普通の1日とポーション大量納品
ナナとティアの1日は朝練から始まり、朝食後にお茶を飲みながらまったりする。
いつもなら軒下でティアと2人でゆっくりするのだが、この日は何故かグランさんとアポロさんによる格闘談義が行われていた。
格闘談義とは聞こえがいいが、2人は対戦格闘ゲームの動きを実際に出来るかどうかというものだった。
画面上では『旋棍』使いと『三節棍』使いが対戦している。
どちらもトリッキーな動きで相手をけん制していくのだが、動きが変則的過ぎてあり得ない攻撃の連続だった。
『旋棍』使いは左右のトンファーで相手をあしらい、攻撃を受け流してはカウンターで攻撃をしたり、左右のトンファーを自在に操り画面狭しと動いまわっている。
『三節棍』使いは身体を回転しながら攻撃をする、三節棍の中央を持てば近距離攻撃も可能だし、端を持てば中距離攻撃も可能と言う広い攻撃範囲を生かし攻撃をしている。
対戦格闘らしく必殺技繰り出しては「これ出来る?」と聞いてくる。
画面上ではキャラが光りながら連続で攻撃をしている。
「光りながら攻撃は無理かな。13Hitっていうのは13連続攻撃??」
「そうそう、13連続攻撃で防御無視の必殺技だね。」
「必殺技の直前に下段攻撃で体勢を崩してからの必殺技、決まれば勝負が決まるけど真っ直ぐな攻撃の連続で、最初の攻撃を防ぐ事が可能なら必殺技後の硬直で逆に劣勢・・・と。」
「見た限り13連続攻撃は左右のトンファーを交互に繰り出し、最後に相手を上方へぶっ飛ばすと・・・。出来ると思うけどキャラの動きが速すぎて模倣するのは難しいかも。」
ナナは画面上の『旋棍』使いの「打つ」「突く」「払う」「絡める」で戦っているのを『ジー』っと見ながら戦い方を学習していく。
朝練では基本的な動きで「打つ」「払う」をよく使っていた。
「突く」と「払う」は予想以上に使えそうと考え、画面上の動きを頭に焼き付けていく。
この対戦格闘での動きを模倣し、ナナの今後の戦い方にいい意味で変化していく。
攻撃範囲が広い『三節棍』の動きも模倣しているのだが、まずは『旋棍』を納得するまで極めるつもりでいた。
「やっぱり『旋棍』と『三節棍』の動きは面白い。
今見た動きはいずれ実際に覚えたいし使いたい。」
「うんうん、そうじゃろう。」
「なかなかトリッキーな動きで動かしていても楽しいしな。」
「キャラ人気的にはそうでもないのが不思議なんじゃがな。」
「大抵は大剣や双剣とか女子キャラの槍や刀使いが人気なんじゃない?」
「人気があっても使い勝手もいいキャラは普通過ぎてなー。」
「それあるなー。」
どうやらグランさん達にとって普通のキャラより変則的なキャラがご所望の様だ。
いつもよりのんびりと『魔法工房』で過ごしてから冒険者ギルドへ向かう。
『ロースポーツ』の冒険者ギルドは、早朝に依頼の争奪が激しいらしいが、遅めに到着したのでギルドには冒険者はおらず、残された依頼を確認し薬草採取しようとすると、受付嬢から声をかけられる。
「ナナさんティアさん、おはようございます。」
「「おはようございます。」」
ナナとティアはぺこりと頭を下げ挨拶する。
受付嬢も同じくぺこりと頭を下げ、ナナさんににこりと微笑み
「ナナさんに1つ相談があるのですが。」
昨日ポーションの納品が頼まれていたのを思い出し
「ポーションなら納品可能ですよ。」
それを聞き受付嬢は嬉しそうに頷き
「ポーションは常時受け付け中です。
こちらの方へ置いてもらえますか。」
「はいよー。」
ナナが受付嬢の前にポーションの小瓶を並べていく。
「あれ??昨日ポーション35本渡したはずですが今日はどうしますか?」
「昨日は助かりました。ギルドは常時ポーション不足です。
一度に大量のポーションは困りますが、昨日の35本程度であれば助かります。」
『魔法工房』経由の保管庫にも大量にあるし、ナナのアイテムボックスにも数え切れないほど大量に保管している。時間があれば調合していたので売るほどポーションがあり、売る機会を得たのはナナ的には嬉しい事であった。
ティアのマジックバック保管してあったポーションは、護衛依頼中に消費していたので現在絶賛調合中であったが、休日には調合し少しずつ増やしていた。
ナナは去年の冬期間に調合したポーションをテーブルに並べていく。
とりあえず35本のポーションを並べ
「はい、どうぞ。」
受付嬢は並べられていくポーションを『鑑定』していく。
35本すべての『鑑定』を終え、どれも品質的に問題無い事を知る。
「35本いずれも品質的に素晴らしいものです。
できれば一定の品質のポーション以外の物も納品可能ですが?」
ナナは少しだけ考え保存庫に初期に調合したポーションがあるのを思い出し
「ポーション調合初期の物がありますが・・・必要ですか?」
受付嬢は調合初期と言うのを聞き、品質的には売り物になるか微妙と考えていたが、調合しポーション成り得ないものでも『傷薬』として使えるので、まずは『鑑定』してみるかと思い
「ギルドとしてはポーションの品質に拘らず必要です。」
そう言いながら並べられたポーションの小瓶を片付けていく。
ナナはポーション調合覚えたしのポーションから並べ、出来損ないの『傷薬』も一緒に並べる。
最初の頃に調合したポーションの全てを放出し在庫処分を終える。
受付嬢は目の前の200本近くあるポーションを見ながら
「これ程ため込んでいたんですね。
少しばかり『鑑定』に時間がかかります宜しいですか。」
「はい、少し待合室で休んでいます。」
ナナはギルドの待合室にティアと一緒に向かう。
ティアは静かに話を聞いていたが、少しばかり退屈していた。
奥のテーブルに座り、こっそりとティアと一緒に『串焼き』を頬張る。
「んー、間食的に1~2本なら大丈夫かなー。」
「はむはむ、大丈夫ってー?」
「あまり食べると昼ご飯食べれなくなるからねー。」
「了解ー。」
そう言いながらナナとティアは2本の『串焼き』を食べ終え
「はぁー、美味しかったー。」
「んー、美味美味ー。」
「護衛依頼で結構消費したし、料理の作り置きを頑張らないとなー。」
「料理はアリスさんが調理するんじゃないの?」
「アリスさんの料理は好きだけど、自分で料理するのも好きだよ。」
「えへへへ、ナナの料理も好きー。」
「じっくりコトコト時間をかけて煮物や煮込み料理を作りたいなー。」
時間を忘れて料理するのをナナは好きだった、じっくり灰汁取りも好きだった。
丁寧に煮込めば美味しくなり、深みある味になった。
何度も料理をし味付けを変えてみては好みの味を探すのも好きだった。
美味しい味付けになった時はレシピを覚えアリスさんと共に完成させていた。
それは去年の冬期間中に良く行った事であり、今年の冬も再び料理作りを考えている。
暫くすると受付嬢からの呼ぶ声が聞こえ、ナナとティアは再び受付カウンターへ向かう。
そこには予想以上に膨らんだ袋が置かれていた。
ナナは品質的に低かったはずのポーションだったが、数の多さに報酬額が大きくなったと考えた。
「ポーションの質は低かったと思うんですが?」
「はい、ポーションの品質は低かったです。
60本は問題無く使えるポーションでしたが、162本のポーションは低品質でした。
それとこちらの67本は傷薬として買い取らせてもらいます。」
「傷薬もギルドで活用するんですか?」
「はい、ギルドの売店で販売してます。
回復用の傷薬にポーションなどいろいろ販売してますのでご利用お願いします。
そして、今回の報酬の内訳は確認さなされますか?」
「大丈夫です。」
ナナは報酬を受け取り保管庫へ送ってから、ティアと一緒に薬草採取へ向かう。
『ロースポーツ』周辺は薬草の宝庫で、ナナ達が記憶している薬草の群生地は20を超え、毎回違う場所で採取を行う。
「今日はギルドでゆっくりした為に、採取時間は短めだし・・・草原を何か所行ってみよう。」
「うん、採取しながら穴兎を探すのも面白そう。」
「それに今日はギルドに戻らないから、ゆっくりしながら散策しよう。」
「はーい。」
『大討伐』後の『ロースポーツ』周辺は、昔の様に穴兎や野犬の反応があり、薬草採取中も警戒する必要が必須となった。
少し前までなら草原では野犬の姿が多少あっただけで、街道を行きかう行商人達に危険は無かったのだが、今現在の『ロースポーツ』周辺は昔の様に野犬の群れの反応を感じている。
穴兎もこちらを警戒しているが少なからず多くの反応を感知している。
「群れているのが野犬か・・・、反応が微かなのは穴兎か。」
「強い反応は感知出来ないし・・・いないのかな?」
「強い反応は浅い森や深い森から感知出来るから今のところ問題無いな。」
「黒熊狙いの冒険者達は今日も森で討伐ですねー。」
「冬期間前に蓄える必要があるからな。」
「冬期間前に?」
「そう、冬期間中は討伐依頼も激減するし、採取系の依頼も減る。
それにより収入も減るはずだから冬期間中は『ロースポーツ』を離れるか、他の金策に走るか・・・。」
「今年は『魔法工房』に籠るの?」
「んー、今のところ籠るつもりだよ。
ティアは何かやりたい事でもあるの?」
「何かと言われても・・・何も無いかも。
冒険者になったばかりで何をすればいいのか悩みます。」
「今日まで忙しく過ごしてきたんだから身体休みも大事だよ。」
「そっか、休むのも大事かー。」
「そそ。」
久しぶりのんびりと草原を散策しながら薬草採取をしていく。
1つ1つ丁寧に採取していく、それでいて襲い掛かる野犬を倒しては『魔法工房』に送る。
薬草10本を20束採取しナナ達は『魔法工房』に帰る。
本日の成果は野犬31匹に薬草10本20束を手に入れた。
薬草は冬期間中の調合用に大切に保管し、野犬はナナ達が帰還すると丁寧に解体が終わっており、アリスさんが下準備をし最終的に『串焼き』へと姿を変えていく。




