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ワガハイは竜である

お久しぶりですみませんm(_ _)m

 ワガハイは竜である。

 名前はあるにはある。


 ワガハイが生まれたのは、まだ古代アラリスーリ帝国がぶいぶいいわせてたときだった。


 早く産まれてらっしゃい、私の可愛い可愛い可愛い雛竜ちゃん〜


 卵の外から聴こえる優しい声にヨイショと卵を割って出ると、でっかい黒い雄竜がキラキラした目で指を組んでおった。

 

 ああーん可愛い雛竜ちゃんと身をよじったのがワガハイの乙女な父であると知ったとき、ワガハイは世の無常を赤子ながらに感じた。


 ちなみに母は風竜で、地竜な父に卵なワガハイを押し付け世界を飛び回ってると聞いたとき、なんかむなしい気分のまま与えられた竜果草をむさぼり食ったものである。


 そんなこんなでワガハイが子竜になり少年竜になった頃、古代アラリスーリ王国はヘロヘロになり滅びの道を爆走していた。


 そしてパーウェーナ世界が動乱に満ちあふれ、シレルフィール城塞が現役バリバリで逆賊を迎え撃ってた頃、ワガハイは乙女な父から離れて世界を回り始めた。


 私の子竜ちゃん、気をつけてとうるうるする乙女な父に心をゆさぶられながら空に飛び立つのは、自立したようで誇らしかった。


 古代アラリスーリ帝国が滅んで(ポシャって)ラーシャ族が侵入してくる敵を次々撃退して支配地域を広げグーレラーシャ(大きなラーシャ族)傭兵国と名乗りだした頃、ワガハイは青年竜になった。


 といってもワガハイは風竜が強いので、そんなに大きくなれないのであるが……基本的に風竜は小柄で小回りが聞く体型なんである。


 そして出逢ったのである。

 ワガハイの生涯の伴侶な凛々しい、凛々しい……凛々し過ぎる妻に……


 ワガハイは雄であるが、実は縫い事が好きである。

 クレシア芸術集団に人型を取り所属していたことがある。


 そのクレシア芸術集団がそのうち人を集めクレシア芸術国となるのであるが、また別の話である。


 ちなみにクレシア芸術集団は元古代アラリスーリ帝国の首都を本拠地にしておって、崩れかけた街並みさえ魅力的だと喜ぶ連中(変態)である。


 ねぇ~ここの刺しゅうしてよ〜

 この鉱石くだいてどんなメディウム入れたら安定した絵の具になるかなぁ〜

 この竜のぬいぐるみ丸々しすぎてないか?

 もっとモコモコさせてー

 僕の芸術的な料理に文句つけるやつになんか食べさせないよ


 人間族、風読みの民(翼人族)、獣人族やら岩小人(ドワーフ)等々色々な種族が代表のね~さんにひきいられて、楽しく刺激的な芸術生活を送っておったのはいい思い出である。


 ワガハイが竜であることは知られておって、よく抜け鱗をねだられたものである。


 今でもクレシア芸術国の王宮には、ワガハイの抜け鱗で作ったミニワガハイ人形が残っているそうで、いつかその黒歴史を潰すのが夢である。


 そんなある日のこと、アラリスーリ帝国の残党どもがワガハイのことを聞きつけ因縁をつけてきたのである。


 風地竜ハーフなワガハイは……実は戦闘能力なんぞなく、このままでは高級感あふれる竜武具の材料にされそうになった。


 ワガハイはちっとも高級感あふれる竜武具になんてならないのである〜

 駄竜の鱗でも人のつくる武具の数バイ強い、帝国復活のため身を捧げろ〜

 

 ジリジリとナタを片手に迫りくる()帝国貴族。


 仲間の芸術家たちはオロオロして役に立たぬ。


 ワガハイは死さえ覚悟したのである。


 塀際までせまられギラつくナタに目をつぶったワガハイ。


 ドカッと何か鈍い音がした。

 ぐおーと呻く声がして、目をあけると銀の鎧が目にうつった。


 まるで炎のような一つにまとめられた髪が目の前で揺れて、元貴族(くず)は向こう側の壁に激突して目を回していた。

 

 大丈夫か? 爽やかな匂いがしそうな声がして赤い髪がひるがえった。


 ありがとうございますとワガハイは声をあげながら息を呑んだ。


 なんかごつい……可愛い顔なのに鎧が似合いすぎてる〜

 

 ガッチリと筋肉のついた凛々しい女? 戦士の赤い瞳に魅入られたのか……呪縛がかかったのか……ワガハイは笑顔のまま動けなくなった。


 思わず後ずさりがれきに足を取られたワガハイは彼女? にしっかりと片腕で抱きとめられた。


 美しい赤い目から目が離せない。


 その時、崩れかけたがれきの向こうから、誰かを呼ぶ男の声がして彼女が振り返った。


 舌打ちした姿さえかっこよく、彼女はワガハイの首にキスすると丁寧に古代アラリスーリ帝国残党をふみつけて、崩れかけた壁を飛び越えて去っていった。


 ワガハイは困惑して首をなでた。

 顔が赤くなった頃、仲間たちが荒縄で残党どもを芸術的に縛り上げておった。


 胸を押さえて立ちすくむワガハイに、動悸? 不整脈? と騒ぐクレシア芸術集団のね~さんを無視して彼女の去った方ばかり見ていた。


 次にワガハイが未来の伴侶とあったのは、古代アラリスーリ帝国の末裔と名乗るオレンジ色の瞳の男が、土着宗教を祀る青黒の髪の巫女をたぶらかして、ヌツオヨ大陸にオーヨ神聖王国とか言う宗教国家を成立させた頃だった。


 そのオーヨ神聖王国(田舎国家)に、古代アラリスーリ帝国様式らしいレリーフを作れと依頼され、はるばるクレシアの地からきたというのに……


 われらの崇め奉る御方はこうではないだの、異教徒どもに我らの神が再現できるわけないだの、高すぎるまけろだの因縁をつけられて、ほとほと嫌になったワガハイたちはひとまず帰ることにして荷物をまとめていると、くだんの末裔とやらがやってきた。


 帰るのか?

 オレンジ色の色男風が何故かワガハイのあごに指をかけた。


 わ~またー 魔性の竜だからなぁ……


 仲間たちがなんか騒いでると思ったら、頬をなめられた。


 ワガハイは食べ物ではないのである。

 抗議するワガハイを無視していい匂いがする、と抱き上げた。


 ちなみにワガハイは人型になると少年サイズしかなれないんである。


 竜体もちみっこくて同じくらいである。

 しかも風竜まじりなので質量も軽すぎるらしく、仲間の女性たちにあんなに食べるのにうらやましーとよくモフられるのである。


 鱗より毛が多過ぎる悩める竜体なのである。


 さあ、めくるめくモフモフ世界へ行こう。

 ……あの、ワガハイは雄なのである。

 さわさわとなでるオレンジ色の男に目を合わせた。


 知ってるが、それがどうしたと微笑まれ歩きだされた。


 どうでもいいから助けてほしいと手をパタパタすると、仲間が困った顔をした。


 いつの間にか、末裔男と一緒にヌツオヨ大陸に渡ってきたと言う古代アラリスーリ帝国風の格好をして槍をかまえた兵士たち数人が、生暖かくオレンジ色男を見送っていた。


 助けて〜誰か〜

 なんかのほほんモードの雰囲気に、流されてはいけないとワガハイはちっこい手をパタパタ振った。


 その時、作業中の壁の向こうから赤いもんが飛び越えてきてオレンジ色の男に蹴りを入れた。


 これはワタクシのものだ!


 赤い髪のがたいの良い、いつぞやの女戦士が、倒れたオレンジ色の男からワガハイを回収して立て抱きにして宣言した。


 堂々と言うその姿に仲間たちは拍手喝采をし、兵士たちは、あわててオレンジ色の男を看るものに赤い女戦士にふるえながら槍を向けるものに、いろいろだなぁとなんか現実逃避した。


 オレンジ色の男がその後、謎の術で反撃して赤い髪の女戦士に大剣で鞘ごと殴られ飛ばされた。


 よろけながらオレンジ色男が立ち上がると、作りかけの神殿から青黒い髪の重量系の巫女が出てきて、その方がお好きなら身を引きますわ~と、もたもた去って行くのをオレンジ色男(変態)が追いかけて抱きしめて、モフモフしたいのは君の脂肪だけだぁ、と深い口づけをかわしている。


 あとに残ったワガハイらは、古代アラリスーリ帝国風兵士共々なんかいたたまれなくなったのでそのまま解散の運びとなった。


 あの~離してほしいのですが?

 そなたはワタクシの比翼の竜、伴侶なのだぞ。

 おずおずというと、赤い女戦士が甘く微笑んで、赤い被膜を張った竜の翼を広げワガハイを抱えたまま大空へ飛び立った。


 えーとその……うわーん助けて〜

 ギアムシュ竜連邦が成立する頃ワガハイは生涯の伴侶に拉致られた。


 ちなみにワガハイの伴侶はかの地の炎竜な戦士長で、この前あったときは古代アラリスーリ帝国の残党の様子を偵察しに来ていたそうだ。


 あの時からワガハイのことが気になっていたそうな。


 その後正式な逆プロポーズをうけて、オスペナ知識国の最高学府に女子生徒が入学した頃ワガハイたちは夫婦になった。


 ヌーツ王国が次々に小国を併合して帝国を名乗る頃、ワガハイは三竜の子竜の親になっていた。


 そして幾年の年月が過ぎ、子竜が巣立ちし伴侶を得て孫ができた。


 そして現在。メア=キシグ古王国にデイサービスができる頃、ワガハイは立派な老竜である。


 デイの迎え来てるぞ〜

 おはようございます。


 生意気なひ孫とデイサービスの介護士の声が聞こえる。


 さて行くか、とこたつからつまみ出してくれたのは伴侶である。

 歳をとっても元気な伴侶と違ってワガハイは寒がりなんですが……


 今日はどんなレクリエーションなのだろうな、ワタクシは風船バレーとか玉入れとかが良いな。

 ワガハイは貼り絵とか塗り絵がいい。


 そうかとわらって、ワガハイをいつものように竜人姿で抱えた伴侶がすこしよろめいた。

 

 歳をとってワガハイもかなり縮んだ。

 大きめのぬいぐるみサイズであるが、それでも歳をとって弱った妻には重かったようだ。


 だめですよ無理しちゃ。

 介護士があわてて伴侶を支えた。

 そしてワガハイを背負っていたスリング(抱っこひも)に移した。


 ワタクシはいつでも可愛い夫を抱き上げたいのだ。

 転んだら元も子もないですよ〜。

 うまくなだめながら、介護士さんが伴侶を玄関に導いていく。


 ワガハイはスリングから小さな手を出して伴侶に触った。

 伴侶がこちらを見たのでニッコリ笑った。


 老い先短い我らだけど、この世界のすみっこでのんびりと楽しく生きて、そしていつかともに往こう。


 お迎えが来るその日までワガハイは君と一緒に世界を楽しんで行く。


 伴侶が小さなワガハイの手を握った。


 仲良しさんですねと介護士が笑いながら送迎車にワガハイたちを乗せた。


 伴侶はワガハイを膝の上に抱き上げた。


 トスモル技術国が新しい飛行艇を開発した今日この頃、ワガハイは歳をとっても伴侶と楽しく平和に暮らしているのである。

読んでいただきありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ

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― 新着の感想 ―
[一言] 乙女な父、キラキラしてクネックネしてそう(笑) ワガハイが老竜になるまですんごい時間が経過してるんですね〜、なんせぶいぶい言わせていた古代帝国さんがポシャって、(どこかで聞いたことある)色…
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