閑話とかかか
今回の閑話はナナ視点では無く
東の森での不穏な動きを第三者視点で展開します。
冒険者ギルドの一室にて浅い森で発見討伐されたモノの検証を行っていた。
テーブルの上にのせられているモノは一角兎に見えなくもないが
明らかに違う点が見受けられていた。
一角兎の姿を模している姿に前足が蜥蜴のモノだったり
身体を覆う体毛が斑な灰色と黒色だったり
そして、明らかに違うのが目の色が燃える様な紅い色だった。
ギルドで解体作業を従事しているギルド職員はテーブル上のモノを詳細にメモ書きし
『鑑定』スキルでナニかを調べはじめる・・・。
「何だこれは・・・鑑定で調べても????としか解らんぞ。」
「鑑定スキルでも調べられないか・・・。」
「見た目7割は一角兎の様ですが3割は不細工に付け加えられたようなモノだな。」
「過去に一度これに似たモノがを見た気がするんだが・・・。」
ギルド職員が首を捻っている横でギルド長が何かを思い出そうと
部屋の中を忙しなく歩き始め突然「あ!」と声を上げたと思ったら
「思いだしたぞ、これに良く似たモノを見た事がある。
今から20年も前にあった『氾濫』の時に倒した記憶がある。
協会の関係者が『呪い』だか『感染』だとか言っておった。」
「呪いですか・・・それは一角兎の様な獣の病気という事でしょうか?」
「あの時は無数にこれと同じモノが溢れておったし被害も相当な物じゃった。」
「それでしたら教会にも協力をお願いしましょう。」
「あぁ、頼む。それと両す様にもこの事を知らせて貰えるか?」
「わかりました。」
「どちらにも『東の森にて『呪い』の疑いあり』と伝えれば解るはずじゃ。」
「すぐにでも行ってきます。」
そう言ってギルド職員の1人が慌てて部屋を飛び出していく。
「それにしてもこれは倒せても処理に困りますね。」
『鑑定しても????だと捨てるにも破棄するのにも躊躇いが生じます。」
「何にしても教会関係者と領主関係者には現物を見せる必要があるがな。
これを持ち込んだ冒険者はどうしてる?」
「それでしたらギルドの待合室で待機してますよ。
浅い森で助けて貰った冒険者を待つとか何とか・・・。」
「持ち込んだのはランクCの4人パーティーだと記憶しているが?」
「それにギルドの職員も1人加わってます。」
「偵察か視察に赴いてばったり遭遇した訳か・・・そりゃ運が悪いわな。」
「それで助けた冒険者というのは?」
「聞く限りではナナさん達の様です。少年と少女という事でしたし・・・。
それに今回で助けられたのが2度目だと聞いてますし。」
「ナナさんてランクEに上げたばかりの??」
「はい、間違いないです。」
「確かにランクEは浅い森での活動は許可されてはいるが
今の時期にあそこへ行くとは・・・言葉が無いな。」
「浅い森の大岩?を中心に行動していると報告を受けています。」
「彼らの話を聞く限り大岩の周囲に落し穴を掘っていたと・・・。」
「大岩があったと言うのも記憶していないが
落し穴を掘っただけで何とかなるもんじゃないだろう。」
「幅が広く底が深い穴らしいです・・・。
一角兎や大蛙なども落し穴の存在を知ってか近づかなかったらしいです。」
「なんともナナさん達は我々の想像の斜め上をいくなぁ。
それでナナさん達は浅い森からは戻ってきとらんのか?」
「はい、今までの経験から浅い森には2~3日滞在していましたし
長い時は5日以上森に篭っていると聞いてます。」
「そんなに長く何をしてるんじゃ?」
「薬草採取らしいですよ。たまに一角兎や大蛙を倒すと聞きましたが?」
「浅い森は草原よりも質の良い薬草が採取出来るしありがたいのじゃが・・・
今は危険じゃから近づいて欲しくないと思うのはダメな事なんじゃろうか。」
「その心配は正しいです。確かにナナさんだけでは無く今の時期は危なすぎます。
せめてギルドとして安心できるだけの実力を示すかランクを上げて貰わなくては。」
「その辺は要相談じゃな。ナナさん達が戻ったら受付嬢達から言っておいてくれ。
わしが前へ出て言うのも大袈裟じゃろうしナナさんも違う意味に捉え兼ねん。」
「わかりました、その事については受付嬢の方へ話しを付けておきます。」
「それじゃ、テーブルのこれは魔法の袋にでも入れておいてくれい。
領主関係者と教会関係者がこれを見るまで腐らすわけにもいかんからのぉ。」
「「「はっ!」」」
ギルドの片隅での会議は領主や教会を巻き込む大きな議題となる。
教会の資料と領主の判断によりいつもより東の森への大討伐が計画される。
領主の私兵団500名にランクC以上の冒険者を含むパーティーで120名
各ギルド職員が合計60名と教会から30名が東の森へ向かう。
私兵団も焼き肉祭りの準備に何度も東の森へ討伐に来ていたので
誰一人臆すること無く浅い森へ到着していた。
しかし、彼らはそこでいつもと違う風景を目にしていた。
緑に生い茂っていた木々が薄く白く広がった煙のように霧に包まれた森の姿だった。
東の森での霧はめずらしい物では無かったのだが
いざ目の前の霧を見てしまっては頭では理解していても身体がついて行かず
私兵団団長の怒号により静かに剣を構えながら森へと進軍していく。
その先にナニがあろうとも知らずに・・・。
私兵団が森の各地へ進軍を勧めている頃
ランクCの冒険者達もパーティーを組みながら森を進んでいた。
東の森の異変はギルドからお達しがあり聞いてはいたが
ギルド長からは森の異変については『呪い』と言われてはいたが
何をどう対応したらいいのか解らずにギルド長は彼らに『聖水』を渡し
「もしもの時は振りかけろ。そして、逃げろ!」とだけ告げた。
彼らにしてみたら戦って勝てる相手なら斬りまくれば済むのだが
斬っても倒せない相手には迷わず逃げろとハッキリ言った。
ランクCの冒険者達はギルド長の話を聞きながら頷いてはいたが
ランクBとAの冒険者達は話し半分で各々のパーティー間で話をしていた。
ギルド長はそんな彼らを「やはり話を聞かんか・・。」と思いながらも
どこか彼らなら心配ないじゃろうと心の片隅に思う事にした。
霧の中冒険者達も剣を構え弓を構え静かに森の中を進軍していく。
教会関係者とギルド職員達は浅い森に大討伐のベースキャンプを設置した。
土魔法を駆使し周囲に土壁を築き上げ怪我人を収容できるようにして
何事も無く大討伐が終わる事を教会から来た神父は祈りをささげていた。
そんな神父たちの祈りもむなしく東の森からは獣の叫びが響き渡り
静かに森への侵入者たちに襲いかかる。
叫ぶ事も出来ぬまま襲われるモノ
気がつかないままに喰われてしまうモノ
周囲を警戒していたにもかかわらず倒されているモノ
恐怖のあまり逃げ出し走り出そうとして足を喰われているモノ
東の森では等しく平等に死が蔓延していた・・・。
気が付けば東の森の叫びが浅い森まで響き慌てて土の壁を増設していくのだが
波の様に溢れたモノは大波になりベースキャンプを飲みこみ
次第に何も無かったかの如く静寂に包まれる事になる。
東の森大討伐失敗の知らせは『ロースポーツ』の防壁を警備していた警備員からの
「東の森から黒い煙が燃え上がる炎のように見えます!」と
それを聞き冒険者ギルドは急ぎ浅い森へ向かうと
砕け散った剣や盾が散乱していたと言う・・・。
冒険者や私兵団の姿は無く東の森からの恐怖にも似た視線を感じ逃げて来たと言う。
ナナとティアはランクEという事で大討伐には不参加という事で
大討伐の帰還中は西の草原で薬草採取をしていた。
『周辺感知』でも東の森の事を知る事は出来ず
浅い森よりもまったりと採取を続けるナナ達が東の森の事を知るのは数日後となる。
『ロースポーツ』史上初ともいえる東の森の大討伐失敗は聖王国全体に激震が走った。
私兵団を含む700名以上の死亡は過去最高の大災害として聖王国を上げて対策を取る事になる。
この責任を取って領主とギルド長は交代する運びになるのだが
それはまた別の話である。。。
ナナの与り知らぬところで物語は進み続けます。
少しだけは無しに乗り遅れている気がしますがナナは気にしません。




