魔道ゴーレム『ケイトラ』とか
『軽トラ』から『ケイトラ』へ完成に至る。
『ケイトラ』の試運転を兼ねて『魔法工房』の周囲をトコトコと走っている。
何故かティアとハクトさんが並走して駆けている。
その速度は馬車と言うよりも牛車っぽい。
「速度を上げれば馬車っぽいのかな?」
「速度を上げれば魔力消費が上がるらしいが・・・。」
ティアとハクトさんの話を聞きながらナナは消耗する魔力を確認し
「今の速度では魔力的に問題無いですね。
この速度では速足と変わらないから速度上げます。」
ナナは魔法陣に注ぐ魔力上げた。
『ケイトラ』はティアとハクトさんの走る速度並に走り出す。
ナナの魔力も消費しては回復を繰り返し、暫くすると何事も無いように運転に集中する。
「速度は馬車並になったけど魔力消費はどれくらい?」
隣を走るティアが心配そうに声をかけてきたので
「これくらいの速度なら魔力消費を気にする事は無いかも。
早くなったから運転に気を付けないを危ないかも・・・。
何度か速度を落としたり、停まったりしてみる。」
ナナの操作に『ケイトラ』は速度を落とし低速で走って見たり、高速から急停止をしてみたり、速度を上げてからの左折に右折を繰り返し、『ケイトラ』に何らかの不備がないかを調べ始める。
『ケイトラ』の左折や右折は御者席のH型のハンドルを使い、方向を変更できた。
速度の上げ下げは注ぐ魔力に反映されるのだが、停止に関しては車輪を回す魔法陣に回転を抑制させ停まれる様になっていた。
「走るのは問題無し、曲がるのも大丈夫だけど・・・。
停車は急に停まると『ケイトラ』に負荷がかかりそうだな。
それに高速から急に低速に変更するのも負荷になりそう・・・。
常に停まれる速度で走ってた方が安全かな。」
「停車する時の魔力消費はどうです?」
「少しだけ魔力を使うけど、身体にかかる負担は微々たるものだよ。
停まれない心配の方が大きいから消費魔力以上の魔力を注ぎそうになるけど。」
「そこは要練習かな。」
「それにしても馬無し馬車とは、悪目立ちする気しかないの。」
「馬や牛が引く荷台はあるし、人が引く小型の荷台は見た事あるけど・・・。
馬無し馬車は見た事も聞いたことも無いかも。」
馬や牛が引かなくてもテイムした魔物などが引く馬車はあるはずじゃぞ。
ロースポーツでは見かけないかもしれんがな。」
「聖王都に行けば見かける事もあるのかな?」
「どちらも魔物の世話らやで維持費が大変らしいがの。」
「その辺は馬や牛と一緒か・・・。」
「『ケイトラ』は自信の魔力だけだから維持費は自前でどうにでも出来るから問題無し。」
「それ以前に『ケイトラ』などのゴーレムを使う者の方が少ないんじゃないの?」
「テイムはありふれている技術だがゴーレムの錬成は珍しいかな。
移動用にゴーレムを用いるのは皆無ではないと思うがな。」
「それは錬金術師が希少とか??」
「違う違う錬金術師はいい意味で研究馬鹿が多いんじゃよ。
研究室に籠って何やら研究している者達じゃ。
その為に名高る錬金術師は王家に仕えたり、貴族連中が囲ってたりもするの。」
「研究するにはお金がかかるから?」
「そうじゃの。」
「『ケイトラ』も目をつけられたりは?」
「するじゃろうなぁ。しかし、ナナもティアも他所で研究したいか?」
「「それはいやかも。」」
運転士しつつハクトさんの会話を聞いてきたナナもティアと一緒に声を出す。
「ここ以上の環境は無いでしょ。」
「なによりアリスさんのアドバイスがある工房はここだけでしょ。」
「改良改善試運転まで何でもできる工房は他に無いじゃない?」
「人の目も無くやりたいことに専念できるしね。」
「それじゃ、次は野営時の練習をしてみよう。」
『ケイトラ』を停車し、ナナは荷台に乗り込みティアと木材を組んでいく。
暫くすると荷台の広さを十分に使ったワンポールテントが完成した。
もっとも木材の強度の心配とテント用の布が用意できなかったので、厚手の布を使い展開するのにてこずっていたが・・・。
荷台にロープを結ぶ個所を増やしていたし、布が破けないように布を押し上げる木材の先端は丸みを持たせていた。
「一応、荷台の前方と後方には入り口を設けたけど・・・これで大丈夫かな?」
「テント内部は2人で寝るのは広い気がしますが?」
「荷物がないから広く感じるのかもしれないよ。」
「それに雨天時にも避難用にテントを展開してもいいしね。」
「雨天時は『ケイトラ』の運転は不安ですしね・・・。」
「このテント内では火気厳禁ですね。
木材と布では万が一炎上したら燃やし尽くしそうですし。」
「このテントは野営時、雨天時に使えばいいんじゃない?
問題は今の時期か・・・、冬期間は『ケイトラ』運転は考えないといけないね。」
「御者席に小さな火鉢とか?」
「厚手のマントで我慢できればいいんだが実際に試すしかない。」
「降雪時や吹雪にテントでは吹き飛ばされそうだし・・・。
冬用の車輪も考えた方がいいのかな?」
「滑らない車輪??」
「そそ、車輪の溝を加工したり・・・車輪の数を増やしたり?」
「車輪の数を増やすのはダメじゃない。『ケイトラ』の大きさが目立つ。
何より前輪と後輪の両方が回転するなら雪道でも走るんじゃない?」
「走らなくても前に進むだけど冬期間の移動は楽な気がする。」
「問題は荷台か・・・、いっそ冬期間は木材で小さな家でも作った方がいいか。
荷台の大きさもあるから寝れるだけの部屋が1つになるけど。」
「荷台の前と後ろから入れる入り口と窓にベットが2つ?」
ナナはティアと話しながらメモ帳に簡易的な設計図を書き込み始める。
ティアもメモ帳をのぞき見しながら色々付け加えられていく。
暫くするとアリスさんもやって来て小さな家の話を聞き考察し建物の大きさが決まっていく。
「小さな家と言うアイデアは面白いですが大きすぎると重くなり運転時に魔力消費に影響します。
まずは最低限の柱と屋根を考えていきましょう、冬期間は風が強くなりますから強度も考えないといけません。次に寒さに対する防寒についてですが、熱を逃がさない材料を使用しましょう。最悪厚手の布で囲うという手もありますが・・・。」
「重さと強風対策として御者席の屋根と同じ高さの屋根で作れば風の抵抗が減りますか?」
「そうですね、本来であれば御者席はガラス張りにしたいのですが・・・。」
「悪目立ちしそうなのでダメです。」
「それでは、御者席の屋根を荷台まで延長した感じで作っていきましょう。
屋根を支える柱と壁で見た目は荷台に木箱を載せている感じになりますが・・・。」
「御者席のガラス張りは無理でも停車時や夜間に濡れても嫌なので閉じられる様にしてみては?」
「防犯と防寒を考えれば締め切った方がいいですね。
その辺は引き戸にして外部と遮断してもいい。その辺は色々手を加えられそうです。」
「御者席の屋根の延長ですから、荷台の方は立てる高さは確保できそうにないですね。」
「座って休める高さかな。寝る分にはテントより居住空間確保できそうですし。」
「それじゃ、工房へ戻って試作してみましょう。」
「完成したら実際に雪降る大地を滑走してみたい。」
「滑走は滑って走るって、『ケイトラ』が滑って転がるイメージしかないので却下です。」
「せめて雪道でもトコトコ走る感じで行きましょう。」
ナナ達は『ケイトラ』の試運転を終え、冬期間用と言う名の荷台に家を作り始める。
完成した冬期間用試験型魔道ゴーレム『ケイトラ』は大きな四輪木箱であった。
異世界『オールグランド』で初めての錬金術と魔法陣のハイブリッド。
ゴーレムの名をしているのに見た目は木箱と言う奇妙な姿をしていた。
誰が見ても首を傾げ、走る姿は二度目をし、荷台にでかでかと『魔法工房』の看板を掲げ、そして御者席には若い冒険者が操縦する。
馬車の登場を考えていたら、木箱に車輪がついた自称ゴーレムが完成した。
軽トラキャンピングカーを思い描いていたら斜め上の物が出来てしまった。
当初ハクトとアリスは荷台に家を作るという事でキャンピングカーを考えていたが、作り始めてみたら技術的な問題と、寝れればいいというナナとティの意見を尊重し、『ケイトラ』は見事に四角い箱型に車輪がある見た目になってしまった。
キャンピングカーが完成すると思っていたグランとアポロは完成した『ケイトラ』を見ながらケタケタと笑っていた。
実際にキャンピングカーを知る者達には可笑しく思えるのだが、ナナとティアは何がおかしいのか最後まで分からなかった。
『ケイトラ』は見た目を考えて装飾をするわけでも、オシャレに細工をする事無く、入り口の扉もシンプルな物であり、誰が見ても居住空間があると思わない見た目になっている。
ある意味『魔法工房』の看板があるので工房の持ち物で出張露店と思われる節がある。




