護衛依頼とかか
冒険者ギルドの会議室は軽装の聖騎士と神父に修道女達が23名と
冒険者の方もナナ達を含めて15名が聖王都への護衛依頼の話し合いをしている。
今回の護衛依頼は聖王教会からの依頼という事で神父のシルバさんが責任者という事で
聖騎士は騎乗し冒険者は馬車へ数人ずつ警戒に当たる事となる。
本来であれば3回に分けて聖王都へ帰還するはずが
『ロースポーツ』から聖王都までの馬車での20日間の街道での盗賊団の目撃情報が上がった。
盗賊団の方も1つ2つではなく30~40名の大盗賊が2つと10名前後の盗賊団など
ギルドからの最近の治安情報が聞かされていた。
「我々聖騎士団と聖王教会含め23名と冒険者の皆様15名で聖王都への道程は厳しいものと思われます。盗賊を警戒して確実に進むには当初の護衛依頼で提示された日数を超過してしまいます。それと野営の警戒など厳しく難しい依頼となってしまいました。」
「まぁー、盗賊なんぞ蹴散らせば問題ないだろ?」
大剣を背負った大柄の冒険者が声を上げる。
すると次々と他の冒険者も同じく
「俺らが盗賊にビビるわけない。」
「そうだな、聖騎士と冒険者がこれだけ揃っているから問題ない。」
「盗賊がいるなら馬車の補強は必要だな。」
「馬と馬車は常時魔法障壁も考えて方がいいな。」
聖騎士団と聖王教会の面々は大盗賊団の話を聞き、冒険者ギルドの方から護衛依頼を断られると思っていたので、冒険者達からの護衛依頼への継続にに加え、馬車の補強や警備についても話し合われていく。暫くすると聖騎士からの助言もあり1時間後には、3回に分けての帰還が1回での集団での聖王都までの帰還計画が出来上がる。
「馬車の補強は冒険者ギルド経由で大丈夫ですね。」
「帆馬車から簡易の箱馬車への変更という事で移動する帆馬車から戦える箱馬車に改造。」
「護衛依頼の延長も考えて馬車1台を食料と馬車の予備部品に弓と大量の矢筒と・・・。」
「あとは何が必要なものあれば。」
ナナは手を挙げて「大き目の木盾が欲しいです。」
「ん?木盾??」
「はい、頑丈じゃなくてもいいので木盾があれば簡易の防壁を築けると思うのですが?」
「木盾で防壁??」
「木盾を並べれば盗賊の進路を塞ぐことも可能ですし馬や馬車も守れるかと・・・。」
「木盾を並べて守りの一部にするか・・・面白いな。」
「頑丈じゃなくてもいいなら武器屋では断られる可能性があるな。」
「逆に大工や木材屋に話をしてみてはどうかな?」
「そうだな、護衛依頼で使えそうなら木盾が広まるかもしれんしな。」
「そっちの方は君にお願いしてもいいかな?」
そう言われナナはコクリと頷く。
「箱馬車への改造は3日もあれば大丈夫だと思う。木盾の方もそれまでに完成させてくれ。」
「はい、木盾の枚数はどうします?」
「人数分あればいいのか、馬車ごとにあればいいのか・・・木盾の完成を見て枚数を決めましょう。」
「わかりました。」
「木盾が試作品が完成したら聖王教会の方へお願いします。」
「はい。」
「護衛依頼での道中は食事の提供と矢筒の提供に加え、傷薬とポーションの方も我々で提供しますが、何事もなく怪我無く聖王都へ帰還する事を目指しましょう。」
「「「「「「「おぅ!」」」」
会議も終わり聖騎士達や冒険者たちが会議室を後にする。
暫くするとナナとティアの他にシルバさんとマリアが残されている。
シルバさんは護衛依頼に向けて何とかなりそうと思い安堵しているし、マリアは大盗賊団の出現と聞き不安そうに沈んだ顔をしている。
「護衛依頼は3日後以降になりますね。」
「やれる事はやろう。」
「そうですね。冒険者の皆様もあれほど参加してもらえるとは嬉しい限りです。」
「うん、ありがとう2人とも。」
ナナは元気のないマリアに「どうした?元気ないぞ。」と声をかけると
少しだけ微笑み「大丈夫。」と呟く。
「今度は最後まで護衛依頼をするつもりだから大丈夫だぞ。」
「そそ、マリアはちゃんと守るよ。」
ナナとティアは笑いながらマリアに話しかける。
「今度は最後まで・・・大丈夫だよ。2人がいるから安心だよ。」
最後はマリアも笑顔になりながらシルバさんと一緒に会議室を後にする。
会議室に残されたナナとティアはギルドの受付嬢から大工と木材屋の事を聞く。
「大工の方々は『ロースポーツ』の復旧作業が終わったことで大丈夫だと思います。」
「それで護衛依頼で木盾を用意しようと思うんですが、大工・木材屋・武器屋のいずれかにお願いすればいいのかわからなくて・・・。」
「木盾とうのは木の盾という事でなら武器屋になると思いますが?」
「戦闘時に装備するのではなく立てかけて進行を塞ぐ防壁に使いたいのですか。」
「従来の盾とは違う感じなのですね。」
「はい、盗賊が多そうなので・・・。」
「まずは武器屋で次に大工に木材屋でしょうか。」
「ありがとうございます、武器屋で相談して断られたら次に向かいます。」
「それがよろしいかと。」
そう言いナナとティアは武器屋へ向かう。
『ロースポーツ』での復旧後という事で武器屋では冒険者以外にも住民たちも武器を見ている。
片手剣を見ている少年や斧を手にしている主婦などか武器の片手の感触を確かめている。
ナナは武器屋の片隅にある盾を見ながら
「鉄製の盾ばかりしかないか・・・。」
「重い・・持てても戦えないかも。」
ナナは鉄の盾を手にし構えているが重くていつものように動けそうにない。
ティアは持ち上げるだけで息が上がっている。
「んー、やはり店売りの物は護衛依頼では不向きだな。」
「こっちの革盾は持てるけど小型盾だから難しいかも。」
ナナとティアが盾を変えながら話をしていると武器屋の方から
「盾が欲しいのか?」
奥の方から一人の青年が声をかけてくる。
細身ではあるが無駄なく筋肉質な大男が近づいてくる。
「はい、盾が欲しいんですが重すぎて・・・。」
「こっちの革盾でもダメなのか?」
ティアが手にしている革盾を指さしながら聞いてくるので
「出来れば木製で大き目の盾はありませんか?」
「木盾か・・・ある事はあるが売り物じゃないんだが・・・。」
「見せてもらっても?」
「まぁ、いいか。武器屋の裏にあるから見てみるか?」
「はい、ぜひ。」
武器屋の裏には木箱に破損した剣や鎧が入っている。
その中には砕けた盾や失敗作と思われる武器が放置してある。
「木盾は冒険者ギルドへ修練場向けに無償で提供しているんだ。木で作られた剣や斧に加えて盾も修練場に置いてあるなんだが見た事ないか?」
「薬草採取ばかりで武器の扱いはさっぱりなもので。」
「弓使いです!」
「そうかそれならしょうがないか、木盾は大中小と大きさはバラバラなんだが。」
3種類の木盾を手にしナナは大き目の木盾を手にし、腰を落とし木盾を構える。
木盾を地面に立てながら防御面の広さを確かめる。
ナナとティアは木盾を並べ始めると武器屋の大男は首を傾げながら「何してるんだ?」と聞いてきたので、護衛依頼での会議室での内容を話す。
「木盾を防壁としてか・・・面白い考えだが・・・それでは大き目の木盾では小さいか?」
「そうですね、木盾を四角にして並べて隙間を無くせれば完璧かな。」
「四角のは盾としては珍しいな、それで軽さを考えて木での盾と・・・。並べていたのは結んで繋げるつもりなのか?」
「盾同士を結ぶか杖か棒で盾同士を固定すれば問題ないかと。」
「面白いな武器屋としては木製の装備は推奨してないが馬車での護衛用とすれば売れる可能性があるな。なぁ、どうだ木盾を作るのは問題ないが出来れば武器屋でも木盾の販売してもいいか?」
「ん?武器屋なんですから売ってもいいのでは??」
「この木盾のアイデアは君の物だ誰彼構わず売るのは問題があるんだ。」
「大丈夫ですよ、何か問題があるとするなら護衛依頼で使う木盾を提供してもらいたいです。聖王都まで無事に木盾が活用出来たら武器屋で代替的に販売してみては?」
「そんな事でいいのか?」
「はい、ただ大きめの木盾の数も多いですし大変なのでは??」
「その辺は大丈夫だ。街の復旧で大工も木材屋も人手が余っているし、声をかければ手伝っているはずだ。聖王都までの護衛依頼なら街の職人達は喜んで仕事をしてくれる。」
武器屋の大男ことバッツさんに大き目の木盾の詳細を考える。
明日まで3枚の木盾の受け渡しをお願いし武器屋を後にする。
「馬車への木盾の持ち込みはどうしたらいいか・・・。」
「馬車の側面への立てかけとかは?」
「それと予備の馬車への積み込みでも可能か、馬車6台に各6まいずつとして・・・36枚か。」
「それなら40枚の木盾を持ち込むか。」
「バッツさんに負担が増える・・・。」
「その辺はシルバさんにお願いしよう。流石に木盾全てを提供では問題があるしな。」
「うん。」
武器屋での話はシルバさんとマリアに伝え、木盾の試作品と共に必要な数と価格を決めることとなる。
木盾と箱馬車への積み込みと設置は大工と相談し簡易箱馬車の要塞化が始まる。




