朝錬スタートとか
次の日の朝、ナナは修練場にて身体を温まる意味を込めて柔軟をし
ゆっくりとしたリズムを刻みながら踊るように蹴りを放つ!
それはボクシングのしゃどうボクシングとは違い
某ゲームの10連コンポを彷彿とさせる連続攻撃だった。
ただ違いがあるとすればナナが習得している『蹴撃』は特定の格闘術というより
1つの戦闘スキルの派生という事、未完成のスキルという事。
そして、未完成であるが故・・・蹴りという攻撃であれば『蹴撃』の恩恵があると言う事。
実際にナナはグランさんやアポロさんが大広間で対戦格闘ゲームをしているのを見ながら
「10連コンポは無理でも連撃としてなら使いこなせるかも・・・。」
そう思いながらゲーム画面を見ながらキャラクターの動きを記憶し
今現在多分こうだったんじゃないとゆっくりと身体を動かしていく。
軸足と蹴り足、腰の捻りと身体の向き、重心を左右に動かしながら蹴りを放つ。
「上段二撃からからの中段蹴りをし這うように下段蹴り三蹴りをし
身体を起こし捻り回転しながら中段蹴りを連撃で叩きこむ・・・。」
蹴りを叩きこむ瞬間は防御も忘れいようにし
刻むリズムも相手に悟らせないように単調にならず踊るように動き回る。
この『蹴撃』の時にリズムを刻むのはナナ独自のものであり
ハクトさんはリズムを刻む事は無く一瞬でナナの間合いに入り攻撃をしている。
その事をハクトさんに聞いても「人それぞれです。」とにっこりと笑いながら答えていた。
ナナの朝錬は柔軟運動から身体を温めて『蹴撃』の修練をしたり
『土弾』を少ない魔力で連続にはなったり
弓を構え的に向かって矢を射ったり
短い時間ではあるが充実した時間を過ごしていた。
そんなナナの少し向こうではティアがハクトさんに初めての朝錬をしていた。
最初はナナの動きを見よう見まねで柔軟体操をし「はぁはぁはぁ。」と疲れ始め。
次に弓修練Lv1という事で30分以上は的に向かい矢を射る作業を延々と続けていた。
最初こそティアの矢筒の矢が切れて休憩と思い気や
ハクトさんが矢が切れる寸前に替えの矢筒をティアに渡し・・・矢の撃ちっ放しをしている。
ティアは疲れながらも終わらない事に泣きそうな顔でハクトさんを見ていたのだが
「命中率が落ちてきましたぞ。」とか「そうです。今動きを忘れないうちにもう1度!」と
矢継ぎ早に声をかけられ止め時も休み時も見いだせないまま腕を動かし矢を放つ・・。
その動きも30分を越え・・・40分を迎えた頃にはティアの動きがぎこちなくなり
ティアの動きが突然止まり・・・パタリと倒れた。
それを見たハクトさんは「ふぉふぉふぉ、最初にしては見所がありますぞぉ。」と
嬉しそうに倒れているティアを見ていたのだが
次の瞬間屋敷の方からアリスさんがやって来て「パコーン!」と
手に持っていたお玉でハクトさんの頭を一殴りする。
ハクトさんは一瞬避けたかに見えたのだが・・お玉が吸い込まれるよう命中し
数回バウンドしながらハクトさんは修練場に吹っ飛んでいた。
「初めての朝錬で倒れるまで鍛えるとは何事です!
ティアさんは連れて行きますからね!!」
「あ、はい。ごめんなさい。」
何故かナナは謝りながらアリスさんがティアを回収し屋敷へ連れていくのを見る。
ハクトさんはアリスさんが屋敷へ消えたのを確認してから立ち上がる。
「いやはや、アリスさんも腕を上げましたなぁ。
お玉の動きは完璧に見切ったと思ったんじゃが・・・それ以上に攻撃も伸びとったわい。」
「それ以上に大丈夫ですか?凄いいい音がしましたが?」
「ふぉふぉふぉ、大丈夫じゃ。肉体的ダメージは皆無じゃよ。
ふっ飛ばされたのは予想以上に攻撃に重さが足されておったからじゃ。」
「それは攻撃は防いだけど身体ごと投げたれた感じですか?」
「んー、合ってるような合って無い様な。
叩く攻撃と打つ攻撃みたいなもんかのぉ。」
「アリスさんにハクトさんはお玉で打たれた?」
「そうじゃのぉ、ボールでも打ち感じで・・・恐ろしいのぉ。」
「次からはティアの限界を見極めてご教授お願いします。」
「ふぉふぉふぉ、大丈夫じゃ。数日のうちに今以上に自然に矢を射るじゃろうし
10日も過ぎればナナさん以上に弓の達人になろうさ。」
「そんなにですか・・・。」
「子供の頃から身につけた技術だからか天性の物かは知らんがな。」
ナナはティアが矢を射っていた的に目を向けると無数の矢を突き刺さっている。
それ以上に命中した矢に矢が当たった様で砕けた矢の残骸が的の下に落ちていた。
どこまで極めれば矢に矢を当てられる物なのか・・・。
「ティアは凄いですね。10日間は『魔法工房』に泊りますから
出来れば明日以降もティアにご指導お願いします。」
「ふぉふぉふぉ、今日は倒れてしまわれて・・・朝錬を拒否されたらどうしようも無いですぞ。」
「あー、そうですね。そこはティアと相談します。」
その後、屋敷へ戻ったハクトさんはアリスさんとルナさんから
ティアを朝から倒れるまで修練した事を責められ
「もう二度と倒れるまで修練しない」と約束される。
ティアは屋敷に戻りルナさんの回復魔法で元気な姿でナナ達を迎える。
回復後にシャワーでも浴びたのか革の上下からラフな格好をしている。
どういう訳はルナさんの替えの服を着ていてナナが首を傾げているのと
ルナさんはティアさんに目を向けてから
「ひょっとしてナナはティアが男の子だと思ってた?」
「え、うん。違うの?」
「・・・・え。」
「こんなに可愛い子が男の子なわけないでしょ!」
「ごめんんさい。」
ルナさんの物凄い剣幕にナナは低背姿勢でぺこぺこと頭を下げ
「あ、いいです。見た目は男の子と言われても不思議じゃないですし・・・。」
銀髪の短めの髪型でナナよりも小柄な姿は男とも女とも見極めが難しい。
実際にナナよりも小柄だし華奢な点でいえばどちらとも言えないな。
「いや、最初に聞いておけば良かったかもしれないし
それよりも身体の調子はどうだ?問題がなければ明日以降も一緒に朝錬をしたいんだが?」
「・・・あまりきつくなければ大丈夫です。」
「そこは大丈夫。ハクトさんも今日の様な事は無いと思うよ。」
「・・・・それならお願いします。」
ティアがハクトさんにぺこりと頭を下げると同時に
アリスさんとルナさんがハクトさんに厳しい視線を向け
「明日も同じような事があれば捌きますよ?」
「そうですね、同じような事があれば千切りますよ?」
「・・・どう捌くのか千切るのかは気になりますが
基本的な事をお教えする事にしましょう。」
それを聞いたティアは少しだけ「ほっと」した顔をし
ナナに「いつもあんなことしてるんですか?」と聞いてきたので
少し考えてから「朝の修練は日課みたいなもんだしなぁ。」と告げると
「日課ですか・・。」と今朝の鬼の様な修練を思い出し苦い顔をしていたので
「最初はきついけど身体が慣れれば苦にならないから大丈夫。」と教えてあげる。
ティアが「そうなのかな?」と小さな声で呟いていたので
「修練は必ず身に着くし続ける事で自信にも繋がる。
そして、続けた自信は必ず新しい物が身に着くからティアも頑張りな!」
ナナはそういってティアの頭を撫でる。
ティアは「そう?」とナナに問いかけてきたので
「とりあえず10日間続けてみ。今よりは強くなれるからさ。」
「うん、頑張ってみる。」




