち込んだポーションの品質が劣っているので


「このポーションは君達が調合した最初の頃のポーションなのかな?」


「はい。」

「そです。」


「ひょっとしてなんだが、調合したポーションは30本以上あるんじゃないかな?」


「ありますよ。」

「在庫はあるけど売れるかわからないからなー。」


「ん、ポーションはギルド的に数を確保したいから上限なしで納品してもらいたいんだが・・・。」


ナナは「んー。」と考えてから、ティアが「いいんじゃない?」と目配せし


「それでは同じ品質の物を納品します。」

「100本以上あるけど大丈夫?」


「え、100本??」

「それと同じ品質??」

「それよりも品質が同じで100本以上???」


「はい、ポーションの品質の一定化をしてますからー。」

「ちなみに今回の納品は初期に調合したポーションのみですー。」


ナナが素早く取り出し、ティアが丁寧にテーブルに並べていく。

大き目のテーブルにはギリギリまでポーションの瓶が並び、テーブルに並べれなかったポーションの納品は諦めた。

ナナはテーブルに並べられたポーションの数を数え


「ポーション173本ですね。品質は同じになるように調合したはずですが、一応鑑定お願いします。」

「鑑定お願いしますー。」


ナナとティアは『魔法工房』のポーションの在庫が片付いて『ほっと』している。

何気に工房のポーション置き場が狭く感じていたので


「これで調合しても大丈夫だね。」

「もう少し在庫を減らさないとダメだよ。」

「もしもの時は倉庫を増設すれば大丈夫。」

「んー、そうなのかなー。」

「まずは、初期のポーションの在庫一掃したい。」

「賛成ー。」


ナナ達の会話は聞こえていたのだが、目の前にあるテーブルギリギリに並べられたポーションを前に、ギルド職員は黙々とポーションを1本ずつ鑑定していく。

数の多さもあり、ポーション173本すべての鑑定は1時間以上かかり、ナナとティアは会議室の隅で勝手にお茶を飲んでいた。

工房でまったりするようにお茶を飲み、『ぼんやり』と過ごしていた。


「はぁ、お茶が美味しい。」

「また~り。」


お茶をすすりぼんやり過ごす、若い2人には枯れている姿だが、『魔法工房』で過ごす修練や調合の日々の合間の、まったりする時間は好きなので無言で茶をすする。


そんな姿をギルド職員達は、「若いのに何をしてるんだ?」と思いはしたが、鑑定作業が終了したので


「それではポーション173本の鑑定が終わりました。報酬は受付カウンターで行います。」


「はい、ありがとうございます。」

「お疲れ様です。」


ナナとティアはお茶を飲み立ち上がって、ぺこりと頭を下げる。


受付カウンターか受け取ったポーション173本の報酬は、ナナ達の予想以上の金額だったのに驚き


「臨時報酬~。」

「在庫一掃~。」


2人して受付カウンターでテンション高めに声を上げてしまう。

報酬を受け取ったのを確認し、ナナ達が動き出す前に慌てて受付嬢が話しかけてくる。


「あのナナさん達にお願いがあるのです。」


深刻そうに話す受付嬢が気になりナナ達は足を止め


「お願いですか?」

「んー?」


受付嬢は姿勢を正し、言葉を選びながら話し始める。


「只今冒険者ギルドではポーション不足に陥ってます。

ロースポーツでは調合スキルを保持している者達が頑張って調合作業をしていますが、納品する数より消費する数が負けている状況にあります。

ナナさん達にも協力をお願いしたいのですが・・・。」


「ポーションの納品は大丈夫ですよ。

作り置きのポーションもありますし、納品する数が多くなれば大変かなと思って数を抑えてますし。」

「薬草採取とポーション調合はキッチリ教え込まれました。

今日納品したポーションなら大量に保管してます。」


「それでは明日も同じ数のポーションの納品をお願いしても大丈夫ですか?」


「173本ですか?」

「そうです。ギルド的に200本以内であれば報酬額を確保できます。」


ナナは『魔法工房』の初期調合したポーションの在庫数を確認し


「ん、大丈夫。今日と同じポーションなら630本はあるよ。」

「それ以外だと品質が上がっているから納品していい物かどうか・・・。」


受付嬢はポーションの在庫数630本に驚き、そして、今日以上のポーション在庫も教えられ


「まずは630本のポーションの納品をお願いします。

品質が上がっているといるポーションも気になりますが・・・。」


「それでは明日から毎日納品しに来ます。」

「来ますー。」


ナナとティアは3日間ギルドに納品する事を約束しギルドを後にする。


受付嬢はナナ達が『魔法工房』の関係者という事で緊張しっぱなしであった。


それに『魔法工房』ならば数多くのポーションを納品してもらえると考え、受付嬢はギルド職員達とポーションの確保にギルドマスターへと報告に向かうのだった。




ギルドを後にしたナナ達は露店を巡り、買い食いとしては大量購入をしていく。


「とりあえず、露店でポーションの売り上げのお祝いをしなきゃ。」

「アリスさんにお礼のお酒を買いましょ!」

「そうだな、昨日買った物とは違うのを買おう。」

「今日は甘めの酒を中心に買っていこうよー。」

「アリスさんとルナさんが好きな酒が見つかればいいんだけど・・・。」

「小瓶で購入して、気になるのを後日大量購入?」

「それがいいかー。」


露店で大量購入する2人の姿は、露店の亭主では有名な話であり、2人がお気に入りの店は繁盛していく。

それはナナ達が購入していく酒も同じことで、ナナ達が大量に購入した酒も売り上げが向上していく。



ナナ達がギルドへの納品したポーションは、各ギルドへ配られる事になる。


大規模な盗賊討伐で負傷した冒険者達に使用されるのだが、上級冒険者達が盗賊討伐に出向し、中級の冒険者が無理な依頼をし負傷者が増加し、ギルド全体で冒険者に格安でポーションを配られることになる。


ロースポーツのみならずポーションの品薄は、聖王国全体の問題になり、ポーションを運搬する荷馬車を狙う盗賊が溢れ出す。

そして、盗賊達による高額な値段でポーションが出回る事になる。


ポーションを運搬する荷馬車の護衛に冒険者達が配置され、ギルドの依頼が溢れる事になる。


そして、大規模な盗賊討伐の失敗から20日後、再び大規模な盗賊の討伐が実施される。


聖王国と共和国の国境付近ある廃坑を盗賊達が拠点をしており、そこを聖王国騎士団と冒険者達で殲滅駆逐する。

この大規模な盗賊団壊滅作戦は、聖王国の一部の者達しか知らせれておらず、冒険者ギルドとしても公にしていない情報となっていた。




何故ならば聖王都内にも冒険者ギルドにも、盗賊団と繋がる者達の存在を警戒しての事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ