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RE:collection of Justice  作者: カザハラ
chapter6 花舞う王国フィオーレ
17/17

chapter 6-1

 ロカーム砂漠を南へとひたすら真っ直ぐ進んでいく。

 砂漠に隠されていた神殿の封印を直したフレア達は、ルーク達獣人四人組のライブを楽しんだ後、一度物資を補給したいという彼らとともに、砂漠の南にある花の王国、フィオーレ花国を目指していた。

 その道中、獣人達のこれまでの冒険談を沢山聞き、フロレアとガルはその楽しそうな旅路にひたすら目を輝かせた。そんな彼女達の反応を見て、フォルテが笑いながら冗談っぽく言った。


「よかったらフロレアとガルも俺達と一緒に来るー?」


「行きます!」


「いく!」


「何言ってるんだい君達、君達にはまだやるべき使命があるだろう」


 冗談に即答した二人に、フレアがすかさず釘を刺す。そんなやりとりをしているうちに、広い砂漠はとうとう終わりを見せ、砂の海の端からポツリポツリと緑が見え始めた。


「相変わらずフィオーレの周りの気候は不思議だよね、砂漠と似た感じで植物が少なかったスヴェートと違って、一年中緑で潤っててさ」


「花国だもんなあ、街も花だらけだし、しかも今ちょうど花祭りの時期だろ?さらに花だらけだぜきっと」


 ルークが遠くを覗くように額に手を当てながら感想を述べると、両手を頭の後ろで組んで歩くツェンがふああとあくび混じりに相槌を打つ。その会話に聞き慣れない単語があったのか、マドーが首を傾げた。


「花祭り……とはなんですか?」


 そうツェンに訊ねると、ツェンは驚いたような顔をした。


「おいおい、花祭りを知らねえのかよ!」


「す、すみません……」


 ショボンとするマドーに、ルークが慌てて割り込み花祭りの説明をしてあげた。


「花祭りというのは、フィオーレで毎年開かれるお祭りなんだ。国中に沢山の花を飾って、その年の幸せを祈り、国を統治する女王を労い祝う催しなんだよ。祭りの間は色んな花々があちこちにあってとても綺麗で派手でね、凄く見てて楽しいよ」


「つまり!!派手な俺にピッタリな祭りってことだな!!」


「そうですね、フォルテちょっと黙って」


 説明を遮ってドヤ顔をするフォルテに冷たい態度を返すルークに、マドーは苦笑いをした。



 *



 砂漠を抜け、緑の小道を進むと、街を囲んでいると思わしき白い城壁が見えてくる。壁を囲う堀の水のせせらぐ音を聞きながら跳ね橋を渡り、その先にある綺麗な門を潜ると、ふわっと花の甘い香りと色とりどりの花びらがフレア達を包み込んだ。あちこちに花が咲き乱れ、鮮やかな色彩を見せる花の都。フレア達はようやくフィオーレにたどり着いたのだった。


「ヒャホー!相変わらずキレーで派手な街!この俺に、ピッタリ!!」


「うるせえ!!」


 街に着くや否や騒ぎ出すフォルテの頬に見事なフックを決めるツェンの暴力をスルーしながら、ルークはフレア達に向かい直すと、商店街と思わしき通りを指さした。


「じゃあ、僕達はあそこで物資を整えたら砂漠に戻るんで。ここでお別れだね」


 そこで一旦区切ると、ルークはラルフを手招きした。ラルフはそれに大人しく従いルークの手前までくると、背負い運んでいた爆睡中のアヌをルークに引き渡した。

 ルークはアヌを受け取ると彼に肩を貸すようによいしょと引っ張り上げる。


「短い間だったけど、楽しかった!またどこかで会おう!ほら、アヌもいい加減起きて自分で歩いて!」


 ルークに体を揺さぶられながらそう促されると、ようやくアヌもうっすらと目を開けて、力なく手をひらひらと振った。


「ん、またな」


「また会おうぜ!」


「じゃあな」


 アヌに続くようにフォルテとツェンも別れの言葉を告げると、獣人達は商店街へと歩いていく。


「こちらこそ楽しかったですっ!お元気でー!」


「是非またお会いしましょうー!」


「ルークありがとーっ!ガルつよくなるー!」


 フロレア、マドー、ガルも思い思いに別れの言葉を返し、フレアも大きく彼らに手を振って見送ると、さて、とくるりと振り返りフロレア達に自分達も場所を移動するべく、次に向かう目的地を伝える。


「この国の神殿に向かう前に、女王陛下に謁見しに行こう。事情を話せば協力してくださるはずだ」


 そう言いながらフレアが指さすのは、街の真ん中の高台にそびえる、ツタを壁に巡らせたような美しい装飾がなされた白い城。


「はっ……!はわわああ〜〜〜!!なんて素敵なお城なんですか〜〜〜!!」


 花に囲まれた美しい城を見たフロレアは、両頬に手を添え目をキラキラさせてうっとりと騒ぎだした。


「しかしフレアさん、いくら事情を話すと言えど、この国の女王陛下にそう簡単に謁見できるものなのですか?」


 そうマドーが疑問をフレアに投げかけると、フレアは心配いらないというかのように首を軽く振った。


「フィオーレ花国と僕の国、ヴァルクォーレ聖国は、友好関係にあって交流も盛んなんだ。だから女王陛下とも前から既知でね。最低でも顔見せぐらいはさせてもらえるはずさ」


 その答えに納得いったのか、マドーがなるほどと頷いたのを確認してから、フレア達は街の大通りへ出ると、城へと続くその道を真っ直ぐ進んでいった。



 *



 花々に飾られた大通りを抜け、城門までたどり着くと、門番をしていた兵士達はフレアの顔を見るや快く城内へ通してくれた。

 四季折々の鮮やかな花々が生けられた庭を抜けて、城の大広間へと案内される。広間は吹き抜けになっており、高い天井には薔薇が蔓を伸ばし咲き誇るかのような意匠のシャンデリア。更に奥へと続く階段も手すりが花の蔓のような飾りがなされ、もちろん、大広間にも色とりどりの花々があちこちに飾られていた。

 大きな窓から差し込む白く爽やかな光に照らされた美しい内装を見せつけられ、当然のようにフロレアが感嘆の悲鳴を張り上げた。


「はわわわあああああ〜〜〜っっっ!!中も!中もこんなに綺麗なんですね!?!?!?素晴らしいです!!!是非レリアの大聖堂も真似するべきです!!!いや、しましょう!?!?今すぐに!!!」


「フロレア、静かにしてくれ」


 興奮し発狂するフロレアにため息混じりにフレアが注意するが、フロレアはいうことを聞いてくれなかった。客人がそんな状態でも城の兵士達は自分達を涼しい顔で客間へ案内してくれるのだから、よほどこの手の客には慣れているのだろう。確かに、こんな美しい内装を見たら心奪われない者はいないはずだ。まあ、フロレアはどう見ても騒ぎ過ぎなのだが。


「せっかくお越しいただいたところ恐縮なのですが、女王は只今魔物討伐に出かけておりまして。しかしもうすぐこちらへお戻りになられると思いますので、もう少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


 案内する兵士は申し訳なさそうにそう話すと、フレア達を客間へ通す。やはり花だらけの客間にフロレアが声にならない歓喜の悲鳴を上げて部屋をウロウロキョロキョロしだしたのを横目に、マドーはまたもや首を傾げる。


「女王なのに魔物退治に出かけるのですか?」 


「ああ、フィオーレの女王陛下はだいぶ活発な方でね。戦いには率先して出られる方なんだ。とてもお強い方なんだよ」


 フレアがマドーに返した答えを聞いたガルが、「強い」という言葉に反応して顔をキリッとさせた。


「じょーおーへーか、つよい!ガル、じょーおーへーかにとっくんしてもらう!」


「何を言い出すんだガル、女王陛下はお忙しい身だ、そんな無理を言っては……」


 急にぶっ飛んだことを言い出したガルに、フレアはびっくりしながら諭したのだが、フロレアと同じくガルも言うことを聞いてくれなかった。


「じょーおーへーかー!!ガル!とっくんするー!!」


 などと叫びながら、ガルはラルフと共に客間を飛び出し、そのまま広間を突っ切り庭へと走り出してしまった。慌ててフレアとマドーもガルを追いかける。と、二人が追いつく前に庭に出たガルが再び何やら叫び出した。


「うまーーーーー!?!?飛んでるーーーーー!!!!」


 その声を聞きながらフレアとマドーも庭へ出ると、同じような顔であんぐりと口を大きく開けながらガルとラルフがぽかんと空を見上げていた。それに釣られるようにフレアとマドーも視線を上へ動かすと、ひらりと白い大きな羽が一枚空から舞い落ちてきた。

 その羽の主は、大きく美しい翼をバサバサと羽ばたかせながら、ゆっくりと庭に降りてくる。真っ白な全身は流美で美しくもしっかりと筋肉がついており、銀が美しく煌めく馬鎧と毛並みによく似た手綱をつけている。サラサラと美しくたなびく長い鬣と、同じように長い睫毛に優しげな瞳。どこからどう見ても翼の生えた白馬、「ペガサス」だった。

 ペガサスは庭に降り立つと、それまで大きく広げていた翼を折りたたむ。すると今まで翼で隠れて見えなかった白馬の背中につけられた鞍に、跨っている人物の姿が現れた。

 兜のない、緋い軽鎧に身を包み、端に括られた緋色のリボンが、まるで旗のようにはためいている大きなランスを背負う、赤みがかった茶色のボブヘアーの女性。赤地の端に緑のラインが入った大きなリボンを頭の後ろにつける彼女は、自分を見つめるフレア達に気づくと、若くもキツく厳しげな表情を、ふ、と緩め、気の知れた友へ語りかけるように優しく声をかけた。


「久しいなフレア王子。息災だったか?」


「ええ。そちらこそお元気そうで何よりです。ご無沙汰しております、ジョゼファ女王陛下」


 すちゃ、と片膝をつき一礼をしながら挨拶を返したフレアに、フィオーレの女王、ジョゼファはムッと再び顔をしかめつつペガサスの背からひらりと降りる。


「女王陛下はやめろと何度言えば伝わるんだ。ジョゼファでいい」


 ペガサスの顔を優しく撫でてから、コツコツと足鎧で固めたブーツを鳴らしフレア達に近づいた。そして今度はフレアではなく、彼の近くにいるマドーの方へ顔を向ける。


「これは珍しい客人だ。ルノマ族の知り合いは私にはいなかったはずだが、君はフレアの友人か?」


「はっ!お初にお目にかかります、女王陛下。私、スヴェート魔道国より参りましたルノマ族のマドーと申します」


 フレアの真似をするように、マドーも同じく片膝をつき頭を下げ挨拶をする。だがジョゼファは再び女王陛下という単語に反応し、ムッとした表情になった。


「だから女王陛下はやめてくれ。君もジョゼファでいい」


「ですが……」


「じょーおーへーかー!!!!」


 と、マドーが言葉を返そうとするが、すぐにそれはガルの大声にかき消される。ジョゼファはその声に特に驚いた様子もなく、自然に顔をガルへ向けると軽く笑った。


「ほう、とても元気な子だな。君もフレアの友人か?」


「ガルはガル!こっちはラルフ!じょーおーへーか!ガルにとっくんして!」


「こ、こらガル!」


 元気よく自己紹介をして流れるように特訓をせがんだガルを、フレアが慌てて嗜めたが、当のジョゼファは「良い」と楽しそうに笑うとしゃがみ、ガルに目線を合わせてから話しかけた。


「私に特訓をせがむとはなかなかいい度胸だ、気に入った。だが、すまないな。今は特訓をつけてやる暇がないんだ」


 そう申し訳なさそうに笑うジョゼファに、不満げに頬を膨らませるガルではなくフレアが言葉を返した。


「ジョゼファさん、あなたは魔物討伐に出かけていたと兵士から聞いているのですが、何かあったのですか?」


 フレアの質問に、ジョゼファはゆっくり立ち上がると、深緑色の瞳を暗く伏せた。


「……ああ。実は厄介なことが起こっていてな。この花祭りの時期に、不安なことだらけだ」


 だが、とジョゼファは伏せていた目を戻すと腰に手を当て首を振った。


「ここで立ち話もなんだ、城の中で話そう。そちらも私に用があってわざわざ来たのだろう?」


 ジョゼファの言葉にフレアも確かにと頷き、まだ不満を表情で訴え続けるガルの手を引いて、マドー、ラルフ、ジョゼファと共に城内へ戻った。



 *



「なるほど、王子達がこの国に訪れた理由は神殿か」


 客間に戻り、担いでいたランスを扉の近くに立てかけてから、どかっと部屋に備え付けられた赤いソファにジョゼファは足を組みながら座ると、うむ、と顎に手を当て頷く。

 そんな彼女が座るソファに花瓶の置かれた白いローテーブルを挟んで向かい合う、反対側の青いソファにフレアとフロレアが座り、テーブルの短い縦辺それぞれに沿うように置かれたふかふかとした赤い座椅子にマドー、ガルがちょこんと座る。


「確かにこの国の中にある施設ではあるが、あそこはレリアの管轄だからな。私より、あそこの神官に許可をもらう方がいいだろう。まあ、アルテミス殿直々の命ならば大丈夫だと思うが……」


 と、ここでフロレアがずっとそわそわしていることにジョゼファは気づいた。


「む、どうされた?ヴァルクォーレの神官殿」


 声をかけられ、はわっ!と思わずフロレアは姿勢を正すと、そのままもごもごと話しだした。


「あ、あのっ、女王様は意外にお若い方だったんだなあって思いまして……」


「フッ、フロレア!!」


 いきなり失礼なことを言い出したフロレアにフレアが食い気味に叱ると「すすすすいません!つい!」とフロレアが勢いよく頭を深く下げる。突然のことにポカンとしたジョゼファだったが、フロレアの謝罪を見るとははは!と大きく笑い飛ばした。


「構わん、しかし若いか。よく歳の割には老けて見えると言われていたからな、若いと言われたのは久方振りだ」


 確かにジョゼファは、女王にしては若かった。年の頃もフレアとフロレアより少し年上ぐらいの、まだまだ若い世代なのだろう。


「先代の国王陛下が早くに亡くなられてから、若くしてジョゼファさんが跡を継がれたんだ」


 フロレアにジョゼファの事情を軽くフレアがそう説明すると、ジョゼファは寂しそうに俯いた。


「先代は、父は病気だったからな。なのに晩年まで立派に王を務められた素晴らしい方だった。ただ残された私達はまだ幼かった。それでも跡を継ぐなら、長女の私がやらないとな。弟と妹にはまだ荷が重すぎる」


「ジョゼファさんには弟さんと妹さんがいらっしゃるのですね」


 ジョゼファの話を聞いてマドーがそう聞き返すと、ああ、とジョゼファは頷いた。


「そういえば、ルイス王子とメイパオ王女を見かけませんね。彼らも騎士団員でしたよね、討伐任務中ですか?」


 と、ここでこの城に来てから、そのジョゼファの弟である王子のルイス、妹の王女、メイパオの二人を一度も見ていないことにフレアは気づいた。

 ルイスは、ジョゼファ自身が団長を担うフィオーレ騎士団の副官を務め、メイパオも見習いとして騎士団に籍を置いていたと記憶している。ここにいないと言うことは、彼らも姉、ジョゼファと同じく魔物を討伐しに出かけているのだろうか。いつもなら二人は城にいて、特にメイパオが人懐っこい性格で客人が来るたびに彼女の方から駆けてくるぐらいなので、顔は合わせるはずなのだが。

 フレアの質問に、ジョゼファは更に寂しそうに目を伏せた。


「……二人は行方不明だ」


「なんですって?」


 ジョゼファから告げられた言葉に、フレアは思わず身を乗り出す。フロレアとマドーも顔を硬らせ、体に力が入る。


「少し前から、ルイスもメイも行方知れずなんだ。ある日、突然、二人は自室から消えてしまった」


 続く内容に、フロレアはひっと息を飲むと口を手で覆う。


「二人だけじゃない。ある日突然、騎士団の一部が消えてしまったんだ。しかも、国民の中にも家族が突然消えたり、行方不明になったと訴える者もいると言う。こんなことは初めてだ」


 ジョゼファが言っていた厄介なこととは、どうやらこのことのようだった。しかし、なんだか聞き覚えのある内容だ。ある日突然人が一斉に消える。それも、たくさんの人々が。これは、まるで……。


「……スヴェートと同じ現象です」


 マドーがそう溢すと、ジョゼファは驚きの表情を見せた。


「スヴェートでも人が消えたのか!?なるほど、フィオーレだけの問題ではなかったのだな……」


 そう深く考え込むジョゼファに、マドーは慌てて訂正を入れた。


「いえ!原因が同じかはわかりません!スヴェートの場合は、光魔道士達の暴動ではないかと思いますが、フィオーレでもそんな騒ぎが起こるとは思えませんし……」


「確かに、そう言われると簡単に結びつけるべきではないが……」


 と、少し言葉を濁すも、黙っていても意味がないと判断したのか、ジョゼファはゆっくりと話を続ける。


「……実はな、フィオーレではもう一つ問題が起こっている。それは魔物の活発化だ」


 それを聞いて、今度はフレアとフロレアが驚いた顔をする。


「最近、やけに魔物が多くてな。確かにロカームから流れてくる魔物は多かったが、その比ではない。更に言うなら、今までは街の外にしか現れなかったのが、街中に突如出現するようになったんだ」


「ま、街中にですか!?」


 声を上げるフロレアの横で、フレアがマドーと同じように溢した。


「ヴァルクォーレの祭壇が壊れた時と同じ……あの時も周りの魔物が急に活性化した。まさか、もうフィオーレの祭壇はすでに……」


 フレアが言い終わる前に客間の扉がバン、と勢いよく開けられると、兵士が慌てたように中に飛び込んでくる。


「ジョゼファ様!また魔物が街中に出現致しました!東の、花の広場です!」


 その報告にジョゼファは顔をしかめると素早くソファから立ち上がる。


「すまない王子、ゆっくり話す暇はないようだ。君達は神殿へ向かい用事を済ませてくれ」


 そう言って、ジョゼファは扉近くに立てかけていた自身の緋いランスを手に取ると、兵士と共に客間を出ようとする。が、フレア達も同じようにすっくと席を立つと、ジョゼファの後に続く。

 その気配に気づいてびっくりしたように振り向いたジョゼファに、フレア達は頷いた。


「僕達も手伝います。この一大事を見過ごすわけにはいきませんから」


 フレアの言葉を聞いて、ジョゼファは不敵に笑った。


「有難い!是非手を貸してくれ!」


 そうしてジョゼファと共に、フレア達は客間を出て大広間を抜けて庭へと進む。


「では、東にある花の広場まで来てくれ!道案内はそこの兵士がしてくれる!私は先に行く!」


 ジョゼファはフレア達にそう指示を出すと、空をバッと見上げた。


「アルテナ!!」


 空に向けてジョゼファが大きく叫ぶと、美しいいななきと共に、先ほども見た鞍と手綱、銀の馬鎧をつけた美しい白馬のペガサスのアルテナが、白の庭奥からひゅんとジョゼファの元へ翼を羽ばたかせて飛んでくる。そして彼女の前に止まると、ジョゼファはひらりとアルテナに跨り、ランスを握る手と反対の手で手綱をしっかり握ると足でアルテナの脇腹を軽く蹴って全身の合図を送る。それを受けて、アルテナは直ぐに翼を広げ直すと地面を後ろ脚で強く蹴り空へ飛び出していった。


「!!!!かっこいーー!!ラルフ、ガル達もあれやろ!」


 ジョゼファとアルテナの流れるような出撃を見て目をキラキラさせてラルフに無茶を言うガルをフレアが肩を叩いて一旦落ち着かせてから、兵士に声をかける。


「僕達も急ぎましょう。案内をお願いします!」


 兵士は力強く頷くと、フレア達を先導するべく庭から城門へと駆け出す。それに続いて、フレア、フロレア、ガル、ラルフ、マドーも城から街へと走り出した。

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