森での反省点とか
浅い森での生活で『土魔法』の有効性を攻撃よりも護りと思い
朝錬では速攻で落し穴を創れるように掘っては戻しを繰り返していた。
ナナが落し穴を創っている横でティアが素朴な疑問をハクトさんに聞いてきた。
「ナナの掘った穴の土はどこへ?」
ナナの落とし穴は練習とは言え幅3mの深さ5mと過剰な罠になっていたが
数秒で掘っては戻しを見ていて無くなった土はどこへ消えどこから出しているのか・・・。
見ていて不思議な光景を聞いてみるとハクトさんはニコリと微笑みながら
「それは個人で色々ありますがナナさんの場合は土を圧縮して穴を掘り
戻る時はその逆のイメージで元に戻している感じですね。」
「ナナのイメージか・・・。潰した者を膨らませる感じなのかなー。」
「そうだと思いますよ。穴を掘るにしても土をどう考えて魔法として成立されるか・・・
そして、その逆も然り自分が思い描いた魔法を行使する難しくもあり面白くもある。」
「ある物を使い戻すか・・・だから魔力消費が少なくて済むと・・・。」
「そうですね、無意識かは解りませんが効率良く魔法を展開してます。」
「わたしのこの『土弾』も効率良くなりますか?」
ティアは手をかざし土弾を形成し的へ放つ!
ティアの土弾のイメージは矢をイメージしており細く鋭い土弾が的へ次々と突き刺さる。
「見た感じ自身が放つ弓矢のイメージだと思いますが?」
「はい、弓を構えて矢を射るイメージで土弾を放ってます。」
「魔法に込められた魔力は多くも無く少なくも無く・・・普通だと思いますが?
それと魔法を放つ時の弓の構えは・・・。」
「それで修練しちゃってて直した方がいいですか?」
「放つイメージと命中するイメージが今のティアさんの魔法に結びついているのかな?
今はそのままに修練を続けていきましょう。
実際に弓を構えて土弾と矢を交互に放つと言うのも面白そうですし。」
「弓を構えて魔法と矢を交互に放つか・・・練習しよ。」
ティアはハクトさんからの面白いと言われ『確かに・・・。』と呟きながら
的へ向かい土弾と矢を交互に放ち続ける。
命中率でいえば矢の方が確実に的の中心に命中しているが
土弾の方が確実に的に刺さり串刺しにしている。
そして面白い事に矢を1本いる間に土弾なら複数放つ事が出来るので
ティア1人で弓使いと魔法使いの仕事を行う事になる。
「ティアさんの魔力はナナさんよりも少ないので魔力枯渇に気を付けて下さい。」
「はい、魔力枯渇になる前に休憩してはいますが・・・。」
「ナナさんと一緒で集中すると我を忘れますね。」
「気を付けます。」
「そう言えば浅い森では土弾は使ってみましたか?」
「何度か『一角兎』と『大蛙』は土弾で倒しましたが・・・
攻撃力がありすぎて回収する事が出来ませんでした。」
「攻撃力過多というか威力過多というか・・・討伐向きになりましたね。」
「なので浅い森では弓のみで頑張りました。
良く解らない????というのには問答無用で土弾を放ちまくりましたが!」
「そういえば????を倒したみたいですが?」
「よく解らないモノが????だとしたら倒しました。
あれは何だったのか今も解りませんが・・・
さすがに食糧にするのも怖かったので放置してきましたが・・・。」
「????との鑑定結果だとしたら焼却処分した方が良かったのぉ。」
「焼却処分・・・燃やすの?」
「そうじゃ、????になった時点で其のモノは変異したという事じゃ。
元が一角兎であろうと大蛙であろうと????になった時点で食糧としては無理じゃ。
変異した原因が解らん以上は燃やし切るしかないのじゃ。」
「燃やすのか・・・わたしは火魔法修得して無いしなぁ。」
「ナナさんなら火魔法修得済みだから次は焼却処分でお願いします。
落し穴に落として燃やしても良いし倒し即座に燃やしても大丈夫じゃ。」
「あまり????を触りたくないのですが・・・。」
「なんとなく解るが死骸なら触っても大丈夫だろう・・・と思うが?」
「そうなのかなー。」
「まぁ、燃やす事だけ覚えておけば大丈夫じゃ。」
ティアは浅い森で溢れつつある????の処理を考え憂鬱になっていく。
「燃やしたら匂いがなぁ・・・。」と呟いているが
????の死骸が腐敗した方が匂いがヤバイ気がしてきて
「はぁ、燃やすのが一番?」と色々試行錯誤していた。
練習場でナナが落し穴を次々と創り最終的には幅4mx深さ4mを基準にしていく。
そして、落し穴の長さはナナのイメージで創り続ける事が可能になり
大岩型シェルターを囲うように落し穴を掘る事も可能としていたが
掘った跡にシェルターからの脱出が不可能になる事に気がつき
落し穴を掘る時は出入り口の部分だけは掘ることはせずにいた。
そして、幅1mx深さ2mの丸く掘る落し穴を任意の場所に掘れるように練習し
ナナが目視で確認していた場所に即座に落し穴を創りだす。
「防衛では頑丈で進入不可の落とし穴を創り
小さい落とし穴は足止め用と考えれば面白いか・・・。
動きの速い一角兎でも無数の落とし穴があればどれかには落ちるだろうし。」
ナナが練習場に落し穴を創っているのを見ていたハクトさんはニコニコしながら
「なかなか面白い事をしておるのぉ。」
「はい、防衛に有効な落し穴は現状で大丈夫だと考え
攻撃にも使えそうな落し穴として任意で小型の落とし穴を創ろうかと。」
「ふぉふぉふぉ、それならわしの足元に掘る練習をしようかのぉ。
移動しながら練習場を走り回るからナナさんは落し穴を掘って足止めをする。
幅と深さはナナさんが思う大きさで十分じゃろう。
大きすぎると発動時間と魔力消費が問題だし
小さすぎると避けやすいはずじゃ色々考えてやってみようかのぉー。」
「よろしくお願いします。」
「ふぉふぉふぉ、朝錬の時間も残り僅かじゃ、頑張って逃げようかのぉ。」
「はーふー、行きます!」
ナナは練習場を時には走り時には歩くハクトさんを見つめながら
『良し!』とハクトさんの足元へ次々と落し穴を掘り続ける。
大きさはハクトさんの片足が嵌まる大きさにし魔法を行使するのだが
魔法発動と同時に瞬時に移動しナナの予想の数歩先にハクトさんがいた。
「魔法発動は中々早いのぉー、それに大きさも問題無し。
後は先読みで魔法を展開するだけなんじゃが・・・。」
「はぁはぁはぁ、そんな事を言われても・・・。」
「動きの先周りで落し穴を掘る。1つでダメなら2つ掘る。」
「はぁはぁはぁ、なるほど複数展開して移動先を限定にして・・・っと!」
ハクトさんの先に3つの落とし穴をランダムで掘り続ける。
そして、その中にナナは大きな落とし穴も創り移動先を無くしていき
気が付くとハクトさんの周囲には足場にするのも難しい程穴だらけになる。
「はぁはぁ、これでいいですか?」
「ふぉふぉふぉ、最後は力技じゃが正解じゃ。
相手の移動を誘導し動きを止める・・・もしくは動きを拘束すれば
捕まえるのも倒すのも思いのままじゃ。」
ハクトさんはナナが魔力枯渇でフラフラしているのを見ながら
地面に手を置き「戻して置くぞぃ。」と言ってから落し穴を埋めていく。
ナナはハクトさんの見せた現象に驚きながらも「すごいなぁ。」と思い
その場に座っているとティアからマジックポーションを手渡され
「ありがとう。魔力不足でフラフラだよー。」
「えへへ、わたしもさっき飲んだよ。」
ナナはマジックポーションを『ぐびっ』と一気飲みし
少しだけ体調が戻ったのを確認してからゆっくり立ち上がる。
「まだ魔力の消耗が激しいけど要修練と考えれば十分かなー。」
「わたしも同じく要修練ですー。」
「ふぉふぉふぉ、ナナさんは落し穴を極めてティアさんは土弾を極めるか
ナナさんには腰の剣鉈で戦った方がいいんじゃがのぉ。」
「この剣鉈は解体ナイフと採取ナイフと考えて下さい。
それに剣鉈で戦うの怖いじゃないです!」
「あーいや、ナナさんは剣修練が結構高いはずなんじゃがのぉ。」
「それはそれこれはこれです。」
「わたしも接近戦は怖いです、弓を使うのは怖いからだし。」
「決闘では『蹴撃』で戦ったはずなんじゃが・・・。」
「あの時は戦っていて・・・その場の空気にのまれただけです。」
「あの時のナナは今以上に生き生きしてた気がするけどなぁ。」
「わしは見ておらんが戦っていると言う高揚感がそう感じたのかも知れん。
ナナさんは自身の実力を抑える傾向にあるしのぉ。
決闘とは言えあの時のナナさんは一時的ではあるが全力全開で戦っていたはずじゃ。」
「あれが全力全開なのか・・・その後疲れて倒れたけど。」
「身体がもたなかっただけじゃ。これから成長すれば倒れる事も無くなろう。」
「日々修練です。」
「日々修練!」
「ふぉふぉふぉ、頑張った分がけ強くなる。
昨日の自分よりも1つ先の自分になれれば最終的に理想な自分になれるはずじゃ!」
「理想な自分ですか・・・なんだろ?」
「理想を考えるのはもう少し先かなー。」
「ナナさんは理想に迷い。ティアさんはまだ考えてないっと?」
「「はい。」」
「今はそれで十分じゃ。
ナナさんは1年しか冒険者として生きてはおらず
ティアさんは冒険者になって間も無いからのぉ・・。」
現実問題成長期の2人に先の事を聞くのが間違いな気もするが
ハクトさんの予想よりも速く成長していく姿を見ていると
楽しくもあり自分の事の様に思いを巡らし自然に笑顔になっていく。
ふとナナの手甲の隠された苦無を思い出し
「そういえばナナさんは苦無は使わんのか?
その一撃は大猪をも貫くと思うがのぉ。」
「苦無かぁ・・・浅い森でも使う機会がなかったし
攻撃はティアの弓があれば事足りてたな。」
「あのナナさんの苦無って?」
「ナナさんが自分で鍛冶場で鍛えた逸品じゃな。
見た目はナイフじゃが切れ味は保障するぞ。
それに紐を付けて投擲としても使えるから便利じゃよ。」
「近距離攻撃が嫌だから投擲武器を・・・?」
「そこは気が付いたら出来てたからなんとも・・・。」
「腰の剣鉈も一緒じゃが中々の一品じゃよ。
斬る武器というより裂く武器・・・しかも小型だから振り回しやすい。」
「投げる武器に斬り裂く武器ですか・・・無意識のナナは変わってるの?」
「そこはなんとも・・・どうなのかな?」
「次に浅い森に行く時は今の戦力では危険かもしれない。
ナナさんの落し穴と結界魔法で防ぐ事が出来ない時は全力で迎え撃つしかない。
ティアさんの土弾も躊躇わず撃つ事をお勧めするぞ。」
「その時は全力で蹴り抜きます!」
「わたしも狙い撃ちます!!」
「それでこそです。向かって来る者には無慈悲な一撃を助けを請う物には施しをです。」
「「はい。」」
浅い森での戦いの問題点を改善し次に繋げる。
ナナは小型の落とし穴をティアは土弾を少しずつ攻撃のレパートリーを増やしていく。




