新しい力とか
浅い森での薬草最初を3日間行いナナ達は休日を満喫して・・・いなかった。
疲れていたのも関わらず身体は日が昇ると同時に目が覚め
ナナとティアはいつもの様に革の上下を身に纏い
ナナは無手でティアは弓を肩にかけ矢筒を背負っている。
修練をする練習場はナナ達の修練により日々拡張し
今ではサッカー場よりも広いスペースとなっていたが
ナナは『大きい方が動き回れる!』と思い気にしていなかったが
ティアは日に日に変化する練習場に『大きくなっているけど・・。』と思いながらも
ナナとハクトさんが気にしていない事に『気のせいか・・・。』と考えるのを早々に止めた。
「ハクトさん浅い森では怪我も無く無事に依頼を完遂できました!」
「凄い疲れましたー。」
「ふぉふぉふぉ、無事で何より『土魔法』での落とし穴は実際に使ってみてどうじゃった?」
「周囲を囲むという事で安心感はありましたが・・・何も落ちませんでした。」
「罠としての実感は無しか・・・それでも抑止力になったと思えば良いかも知れんのぉ。」
「抑止力って?」
「『相手にこの先は危ないぞ。』とか『ここから先に来たら攻撃されるぞ。』とか
相手に考えさせて近づけさせない事かな?」
「大猪や一角兎に効果があるかは未定じゃが何かあると思わせれば勝ちじゃ!」
「それなら落とし穴は浅い森で活動するのに必須事項という事で。」
「わたしも『土魔法』修得した方がいいかな?」
「ティアさんには魔法以外に革紐などで周囲を囲みながら安全確保した方がいいのぉ。
浅い森では丈の長い草木が生い茂ってるから杭を革紐で二重に張って貰った方がいい。」
「革紐に気を取られて落し穴に落とす!
もしくは落し穴に気を取らせて革紐で転ばす!」
「それなら革紐の種類を増やせば面白いかも。
目立つ紐に見え難い紐を間隔を開けて張ればハクトさんの言う抑止力になるのかな?」
「数種類の革紐か・・・面白いかも。
それと浅い森で蔓草を集めてみるてもいいんじゃない?」
「浅い森で蔓草は結構見かけたから今度使ってみる。」
「前回ナナさんには『土魔法』の落とし穴を教えたと思うけど
今回は同じ土魔法でも別に意味で野営で使える魔法を教えます。」
「「はい。」」
「それは『土壁』という魔法です。
ナナさんは『土弾』という攻撃特化の魔法を修得していますが
『土壁』は土弾とは真逆で護り特化の魔法です。
それじゃ実際に使ってみるから良く見とくんじゃよ。」
ハクトさんは練習場の真ん中に立ち魔法を発動する。
するとハクトさんの前方に幅1mの高さ1mの土の壁が創り上がる!
ハクトさんの実力なのか土壁の展開速度なのかは不明だが
魔法発動と共に目の前に土壁が立ちハクトさんを中心に四方八方に土壁が創り上がる。
「これが『土壁』じゃ。魔法に込めた魔力と何を作りたいかの想像力が鍵となる。
今回は周囲に展開すると思いながら土壁を作ったからこうなったが・・・。
もっと考えもっと魔力を込めれば多種多様な物が創れる。」
ハクトさんが話しながら土壁はポロポロと崩れ元の練習場に戻すまで数秒
「こんな感じで魔法で創られた物は創造と破壊は意のままじゃが
ナナさんには土壁を用いて野営に使える『シェルター』を創れるようになって貰いたい。」
「『シェルター』ですか語感から小屋ですか?」
「そうじゃ、浅い森でなら結界魔法や落とし穴や革紐で大丈夫かも知れんが
これから先何があるか分からんからのぉ・・・もう1つ安全策をと思ってな。」
「確かに安全策を講じるのは賛成です。
しかし、野営するにしても土魔法でシェルターや小屋を創る者はいるんですか?」
「いるかいないで言えばいるな。仲間内に土魔法が使える者がいれば
土壁を展開している方向からは襲撃され難いし
ダンジョン等の閉鎖された空間では土壁を展開し休憩する者もおる。」
「そうなんですね、勉強になります。」
「わたしも覚えたい!」
「そうですね、ティアさんも覚えればより強固なシェルターになるでしょう。
それではナナさんは土壁を創る事から始めましょう。
土魔法の修得Lvを見る限り必要な事は消費される魔力と土壁へのイメージでしょう。
心の中で思い描き・・・思いのままに土壁を創り上げて下さい。」
「はい!」
「最初は危険なのでナナさんは少し向こうへ・・・
向こうの練習場の端へ行って下さい・・・
最初は危険と言いましたがナナさんの魔力次第で何が起こるか不安しか無いので・・・。」
「・・・はい。」
「ティアさんは土魔法の基礎からお教えしましょう。」
「はい!あのナナさんが凄い勢いで凹みながら向こうへ駆けて行きましたが?」
「大丈夫です。ナナさんはティアさんが思っているより頑張り屋さんですから。
凹んでいるのは自覚していない魔力の事を思い出したからですよ。」
「そうなんですか?」
「はい、彼のサポートはきっちり行いますから大丈夫です。
ではティアさんは『生活魔法』は修得済みで魔力を感じる事と行使する事が出来ますね。」
「はい、大丈夫です!」
「ふむふむ、それなら今日中に土魔法の基礎はお教え出来そうじゃ。
そこから先は修練と実践を経て使いこなすしかないのぉ。」
「よろしくお願いします!」
この日は1日練習場での修練をするのだが
ハクトさんの予想通りナナは練習場に巨大な土壁を創り上げ壁と天井の一部を破壊する。
ナナさんの土壁は規模は幅も高さも予想の斜め上の様で
ハクトさんから『魔力量と想像力が桁違いじゃ。』と苦笑いをしていた。
連続で土魔法を展開し魔力枯渇寸前にアリスさんが来てはマジックポーションを飲ませ
ナナさんは数時間おきにマジックポーションを飲み干し
魔力枯渇のポーションの飲み過ぎで練習場の片隅で横になっている。
そしてティアさんはと言えばハクトさんから土魔法の基礎をみっちりと教えられ
夕方までには『土魔法』を修得し・・・やはり何度か魔力枯渇気味となり
やはりアリスさんからマジックポーションを渡されては飲みを繰り返し
ナナの隣で横になっていたりする・・・。
「なんとかシェルター創れる様になったよ・・・。
ティアの方は土魔法使えるようになった?」
「はい・・・。土魔法Lv1です。
『土弾』だけですか使用可能になりました!」
「おめでとうー。」
「ありがとうー。」
練習場に身体を投げ出しお腹いっぱいのマジックポーションは晩ご飯いらずで
この日は魔法で身体を綺麗にしてから気を失うように布団へ倒れ込む。
覚えた魔法は次の日の朝錬で更に磨かれていく。
ナナのシェルターは小屋というより巨大な岩に扉がある異様なものであり
ティアの土弾は矢のように細く視覚では不可視なほど凶悪な魔法へと変化していた。
それを見たハクトさんはニコニコというかは苦笑しながら
「ナナさんのシェルターは何故に大岩ベースの姿をしてるのかな?」
「一目見ただけで人と手で創られたとは思わない物をと思いまして!」
「確かに思わないわな・・・ただ扉だけが目立とというか・・・浮いてるというか。」
「そこは手をかければ・・・ほら!」
ナナは大岩に設置していた扉に手をかけると・・・『スー』っと扉が消え
どこにでもある様な大岩へと姿を変える。
「確かに大岩っぽいですがいきなり大岩が現れたら不審に思いません?」
「その時はこうします!」
再びナナが大岩に手をかざすと・・・『ズズズズズズ・・・』と
大岩が練習場の地面に沈み大岩の一部だけが地面に顔を出した。
「そしてこの出ている大岩に入口を設置すれば・・・ほら!」
大岩の上の部分に人が通れる穴が出来上がりナナが中へ入る。
ハクトさんとティアが穴の中を覗き込むとナナがが手を振っているのが見える。
中が気になりハクトさんとティアが穴を通り中に入ると
「魔法で明るくしてますが・・・シェルターには何が必要なんですか?」
確かにナナの作り上げた大岩肩のシェルターの室内は大岩をくりぬいた感じで
無骨な作りになっていたが土壁よりも硬そうな岩というか石で創られており
ハクトさんが言っていた強固な頑丈な物と言えるものに仕上がっていた。
広さは人が3人は寝る事が出来そうな感じではあるが休憩用のイスも無ければ
就寝用のベッドもないしトイレもありはしなかった。
「まずはトイレは必須かな。次に休憩用にイスがあればリラックス出来るし
この場で寝るとしたらベッドがあれば最高じゃが・・・。」
「トイレか・・・それなら・・・。」
そう言ってナナが岩壁に手を置き・・・新たな空間を創り上げる。
「簡易トイレとしてならこんなもんかな。
後はイスとベッドは・・・っと。」
ナナは目を瞑りイスとベッドを思い描きながら次々と創り上げ
部屋の両隅にナナとティアのベッドを創り部屋の真ん中に車座になるようにイスを設置した。
「イスは魔法で創ったから硬いと思うからクッションを別途購入かなー。
ベッドも形だけで硬そうだから布団か厚手のマントに包まって寝ないとなー。」
「昨日の今日でここまでの物を創り上げるとは・・・
シェルターは元々緊急用の小屋なんじゃが
ナナさんの大岩型のシェルターは普通使い出来そうな創りになっておるのぉー。」
「そうですか?便利が一番!!」
ティアはナナが創ったベッドに寝ながら「背中いたい・・・。」と呟いたり
イスに座って「テーブルがあれば完璧!」とは言っている。
簡易トイレに向かい「ナナ!ナナ!!これは簡易トイレじゃないよ!!」と叫んだりしている。
ハクトさんはナナさんを見つめながら「まだ魔力に余裕はありますか?」と聞くと
ナナさんは「魔力を抑えてますから大丈夫です。」と告げると
「それならいいんですが、しかし、予想以上の物を創りましたのぉー。」
「ハクトさんから想像力が第一と言われたので最初に割れない岩を思い描き
次にに岩内部に生活空間をと思い入り口と部屋を創りました。
消費した魔力は僅かだと思いますがどうでしょう?」
「確かに恐ろしいまでに少ない魔力で創られてますね・・・
ある意味省エネと言えなくは無いですが・・・。」
「それにこの大岩型のシェルターなら『魔法工房』へ送ったりする事が可能じゃないですか?
使う時に取り出して設置すれば魔力を抑えつつ安全を確保出来ると思うけど・・・。」
「それは面白いアイデアですね。向こうで取り出したらナナさんが地面に埋めて使い。
次の日の朝になれば再び『魔法工房』へ送る・・・と。」
「それが可能ならベッドに布団を予め敷いておけるしいい考えだと思うよ?」
「明日試してみましょう。」
「はい。」
ナナとハクトさんが大岩型シェルターについて話をしている中で
ティアは疲れたのかイスに座りながら寝落ちしている。
「昨日の疲れが抜けなかったのかもしれん。」
「今日は休息日にして身体休めをしていいですか?」
「そうじゃのぉ、疲れて怪我でもしたら大変じゃ。
今日はシェルターで実際に生活してみてはどうじゃ?
必要な物が見えてくるかも知れんし面白そうじゃと思うがのぉ。」
「そうですね、今日はこのままここで生活してみます。
食事はアリスさんの料理を取り出せますので大丈夫ですし
実際に身体休めと心休めが出来るか検証します!」
ハクトさんは微笑みながら「気を付けるんじゃよ。」と告げ天井の扉から出ていく。
ナナは換気用に天井の扉に数カ所穴を開け「これで息苦しくならないはず・・。」と
ティアと同じくイスに座り眠り始める。




