氾濫に立ち向かう形無し勇者
氾濫発生です
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夕日が染める頃それは動き始めた
巨大なそれはゆっくりと乾いた血に染まる体を揺らしながら森の中を進む
時々目の前を進む血走った眼の生き物たちに喰らいつきながら
うまそうな匂いが漂ってくるほうへ進み続ける
そしてそれはとうとう見つける人間と言う生き物たちが作った町と言う名の餌箱を
「来たぞ取り巻きも大勢いるな」
命がけで斥候に出た冒険者が声を抑えてつぶやくと
目の前を目を血走らせた様々な動物、魔獣、モンスターが列をなして町へと向かっている
冒険者は森の中を町に向かってひた走る
町に入り待っていた冒険者たちに
「氾濫はもうすぐそこまで来ている急いで準備を」
それだけ告げると斥候の冒険者は前のめりに倒れていた
「向こうへ連れて行って介抱してやれ」
マルガリーテの指示で肩を貸されて奥で介抱を受ける斥候
普段は個人主義でよくてパーティー単位でしか行動しない冒険者たちが整列している
その冒険者たちを見回すと
「お前ら死ぬことに意味などないだから死ぬな
冒険者はいついかなるときも力無き者たちの前に立ち盾となり剣となる者
一人でかなわなければ二人で戦ってかまわん常識など捨ててしまえ
我々は騎士ではない格好など気にするな」
手を上げると一直線に外に飛び出していく
そして全員が出陣すると町の門は堅く閉ざされた
そして冒険者たちの中に武器を手にしたホープが居たのはいうまでもない
ほかからくらべてかなりのハイペースで先行したホープは最初から我慢しなかった
神器を剣の姿で抜き払うと炎を纏わせ薙ぎ払った
炎の剣閃が押し寄せる敵を切り裂き焼き尽くす
それが通過した後に生き残りは居なかったが
次々に押し寄せる敵はその穴をすぐに埋めてしまう
後から来たマルガリーテが
「ふふ長丁場だが抑える気はなさそうだなホープ君」
そう尋ねると
「抑えていても事態が好転する見込みはないしならば王を討つ」
その言葉にマルガリーテは戦場であることも忘れ笑いながら敵を倒すと
「いい作戦だが君を送り出す戦力が足りないな」
そう言うマルガリーテの隣にふわりと一人の男が降り立つ
「その役目僕に任せてもらえないかな愛しのハニー」
そう言ってにっこりとマルガリーテに笑いかける
「あんた自分の部下をほったらかしてなに前に出てきてるんだいジルン」
そう言ってジルンを睨むがジルンは笑顔のままマルガリーテに
「ここを越えられたらどうせ終わりなんだしそれなら奥さんと一緒に戦ってくださいって部下に送り出さ
れた、それでも君は帰れって言うのかなマリー」
妻であるマルガリーテを愛称で呼ぶジルン
恥ずかしさで真っ赤になるマルガリーテ
「解ったわよもう人前で愛称で呼ぶのは恥ずかしいからやめてってあれほど」
「仕方ないだろ腕力じゃ君を止められないんだからさてそこの君、ホープ君だったよねここは気にせず僕
が道を開いたら君は前に出て王を討ってくれ君が事を為すまでは僕がここを支えよう」
そう言うとジルンは魔力を解き放ち杖を振るうと
「我が身の危険省みず自ら死地に赴く勇者に戦神の加護を」
「大地と炎の精霊よ勇者の為に道を切り開け」
次々に唱えると
ホープの体を光が包みそしてその体にあふれんばかりの力を沸き立たせ
そしてホープの目の前から大地がめくれ上がり敵の波を左右に分けながら燃やしていく
「さあ道はできた後は君に頼らせてもらうよ」
そう言うジルンに頷くとホープは生み出された道を後ろを振り返らずに走り出す
「さて彼は行った僕も約束を果たさないとね」
そう言ってジルンは杖を敵に向けると
「古き契約に従い我が前に来たりて我が敵を討てバーニングタイガー、アイスレオ」
ジルンの求めに応じてジルンの前に炎柱と氷柱が立ちその中から炎の虎と氷の獅子が躍り出る
「マスターよく呼んでくれた」
「わしらはマスターと一蓮托生なのだからやきもきしていたのだぞ」
二匹はジルンに詰め寄った後
「「お久しぶりです奥方様」」
そう言って深々とマルガリーテに頭を下げる
「あんた達私が恥ずかしがるって解ってやってるでしょ」
そう言って恥ずかしさで赤い顔を歪ませると
「いえいえマリー様の恥ずかしがる顔が可愛いので見たいとか」
「奥方様がマスターをいつも心配させている意趣返しとか」
「「そういった感情は入っていません」」
2匹は声をそろえて答えると
ジルンが2匹に
「お前たちその辺で勘弁してやってそうしないと戦えなくなるからね」
そう言って2匹にあおるのをやめさせる
次回亀さんと対面です