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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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変貌していく『赤目』

追加護衛依頼も3日目にもなると、冒険者達も慣れてきたのか、嬉々として黒狼の群れを討伐していく。

追加の護衛依頼も今日までとなり、出来る限りの黒狼の群れを討伐している。

問題があるとすれば森の奥からの視線と言うか『赤目』の存在であろう。

護衛依頼の責任者と思われる神父と聖騎士との会話を思い出し、冒険者達は今日中は黒狼の相手をしなければいけない。


「それにしても昨日の今日で森の中には黒狼の群れが溢れているな。」

「これ程の数の黒狼の群れが森にいたとは考えずらい。」


黒狼の群れなら危なくなく倒せるのだが、さっきから森の奥からの『赤目』の存在感が増した気がする。

それから暫く黒狼の群れを討伐していると、突然森の奥から『赤目』が群れを成し森の奥から向かってくる。


「やばい、今すぐ撤収だ!」


斥候役の冒険者の1人が叫ぶ。

それを聞き冒険者達は黒狼の群れを倒したのちに駆けて行く。


森の奥からの『赤目』の群れが移動を開始したのは、休憩場所で待機している聖騎士達にも感知し、防壁の入り口で武器を構え待機している。


ナナとティアは防壁の上で弓を構え、冒険者達の帰還の準備をしていく。


ナナは森の奥を凝視し、森の奥から群れを成し、冒険者達に向かっているようだ。

ティアもまた森の奥を凝視し、『赤目』に弓を構え矢を射る。

冒険者の邪魔にならないように後方の『赤目』を射抜いていく。


こちらに向かっている冒険者達も、後方からの『赤目』の反応が減っていることに、不思議に思いながらも我武者羅に走り続けている。


それから30分後、滑り込むように休憩場所に帰還を果たす。


「はぁはぁはぁ、危なかった。」

「行き成り襲い掛かるとは・・・。」

「『赤目』の黒狼の群れは予想以上に危なすぎる。」

「それ以上に群れの数が多すぎるし・・・やばかった。」


休憩場所の入り口はナナが完全に魔法で塞ぎ、防壁の周囲には無数の『赤目』の黒狼が威嚇している。


最初こそ防壁に向かってきていたのだが、何度攻撃をしても防壁に傷つけることが出来ない事を知り、防壁を飛び越えようとしているが、その度にティアに撃ち落されている。

ナナもティアと同じく立て続けに弓を構え矢を射る。


冒険者達は疲れた顔で『赤目』の黒狼が撃ち倒されているのを目撃し


「なんで『赤目』を弓で射る事が出来るんだよ。」

「『赤目』の堅さは弓矢では歯が立たないはずなんだがな。」

「まぁ、いいや。

助かったことを喜ぼうや。」

「そうだな、あれほどの『赤目』を相手にするには俺たちには無理だしな。」

「確かに違いない。」


「倒すのは無理だが、『赤目』の体力を削る事は可能だろう。

弓と矢を使う者と魔法を唱える者で、『赤目』の黒狼を倒そうか。」

「「「「「おぅ!」」」


冒険者達は防壁の上から魔法を唱える者、弓を構え矢を射る者、倒す事より体力を減らす事を考え、『赤目』の黒狼の群れに攻撃を仕掛ける。



聖騎士の副隊長サウンドさんは、『赤目』の襲撃を知らせる為に、複数の狼煙を炊き始め、聖王都に緊急の知らせをする。


聖騎士団、冒険者ギルドは共通の知らせる手段があり、サウンドさんが使用した狼煙のもその1つで、狼煙の数の多さによって緊急性が増す。


「緊急にして最悪の状況か・・・、とりあえず聖王都への知らせは完了か。」


「副隊長!

黒狼の群れの奥から黒熊が現れました!」

「黒狼を襲い喰いながら向かってきます!!」


防壁の上から黒狼の惨殺しながら捕食しているのが見える。

しかも、捕食し続けている黒熊の姿が変化していく。

黒狼を喰らい身体が肥大化し、腕が増えたり巨大化したり、本来の黒熊とは似ても似つかわない姿へと変貌している。


「副隊長!『赤目』の黒熊が・・・魔獣かしました!!」

「しかも、弓矢も魔法も聞きません!!」


ドゴォ!


変化し変貌した『赤目』の黒熊は、防壁を一撃で粉砕しする。


破壊された防壁はナナが慌てて補修していくのだが、数匹の黒狼が休憩場所に侵入する。

侵入した黒狼は聖騎士達が対応し、問題がないのだが『赤目』の黒熊に防壁の防御力が足りない事を悟り、壊れた個所を堅硬に補修していく。



ナナは防壁の上から『赤目』の黒熊の動きに合わせ対応していく。

黒熊を倒すのではなく、破壊されたら補修し補強する。


他の冒険者達は防壁の外の黒狼の群れの対応で精一杯であり、聖騎士達はナナの動きに合わせて防壁が破壊された時のサポートをしていく。


ティアは見張り台の上から黒狼の群れの数を確実に減らしていく。

森の奥からの反応が無い事で、目の前にいる黒狼の群れと、黒熊を倒せば問題ない。


「黒狼が残り16、黒熊は1!!」


「まずは、黒狼の群れを倒しきるぞ!」

「「「「おぅ!」」」


過剰ともいえる魔法で黒狼を葬り去り、防壁の外は防壁の外には・・・焼かれ氷結し切り裂かれ圧し潰された黒狼の死体が溢れている。


そして、残された『赤目』の黒狼は最初こそ防壁を攻撃していたが、今は冒険者達が倒して黒狼に喰らいついている。

食べるほどに『赤目』の黒熊の姿が新たな魔獣へと姿を変える。


「あれはもう黒熊じゃないな。」

「黒熊と黒狼が混ざり合った姿っぽい?」

「どちらかと言えば黒狼の四肢に黒熊の上半身が混ざり合った??」

「黒狼の死体を食べきるまで暫くかかりそうだが・・・どうする?」

「どうするっていってもなぁ・・・。アレからは逃げれそうにないぞ。」

「かといって戦って勝てそうか?」


「「「それは無理!」」」


「そこは声を揃えていうなし。」


冒険者達は逃げることも戦う事も躊躇している。


聖騎士の副隊長のサウンドさんも防壁の上から変貌した『赤目』の黒熊を見ながら


「あれはもう別もんだ、大討伐時の『赤目』と同等と考えていいだろう。

逃げ切ることは不可能であり、戦って勝てる見込みも・・・難しい。

見たところ黒狼を喰うのが忙しそうだし、さてどうするか。」


「それでは籠城しかないでしょう。

高さと厚さを補強し補修を繰り返し、強く硬く堅甲にしていこう。

食糧もあるし、聖王都にも知らせは終えている訳だしな。」


サウンドさんが悩んでいるところへ、神父のシルバさんが逃げるでも戦うでもない。

現状維持というか耐えるのはどうかと言ってきた。


「確かに『赤目』からは逃げれないし勝ち目もないか・・・。

問題は耐えれるかだが・・・どうだ?防壁の補強は大丈夫か??」


サウンドさんとシルバさんが話している間もナナは防壁の補強をしていく。

土魔法が得意な冒険者達もナナと一緒に『土壁』と唱え補強を施し、『赤目』の黒熊のそばから防壁の補強を行い、高さよりも厚みを重点に考えた。


「高さよりも厚さ重視で大丈夫かな?」


サウンドさんが防壁に触りながら強度を確かめ


「そうだな、まずは壊されない厚みがあれば十分だ。」


「了解です。厚さ重視でやってみます。

厚さ重視で言いそうでーす!」


ナナは一緒に補強している冒険者達に声をかける。


「了解ー。」「任せとけ。」


「それとナナさんには1つお願いしたいことがあるんだがいいか?」


「ん?」


防壁の補強を始めようとしているナナにサウンドさんが声をかける。


「ログハウスの補強は魔法では無理だから。

避難場所を地下に作れないか?

ここにいる者達が逃げ込める地下室でもあれば安心できるんだが・・・。」


「地下に避難場所・・・地下室ですか?

造れますが今すぐですか??」


「あぁ、アレが黒狼の死体を喰らいつくす前にお願いしたい。」


「んー、大丈夫ですが何処に作ります?」


「それなら野外調理場のそばに入り口を造ってもらえるか?」


「大丈夫ですよ。

今から造り始めた方が・・・。」


「お願いします!」


「了解。」


防壁の向こうからは『赤目』の黒熊の捕食音が響いてくる。



ナナは野外調理場の周りをぐるぐる歩きながら地下室の入り口をどこにするか悩んでいた。

避難場所という事で人目に付きにくいのなら、街道から見えない場所に作った方がいいのか。

それともあえて目立つ場所に作り、地下室を保存倉庫として活用してもいいし・・・。


「少なくとも野外調理場の屋根の都合上離れた場所に作った方が安心か・・。」


ナナは野外調理場とログハウスの中間に避難所の入り口を造るために、まずは土魔法で地面を固めながら掘り進めていく。

入り口はあえて広くせずに、人ひとり通れず広さを確保する。


崩落の危険を減らすために掘り進めた土は固めて強固にし、土よりも石や岩に加工していく。

四角くい石や岩を積みながら地下階段を造り、地下室の制作に取り掛かろうとしていると後ろから声をかけられる。


「ねね、換気口は作らないの?」


地下への階段を造り熱中していたのか隣にいるティアに気が付かなかった。


「そういえば、空気の流れがないのはまずいな。」


ナナは地下へ続く階段に数か所の縦穴を掘り、ティアに「地上の空気穴を目立たないように作れるか?」と聞くと、ティアはコクリト頷き階段を上がっていく。


「空気の循環がないのは生き埋めと同じだから危なかったな。」


とりあえず、『赤目』の黒熊の襲撃に耐えれるのもを造りますか。

『赤目』の黒熊が捕食し姿形、存在すらも変化し新たな姿になる。

冒険者達・聖騎士達は逃げることも戦う事もままならない状況で、彼らは籠城と言う望みをナナに託す。


もっとも聖女候補生のマリアと神父のシルバさんは、ナナとティアがいれば大丈夫だと考え、2人はナナもしくはティアのそばに待機していた。


ナナの土魔法の構築速度に設計構築に驚きながらも、次々に完成していくものを目を離すことなく焼きつくすのだった。 

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