『魔法工房』へとか
去年までナナが宿泊していた宿屋は初心者冒険者達が溢れていた。
冒険者登録をし直ぐに宿屋を確保したのか・・・
そして、ナナ達が泊れる部屋は早々に無くなり
ティアは今日の止めれる場所がない事より
自分と同じ初心者冒険者の多さに驚いていた。
宿屋の食堂兼酒場は座れる場所も無いし立って飲んでいる冒険者見受けられ
ナナは「これは無理だ。」と呟きティアを連れて冒険者ギルドへ向かう。
夕方のギルドはクエストや依頼報酬を受け取る冒険者が受付に並び
ナナ達がギルドに入った時には一斉に視線を向けられたが
今朝騒ぎを起こした2人組が来たと話し声が聞こえてきて
ティアがナナの後ろに隠れてきたので「ここもダメか。」とぼそりと呟き
ティアの頭をぽんぽんと撫でてからギルドを後にする。
「さて、宿屋にも泊れないしギルドは混んでる。
少し早いが向こうに向かうか・・・。
ティアは『ロースポーツ』に知り合いとかいるか?」
「・・・うん?山村から1人で来たよ?
知り合いはナナさんだけ。」
「それなら今から知り合いの所へ行くけど良いか?」
「うん?大丈夫だけど一緒に行っていいの?」
「それは大丈夫、向こうも合いたいみたいだし・・・
少し行き方が特殊だから驚くなよ?」
「ん、わかった。」
ナナはティアの頭をぽんぽんと頭を撫で
次の瞬間ナナとティアは『魔法工房』の門の前に立つ。
夕方の『ロースポーツ』の風景が一瞬にしてデカイ門の前に立つ
ナナが門をゆっくりを押し『魔法工房』に入ると「ナナさんここはどこ?」と
やはりというかティアが戸惑いと驚い両方の感情で聞いてきたので
「ここは『魔法工房』と言われる場所だよ。
誰でも来れる場所では無く不思議な場所かな?」
「ナナさんはここに来た事あるの?」
「んー、来た事があると言うか冬期間暮らしてたかな。」
「ナナさん凄いんだ・・・。」
「さぁー、正面の屋敷に行こうか。」
「・・・はい。」
ティアは『魔法工房』の敷地内を興味心身にきょろきょろしながら歩く。
工房の扉を触っては「木じゃないし不思議な材木?」とか
工房の窓から中を見て「きれいな建物・・・。」とか呟いている。
「ねね、ここには誰もいないの?」
「この場所は特定に人しか来れないからなぁ。
一応は屋敷に5人は暮らしているよ。」
「それじゃ、ナナさんを含めて6人って事?」
「そうなるかな。ティアを入れれば7人かな?」
「いいのかな、わたしが入って来て・・・。」
「いいんじゃないか?ほれ多分屋敷でみんなが待ってると思うから行こうか。」
「うん・・・。」
ナナの後ろにピッタリと付きまとい歩いているティア
変な冒険者を助けてからナナは子犬の様に懐いてしまっていた。
ナナはその内飽きるだろうと思い歩き続け・・・屋敷の玄関の扉を開ける。
屋敷は純和風の造りになっておりティアは見た事も無い建物に興味があるのかきょろきょろしている。
ナナはティアの頭をぽんぽんとしてから玄関で革の靴を脱ぎスリッパを履く。
それを見たティアもナナと同じく革のブーツを脱ぎスリッパを履き
ナナの革の靴の隣に自分の革のブーツを並べる。
「この屋敷は靴を脱いで入るから気を付けてね。
必ずスリッパを履いてコートやマントは玄関の脇にぶら下げておく事。」
「靴は脱いでスリッパを履く・・・。
コートとマントは玄関にかけておく・・・。」
「それと必ずうがいと手洗いも忘れないように!」
ナナはそういって玄関の右手の部屋にある洗面所で実際にうがいと手洗いをする。
洗面所はナナにしてみれば当たり前の事であるのだが
洗面所の鏡を見て声を上げて驚き、蛇口から出る水を見て再び声を上げ驚き
おそるおそる蛇口をひねり水を出しうがい手洗いを済ませる。
ナナは「ほれ。」とタオルを渡し・・・「?」と首を傾げるティアに
「濡れた手と口を拭きな。」と告げる。
ティアはタオルの柔らかさにびっくりしながら口と手を拭いていく。
「すごいね。あの鏡の部屋初めて見た!それにタオルも柔らかいね!!」
「そかそか、タオルは洗濯するから・・。」
「あ、はい。」
ティアから受け取ったタオルを洗濯場へ行き洗濯機に入れ
「それじゃ、大広間へ行こうか。」
「はい。」
大広場の戸を開けるとソファーにグランさんとアポロさんルナさんが座り
ハクトさんとアリスさんが3人の後ろに立っていた。
ナナは5人の神様に「あれま、本当にみんな揃ってる。」と小声で呟き
「ただいま。」
「おかえり。まさかすぐにこっちに来るとはのぉ。」
「へぇー、この子がナナの仲間かー。」
「ティアちゃんだけ可愛いわね。」
ナナの「ただいま。」から次の瞬間ティアはグラン・アポロ・ルナの3人に囲まれ
矢継ぎ早に色々声をかけられている。
ティアも答えようとしているが次々と質問され
「はい」「はう」「あう」と段々意味不明な言葉を話し始め
ナナは「まぁ、落ち着け。」とぽんぽんと頭を撫で
「ほれ自分で挨拶してみ。」
ティアはナナに撫でられ混乱していた感情が落ち着き
「ふぅーはぁーふぅー。」と深呼吸をしてから深々と頭を下げ
「はじめまして、ティアと言います。12歳の初心者冒険です。
弓修練と生活魔法が使えます。宜しくお願いします!」
元気良く挨拶をしたティアをグランさん達はニコニコしながら見ている。
それから5人の神様達はティアに挨拶をし数分後には食堂でティアの歓迎会が始まる。
食事としては普通の物であったがティアにしてみては初めての味付けに料理が並べられ
食べる手が止まる事無く黙々と口に運び・・・満腹と共に一気に疲れが出たのか寝落ちした。
スープを飲み終えた直後な為か右手にスプーンを握りテーブルに寝ている。
それを見たアリスさんはティアの頭を撫でながら右手のスプーンを外し
食べ終えた大皿や食べかけの料理を片付け始める。
「余程楽しかったんでしょうね。嬉しそうにしゃべり美味しそうに食べてましたし。」
「初めての冒険者として今日は頑張りましたし疲れが一気に出たんでしょうね。」
「うふふ、嬉しそうにいっぱい食べてもらって嬉しいわ。」
「今日も美味しい料理をありがとうございます。
暫らくは宿屋に泊れないと思いますんで引き続きお願いします。」
「大丈夫ですよ。
それに私以外の神様達も嬉しそうにティアさんと話してたじゃないですか。」
「そういえばそうですね。
本当に連れてきて良かったのか悩んでいたんですがね。」
「ナナさんは慎重さんです。
この場所はナナさんに害ある者は来る事が出来ないんですよ?」
「そういう仕様なのか・・・。便利であるけど不思議な空間としか認識してないからな。」
「あまり気にしなくて大丈夫です。
もしもの時はハクトさんが対応して下さいますし
最悪な場合はグランさんやアポロさんが対処して下さる筈ですよ?」
「それもそうか。それを聞いて少しは安心しました。」
「はい、ここはナナさんに工房であり隠れ家と考えて下さい。」
「隠れ家・・・今はまだ神様の隠れ家っぽいけど。」
「うふふふ、神様の隠れ家。それは言い得て妙な・・・。」
「本当の家も無いのにいきなり隠れ家か・・・。」
ナナはニコニコしながら話をしているアリスさんを見ながら
「そうですね。隠れ家というか秘密の家っぽいです。
美味しい料理に遊びきれないゲーム・・・快適過ぎる住居スペース。
堕落しないように気を付けないと・・・。」
「その辺は大丈夫です。ハクトさんがいい感じで鍛えてくれますから~。」
「あはは、変な冒険者に絡まれても大丈夫でした。
これで他の冒険者から変な目で見られたら・・・きついですが。」
「ナナさんはいい意味で目立ってますからその辺は気にしちゃダメです。
思うがまま我がままに好きな様に冒険なさって下さい。
今の言葉はグランさんやアポロさん、ルナさんも同じ考えだと思いますよ。」
「そうなのかな・・・。」
早々に席を立ったグランさん達は大広間でゲームに興じ
食堂には寝落ちしたティアにアリスさんの3人しかいない。
神様達はティアの話を嬉しそうに聞き色々な話をし
ティアもまた嬉しそうに話をし・・・8割食べながら話をしていた。
「そういえばティアはどこに眠らせればいいのかな・・・。」
「屋敷の客間でも良いですしナナさんの工房の2階でもいいですよ。」
「工房には来客用の布団無いですが・・・。」
「それならナナさんと一緒に客間に泊ると言うのはどうですか。
明日以降も『魔法工房』に宿泊するのであれば工房の2階に布団を運びますから任せて下さい。」
「それがいいかも知れませんね、ティアが朝起きた時に知らない部屋に1人だと混乱するかもしれないし・・・。」
「それでは客間の準備をしてきますので少し時間を置いてから客間のほうへ向かって下さい。」
アリスさんはそういって客間のほうに向かい。
ナナは眠っているティアを一撫でしてから洗い物を済ませる。
無意識にゲームのオープニング曲を口ずさみながらティアを背負い客間へ向かう。
「・・・と、その前に大広間にいる神様にお礼を言わねば。」
ティアを背負い直し大広間でゲームをしている神様にぺこりと頭を下げ
「ティアを招待して下さり、ありがとうございました。
今日は疲れたので寝ますが、明日以降もお願いします。」
グランさん達は最初こそびっくりしていたがナナの話を聞き
「わしらが招待したんじゃないぞ、この場はナナの許可がないと来れない場所じゃ。
それになわしらこそ宜しく頼むぞぃ。」
「新たな仲間は大歓迎だぁ!」
「一緒に騒げれば問題無しじゃ!」
「明日の朝の修練はいつも通りで宜しいですか?」
「神様らにそこまで言われたら逆に恐縮してしまう。
あー、朝錬はいつも通りにお願いします。
それでは『おやすみなさい。』」
「「「「おやすみなさい。」」」」
ナナはぺこりと頭を下げ、ずり落ちそうになっているげティア背負い直し
「お風呂は明日でいいや・・・疲れたから魔法で綺麗にして寝よう。」
屋敷の階段を上がり2階の客間の扉を開ける。
部屋の中は小さな机とクローゼットがあり
2組の布団が敷かれておりアリスさんがティアとナナの着替えを用意していた。
「魔法で綺麗にすると思いますが着替える場合はこちらをご使用ください。」
「あー、大丈夫です。着替えないで寝ます。
明日のお風呂上がりに着ようと思います・・・。
何から何まで用意して貰いありがとうございます。」
「いえいえ、私も世話をできるのが嬉しくて~。」
ナナはアリスさんと話をしながらティアを布団に眠れせ・・・
革の上下はそのままで問題無いとして解体ナイフと採取ナイフを外し
生活魔法でティアの身体を綺麗にしを静かに布団へ押し込める。
ナナは自身にも生活魔法を唱え綺麗にしアリスさんに
「すいません、もう疲れてダメです。」とだけ告げ
布団の上に倒れるように眠り始める。
アリスさんはニコニコしながら倒れて眠りだしたナナに布団をかけ
「それでは『おやすみなさい。』」と呟き部屋のライトを消すのだった。




