ナナの一日からの
ナナの一日は宿屋の一室で身体のチェックから始まる。
ラジオ体操をしながら痛めた個所が無いか筋肉痛が無いかの確認をしていた。
冒険者生活の最初の3日間は筋肉痛で動くのも億劫になっていて
行動前の柔軟運動や寝る前のストレッチは毎日の日課になっていた。
そして、リュックの整理をし弓と矢筒の矢の数を確認し
解体ナイフと採取ナイフの鞘を腰ベルトに結び
身体全体と装備品を一緒に『生活魔法』で綺麗にし
「よし、忘れ物無し食堂行こう。」
必要な物や大事な物は『魔法工房』に保管してあり
宿屋の一室にはナナの最低限の着替えと装備品しか無かった。
最後に部屋を出る時に施錠し一階の食堂へ向かう。
食堂は冒険者数人が食事をしている。
ナナが食堂に降りると手を上げて挨拶してくる冒険者もあり
ナナはぺこりと頭を下げ「おはようございます。」と挨拶をする。
「おぅ、おはようさん。」
「ナナはギルドへは食後に行くのか?」
「クエスト受注してからの方がいいと思うがなぁ。」
「常駐クエストしかやらないので大丈夫です。」
「そういえば穴兎と薬草だっけか?」
「はい、やっと穴兎を倒すコツを掴んだので。」
「へぇ、穴兎は逃げるし隠れるしで面倒なんだがなぁ。」
「コッソリ近づいて弓で射れば大丈夫ですよ。」
「それに穴兎を仕留めれなくても薬草採取をすれば大丈夫ですし」
「やっぱりナナはしっかりしてるな。」
「最近の若いもんは片手剣や大剣を振るうばかりでなぁ・・・。」
「まぁ、見た目から入る冒険者は多いわな。」
「辞める若者も多いがな・・・。」
「ナナは弓一本でいくのか?」
「まずは弓の方が金銭的にも財布に優しいですから
剣や槍を買うより矢をまとめ買いした方が安いですし。」
「日帰りのクエストをしているナナならそれの方がお得か・・・
数日かかるクエストならキツイかも知れんが今のところ問題無いわな。」
「はい、穴兎の毛皮と薬草採取ですし
朝から出かけて夕方までには目標の数を確保出来ます。」
「そういや穴兎は毛皮のみ納品してるんだろ?
肉はどうしてるんだ肉屋へでも納めてるのか?」
「穴兎の肉は美味しいので自分で食べてますよ。」
「そかそか、昼の弁当も量が多いが育ち盛りなんだから
いっぱい食べて大きくならなきゃな。」
そういって食堂の冒険者達は朝ご飯を済ませ出ていく。
ナナもぺこりと頭を下げると冒険者らも手を振り
「いってくらぁ~。」「ナナも頑張れよ。」
「いってらっしゃい。」
静かになった食堂でナナは朝ご飯のパンと具沢山のスープを頂く。
肉と野菜のバランスが良く具沢山のスープだけでもお腹いっぱいになりそうだが
それにパンが2個ついているので1つを食べ1つをリュックに保管する。
ナナの常駐クエストの報酬では薬草採取の薬草10本1束のクエストを5回分で1泊となり
穴兎の毛皮5枚で宿2泊分の報酬額となっていた。
毎日毛皮クエストでもナナは毎日泊れるのだがギリギリの手持ちのお金しかないと困るので
少しでもクエストをしながら稼ぐ事を念頭に行動していた。
穴兎を倒せば矢は減るし薬草を採取すれば採取ナイフは切れ味が落ちるし
矢の補充やナイフを研ぐ砥石の購入など冒険に付随する道具も揃いつつあった。
それと穴兎を調理する時に必須な調味料の確保は一番大事であった。
一度調味料を忘れた時に焼いただけの串焼きを食べたが・・・美味しくなかった。
穴兎の肉は美味しいんだが肉のみの味というか・・・なんというか。
朝ご飯を平らげナナは手を合わせ「ごちそうさま。」をし
昼ご飯の弁当を受け取り「美味しかったです、弁当ありがとう。」と声をかけ
「あいよ、無理すんなよ。」と声をかけてもらい宿屋を後にする。
「ギルドでクエストの確認をして草原行こう。」
朝のギルドは冒険者が溢れているのだが朝ご飯後にはどういう訳か人はまばらになる。
そしてクエストボードを見るとクエストの数が減り
報酬額の少ない物や逆にクエストの割に報酬額の少ない物ばかり残っていた。
ナナが毎日やる常駐クエストは・・・「よし、あるな。」と確認し
受付嬢にぺこりと挨拶だけし草原へ向かう。
ナナが向かう草原は『ロースポーツ』の街道から東へ向かったところで
ひざ下の草が生い茂る草原となっているが今の時期雑草が花を付け花畑になっていた。
その中を穴兎がひょっこりと頭を出しているのを確認し
ナナは静かに風下へ向かい弓を構え弓を連続で射る。
身体を低くし音を立てずに移動し弓を射る。
穴兎の集団は気が付けば数匹残してナナの弓の餌食になる。
5匹倒したところでナナは立ちあがり穴兎の前に姿を現す
穴兎はナナの姿を見ると一目散に逃げるのを確認し
「これで目標数確保っと。」
穴兎を『魔法工房』へ送りナナはその場へ座りこむ。
『気配探知』で周囲を警戒し一息つく。
暫らくすると『魔法工房』から穴兎の解体が終わった事を知り
穴兎の毛皮5枚をリュックに入れる。
穴兎の串焼きやステーキも取り出し可能だけど・・・
もうすぐお昼なのでその時にでも頂こうと思い
ナナは手を合わせ「解体ありがとうございます。」と心の中で呟くのだった。
ナナの冒険者としての行動は午前中に穴兎を討伐し
午後から薬草採取をし夕方に『ロースポーツ』に帰還する。
ギルドへ納品後に露店を周り買い物をする。
最近のお気に入りは露店で調味料を購入し
『魔法工房』へ送り料理をして貰う事と
見た事もない食材や食糧を見ては買い込み『魔法工房』へ送っていた。
野菜などは見た目と味がナナの知っている物と違い
調理方法なども試行錯誤しながら新しい食材と向き合っていく。
肉は基本的に焼くか煮るだけで肉肉らしい料理になるのだが
魚に関しては『ロースポーツ』が内陸にあるのか川魚しかなく
基本的に泥臭く慣れれば大丈夫らしいがナナは苦手で魚を買う事は無かった。
「やはり野菜は周辺の農村から出荷されているのか・・・
肉は草原や森に豊富すぎるほどいると言う事なのかな?」
『ロースポーツ』という都市は防壁を二重になっている。
第一第二の防壁に違いは無くどちらも堅甲な作りになっており
第一の防壁内の居住空間は古参の住民が多く住まい
第二の防壁内は新規住民や冒険者に加え露店街もあり
人の流れが活気があるのは第二の防壁内だったりする。
ナナは第二防壁内の露店街と宿屋やギルドの数カ所しか移動する気が無いので
行こうとも思わないし行く気もなかった。
それから数日後に『ロースポーツ』収獲祭を迎える。
第二の防壁内の中央広場にて昼から開催。
午前中に準備の後、正午から領主の挨拶の後に始まる。
大型の収獲祭という名の『焼き肉祭り』
ナナはこっちに来てから始めてのお祭りという事で楽しみにしていた。
そして、『焼き肉祭り』前日にナナはギルドに何時ものように納品を済ませ
宿屋へ戻ろうとすると受付嬢の一人から
「ナナさんに薬草採取の依頼が来ていますがどうしますか?」
「・・・ん?」
「ですからナナさんに個別に薬草採取の依頼が来ているんですが・・・?」
「えーと、はい?個別で採取依頼ですか??」
「はい、ナナさんに個別依頼です。」
「お断りします。」
「・・・了解しました。」
受付嬢は手元の依頼用紙にペタリと判を押し机の引出しにしまう。
そして、通常業務へと戻るのだった。
その後、宿屋へ戻ったナナは晩ご飯を少なめに食べ
部屋に戻り早めに眠り始めるのだった。
『ロースポーツ』防壁を二重に構えた辺境都市。
第一の防壁内の居住空間は古参の住民が多く。
第二の防壁内は新規住民や冒険者に加え露店街もある。
人の流れが活気があるのは第二の防壁内だったりする。
冒険者ギルドは第二の防壁内の門の近くにあり
冒険者達は長らく住んでいる者でも第一の防壁内へは行かない者が多数いる。
『ロースポーツ』の収獲祭『焼き肉祭り』も第二の防壁内中央広場で行う。
この日ばかりは第一第二の両方の住民により大型の祭りになっている。
住民なら基本無料で料理と酒が振舞われる。
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『個別依頼』
冒険者ギルドを通して冒険者個人又はパーティー単位でのクエスト依頼。
基本的にランクC以上に該当する依頼方式。
通常の依頼と違い報酬が高額だったり特殊な依頼が多いことから
個人での依頼は依頼主との信頼関係が無い場合は断られる事が多々ある。
パーティー単位での依頼も信頼関係が無ければ断られる事があるが
ギルドを通してのパーティーとの長期契約をしている場合もある。
商隊の護衛依頼などは短ければ7日間から1カ月以上の場合もあり
護衛専門のパーティも冒険者ギルドには存在する。
また、貴族などの才女などの護衛には女性のみのパーティーが担当し
才女御用達の女性のみのパーティーがギルドには存在していた。