落雷からの
初めましての方は初めまして、久しぶりの方は久しぶり。
新年新しく投稿します。宜しくお願いします。
気が付くとそこは一面白い世界だった。
見渡す限りの白い世界・・・床や壁などが無く見渡す限りの白。
地面を目視出来ないが立っている感覚だけはある。
「立っているんだよな、夢にしては不思議な感覚だが?」
考えるのを止めるのは楽だが夢なら再び目を瞑れば覚めると思い目を閉じた。
再び目を開けると今度は六畳ほどの部屋にいた。
対面には初老の御老人とスーツを着込んだ女性がいた。
御老人は優しい目をしながらこっちを見ているし
女性の方は『大丈夫かしら』と不安そうな視線を向けている。
気分的には会社の面接試験を思い浮かべるのだが・・・
自分の服装もスーツを着込んでいるのかネクタイに背広に革靴を身につけていた。
さっきまでよれよれの作業着を着ていたと思ったんだが・・・?
これは架空の面接試験と言う名の『夢』なのだろう。
そう思うと気分が少しだけ楽になり2人の対面のイスに座り
自分の名前を言おうとして・・・『名前』を思い出せず。
「あの自分の名前を教えて欲しいんですが・・・?」
次の瞬間2人は悲しそうな顔をしながら御老人の方が話しかけてきた。
女性の方は手元の書類に目を通している。
「あなたの名前は『遠野七雄』で間違いないです。」
「『七雄』ですか・・・記憶喪失なのかな?それとも夢から覚めたら元通りなのかな?」
「あ、えと、夢から覚めても思いだせないと思いますが?」
書類の目を通していた女性が声を話しかける。
御老人の方も女性の言葉に頷き『やはり夢と勘違いしたか・・・』と呟き
「ここは遠野さんの夢の中ではありませんよ。
あなたは昨日の夕方に落雷によりお亡くなりになりました。」
「正確には落雷では無く『天罰』により身体が消滅しました。」
御老人と女性はイスから立ち上がり深々と頭を下げ
「申し訳無い、こればかりだけは謝罪してもダメなんじゃが・・・。」
「まさかヤツが最後の力で遠野さんを盾にするとは思わず・・・。」
「最終的にヤツを完全に消滅する事が出来たから最悪の事態にならずに済んだのじゃが・・・。」
「遠野さんの存在も同時に消滅する事になり・・・なんと言っていいか。」
「「本当に申し訳ありません。」」
名前を教えてもらって不思議な感覚だな。
雷が落ちて死んだと言う事でいいのかな?
死んだと言うなら今の状況は一体なんぞ??
「まだ理解できない事が多いのですが雷が落ちで死んだと言う事で?」
「雷と言うか『天罰』でじゃがな。」
「『天罰』が落ちて死んでしまったと?」
「そうじゃな、死んだと言うか存在が消滅したがな。」
「記憶喪失なのは存在が消滅したから?」
「その辺は消滅する寸前で君を保護したから大丈夫です。
一部の記憶の混乱が見られますが・・・大丈夫なはずです。」
「存在が消滅したと言う事は暮らしていた家族などは?」
「君の存在の消滅と共に記憶の改ざんが世界規模で行われました。
改ざんで消えるはずだった遠野さんの資産は確保してありますので後でお渡ししますね。」
「死んだあとに資産を渡されても・・・あれ?と言う事はここは死後の世界??」
「平たく言うと死後の世界の一歩手前の時間軸と言う感じかのぅ。」
「ここは生前の行いにより転生する者達を導く空間になっております。
死して再び生まれ変わる者、魂の形を改変される者、生まれ変わる事も叶わず消滅する者。」
「魂を選別する世界といえばいいのかのぉ。」
「それじゃ二人は神様ですか?」
二人は困ったような申し訳なさそうな顔でコクリと頷き
「神様の一柱で間違いないですが、やっている事は他の神様のサポート係りです。」
「私も同じくサポート役ですので神様としての力はありませんよ。」
「そうだったんですね、すいません神様に軽々しく話しかけてしまいすいません。」
イスから立ち上がり深々と頭を下げる。
対面の二人も同じく深々と頭を下げ「「「すいません、すいません」」」となってしまい。
神様の『まず座って話しましょうか。』と言う事になり
イスに座りなおし深呼吸し落ち着いてから目を閉じて『死んだのか』と考える。
記憶喪失な為か家族の記憶も親友の記憶も無いのは悲しくもあるが
逆に考えれば現世に未練が無いと言う事になるし・・・問題無いのかと考え始める。
「自分が死んだ事は間違いないし、記憶喪失である事も間違いない。
死んだと言う事は天国か地獄に旅立つと言う事間違いないのでしょうか?」
「実はその事で相談があるんじゃがいいかのぉ。」
「はい?相談ですか??記憶喪失ですが極悪人で地獄行き確定と言う事でしょうか?」
「いや、そういう事では無くてだな、今回の事は天界でも不足に事態と言うか
天国地獄以前の話なんじゃよ・・・君の死後の行き先が決まっていないんじゃ。」
「それは死後浪人と言う事ですか?」
女性の方から『旅立ちプラン』と書かれた3部の小冊子が渡される。
「今回の不足な事態と言う事で遠野さんには『転生』もしくは『転移』を考えています。
『旅立ちプラン』に目を通してもらえますか?」
小冊子を手に取り中を確認すると三部ともファンタジー世界の旅行プランが書かれていた。
1つは中世欧州の世界の様だか群雄割拠で戦国時代真っ盛りの世界となっていた。
2つ目は中世欧州の世界であり『新大陸』を目指し海に夢を見る世界になったいる。
3つ目は中世欧州の世界であり剣と魔法の世界になっていた。
「あのこの『旅立ちプラン』は過去の地球と言う事では無いんですよね?」
「3部とも地球とは異なる世界であります。」
「1つ目の世界は騎銃で戦場を駆け大陸統一を各国が考えている時代になってますね。
2つ目の世界は銃と大砲に加えて蒸気機関での巨大船での戦闘があります。
正規軍と海賊とで大陸と海の覇権をかけている時代になっていますね。
3つ目は剣と魔法がありファンタジーっぽい世界ですね。
今の時代では魔王と勇者が合い討ちになり痛み分けで静かな時代になってます。」
「1つ目と2つ目は殺伐としていて無理っぽいです。
3つ目は少しワクワクしますが・・・やっぱり無理ですね。」
3つの小冊子を閉じてから自身の手を見つめる。
記憶は無いが自分が結構な年齢であることは手や腹を見ればわかっていた。
違う世界で生きてみたいと思う反面、今の自分ではあっという間に世界に殺されてしまう。
新しい事をやるには時間が短すぎる寿命が無さ過ぎる。
「記憶は無いですが自分結構な歳でしょ?
今から新しい世界で新しい暮らしは現実的に無理ですし
生き残れると思う事が出来ません。」
「確かに遠野さんは現在46歳です。高校卒業後は就農し現在まで仕事をしてました。
生まれも育ちも東北の山間部で農家の長男として生活していましたね・・・。」
「そっか、46歳なんですね。なおさら難しいですね。
既に残りの寿命が残り少ない状況で新しい世界へ向かうのは・・・。」
「確かに今の状況では『転移』は難しいじゃろぅ。」
「そうですね、『転移』は今の状態のまま世界を渡る方法ですが
『転生』であれば新しく身体を作り変え精神が世界を渡る方法です。」
「ただ今回は『転生』とも『転移』とも違う方法で世界を渡って貰おうと思う。
遠野さんの身体をリフレッシュし若返らせてから世界を渡って貰いたい。
元はと言えば今回の事態は天界側の失態でもあるしね。」
「あの神様いいんですか?世界を渡る手伝いをすると聞いていたんですが・・。」
「いいんじゃよ、今のままでは遠野さんが不安がるしね。
それにどうせなら万全の態勢で新しい世界へ向かってもらいたいんじゃ。」
「・・・わかりました。全ての責任を神様が請け負うと言う事なら私も万全を尽くしましょう。
3つめの世界『オールグラウンド』は12歳で大人として仕事を請け負います。
遠野さんは12歳の身体で『オールグラウンド』へ向かってもらいます。
しかし、その前に『転移』と言う事で予め『オールグラウンド』の一般知識を覚えてもらいます。
その上で死なないように悔いの残らないように力を付けてもらいます。」
「そうじゃのう、スキルも最低限なものは修得しておいた方がいいじゃろうなぁ。
戦闘を考えて『身体強化』や『速度強化』は必須として
『オールグラウンド』での生活に必要な『生活魔法』は必要なはずじゃし・・・
他には何があればいいのかのぉ。」
「それなら『鑑定』と『調合』に『錬金』などはどうですか?
『鍛冶』や『細工』があれば街の中で暮らしていけると思いますが・・・。」
「わしとしては戦闘スキルも覚えてもらいたいのぉ。
『剣修練』や『弓修練』はあれば便利だと思うし。」
「それでいったら魔法スキルはどうですか?
『火魔法』や『水魔法』に『土魔法』はゲーム好きには必須です。
『回復魔法』や『結界魔法』があれば回復薬いらずですし。」
「なるほど修得するスキルは多そうじゃのぉ。」
「それでしたら私が『オールグラウンド』の事を教えますので
神様はスキルの事を教えて下さい。」
「そうじゃのぅ、ここは滅多に客人も来ないし満足いくまで教えるとするか。」
「はい、頑張りましょう。」
やる気を出した2人を横目に遠野は話の半分も理解できずぼんやりしていた。
理解した事と言えば12歳の若さでやり直せると言う事だけであった。
戦闘やらスキルと言った話は理解できず曖昧に頷くだけだった。
とりあえず10以上のスキルというのを修得し世界の知識を覚える事。
前向きに考えれば記憶が無いが34歳若返る事が出来る。
「まずは若返ってから考えるか、今のままでは覚えるのも難しいだろうしなぁ。」
その後、12歳の身体を手にし神様との修行の日々になるのだが・・・。
それは記憶には無いがゲーム好きだった遠野にしてみれば
リアルでスキルを修得できるという夢の様な時間であった。
『オールグラウンド』の一般常識を覚えると言うのも
ゲームの設定を覚える様でなかなか興味深かった。
遠野七雄が世界を渡る時には神様から新たに『ナナ』という名前を頂き
ナナ 12歳
『身体強化』Lv5
『速度強化』Lv5
『生活魔法』
『鑑定』Lv5
『調合』Lv5
『錬金』Lv5
『鍛冶』Lv5
『細工』Lv5
『剣修練』Lv5
『弓修練』Lv5
『火魔法』Lv5
『水魔法』Lv5
『土魔法』Lv5
『回復魔法』Lv5
『結界魔法』Lv5
修得したスキルをLv5の極限まで極め神様ら2人は12歳の超人を作り上げた。
もっとも遠野七雄こと『ナナ』はそんな事は知らず強くなっただけと思うのだった。
「神様の足元にも及ばないのに世界を渡って大丈夫でしょうか?」
ナナが『オールグラウンド』へ旅立つ前に神様ら2人にステータスを開示し
2人の空気が微妙な感じになった事をナナは知らない。
2人でこそこそと小声で話しているのをナナは知らない。
「あー、うん、大丈夫かなぁ。スキルもLv5でカンストで極めすぎたな。」
「神様やりすぎです。12歳の子供がスキルLv5で大問題ですよ。」
「それならステータスを『隠匿』しとけば大丈夫じゃろう。」
「『隠匿』でLv5をLv1にすれば・・・ギリギリいけるかな。」
ナナの知らない所でステータスは書き換えられていく。
ステータスを完璧に『隠匿』し一般的な子供を装っていく。
ナナはこの格好で『オールグラウンド』へ行くのか聞いてきたので
「子供用の革の上下に革のブーツにフードマントで武器はどうします?」
「強力な武器を持たせるのは危険な気がするし・・・一般的な木の弓と矢で十分。
解体用のナイフは必須として・・・後は何が必要かな?」
「背負い袋か背負い籠があれば荷物を持つのも大丈夫だと思いますが?」
「それなら背負い籠がいいかもな。袋より耐久性あるし便利だ。」
「神様、ナナさんに『空間魔法』は教えなかったんですか?」
「忘れとった、ファンタジーの定番スキルを教えそこなうとは・・・。」
神様はorzの体勢で地面をバンバン叩いている。
「あの『空間魔法』というのは何ですか?
ファンタジーの定番スキルっていうのは??」
「それは何でも入る『魔法の袋』や『貯蔵庫』と言われるアイテムを収納出来るスキルの事です。」
「まぁ、なんじゃ。呼び名は色々あるがナナさんには特別な魔法を授けようかのぉ。
君には生前の資産もあるしそれの保管も兼ねて『魔法工房』というのはどうじゃ?」
「あの神様、私も初めて聞くスキル名なんですが・・・大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫。『空間魔法』や『魔法の袋』と同じくアイテムの収納が出来るのは当然として
『魔法工房』は名前の通り『工房』や『仕事部屋』にもなっている。
ポーション調合や鍛冶や細工など自動生成に加え自身も工房で仕事する事が可能になっている。
ある意味『魔法工房』というスキルは自分専用の小さな世界を作りだす事が出来るんじゃ。」
「神様それはやりすぎなんじゃ・・・・。人のスキルで小さいながらも世界構築というのは・・・。」
「大丈夫じゃ、『魔法工房』で使える空間はわしが作りだしたもんじゃし
何よりナナさんの資産と言うべき部屋や持ち物も『魔法工房』の一室に置くつもりじゃ。」
「なるほど・・・彼の資産をお返しする訳ですね・・・。
まだ、全ての小説を読んでいないんですが・・・読みかけのコミックやゲームもあるんですが・・・。」
「それはわしもじゃ、積みげーばかりじゃ、時間が全然足りんかった!」
「どうするんですか、もう読めませんし遊べませんよ?」
「まぁ、わしは『魔法工房』の管理をする為に訪ねる事があると思うが・・・。」
「それなら私もお手伝いします。掃除洗濯お任せ下さい。」
ナナは部屋の隅でこそこそと話しあう2人を見ながら
「あの何か問題でも・・・?」
神様は手を『パン!』と叩きナナの装備を取り出した。
装備する物や背負い籠に加えて料理に必要な調味料なども取り出す。
「まずはこれに着替えてもらえるかのぉ。」
「はい、今着ている服はどうすればいいですかね?」
「それは向こうでも着れるから袋に入れて背負い籠に入れなさい。」
「わかりました。」
着替え終わったナナは『これから新しい世界で冒険だ~。』と思いながらワクワクしていた。
「それじゃ最後に『魔法工房』と言うスキルをナナさんに授けます。」
そう言って神様がナナに手を差し出し『握手です。』と言われ神様の手を取り
「このスキルはナナさん専用の工房へと導くスキルです。
そこでポーションの調合や鍛冶などを行う事も可能です。
最後にそこには生前のあなたの資産と言うべき数々の物があります。」
「生前の物ですか・・・『魔法工房』を使う時はぜひ見てみたいですね。」
「ちなみに『魔法工房』には管理人のわしら2人もたまにおるしのぉ。」
「そうです、管理は任せて下さい。」
「良くわかりませんが向こうに行っても会えるのを楽しみにしてますね。」
次の瞬間ナナは『オールグラウンド』へと旅立つのだった。