表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
22/87

1つ上にとか

決闘の後という事で『魔法工房』へ帰還後、戦いの顛末をグランさん達に報告し

いざ寝ようと立ち上がろうとしたらナナは膝から力が抜けたように倒れ込む。


「はぁ、久しぶりの魔力枯渇か・・・。

出来れば部屋に戻るまで身体が持つと思ったんだけど。」

「ナナ、ナナ、大丈夫?」


ティアが慌ててナナの身体を支え心配そうに声をかける。

ナナはにへら~と力の抜けた笑顔で


「久しぶりに魔力枯渇気味なだけだから

これは寝れば治る症状だから心配すんな。」


そう言いながらティアの頭を撫でようとして

ナナの意識が途絶え・・・ティアに覆いかぶさるように眠り始める。


「あう、おも・・い。・・・・ダメ。・・・・たおれ・る。」


ティアはナナを支えきれずに床に倒れ込み・・・じたばたと動き・・・動けなかった。


「ハクトさんお願いします。助けて下さい。」


泣きそうな顔でヘクトさんに救援をお願いし

ナナを無造作に持ち上げ荷物でも持つかのように肩にのせる。

ティアはナナという重しが無くなった事ですくりと立ちあがり

ハクトさんにぺこりと頭を下げてからお礼を言い


「すいませんが工房の2階まで運んでもらえますか?」


泣きそうな顔な顔でティアがハクトさんにお願いすると

肩にのせたナナをぽんぽんと叩きながら


「お任せを。」


ティアとハクトさんが工房へ向かおうとするとルナさんが立ち上がり


「ハクト少し待って、ナナに回復魔法を!」


そう言いナナの身体を触りながら魔法を唱える。

ルナさんの魔法の効果なのかナナの身体が淡く光り始める。

何度か魔法を行使したのか満足したようにルナはにこりと微笑み


「これで大丈夫、見た目のダメージよりも内面の方が少しヤバかった。

それとナナの装備は一新した方がいいかも・・・。

今着ている革の上下も見た目変わりないけど

結構朽ち始めてるから工房へ戻り次第着替えさせてね。」

「了解しました。」

「はい。」


ルナさんの忠告にハクトさんとティアが答える。

ティアがおもむろにナナの革の上着を触ると・・・『ぽろり』崩れたので


「なんか革の上着が壊れてる!」

「いえいえ、ルナさんが言った通り朽ちているんでしょうなぁ・・・。」

「急いで工房で着替えなきゃ・・・。

革の靴や手袋も点検しなきゃダメっぽいかも。」

「そうですな。ナナさんが起きる前に着替えと装備の交換を致しましょう。」


ハクトさんとティアが騒ぎ急いで工房へ向かう。

ルナさんはそんな2人見ながら


「魔法でナナの方は問題無いから着替えさせれば大丈夫よ。

革の上下と靴に手袋は点検してもいいけど朽ちて経年劣化のように脆くなってるから

修繕よりも廃棄と考えなさい・・・これを機に一つ上の装備に変える事をお勧めするわ。」


ルナさんの忠告にハクトさんとティアはコクコクと頷き


「了解しました。」「はい、ありがとう。」と答えいそいそと工房へ向かう。

ルナさんはそんなに急がなくて大丈夫なのに・・・と思いながら工房の方へ目を向ける。




ナナの戦いの報告を屋敷の大広間で聞いていたグランさん達は

ナナを運んだハクトさん以外の4人で話し合いをしていた。


「それでナナさんの具合はどうなんじゃ?」

「回復魔法で外面内面に問題は無し・・・。

さっきも言ったけど装備に関しては髑髏の杖の影響かな・・・

革の上下は経年劣化の様に崩れ始めているわ。」

「呪詛シリーズの髑髏の杖・・・か。」

「魂を奉げ自らを異形の姿へ変える杖。

そして、全てを喰らい尽くす杖。」

「まだ人の世に残っていたんですね。

既に廃棄され過去の遺物となっていたと思っていたんですが・・・。」

「過去の遺物を後生大事に保持していたんじゃろう。

あの禍々しさじゃ捨てようにも触っただけで呪われそうじゃし。」

「壊す事も捨てる事も出来ず・・・もしくは使用した者は使う前から呪われていたのかも知れん。」

「それは杖に魅せられ・・・見惚れ・・無意識に無自覚に杖の力を行使したと?」

「その可能性もあるかも・・・あの者は杖に魂を喰われておったし

最後の方はあの者の意識では無く杖の方が身体を動かし

ナナを襲い修練場にいる者たちを全て喰らうつもりじゃったんだろうさ。」

「呪詛シリーズが1つ消滅した事は喜ばしいと思いたいが

今回の騒動でナナの実力が『ロースポーツ』に知れ渡ってしまった。」

「ナナさんは面倒だと一蹴しそうですが?」

「面倒だと拒否するじゃろ?」

「そればかりは『ロースポーツ』の領主次第だろうさ。

ナナが個別依頼を数回断っているのも知っていれば何も言わないと思うぞ。」


明日以降のナナの対応が変化する事をグランさん達は頭を抱えるのだった。


それよりも異形の獣との戦いで装備一式が朽ちた事の方が重要で

グランさんとアポロさんが革の上下を含む革装備の補強について話が進む。


「ナナさんの『革細工』修練Lv5だったな。」

「はい、既に修練上限に達してます。」


グランさんの質問にアリスさんが簡潔に答える。


「それなら今以上の物は作る事は製作不可能という事か?」

「材料により多少の変化はあると思いますが・・・こればかり製作してみない事には・・。」

「材質と材料によりより良いものを製作可能と考えれば建設的か・・・。」

「ナナさんは装備に1つのポリシーと言いますか

必ず拘っている事があります。」

「確か・・・軽量と駆動域の事か?」

「はい、軽く動きやすい事が1番と考えているようです。」

「12歳の身体で重い鉄の鎧は邪魔以外の何物でもないしな・・・。

軽い鋼鉄・・・軽鉄ならナナの期待に添えるかのぉ・・・。」

「実際に軽鉄で鍛えた『剣鉈』を所持していますが?」

「あれは武器というより採取ナイフか解体ナイフと同列に考えている節があるぞ。」

「ハクトさんとの朝錬では剣鉈で蹴りを防いでいるのを見た事があります。」

「剣鉈はハクトの蹴りに耐えたのか・・・それとも手加減して蹴ったのか。」

「最近は手加減するのは難しいと仰っていたので耐えたのかと・・・。」

「本当は軽鉄で各部護れるだけの装備が望ましいが

せめてナナさんが15歳までに成長すれば今より1つも2つも上の装備に変更できるのに。」


グランさんとアリスさんの話し合いは15歳までナナが成長するまで保留となる。

それは15歳までにナナが自身の力で技術で装備する者を作り上げる事を意味する。


「それならスキル面から考えてはどうでしょう?」


グランさんとアリスさんの会話を静かに聞いていたアポロさんが手を上げ1つの提案を話す。

それにルナさんも話に加わり会話が始まる。


「アポロの言うスキルは『魔纏衣まとい』の事か?」

「あぁ、そうだ。魔力を纏い身体能力を向上させる『魔纏衣』は使用している武器にも有効だし

何より纏う魔力の質によっては呪いにも有効だ。」

「『魔纏衣』は修練次第で誰でも修得可能なスキルではあるが

今のナナでは『魔纏衣』を修得しても魔力枯渇で倒れる頻度が増す可能性も・・・。」

「そこは魔力操作と日々の修練次第では?

もし魔力枯渇で倒れても今のナナさんの隣にはティアがいますよ?

彼女がナナさんを支えていけば何も心配は無いはずです。」

「それならばティアもナナと同様に『魔纏衣』を修得させた方がいいかも知れん。

戦うにしろ逃げるにしろ修得して損は無いはずだ。」

「それと同時に『魔法陣』を2人に教えてみてはどうでしょう。

革の上下に魔法陣を施せば多少なりにも効果はありますし

武器や防具に限らず小物に至るまで魔法陣の恩恵は大きいと思いますが?」

「魔法陣か・・・俺は苦手だな。」

「私もです・・・。」


「それなら私がナナさんとティアさんに魔法陣をお教えしましょうか?」


アポロさんとルナさんが苦手と言っていた『魔法陣』を

グランさんの後ろで聞いていたアリスさんが手を上げ答える。


「魔法陣は刻む魔法効果によって描く紋章が違います。

それは魔法回路とも魔法紋章とも言われていますが・・・。

基本的に攻撃・防御・補助の3つに分類されていますから

最初は防御に関する魔法陣をお教えすれば・・・良いのでしょうか?」

「あぁー、頼む。俺らじゃ教える前に逆に教わる立場になりそうだしな。」

「私も細かく正確に描くのは・・・苦手ですわ。」

「それではナナさんが元気になり次第『魔法陣』について話をしてみます。

それと同時に『魔纏衣』をハクトさんが教えれば宜しいかと思います。」

「アリスが頭で覚える魔法陣を教え

ハクトが身体で覚える魔纏衣を教えると・・・。」


「『ロースポーツ』で目立ち過ぎたから暫らくは『魔法工房』で修練する方が気も休まるか。」


目立つのを嫌い人目を極力避けてきたナナが決闘という場に出た事により

これからの冒険者としての活躍が人知れず期待され始める。

それはナナの与り知らずな所もあり出来れば逃げていきたい事柄であった。

無用な争いにも負けないように流されないように強くなるしかない。


「12歳のナナさんにとって強さが何かはわからないが

逃げずに立ち向かえるだけの力を授けようではないか・・・。」


グランさんの宣言ともいえる言葉にアポロさんルナさんアリスさんは声を揃え

「おぅさ!」「はい!」「お任せを!」と答えるのだった。



『ロースポーツ』の冒険者ギルドではナナさんに次こそは個別依頼を受けて貰おうと考えていたり

領主もまたナナに専属で冒険者契約をするにはどうしたらいいかを考えていたり

ナナが倒れている間に冒険者ギルドや領主関係者の中で色々と噂などが聞こえていた。

聞えてはいたのだが・・・ナナはその声を聞くのは暫らく後になってからだった。

ハクトさんによる『魔纏衣』の修得とアリスさんによる『魔法陣』習得までの間

ナナはティアと共に『魔法工房』でみっちり修練を繰り返る事となる。

『魔法陣』もしくは『魔法紋章』


魔法陣・魔法紋章はどちらも意味合いが同じで物に魔法を付加する技術である。

それは物体に魔法を刻み魔力を用い行使する術の事で

魔法を修得していない者でも魔法を使える事が出来る。

問題があるとすれば魔法陣の修得Lvにより魔法の効果に差があると言う事で

修得Lvが低かった場合は魔力消費があるにも拘らず魔法効果が皆無という実例もある。


特定の場所にも使用出来るのだがその場合は魔石をエネルギーとして魔法を行使する。

冒険者ギルドの修練場に設置されている魔法陣は魔石式の魔法陣であり

魔石の魔力がゼロになる度に交換をする必要があり使うにはかなりの維持費を必要としている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ