護衛依頼完了!
護衛依頼最終日、朝食をきっちり食べてから聖王都へ向け歩き出す。
かなり離れた距離からもわかるように巨大な防壁が目に付く。
「こんなに離れていてもわかるほど巨大な防壁か。」
「高いし壁の長さが大きすぎない?」
「あれは聖王都を囲む防壁で今見れるのは第一防壁ですね。
聖王都は何重にも防壁が築かれています。」
「第一防壁?」
「第一防壁は市街地を囲むように、第二防壁は貴族街を囲むように築かれているはずです。
その他にも聖騎士団や聖王都教会を囲むように何重にも防壁があります。」
歩きながらナナとティアが遥か向こうに見える防壁について話していると、マリアが防壁について教えている。
森を抜けてからも見える防壁は端がどれ程の距離があるのか・・・。
防壁の高さも辺境の『ロースポーツ』の比べて数段高く築かれている。
「『ロースポーツ』より頑丈な防壁だな。」
「防衛重視の防壁って事?」
「そうだな、守りに特化してるのかもな。
しかも、防壁の上部にも何かしら武器があるみたいだし・・・。」
ナナが防壁に何かあるというのでティアが目を凝らしてみると
「んー、弓のデカいやつが置いてある?」
「『ロースポーツ』では無かった物だね。」
「あれは防壁装備の『バリスタ』ですね。
対飛行型魔獣の専用武器です。」
「へー、専用武器まであるのかー。」
「あれは聖騎士団の管轄なの?」
「そうですね。
聖王都の防衛は聖騎士団が主な任務です。
それと聖王都の王城は守護騎士団が担います。」
「それじゃ、冒険者達は防衛には手を貸さないの?」
「冒険者達は聖王都の防衛にはギルドからの緊急依頼として参加が義務付けされています。
確か冒険者ギルドランクC以上が対象だったはずですが・・・。」
「ランクC以上ならティアと一緒で対象外かー。」
「まだランクEだし義務無し冒険者かー。」
「はぁ、ナナさん達なら大丈夫だと思いますが・・・。
ランクを上げたりはしないんですか?」
「上げる理由も無いし、ゆっくり冒険者出来ればいいかな。」
「そだね、急いでランクを上げても大変そうだしね。」
「ティアは冒険者1年目だし、今のままでも支障がないからな。」
「それにナナだって冒険者2年目でランクEなのは早いのか遅いのか。」
「冒険者ランクは依頼の成功率やら貢献度によって上がるようですが・・・
ナナさん達はその辺どうなんですか?」
「依頼の成功率ですか?
それなら大丈夫ですよ、依頼の失敗は無いはずですから。」
「失敗無いって言っても薬草採取が主な依頼だからじゃないの?」
「それもそうか、『ロースポーツ』は薬草が豊富だったからなー。」
「薬草の群生地が沢山あったから数時間で依頼の必要数確保できたし。」
「ナナさん達は毎日依頼を?」
「依頼を3日間の休日を2・3日だったかな?
冬期間は完全に仕事休みしてたけど・・・。」
「ポーション調合してたって聞いたけど?」
「そそ、調合したり修練したりで楽しかったなー。」
「ナナは修練好きだからなー。」
「今はティアも修練好きでしょ?」
「冬期間の休み中に修練の日々ですか。
それはすごい大変な事では?」
「好きな事をしてたから大変という事では無かったよ。
出来る事も増えたし、自分の装備も準備できたしね。」
「ナナの手甲とブーツは自作だっけ?」
「革の作務衣もな。苦無は壊れちゃったから作りなおしだし、次の休みは装備を整えなきゃな。」
「あれ苦無壊れちゃったの?」
「黒熊の攻撃を受け流し失敗してな。
まだまだ、修練が足りないみたいだったよ。」
「あのナナさん黒熊の、『赤目』の黒熊の攻撃は受け流し不可だと思うんですが?」
「苦無の耐久性を考えれば無理っぽかったけど、剣鉈では受け流し出来たから大丈夫だと思うぞ。
装備品の耐久性向上もこれからの課題だな。」
「『大討伐』の時はナナの装備は大破してたけど、今回は苦無だけで済んだんだね。」
「手甲もブーツ異常無し、『魔纏衣』(まとい)を習得しておいて良かったよ。」
「あの『魔纏衣』を習得済みなんですか?」
「「はい。」」
「え、ティアも習得済みなの?
『魔纏衣』は冒険者ランクC以上の必須スキルなのに・・・。
それでもナナさん達はスキル的にはランクC並なのね。」
ナナ達は「そんなものなのかー。」としか考えずにいる。
ただし、周りの冒険者達は驚いた顔でナナ達を見ているが、それには気づかずにいる。
対照的に聖騎士の3人は「やっぱりな。」と言う感じでナナ達の話に耳を傾けている。
見えている防壁は遠く、ナナ達が聖王都へ到着したのは昼過ぎになってからだった。
街道を歩いている立場上、街道に腰を下ろし休むことは出来ず、街道のそばの草原で身体を休めながら食事をし、ゆっくりと聖王都入りを果たす。
聖王都では冒険者ギルドで依頼報告をし、『ロースポーツ』からの護衛依頼終了と追加護衛依頼を終える事となる。
冒険者達は予想以上の報酬額に喜びながら王都の酒場へと繰り出し、聖騎士の3人は聖女候補生のマリアと神父のシルバさんを伴い、聖王教会へと機関の報告へ向かう事となる。
マリアはナナ達に向かい「またね。」とだけ告げ、手を振りながら帰って行く。
シルバさんも「それでは、またお願いします。」と言いながら聖騎士の3人と共に帰還する。
ナナとティアも「「また。」」と言いながら今回の依頼が終わった事を実感する。
ナナとティアはギルドで護衛依頼の報酬を受け取っており、本来であれば聖王都で一泊してから『ロースポーツ』に戻るはずなのだが・・・、ナナは初めての長期依頼が終わって『ほっと』としたのか
「今日は宿屋に泊まらず帰ろうかー。」
「向こうへ?」
「そそ、今日はゆっくり休みたいし、向こうの布団で寝たい気分。」
「あー、確かに緊張の連続で寝たり無い気もあるし・・・向こうへ帰ろう。」
「んー。」
そして、ナナはティアの手を握りながら人知れず『魔法工房』へ帰還する事になる。
長期依頼で『魔法工房』の扉の前で、「なんか久しぶりに戻ってきた感じー。」と思いながら中へ入る。
季節的に通年春の陽気な『魔法工房』は今日も快晴であり、ナナ達は寝起きする工房へ荷物を置いてから屋敷へと向かう。
屋敷ではアリスさんが調理場で料理をしており、リビングではグランさんとアポロさんが仲良くゲームをし、ルナさんとハクトさんはお茶を飲みながらゲーム画面を眺めている。
まずは、グランさんに帰還の報告をし、アリスさんに「料理美味しかったです。」とお礼を言い、ハクトさんに「『魔纏衣』のおかげで助かりました。」と言い、ルナさんに「今回はマリアの護衛成功しました。」と報告を済ませる。
アポロさんは怪我無く無事に帰ってきた事を喜び、「次は大物狙いだね!」と嬉しそうに言っていたので、ナナとティアは「「えへへへ」」とだけ笑いながら
「今日は疲れたので寝ますねー。」
「お風呂は・・・無理っぽいので魔法で綺麗にして寝ますー。」
「はい、お疲れ様。」
「今日はゆっくり身体休めなさい。」
「明日は朝練無しじゃからなー。」
「おやすみなー。」
「料理は保存庫に入れておきますから目が覚めましたら・・・お食べください。」
ナナとティアはぺこりと頭を下げ、工房へと戻る。
魔法で綺麗にしていたので、このまま寝れるのだが革の作務衣から、布の作務衣に着替えてから・・・布団で寝ようとし、布団を敷き終えると同時に倒れる様に眠るのだった。
ナナ達が就寝後、グランさん達はナナの装備の疲労度の確認をしていた。
「苦無は大破していているから、鍜治場で一から作り直さなきゃな。
剣鉈は研ぎ直し必須として・・・手甲とブーツは補修すれば大丈夫と。」
「革の作務衣は多少ほつれているだけで問題無しと。」
「ナナさん達の戦闘は映像で見た限り『魔纏衣』にて強化しているのはわかっていたが、やはり覚えたての『魔纏衣』では完璧に防ぐ事は叶わなかったか・・・。」
「それでも最終的に武器に頼らず『蹴撃』(しゅうげき)で止めを刺すとは思わなかったがな。」
「剣鉈を構えて『紅眼』の攻撃を受け流すのは見応えあったがな。」
「いやいや、ギリギリの攻防に見えたが?」
「あの時のナナさんは『結界魔法』を使わずにいたし、本来であれば無傷で対応できたはずじゃ。」
「やはり経験不足か。」
「実践不足とも言いますが?」
「どちらも同じじゃ。」
「それでナナさんの装備の補修などは?」
「壊れた苦無は作りなおすと思うが・・・ナナさんの製造した武器が普通の物であるかどうか・・・。」
「斜め上の物を作り上げますからな、次も同じ苦無とは言え無きがする。」
「解体ナイフが剣鉈になった様に?」
「どちらにしろナナさんが目覚めてからじゃ、今回は初めての共同依頼であり、護衛依頼じゃったが大丈夫かのぉ。」
「慣れない者達との依頼は身体的に精神的に気疲れする。
後は何度も同じような依頼を繰り返せば安心できるんじゃが。」
「それにしても護衛依頼にも関わらずナナさんからは色々な食材が届きました。
まだまだ食材はいっぱいありますし、たくさん調理しますよー。』
装備の補修は確定事項として、新たに武器を製造する必要もある。
次の依頼に向け料理のストックを増やす必要もあり、『魔法工房』の面々はこれからのナナの育て方について話し合いが深夜まで行分けることになる。
この話し合いはナナはもちろんティアにも内緒の事であり、ハクトさんがナナとの話をしながら行動を誘導していく。
ハクトさんの完璧な行動誘導により、ナナとティアは装備を整え、スキルを修練し習得する。




