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隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
25/87

ランクアップとか

朝一番に草原で薬草採取をする2人

ナナは薬草の群生地を何カ所か知っていたので

昼頃までに薬草10本1束を5組採取し『ロースポーツ』へ戻る。


時間的に宿屋の食堂や露店街の賑わう声を聞きながら

ナナ達は冒険者ギルドへ向かう。

ギルドのドアを開け受付嬢の方へ「おはよう。」と声をかけ

手前の受付嬢の方へ向かい薬草の束をカウンターにのせ


「薬草採取の依頼完了です。」


受付嬢はカウンター上の薬草の束を『鑑定』スキルで

薬草の本数と状態を調べ『薬草採取』依頼の報酬の用意を始める。

受付嬢が薬草の束を後ろの部屋に運び・・・代わりに小さな布袋を手にし戻ってくる。


「薬草10本1束の物を5束という事で『薬草採取』依頼5回分の報酬になります。

相変わらず丁寧に採取なさっていてギルドとしても助かります。」


受付嬢はナナの丁寧な仕事ぶりにニコリと微笑み小さな布袋を手渡される。

報酬を『魔法工房』へ送りクエストボードへ向かうと

ギルドの奥の方からギルド長がナナの方へ歩いて来て


「ナナさん、昨日はすまなかった。」


ギルド長は挨拶もしないままナナに昨日の事を謝罪してきた。

ナナは何の事か分からず首を傾げとりあえず挨拶と思い


「おはようございます。」「おはよう。」

「あ、その、おはよう。・・・あれ?」


ギルド長は戸惑いながらナナ達に挨拶をし


「いや、そうじゃなく。昨日は馬鹿な職員が迷惑をかけた。

今日はその事の謝罪と少しだけ話をさせてもらえんかのぉ。」

「あー、昨日のー。」


ナナは何か思い出したように「そういえばいたな。」位の認識だったので

ギルド長から言われるまで綺麗に記憶から消えていた。

ティアもまた朝の出来事だったので綺麗に忘れていた。

その後の草原で思う存分身体を動かしていたし

今朝もハクトさんとギリギリの修練でそれどころではなかった。


「謝罪とかは大丈夫ですよ、言われるまですっかり忘れてましたし。

少し話ですか・・・待合室で話を聞いてもいいですか?」

「待合室は飲食自由だっけ?」

「待合室で話を聞いてくれるのか助かる。

それと待合室は飲食自由じゃが飲酒は勘弁して貰いたいが・・・。」

「「お酒は飲まないので大丈夫!」」

「それなら食べながら話を聞いてもらえればいい。」


ナナは背負ったリュックから弁当を取り出す様に見えるように

『魔法工房』からアリスさんの手製の弁当2つと焼串を取り出す。

ナナとティアは弁当と串焼きを前に手を合わせ

アリスさんに感謝とお礼を込め「「いただきます。」」と

ギルド長は弁当を食べ始めた2人を見ながら「美味そう。」と呟き


「それじゃ、食べながらで良いから聞いてもらえるか?」


ナナとティアはコクコクと頷きパンを頬張る。


「まずは決闘の件じゃが、領主様からも感謝の言葉を頂いておる。

決闘自体ナナさんには納得がいかない物じゃと思う

それに決闘時に相手方が使用した呪詛シリーズの破壊など

普通では考えられない事柄が多すぎて対応に困っている状態じゃ。」

「もごもぐもぐ、終わった事は気にしなくて大丈夫です。」

「もごもぐ、これ美味しい。」

「そうだね、野菜炒めの味付けが抜群だ。」

「野菜が好きになっちゃう。」

「それでな、決闘を終えたナナさんに領主様がじかに話をしたいと要請が来てるんじゃが・・・。」

「もぐもぐもぐ、要請ですか・・・。」

「もぐもぐ、ナナさん大変ですね。」

「ティアさんも一緒に話をしたいと言ってるんだが・・・。」

「もごもぐ、ティアも一緒だと・・・・一蓮托生か?」

「もぐもぐ、そんな一蓮托生はイヤですね。」

「それとは別に冒険者ギルドとしてナナさんのランクアップをしたいと思うんじゃが

今のナナさんはランクFだと思うが決闘を見た冒険者や住民達からも

『ランクFでもあれほど強いのか。』とか『冒険者半端ねぇ。』という声が聞こえてきてな。

同じランクFから『あれはランクFとかタチの悪い冗談か?』とも言われたし

出来ればナナさんにはランクEになってもらいたい。」

「もぐもぐもぐ、ランクEか・・・。」

「もぐもぐ、あれまランクEおめでとうございます。」

「ティアさんにも暫定的にランクEという話も出ているんじゃが・・・。」

「もぐもぐ、ティアもランクEおめでとう。」

「もぐもぐもぐ、それは困りましたね。」

「実際にティアさんは冒険者としての実績は皆無です。

今日薬草採取をした事で最低限の冒険者としての責務は果たしましたが

それよりも昨日草原でナナさんとティアさんの事が話題に上がっておるんじゃが?」

「もぐもぐ、昨日何かあったっけ?」

「もぐ、穴兎を狩った事かな?」

「昨日草原で2人が穴兎や野犬を猟犬の如く追いかけ倒しまくっていたと

草原にいた冒険者や森から戻ってきた冒険者らが目撃してるんじゃが?」

「もぐもぐ、そう言えば昨日は頑張りすぎたかな?」

「もぐ、昨日は楽しかったです。」

「それを見る限りティアさんもランクEの話が出ておるんじゃ。

決闘でランクFと思えぬ動きを見せたナナさんと同様の身体裁き

わしは見ておらんのだがナナさんとティアさんは弓の腕も凄いらしいし。」

「もぐもぐ、ふぅー。美味しかった。」

「もぐもぐ、まんぷくー。美味しかった。」


2人は手を合わせ「「ごちそうさまでした。」」と声を合わせアリスさんのお礼を言う。

ギルド長は2人が手を合わせ食事をし、また手を合わせ食事を終える。

そんな不思議な仕草をギルド長は「なんの儀式?」と思いながらも話を進める。


「それでどうじゃ、2人ともランクアップをしてみんか?」

「あのランクアップのメリットはあるんですか?」


ナナはランクに拘っていないので上げる事も現状維持も知ることから始める。


「ランクアップのメリット・・・利点は1つ上のクエストが可能になる。

もっともクエストの難易度も上がる変わりに報酬額も上がる。

ランクFは『ロースポーツ』の行動範囲は草原一帯となるが

ランクEは『ロースポーツ』の行動範囲を草原と浅い森までとなっておる。」

「浅い森の境界線と目撃される獲物はなにが?」

「ギルドで把握されている限りでは『一角兎』『大猪』『黒毛牛』『大蛙』がおるのぉ。」

「ほーほー、そうだ。ランクFで大猪を倒す事は可能ですか?」

「質問の意味がわからないが大猪を倒すのは可能じゃが

大猪の討伐依頼はランクEからじゃからギルドとしては依頼不可として

報酬を手渡す事は無理かのぉ・・・そのかわり直接露店や肉屋へ卸す事になる。」

「ランクを上げた方が生きやすいか・・・。」

「世知辛いですね。」

「それでどうじゃ、ランクを上げてみんか?」

「ランクEに上がる事に拒否出来そうにないのでいいですよ。」

「ナナがそう言うならわたしも大丈夫。」

「今回は特例という事でランクアップの試験は無しじゃ。

ギルドカードを受付嬢へ手渡せば自動的にランクEとなる。

ランクが上がったからと言ってギルドとしては今まで通り冒険者として活動して貰えば大丈夫じゃ。」

「そういう事なら・・・。」

「ランクアップか・・・。」

「最後に領主様からの要請はどうする?」

「「お断りします!!」」

「何もそんな声を揃えんでも・・・。

とりあえず領主様には『面倒な依頼中』と伝えとこう。」

「そうですね。」


ナナとギルド長が話をする中、ティアが弁当を片付け食後のお茶を飲んでいる。

お茶を飲みながら「お茶美味し。」とまったりしていると

隣のナナもお茶を飲み「ランクEかー。」としみじみしている。


「とりあえず、ギルドとしての話はこれで終わりじゃが

何か質問があれば教えておこうと思うのじゃが?」

「冬期間中に依頼をしていなかったんですが大丈夫だったんですか?」

「ギルドとしては1年以上依頼をしていない冒険者にはギルドカードの無効となる。

これは冒険者ギルド加入時に話しているはずなんじゃが誰も覚えておらん。

ナナさん達も長期間ギルドから離れる時はギルドに相談する事をお勧めするぞぃ。」

「普通はそういう事があるんですか?」

「長期の休養や養生などあるが・・・多くの場合は出産や病気が多いかな。

女性冒険者が結婚妊娠出産で一時期冒険者を離れ気が付くとギルドカード無効に気が付く。

もう一度ギルド加入をしようにもランクFから始めなければいかなくてな。

それを気に冒険者引退を考える者が多く出るのぉ。」

「その辺は大丈夫です。」

「そうなのか?普通は結構問題になるんじゃがのぉ。」

「ランクFから始めるだけだし気にしてませんよ。

それじゃ、お話も終わったのでもう行きますね。」

「あぁー、済まなかったな。

出来れば今まで通り冒険者として頑張って貰いたい。」

「はい。」「うん。」


ナナとティアはテーブルの上に広げられたお茶セットを片付けてから

テーブルを綺麗にしてから受付嬢の方へ行きギルドカードを提示し

2人揃ってランクEにランクアップを果たす。


冒険者ギルドを出た2人は『魔法工房』へ戻るのは早いという事で

草原で薬草採取をしながら穴兎を狩り続けていく。


「ランクが上がってもやる事は一緒なんだがなぁ。」

「ギルドの方が満足したみたいだし良いんじゃないですか?」

「それもそうか、森へも行けるようになったし問題無しという事で!」

「そういう事で!」

「今日は『ロースポーツ』へ戻らないから真っ直ぐ森へ向かってみるかー。」

「おぅー。」


『範囲感知』で警戒しながら少しずつ森へ近づき採取や討伐をしていく。

薬草に関しても草原で採取していた物と違う薬草が生い茂り

ナナは『鑑定』スキルをフルに活用し丁寧に採取する。

ティアもまた草原よりも獲物の反応が多く緊張しながら弓を構える。


「薬草が豊富だが獲物の反応も草原の倍はあるな。」

「穴兎や野犬の反応とは違うし・・・ナニかな?」

「『一角兎』『大猪』『黒毛牛』『大蛙』はいるらしいし

ギルドに持ち込み出来ない害獣もいる可能性もある。」

「倒し損が多いと・・・?」

「あぁー、獣なのか虫なのか・・・。」

「虫に刺されるのはイヤだな。」

「虫よけでも用意した方がいいのかな。」

「是非!」


草原よりも『範囲感知』での反応が多すぎる。

小型の獣なのか大きめの虫なのか・・・。

準備するのは虫よけか虫さされの薬なのか。


「アリスさんとハクトさんに相談してみようか。」

「はい。」


反応の多さに精神的に疲れ始めたティアをナナは撫でてから

早々に『魔法工房』へ戻る事になる。

ランクアップしました。

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