決闘からの
ナナは目の前の相手を見据えながら
前にティアに絡んでいた中にいたかなと考え
「そんな装備で大丈夫か?」と声をかけると
大声で「てめぇは殺す!」と大剣を振りかざしてくる。
ナナは攻撃を見切りながらも「あぁ、確かに前にも言われたかも。」と思いだし
それにしても全身を鋼鉄の装備を纏い両手でやっと持てる様な大剣を携え
ナナに斬りかかってくるのだが・・・装備が重いのか最初に位置から動けずにいる。
「はぁはぁはぁ、ちょこまかと逃げるなぁ!」
「逃げているんじゃ無く避けているんだが・・・。」
「うるせぇー!とっとと死んどけやぁ!!」
「まぁー、死ぬ気も無いし当たる気も無いし・・・。」
ナナはゼロ距離の位置から攻撃をかわしては馬鹿な冒険者に話しかける。
しかし、武器も重ければ身につけている装備も重い・・・。
攻撃は単調だし何より避けるだけなら問題無く行える。
「はぁはぁはぁ、もういい。」
そう言い大剣を投げ替えの武器を取り出し
「これを使う前に倒したかった・・・。」
手には髑髏のをあしらった杖を構え深呼吸をしたのち
「目覚めよ『ドグロマギカ』!!その力を俺に捧げろぉ!」
次の瞬間髑髏の杖からどす黒い瘴気が立ち込め馬鹿な冒険者を覆い始める。
全身を覆っていた鋼鉄の鎧は髑髏の杖の影響からか黒く暗い鎧へと姿を変え
人の姿から・・・それは獣を彷彿とする異形の姿へと姿を変える。
「あぁー、これはスゲー力が湧いてくる!」
「変身したのか?」
「あはははははー、見てわかんないのか俺は人を越えたぞぉ!」
「いやいやいや、人を越えて獣になったら・・・それは退化でしょ?」
「ごちゃごちゃうるせー!」
さっきまで装備が重くて動けなかったはずなのに
異形の獣の姿になったとたん有り得ないほどの速度でナナへ攻撃を仕掛けてくる。
それは大熊の攻撃のように腕を振りかざし獲物を仕留めるかのように
腕を振りまわし叩きつけ・・・その動きは人為らざる者その者であったが
「なぁー、それでは攻撃は当たらんぞ。」
姿を変え攻撃力そのものを上げてもナナに攻撃を当てる事は出来ずにいると
突然杖を構え魔法を放ってきた!
『魔弾』のような攻撃に見えるのだが
その魔法の質は禍々しく魔法が当たった個所の防壁が次々と朽ちていく。
それを見たギルド職員が慌てて決闘を見学している観客に結界魔法を唱え始める。
「イヒヒヒヒ、全てを喰らい尽くせ!」
最初こそナナに向けて魔法を放っていたはずが気が付けば
制御不能に陥ったのか修練場に次々と魔法を放ち
決闘を見ていた冒険者達は逃げまどう者
自身で結界魔法や魔法障壁を唱える者
中にはナナの変わりに戦いたくてうずうずする者
その中で1人だけ顔を青くし異形の姿を見つける者がいた。
「なんてものを持ち出してるんじゃ・・・。
あれは禁忌じゃと教えたはず・・・馬鹿な事を・・・。」
どうやら馬鹿な冒険者の関係者らしいのだが
馬鹿な子供の親は少しはまともな親だったのかなと思い
これからどうしようかなぁーとのんびり考えていると
「ナナさんこれは予想外の事例です。
このまま危険しても問題がありませんがどうしますか?」
ナナの戦う後方からギルドの受付嬢が声を上げてきたので
「予想外なの?」
「えぇ、あの髑髏の杖は呪われた呪詛シリーズの1つです。
使用者の魂をのみこみ願いをかなえると言われています。
杖の破壊で使用者を止める事が出来ると思いますが・・・。」
「杖の破壊で使用者も破壊というか命が尽きる・・・とか?」
「はい、その通りです。」
「それなら髑髏の杖を破壊していいか許可を貰ってくださいな。
殺したら問題ありそうだし・・・あいつが力尽きても魔法は止まらない気がするしさ。」
「わかりました。」
次の瞬間、受付嬢は領主の元へ行き杖の破壊について話はじめ・・・
「冒険者ナナよ。直ちに事の終息に努めよ!」
領主が立ち上がり声を上げて『杖の破壊許可』を貰い
「了解。」
ナナは両手を合わせ『パーン!』と大きな音を出し
異形の者に自分を意識されてから・・・ゆっくりと近づき
リズムを刻みながら踊るように異形の者に近づき
次の瞬間、高速で蹴りを放ち続ける!
高速で移動しては蹴りを放ち倒れる事も飛ばされる事も出来ぬまま
ナナは蹴り続け杖の破壊と共に漆黒の鎧も破壊した。
後に残ったのは力を吸われ白く細々く痩せ細った少年らしき遺体のみだった。
ナナは最後に手を合わせ『南無南無・・・。』と呟き領主へ一礼し
「これで決闘は終わりかな?」
次の瞬間、決闘を見ていた冒険者やら関係者達が立ち上がり歓声を上げ
「なんだ今のは!」とか「最後のは何をしたのかわからんかった。」とか言っているが
ギルド長が「今のは『格闘』スキルの1つじゃよ」と告げると
「なんとマイナーな。」や「武器無しで何やってんだよ。」と呆れる頃も聞こえ始めたんで
ナナは「やっば、目立ち過ぎた。」と呟きながらいそいそと修練場を後にする・・・。
その後ろ姿は勝ったにもかかわらず何かを失敗したお父さんの様にも見えた。
ナナが修練場からギルドの待合室へ戻るとティアが嬉しさの余り抱きつきながら
「おめでとう、どこも怪我して無い?」とナナの身体を触り始める。
ナナはティアの頭を撫でながら「大丈夫、頑張りすぎた。」と言いながら
「疲れたー。」と待合室の机に身体を投げ出すのだった。
暫らくするとギルド職員の1人がナナの前に来て
「決闘お疲れさまでした。
先程の決闘で領主から聞きたい事があると言われているんですが・・・
どうしますか?今すぐ会いますか?後日会いますか??」
「あまり合いたくないのですが・・・。」
「それは無理です。」
「・・・・それならすぐに合います。
ティアも一緒でも構いませんか?」
「え、なんで・・・、わたしはイヤだけど?」
慌て始めたティアをナナは「大丈夫、恐くないよー。」と頭を撫で
ティアにだけ聞こえるよう小声で「ダメな話なら一緒に向こうへ逃げよう。」と言うと
「そういうことなら。」とこくんと頷く。
「それでは領主さまはギルド2階のギルド長の部屋でお待ちです。」
そう言われたのでナナはギルド職員の後へ着いていく。
歩きながら先程の決闘を見ていた冒険者達から
「おめでとう!」やら「あれはエグイ攻撃だった。」とか言われたので
「只の蹴りだよ。」と答えると「蹴りだけで倒すなや!」や「マゾイ攻撃だったぞ!」と
褒められたいるのか貶されているのかわからなくなり微妙な顔をしていると
「何はともあれ良い稼ぎになったぜ!」と言われ「稼ぎ・・・?」と首を傾げていると
前を歩くギルド職員から「賭けの対象になっているんですよ。」と教えてもらい・・・。
ナナだけが「賭けてないわ・・。」と言うと
ティアが「大丈夫です。わたしがナナさんに掛けましたから!」
どうやら所持金の全てを賭けにまわし「これで豪遊しましょう。」とニコニコしている。
階段を上がりギルド長の部屋に入るとギルド長やら領主やら偉い人達がの視線を集め
ナナは心の中でため息をつきながらぺこりと頭を下げる。
ギルド長の部屋には高級そうなソファーがあり
上座から領主関係者が座り、対面する感じでギルド長やナナ・ティアが座る。
どういう訳か恰幅のいいおっさんが1人立っているのだが・・・
ナナがおっさんを見て「何故に立ってる?」と言った視線を向けると
「あぁー、気にするな。あいつはお前さんの決闘相手だった親御さんの1人だよ。
あの杖は彼の秘蔵の杖だったらしんだが本来であれば所持も使用も禁止されている。
国からも教会からも禁止・・・いや禁忌扱いのしろものじゃ。」
「・・・もうしわけありません。」
消えそうな声でおっさんが声を上げる。
「それにしても君は本当にランクFの冒険者なのかね?」
難しい顔をして領主がギルド長へ話しかける。
ギルド長もまた手元の資料に目を通しながら
「1年前に冒険者になり現在ランクFの冒険者として活動してます。
薬草採取や穴兎の毛皮のクエストをしてギルド直営の宿屋に宿泊していました。
現在はどこに宿泊しているかは不明ですが・・・。」
「話を聞いても普通の冒険者のようだが・・・ランクFの冒険者はそれほど強き者なのか?」
「・・・さっきの戦いをギルドにいるランクFの冒険者は無理です。」
「・・・そうなのか。それならば何故にランクFなのだ??」
「ランクを上げるのは冒険者本人の意思によるですし・・・。」
「ランクを上げない冒険者もめずらしいと言う事かな?」
ナナとティアを置いてけぼりにしてギルド長たちは話し続けている。
少しだけ飽きてきたのでギルド職員の1人にこっそりと「帰りたい。」と小声で話すと
ギルド職員は首を振りながら「もう少しだけ頑張って下さい。」とだけ言い
ナナとティアはあからさまに帰りたいと考え始め・・・。
「あのお腹すいたので帰って良いですか?」
相手が領主でももう帰りたいオーラを放ちながらナナが話しかける。
領主は面白いものを見つけたと言わんばかりな顔をで
「そうかそうか、色々話を聞きたいんだが
とりあえずは決闘お疲れさまと呪詛シリーズの破壊御苦労!」
「あーはい。」
「それで今回の決闘についてだが・・・。」
領主が話し始めたのでナナが長い話になりそうな気がしてきたのでナナが手を上げて
「決闘が終わったので帰りたいです。」
「決闘の報酬やら色々あるんだが・・・?」
「あー、うん。別にいらないです。」
「そうは言ってもだな。」
「明日からもいつも通り冒険者をやれたらそれでいいです。」
ナナが面倒事は結構と言わんばかりにハッキリと拒否していると
領主側の方がこそこそと小声で相談を始め
ギルド長の方は不審な視線を向けているのに気がついたのか
「それではこの話はこれまでにしましょう。」
領主側の1人がギルド長を始めナナ達に声をかけたのを気に
ナナは立ち上がり・・・ティアも急いで立ち。
「お疲れさまでした。」
「でした。」
2人揃ってぺこりと頭を下げギルド長の部屋を後にする。
面白そうに部屋を後にする2人を領主たちは見つめ・・・
それを見たギルド長は面倒事は勘弁してほしいなぁと思いながら
早く帰らないからとこそこそと話し合いをしている集団を見ていた。
この部屋での会話は夜遅くまで続きギルド長は寝不足のまま次の日を迎えるのだった。
ナナの『蹴撃』初披露回でした。




