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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
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護衛依頼開始!

年末は大荒れの模様。

聖王教会前には帆馬車が簡易箱馬車へ姿を変えていた。

盗賊対策として馬車の側面を外せるようになり、即座に防壁として活用できるようになっていた。

ナナが進言した木盾は大型の木盾とし、冒険者2人で外し馬車を守る防壁となる。

冒険者個人には武器屋のバッツさん特性の木盾が装備されることになる。

聖騎士達は騎士装備のままで聖王都まで護衛するとして、聖王教会の神父と修道女達は箱馬車内部で、

交代で馬や馬車の周囲を魔法障壁を展開する事にした。

当初の予定と違い箱馬車という事で馬の数が倍になり、護衛依頼での移動速度は向上したのだが、馬にかかるコストが倍になった。

馬車の数は最終的に簡易箱馬車が2台に食糧やらが積まれた荷馬車が2台となった。

簡易箱馬車には聖王と教会の方々が乗り込み、荷馬車には荷物共に冒険者たちが乗り込む予定。

もちろん、馬車の御者は冒険者が交代で担当し、隊列は荷馬車・箱馬車・箱馬車・荷馬車とし、騎馬が

周囲を警戒するスタイルとなった。

聖騎士の装備と魔法障壁があれば盗賊ごとき恐れるるに足らずと言われた。

ナナとティアはマリアとシルバさんが乗り込む御者担当となり、聖王都までの護衛依頼を任される。


魔法工房でシルバさんから1人ずつ木盾を装備するより、箱馬車の側面を巨大な木盾と見立ててはとアドレスをもらい、武器屋のバッツさんや大工さんたちの協力の元に完成した。

側面の木盾の設置には護衛依頼開始までの間に冒険者達が何度も練習を繰り返し、馬車停止から木盾設置まで素早く行えるまで繰り返し、箱馬車完成から2日後に聖王都に帰還する。


聖騎士達が騎馬に馬車を護衛しながら『ロースポーツ』をゆっくりと駆けていく。

その隊列を『ロースポーツ』の住民たちが手を振りながら

「ありがとう。」「お疲れさまでした。」「いままでありがとー。」

住民からの感謝を聖騎士達は手を振りながら駆け抜け、箱馬車に乗っている神父や修道女達も同じく、住民たちに涙ぐみながら手を振っていた。

馬車の御者であるナナ達は「すごいなぁ。」とか「みんな手を振ってるね。」とか話しながら気が付けば『ロースポーツ』を抜け、聖王都へ向け街道を突き進む。


『ロースポーツ』の防壁が見えなくなった頃から、聖騎士達が警戒Lvを1つ上げた気がした。

ナナとティアも街道を駆けている馬車を襲うわけではない気配を感じていた。

一定の距離を保ち並行して移動している気配が複数・・・、聖騎士の1人が「周囲警戒!」と叫ぶと、

「「「「「「おぅ!」」」」」と聖騎士達が声を上げ始める。

冒険者の中には何人かは森の方へ弓を構えている者もいる。

馬や馬車を含め魔法障壁が多重で展開し、警戒しながら馬車は街道を突き進む。


周囲の不審な気配に警戒も必要だが、馬の消耗を考えると1時間毎に休憩をしていた。

馬の疲れが取れるように回復魔法を唱えたり、軽くではあるが食事をし身体を休める。


聖騎士団の隊長の1人であるランクルが周囲を警戒しながら


「街道を挟んで西に4人に東に5人か・・・。」

「接近しているのが4人の5人だが、離れた位置に追加で西に12人の東に8人だ。」


聖騎士の副隊長の1人サウンドが広範囲の反応を感知していた。

聖騎士随一の感知能力がある彼の言葉に、聖騎士はもちろん聖王教会の面々、冒険者達は休憩以前に周囲を見渡し・・・息をのむ。


「一定距離で反応があるのか、急いで襲われる可能性は半々か・・・。」


護衛依頼の責任者であるシルバさんは危険は半々と考え、聖騎士のランクルさんとサウンドさんと今後の方針を話し始める。


「進行速度は現状維持としても馬車の速度に並行して動ける者達か・・・本当に盗賊なのか?」

「1時間近く馬と同じ速度か・・・人がそんな速度で動ける者なのか?」

「魔法・・・スキルを使えば可能かもしれませんが・・・、盗賊とはそれほどまでに強い者なのか?」

「移動速度だけじゃない、気配の消し方が上位冒険者並だ。しかも、隠れている者全て強いと考えていいかも知れない。」

「隠れている約30人は強敵として、我々の勝算はどれくらいです?」

「さて、聖騎士8名の冒険者15名としても数の上では負けてます、戦闘力としては五分五分か・・・我々の方が負けないんじゃないかな。」

「なるほど、負けないですか・・・勝てるではなく。」

「はい、負けないです。森を抜ければ我々の方が有利に戦えると思いますが、この森の中では我々には不利でしょうな。」

「ならば地の利を無くせば問題無いと?」

「そういう事です。」


シルバさんの呟きにランクルさんとサウンドさんはニヤリとし


「そう言う事でしたら任せてもいいですか?」


状況を理解しないままシルバさんは二人に丸投げをする。


「10分休憩後に聖王都へ向けて移動を開始する。次の休憩は1時間後毎で1時間休憩を繰り返す!」

「休憩中に各自食事を済ませろ。それと馬と馬車を優先的に障壁を展開、冒険者はいつでも戦闘用意をお願いする!」

「「「「「おぅ!!!」」」」

「周囲の警戒は各自で行うが冒険者の半分は交代で仮眠をしてくれ。」

「これほど周囲から歓迎されているとは予想外だったからな、数日は寝ずに夜営を考えてくれ。」

「それは大丈夫だが、聖王教会の方も交代で仮眠をした方がいいんじゃないか?」


冒険者の方からの声にシルバさんは頷き


「神父と修道女は半々に分かれて仮眠を取ってください。御者は申し訳ないが引き続きお願いする。」

「「「「はい。」」」」

「それと攻撃範囲に近づいてきたら声を上げてくれ、我々の方でも攻撃の確認や接近したら馬車を止め、防壁を展開し向かえ打つのでそのつもりでいてくれ。」

「「「「「了解!」」」


周囲を警戒しての食事に加え、冒険者達は緊張しながら食事をしたり、仮眠の準備をしたりしている。

神父や修道女達は素早く食事をし、仮眠前に聖騎士達や冒険者たちに『身体強化』や『速度強化』の魔法を唱え、魔力を消耗してから仮眠を始めた。


「魔法の効果は長くても夕暮れまでは大丈夫なはずだ、全員が食事を済ませたら出発するぞ!」


ランクルさんの言葉に全員が頷き聖王都へ向け動き始める。


御者のナナは手元には木盾が2枚あり、御者席の後ろの背負い籠には弓に矢筒が入れられている。

ティアはいつでも弓を構えられるように手にし、いつでも矢が入れる態勢で周囲を見つめていた。

騎乗の聖騎士達8名も周囲を警戒しながらも、魔法障壁で守りを固め駆けだす。



夕刻までに数度の休憩を経てナナ達は街道を突き進んだが、森を抜ける事は出来ず早めに夜営の準備を始める。

護衛依頼1日目の夜営場所は街道が狭くランクルさんとサウンドさんが木々を切り倒すことから始め、切り株は風属性の魔法で地面ギリギリで切られ、気が付くと街道の脇30mほど平らになっていた。

倒された木々は葉を落とし燃やし、幹の部分だけを丁寧に魔法で乾燥させ、薪にしたり馬車の周り簡易防壁として積み上げている。

馬車移動という事で馬を守るように箱馬車と荷馬車を停車し、箱馬車側面の木盾で並べ始める。

その外側にも杭と蔓草で周囲を囲み、気休めではあるが防衛線を構築していく。


「食事は交代で済ませてくれ。仮眠と周囲の警戒に魔法障壁は交代でお願いする。」

「近づく者がいれば声を上げろ。こっちは聖騎士と冒険者に加え神父や修道女もいるんだ。全員無事に聖王都へ行くぞ!」

「「「「「「「「おぅ!」」」」」」


ナナとティアは座り続けて身体が固くなっていたので、身体をほぐしながらマリアに話しかける。

何度か休憩を繰り返してはいたが周囲を警戒しながら、しかも狙われ続ける状態では仮眠をすることも、身体を休める事も出来ずに疲れ果てていた。

ティアがマリアに「大丈夫?」と声をかけ、「・・・うん。」と答えるとティアがマリアを抱きしめながら「今日は疲れたから一緒に寝よう。」と言いながら箱馬車へと歩き出す。


「ナナはダメだからね。」


そう言いティアはにこりと微笑みながら箱馬車へ、マリアは「え?あれ??」とティアに引きずられながら箱馬車へ消えていく。


「まぁ、しょうがない。」


ナナは御者席の後ろの背負い籠から弓と矢筒を取り出し手元に置く。

今日は休憩中に何度か軽めの食事ばかりだったので、何気にアリスさんお手製の『串焼き』を取り出し食べ始めると、周りの聖騎士や冒険者達が美味そうに食べる姿を見ながら、「美味そうだな。」とか「どこで買ったんだ?」とか聞かれ、「食べます?」と言うとぞろぞろとナナの周りに集まってきたので、マジックバックから取り出した感じで大皿に『串焼き』や『焼き鳥』を並べ始める。


「店売りじゃなくて家庭うちの味です。移動しながらでも食べれるように串ものばかり用意しました。良かったらどうぞ。」

「そうか、1本もらうよ。」

「こっちにも1本!」


気が付けば夜営をしている聖騎士やら冒険者達が集まり、仮眠をしているはずの者達も『串焼き』や『焼き鳥』を手に取り美味しそうに頬張っている。

仮眠をしたはずのティアやマリアも美味そうに頬張っている。


「まぁ、美味しそうに頬張っているからいいか。」


ナナも『串焼き』を頬張りながら「アリスさんの料理美味。」と頷き、2本目の『串焼き』を食べ始めるのだった。






この日、最初の襲撃があったのは・・・・その5時間後の事であった。


無数の矢が魔法障壁に突き刺さり、魔法障壁が砕け散り盗賊との戦いが始まる。

多重の魔法障壁の内の1層が砕け散り、神父と修道女達が立て続けに魔法を唱える。


聖騎士達の守護の魔法が全てを守り


冒険者達の遠距離攻撃が炸裂し


弓を構えナナとティアの反撃が始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 餌付けも万全と。 さぁ敵は盗賊を装っている模様。 お掃除お掃除。
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