表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れ家に住む冒険者。  作者: 與吉
15/87

再び薬草採取とか

季節は冬から春になろうかという時期に

ナナは『ロースポーツ』周辺の草原に来ていた。

雪が融け少しずつ野草や薬草の姿が見え始めた。


冒険者ギルドでも穴兎の毛皮の依頼がちらほら出始め

ナナと同じくランクE~Fの冒険者達が草原で穴兎狩りをしている。

『気配感知』で周囲の反応を調べても反応が乏しく

ナナは穴兎を探すよりも薬草を採取して確実に報酬を手にする事を選んだ。


薬草を探す場合、人によっては薬草が生い茂る場所を覚えておき定期的に採取方法と

『鑑定』スキルによって野草や雑草から薬草の生い茂る場所を知る方法がある。

ナナは去年の薬草が生い茂っていた場所へ行き『鑑定』で確実に採取する方法を取る。

薬草を10本1束にしては『魔法工房』へ送り休憩をしては採取を繰り返す。

ナナの場合1人で採取しているので常時『気配感知』を発動し

接近する個体があれば採取する手を止め弓を構える。

今のところ接近してきたのはナナと同じ冒険者3人組や穴兎が数匹だったが

穴兎が姿を現したと思ったら冒険者達が追いかけ回し

ナナは一定の距離遠ざかるのを確認し再び採取をする。


この草原では血気盛んな冒険者達は穴兎を追い求め

ナナの様に1人で行動している冒険者は周囲を警戒しながら薬草を採取する。

その中でもランクFでパーティーを組んでいる冒険者たちもまた薬草を採取する。


ランクFは冒険者にとっての薬草採取は周囲の警戒を十分に果たせば完遂する物だが

薬草をきちんと見極める知識と技術が無ければ十分な数を採取出来ず

何より薬草10本1束だけでは宿屋にも泊れず数多く採取する必要があり

薬草を採取する者達は薬草の分布図を少なからず知識として持っていた。

また、穴兎や野犬と遭遇しても数人の冒険者達であれば対応出来るので

薬草採取をしつつ穴兎や野犬を狩るのもたちが草原には・・・20~30人は確認できた。


ナナは5束目の薬草を『魔法工房』へ送り

草原の真ん中に腰を下ろし昼ご飯の串焼きやパンを食べ始める。

流石に草原に直火は危険と思い火を使わないようにしているのだが

昼時になると草原の至る場所から小さな煙が上がっているのを見ると

春先だから燃え広がる事は無いと思うが危ないんだが・・・と思い

きちんと消化すれば大丈夫なのかな?などと考え始める。


暫らくナナが食後に『ぼー』としてると

「薬草採れますか?」と冒険者達から声をかけられる。

『気配感知』で近づく者達を感知していたのだが冒険者っぽかったので放置していた。


「まだまだ、薬草の数は少ないですね。」

「そうですか。穴兎の姿も疎らですよ。」


弓を肩にかけた冒険者が話しかけてきて


「穴兎を追い掛ける野犬を追いかけた方が実入りが良いかもな~。」


片手剣を腰にさした冒険者が草原をジーと見つめながらナナに声をかける。

その先には穴兎が周囲をきょろきょろ警戒しているのが見え

もう1人の冒険者が弓を構え矢を放つ!

矢は穴兎に命中し「よし!」と声を上げ即座に回収する為に駆けていく。

それを見た仲間に冒険者達も駆けだしたので

ナナに話しかけた弓を肩にかけた冒険者も


「春先なので穴兎も野犬も動きは鈍いですが森から冬眠明けの熊の目撃情報を聞きます。

くれぐれも気を付けて下さいね。」

「はい、草原の街の近くにいますので大丈夫ですが気を付けますね。」


ナナのその言葉を聞き冒険者は仲間の元へ駆けていく。


弓を構えてから矢を射るまでの一連動作に迷いが無く

しかも命中したのが頭部での一撃・・・か

遠目で見ていると矢を放った冒険者が即座に解体をしているのが見てとれた。

物の数分で解体を済ませた冒険者御一行は周囲を警戒して再び弓を構えている。

どうやら穴兎の解体時の血の匂いに誘われて野犬数匹が向かっているのが見えた。

2人が弓を構え遠距離から2匹を倒し・・・即座に弓を撃ちながら気が付けば無傷で6匹を倒し終える。

野犬は確か毛皮が討伐確認に必要なんだったかな?


「それにしても鮮やかな立ち廻りだな。

遠距離から確実に頭部への一撃・・・。

解体するのも手早いしベテランさんなのかな?」


ナナの冒険者としての知識は弓の使い方から薬草の採取

それに穴兎や野犬の解体などはハクトさんやアリスさんから教わった物だった。

教わった中で自分らしく動けるように考えて弓使いを選んだのだ。

今のところ弓の一撃で倒せる穴兎や野犬しか遭遇していないので

このスタイルで正解なのかは誰もあずかり知らずな所はある。


グランさんやアポロさんに言わせればランクを早々に揚げて上位冒険者になれとか

アリスさんやルナさんは色々な国や街へ行って美味しい物を見つけろとか

ハクトさんからは一緒にダンジョンへ行きたいとか言われていた。


この世界の12歳の行動範囲と冒険者としての立場で言えば

ナナは世界の隅っこで静かに暮らしたいと思っているのだが

現在の環境が無駄に快適で今でもナナは自身の所持している

ゲームの中にいるのではと錯覚するほどであった。

そうでないと言うのも理解してはいるのだが

アポロさんとのゲームと酷似していたり・・・

いやゲームでいえば最初の1時間以内で過ぎ去った無い様だな。

最初の街でLv上げをし次の街へ向かっている頃だろう。

武器も銅の剣から鉄の剣に変えて・・・うむ、やはり似ているようで似てないな。


「ゲームとは言え魔物退治をしながら旅を続けるのは人としてどうなんだろ。

自称勇者は人の為に魔王を倒すだったかな?」


今の『オールグラウンド』に魔王はいないし勇者はいない・・・はず?

何より冒険者の数が数千人はいるしその中から自称勇者が誕生するかも知れん。

平和な世界で1番強くなっても疲れるだけだし今のままの方がいいのでは??


「まぁ、強くなるのは身体を鍛えられるから面白いけど

魔物を倒すだけの冒険者生活というのはすげー殺伐としてるよなぁ。

何でゲームの中では勇者は黙々と魔物を倒しているのかなぁ。」


ナナの遊んだゲームの中にはLvUpを繰り返し魔王を倒す物が数多くあった。

殆ど積みゲーと化した物ばかりであったが今ではグランさんとアポロさんが進んで遊び

ナナはゲームで遊ぶと言うより2人のゲームを横目で見ながら楽しむ事の方が多かった。


「冒険者をしながら何かやりたい事でも見つかればいいなぁ・・・。」


ナナはそう呟き再び薬草採取を再開するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ