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1+0  作者: ふじたろー
1/1

第1

不格好な小説で、読みづらく、面白みもないかもしれません。

それでも、最後まで読んでいただけたら幸いです。


 珍しく雪の降った日だった。

 愛されながら彼は産まれた。

 誰もが気づかぬところで彼女は生まれた。

 そのことを知る者はどこにもいない。


   ◇◇◇◇ 


 これは夢だろうか。誰かが俺の名前を呼んでいる。

 優しい声だ。それでいて知らない声。

 すごく温かい気持ちだ。まるで母親の腕の中にいるような。そんな安心感が体を包んでいるのを感じる。

 『ここにずっといたい。』そんな風に思ってしまうほどに。

 君は誰なのと、そう問いかけようとした瞬間に温かさが引いてしまった。

 どこにも行ってほしくないのに。残ったのは温かみとは程遠い、氷のような冷たさだけだった。


   ◇◇◇◇


 「...い...。...く...きろ...」

 優しくない声だ。それでいてよく知っている声。

 「...きろ...お......」

 瞼を少し持ち上げると、一面の闇に一本の白線がひかれる。

 「おいソラ!早く起きろって!」

 声の主は母親でも父親でもない。

 「ん…」

 闇をぬりつぶした白に色がついていく。まだぼやけてはいるが、そこに一人の少女を描き出す。

 「ああ…メイ…。わかってるって…」

 これではまるで幼馴染が朝に起こしに来てくれるラノベの冒頭部分のように聞こえるが、この少女は俺の幼馴染ではないし、そもそも普通とはかけ離れている。

 「メイ、ちょっと邪魔…」

 少女は「起こしてやったのに」と愚痴るようにつぶやいたあと俺の視界から出て行った。だが出て行ったのは左でも右でもなく、上だ。それもジャンプとかではなく、ふわりと飛んでいった。

 この少女は浮いているのだ。物理的に。

 「まったく、いい加減言われずとも起きろ。起こす側の身にもなれよな」

 「はいはい、善処しますよっと」

 これはいつもの朝、いつもの我が家の風景だ。とはいえ、周りからは母親も父親もいない家で独り言をぶつぶつ言っているように見えるだろうが、ちゃんとメイという相手がいる。痛いヤツではない。


     --


 メイのことは正直よく知らない。超能力者なのか、はたまた幽霊か何かなのかさえ。

 気づいたのは二歳くらいの頃だった。大人と子供の中間で足踏みをしているような容姿をしたその少女は、今朝と同じようにふわふわ浮いていた。

 「お、やっと気づいた。二年間も寂しかったんだぞ」

 そんな言葉がメイとの最初の会話だった。今と同じ高圧的な言葉遣い。

 「つっても二歳じゃわかんないか」

 もちろん、二歳の頭では何を言っているのかわからない。当時母さんに話してみたものの、どうやら見えていないようで、笑いながら首をかしげるだけだった。貧乏な家だったので、母さんはいつも働いていた。昼も、夜も、誰もいない家で一人過ごすのは正直言って寂しかった。だからメイという存在はありがたかった。


 何も知らなかった俺にメイはたくさんのことを教えてくれた。使われなかった頭に言葉を。暗い色しか知らなかった心に明るい色を。そして人を想うことを教えてくれた。少しずつ、それでも着実に俺は成長していった。疲れている母に優しくしてあげよう。そう考えれるほどに。

 そんな経験が、そしてメイが、小学校にあがった後の俺を助けてくれた。日々やつれていく母さんを少しでも助けれたらと勉強も頑張った。あまり目立つタイプではなかったものの、深い友人関係を築いていくこともできた。何も悪いことはしていないはずだった。

 

 母さんが倒れた。

 突然だった。いつか来るかもしれないと覚悟を決めていたが、あまりにも突然すぎた。母さんは倒れた後、間もなくして息を引きとった。何もしてあげれなかったという罪悪感が涙となってあふれだした。十年くらい近くにいたせいかメイもずっと泣いていた。「ごめんね、ごめんね…」とこぼしていた。


 数日後になって遺書を見つけた。母さんが自分の死期を悟ってあらかじめ書いていたものだった。内容は家が貧乏だったことに対する謝罪と、少しだけ貯金を残しておいてあるということが書いてあった。どうすればいいかわからないという不安と、夜のように寒い寂しさに体が押しつぶされそうになった。

 「ソラ、負けるなよ。私がいるぞ」

 負けそうになった俺を救ってくれたのはメイだった。その眼には涙が浮かび、声は震えていた。それでもその一言は確かに力強く、俺を支えてくれた。

 『強くなりたい。もう誰も苦しませないくらい、強くなりたい』と、ただそう思った。


     --


 結局、メイのことはよく知らないままだ。ただ、大切な存在であることには違いない。実際には違うが、まるで姉の様な、そんな存在だ。

 でもどうして突然こんなことを思い出したのだろうか。あの不思議な夢のせいだろうか。それとも…

 

 「おいソラ!卵焼き真っ黒だぞ!」

 突然の大声が俺を現実に引き戻す。メイの声にも驚いたが、フライパンの中の真っ黒な物体はそれ以上に俺を驚かせた。「ああっ!」と言った時には当然もう遅かった。ふうわふわとした思い出旅行の戦果として得られたものはフワフワとはとても言い難いものだった。

 「ボーっとしてるからだぞソラ。まあ諦めて食うんだな。」

 まるで慰めているかのような言葉を吐く口とは反対に、その顔は嘲笑に染まっていた。


 とはいえ悪いのは自分だ。それに、作ってしまったからには食べないわけにはいかない。観念してそれを食卓に運び、さらに口へと運んでいく。においの時点で察しはつくが果たしてその味は…

 「不味い!」

 考えるより先に言葉が出てしまった。いやしかしこれは不味い。本当に不味い。

 「焦げただけでこんなに不味くなるのか?」顔をしかめる俺。

 「さっき間違えてプロテイン入れてたぞ」顔を更にほころばせるメイ。

 「プロテイン!?」

 思わずキッチンに走っていく。がさっと茶色の袋を持ち上げる。ええっと…?

 「なんでよりによってキャラメル味なんだ…」

 そりゃ不味さが増すに決まってる。そういえばいつだったか好奇心に負けて買ってしまったんだった。結局飲まなくなったのにここにきて復讐してくるとは…。

 「考え事なんかしてるからだぞ~」と、そう言うメイはまだ笑っていた。

 もし姉がいたなら、こんな風に過ごしていたのだろうか。不意にそんな考えが頭をよぎる。その答えがどちらにせよ、メイがいなければこんなことは起きなかっただろうが、同時にこうして騒ぐこともなかったのだろう。であれば今はメイという存在に感謝するだけでいいのではないか。気づけば思考は終着点を作り、そこから先に進むことはなかった。

 

 そうこうしているうちに家を出る時間となっていた。学ランは少しずつ似合うようになってきたと思う。なんだか大人に近づいてきた気分だ。かばんはちょっと重くなっていて、まるで自分に受験生になるということを自覚しろとささやいているようだった。

 「ソラー、早く行かなくていいのかー」玄関から聞こえてくる。

 「ああ、今行くよ」そう返しながら玄関へと向かっていく。

 ドアを開けると隙間からまだ少しだけ残った冷気が入ってくるのを感じた。

 「よし、じゃあ行くぞ」

 メイのその言葉に引っ張られるように俺は今日も家を出る。「ああ」と短く返事して外へと出ていく。

 ただ今日も。小さくこぼした「いってきます」に帰ってくる言葉はなくて。


 あまりにも弱々しいその言葉は、ドアの閉まる音にかき消されてしまった。

まずは最後まで読んでいただきありがとうございます。

このお話はまだまだ続いてゆきます。

へたくそなもので、途中でラストが分かっちゃうということになるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

のんびりと書いているので更新は遅いですが、また読んでいただけたら嬉しいです。

この後彼らを待っている未来がどういうものなのか、頑張って描いていきます。

感想もアドバイスも批判も、いただけたら喜ぶのでぜひお願いします。

繰り返しになりますが、読んでいただきありがとうございました。

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